もしも八幡が10回だけテレポートできる能力を持っていたとしたら 作:あおあさ
小さい頃から、俺は周りとは何かが違う。
そう思ってきた。決して自己愛がすぎるが故に起きる厨二病とやらではなく、何処か取り残されているような。それは自分のコミュニケーション能力の欠如による物の因果関係なのか、はたまた、別に理由があるのか。
そんなこんなで、普通の小学生と少しだけ考え方の違う生活を送ってきた。
しかし、それも小学生までで中学に上がる頃には黒歴史と成り果てて毎回それを思い出す度に悶える。そんな、中学生生活を過ごしてきた。そうあの日までは。
「お兄ちゃん、朝だよ」
心地よい声と、何処か優しげな声色。そよ風が窓から入ってきて俺の頬を撫で通りすぎて行くその感覚がとても居心地の良い物だと思い、更に脳はその感情に従うかのように眠りを伸ばそうと目を開けることを禁じる。
「もぉ、起きないとこれから朝ご飯作らないよ」
否、焦りに身をまかせ禁じられた事を破る。
まだ眠気があるからか、重たい瞼を擦りながら微かに目を開けると自分と似た容姿の少女。まぁ、性別が違うが妹がはにかむような笑顔で此方を見ているのが鮮明になってゆく視界と共に見えてくる。
その姿を愛おしく思いながら、自然と頭を撫でてあげると少女は嬉しそうに目を細める。
「おはよう、小町」
俺のいつも通りのなんなら変わらない朝が訪れる。
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〇〇〇〇中等学校。
何処となく秀でてる部分のないこの学校は、文化に縋るしか他なかった。
歴史だけ長いだけあって、ルールには厳しいこの学校でも中学生は所詮中学生。中身がまだ幼くその決め事に不満を抱く者も少なくはなかった。
では、俺はと言うと正直どうでもいい。
小学生の頃からの同級生の噂もあってか、中学に上がっても俺は何処か腫れ物を見るような。異端児的なと言うよりは正しくその扱いを受けていた。
仕方ない。人間は集団生活を営む者なのだ、当然集団心理とやらが生まれ例えば仮に、犯罪を犯していないと主張する者がいたとして周りの8割がそう思っていたら残りの1.9割はそれに流される事だろう。つまりは、俺が『変わり者』と言う事は今や学校中に知れ渡っており、わざわざ仲良くする奴なんかいないせいで、普通に生活していれば破る事はないだろうルールに俺が反感を覚えないのは当然の結果だった。
「んでさ、次はここをだな……」
「お前それはやりすぎじゃね?」
「面白いからいいんじゃない?」
妙な作戦? のような話をするのはこのクラスで一番不真面目とされる真野圭吾とその取り巻きであった。彼らはこの学校の余りにも厳しすぎるルールに嫌気がさし反抗。と言うのは建前だけでしかなく、それを理由に色々な悪さを企てる集団であった。
少し気になりつつも、時間の針はもうすぐ12時を指す。
学生にとって一日の長き休憩が訪れる。他人に構うつもりなど毛頭ない俺は他人事の様に無視することにしたのだった。
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昼休憩に入り、教室の辺りは知らない顔で溢れかえる。
周りは交友関係のある者と楽しそうに談笑しながら昼食を取っている中、俺はと言うと鞄の中や机の中を息を漏らしながら何度も何度も見ると言う動作を繰り返していた。俺の家庭は母親父親共に朝早くから夜遅くまで働く為、弁当は妹の小町が担当しているのだが、それが見当たらない。幸い、うちの学校には学食なるものがあるので、腹を満たす事自体に困る事は無いのだが折角作ってもらった弁当。少し申し訳なく思いながらも購買へと俺は足を歩める事にした。
購買に着くと目の前は人で溢れかえっている、と言うものではなかった。
ここ〇〇中学校では購買の並び一つに取っても生徒達が自主的に整列していることから、普段のルールは厳しさは無駄ではないのだなと思い知らされる。
「おばちゃんチーズパン1つ」
「あいよ!」
懐から財布を出し、300円を支払う。
重さ約280g、コンビニで言うのであればチキンと同じぐらいの重さのあるパンを購入する。ニカッと、歳相応の優しそうな笑顔を浮かべる少々ガタイの良いおばちゃんからパンを受け取ると、ベストプレイス。個人的にそう呼んでいるのだが、謂わば禁止区域の屋上へと足を進める。禁止区域ならば入ってくるものはまずいない為、例えば一人で食べている所に二人組が偶々同じ場所に来たとして、あの何とも言えない気まずい雰囲気になる事を回避できる。
いつも通り、黄色のテープが貼られたその間を潜り抜け鍵の掛かっていない屋上のドアノブに手をかける。が、しかし普段と違い中から話し声が聞こえた為に入ることを少々躊躇い中の話し声に盗み耳を立てる。
「んじゃ、作戦決行な」
「流石にこれ屋上から落とすのはやばくないか?」
「好奇心がやれと言ってるんだから止まれるわけないだろ?」
どうやら屋上に居るのはうちのクラスの不良グループ。又の名を3パガラス。
どうせロクなことしないんだろうなと思いながら聞いていたけど、物を落とすと聞いて、流石にこの場を離れことができる程そこまで俺は腐っていない。
ドアノブに手をかけ捻る。少し錆び付いたドアだからか、耳障りな音を立てながら開く音に気づいた三人組が俺の方に視線を向ける。
「何だお前?」
眉間にシワを寄せながら、ガン飛ばしてくるこの生徒はこのグループのリーダー格。佐山多次郎だ。ガタイの良いその大きな体に染められた髪、開けられたピアス。顔からも悪だと言うことが分かるのであるが、一つだけ欠点が。
声がミッキーみたいに高く、それが可笑しい為、クラスは間ではあだ名がガン飛ばしミッキーである。本人は知らないと思うが。
「普通に昼食を取ろうとな」
「なら、俺たちの任務が終わった後に食べるんだな」
任務と言い回す辺り、お気づきであるが若干厨二病が入っているこのヒョロっとした体に眼鏡が特徴的な人物。不良グループの中では国民的アニメドラ〇もんのスネ〇的な立ち位置のこいつは名を林崎漁港。目が小さいく離れている事と名前に魚と言う文字が入っている為、あだ名がヒラメである。先ほどのリーダー格と違い、此方は自分が何と言われているのか知っている為、普段から舐められないようにする為か、威張っているのだが些か威圧感のない男であった。
「じゃあもう落とそうぜ」
と言いながら何処から持ってきなのか不明な、ボウリングの球を持ち上げる太めの男。何故か、こいつだけ噂にならない為か名前や性格などは不明であるが、見た目を見るに怠慢な生活を送っているだろう事が窺える。
「やめとけよ」
言いながら奴らのいる柵の方へと歩みかける。
目の下には見慣れた少女が、校門を通り過ぎ下駄箱の方へ入ろうと施設玄関前の階段を登るとこであった。そこへ躊躇いも無くその手に持った球を下へと落とす男に、少しの間目を奪われて我に帰る。彼女を助ける手段がない中頭に思い浮かべるのは『せめてそこに行けたのなら』。
己の無力さに絶望した最中、俺は彼女の目の前に立っていた。
「え? おにい「何処か別の場所に飛べ!」」
理性、知能、そう言った違いのものなど使う時間もない最中。
薄らと自分の脳はテレポートと言う言葉を曖昧に認識し、反射的に出た言葉。
その言葉に、長い年月の中理解されない超常的的現象がこの場所で起こされる。長い事目を瞑っていたのをゆっくりと開けてみれば、俺たち兄妹は自宅のリビングに立っていたのだ。
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