偽典・女神転生~偽りの王編~   作:tomoko86355

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悪魔紹介

妖虫・ニーズ・ヘッグ・・・・魔界樹”クリフォト”に寄生する悪魔。
毒液を吐く、分身体を三体従えている。
知能は大変低く、常に空腹で、獲物を見つけると容赦なく襲い掛かる。



第17話 『妖虫・ニーズヘッグ 』

イングランド北部、コーンウォールにある三つの集落。

”カムラン”と呼ばれるその台地には、死屍累々と死体の山が折り重なり、地獄絵図を描いていた。

その中を一人彷徨う小柄な影。

濃い茶のローブを纏い、フードを目深に被っている。

その姿は、さながら死者を悼む修道士であったが、漂う雰囲気がそれを否定していた。

 

「アーサー・・・・。」

 

台地を覆いつくす程の死体の山から、目的の人物を探し出す。

地面に横たわる騎士は、見るも無残な姿へと変わり果てていた。

元は純白の鎧であったのだろう、血と泥で汚れ、亀裂が走り、左肩から大きく裂けている。

未だ息はあるのか、血塗れの口元から、微かに呼吸音が聞こえた。

 

「ま・・・・・マーリン? 」

 

騎士・・・・ブリテン王、アーサー・ペンドラゴンの閉じられた瞼が薄っすらと開き、傍らに膝まづく魔導士を見上げる。

目深に被ったフードから覗くその端正な容姿は、かつて父・ユーザー・ペンドラゴンを導いた魔術師、アンブローズ・マーリンその人であった。

 

「何故、君が・・・・・? ペレアスから死んだと聞かされた。」

「ヴィヴィアンに頼んだ・・・・僕の死を偽装して欲しいとね。 彼女は二つ返事で快く引き受けてくれたよ。」

 

マーリンの白く、繊細な指先が、血で汚れるアーサーの口元を拭う。

優しく触れるその指先に、アーサーは、何かを諦めたのか、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

「君がいけないんだよ? アーサー。僕を裏切るから、君は命より大事な民と王国を失った。 」

 

凍てつく金色の双眸が、激しく咳き込む哀れな騎士を見下ろす。

 

友と思っていた。

誰よりも信頼していた。

人間(ひと)よりも長い年月を生き、これ程、心を開いた事は無かった。

この男は、周りの卑しい人間(カス)共とは違う。

そう思い込んでいた。

今から考えると、あまりにも滑稽ではあったが。

 

「君の可愛いランスロットを離反させ、モルドレッドに王権を簒奪(さんだつ)する様嗾(けしか)けたのは僕だ。 それと、和議を邪魔したのもね。」

「成程・・・・そうだったのか・・・・。」

 

これで全てが理解出来た。

忠義に厚いランスロットが理由も無く、自分から離れるとは思っていなかった。

モルドレットとの休戦も、あの時、何処からともなく迷い込んで来た毒蛇も、全て、マーリンが仕組んだ事だった。

アーサーは、閉じていた瞼を開き、蒼い双眸で、自分を見下ろす魔術師へと視線を向ける。

 

「ねぇ? どんな気分だい? アーサー。 今迄、苦労して築いてきたモノが脆く、儚く散った気持ちは? 」

「・・・・・。」

「僕が憎い? 悔しい? 殺してやりたい? でも残念。醜く朽ちて逝くのは君だよ。」

 

もう、アーサーは長くない。

大量の血を失い、出血性のショックを引き起こしている。

もって後数分の命だろう。

 

「・・・・こんな事を言っても、君は信じてくれないだろう・・・。」

「・・・・・。」

「ま・・・・マーリン・・・・愛しているよ。」

 

予想外の男の言葉に、嘲りの笑みが凍り付く。

震える金色の双眸が、安らかな笑みを浮かべる騎士へと注がれた。

 

「すまなかった・・・・どんなに謝罪の言葉を重ねても、お前を利用した事には変わりがない・・・・ただ、これだけは伝えたかった・・・・。」

 

苦しい息の下、ブリテン王はそれだけを伝えると、再び瞼を閉じる。

そして、それ以上、口を開く事は無かった。

苦し気に呼吸を繰り返していた胸元が、全く動かなくなる。

愛するかつての友が、完全に息絶えたと知ったその時、マーリンの口から形容し難い悲鳴が迸(ほとばし)った。

 

 

 

『ちょっとぉ・・・何で、私が玲子と一緒に留守番しないといけないのぉ? 』

 

世田谷区へと向かう大型装甲車の中。

車のシートに腰掛けた狭間・偉出夫は、困った様子でスマホから聞こえる白川・由美の愚痴を聞いていた。

 

『男共だけで、楽しいパーティーに参加しちゃってさ。つまんないのぉー。』

「ごめんごめん。 玲子の面倒を見れるのは、姫だけなんだ。 この埋め合わせは必ずするから、勘弁してくれ。」

 

無表情で、大型装甲車を操縦する三島重工の社員を他所に、偉出夫はまるで、彼女に仕事の都合でデートをキャンセルする彼氏の様に、苦笑いを浮かべて言い訳をする。

 

 

現在、彼等は世田谷にある五島美術館に移動していた。

目的は勿論、稲荷丸古墳(いなりまるこふん)である。

パトロンの一人である、三島重工の重役、松坂幸三に依頼し、最新型の次期装輪装甲車を一台借りたのだ。

広い後部座席では、数名の技師に囲まれ、シートに座る黒井・慎二が幾つかのコードに繋がれ、その傍らには化学教師の大月・清彦と横内・健太が、思い思いに時間を潰している。

 

「視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のインターフェース全てクリアー・・・シンジ、試しに指を動かして見て。」

 

濃い茶色の髪をボブカットにした40代半ばぐらいのロシア人女性が、身体の至る所をコードに繋がれた金髪の少年に向かって言った。

 

「了解。」

 

女技師の指示に、慎二は素直に応える。

棺の如く、巨大な箱に入った”モノ”が、右掌を握ったり開いたりしている様子を設置されたモニターで確認した女技師は、満足そうに頷いた。

 

「問題なさそうね? 気分はどうかしら? 」

「いい加減慣れたとはいえ、不思議な気分だよなぁ。ルドルフ先生と俺の姿が箱の中から見える。」

 

今の慎二は、培養カプセルの中で横たわる新型BOW-Bio Organic Weapon(バイオニックオーガウェポン)と意識を共有しており、五感全てが丸ごとBOWの中に移し替えた状態にある。

幼い時に小児癌を患い、物心ついた時から車椅子生活を余儀なくされていた慎二は、脳と眼球、そして脊髄以外を、人工物に移植していた。

IQ300を超える天才的頭脳を持ち、特に数学とコンピュータに関しては、驚異的な才能を発揮した。

狭間・偉出夫をリーダーとする魔神皇を立ち上げてからは、黒子として仲間のサポートに徹し、脳を強化改造。

天才ハッカーの名を欲しいままにし、現在は、三島重工の技術開発・アドバイザーとして収まっている。

因みに、技術開発チーフを務めるテレジア・黒井・ルドルフは、慎二の実の母親だ。

 

「・・・・母さんとは言ってくれないのね・・・・。」

「は? 今更何言ってんの? 先生。」

 

何処か暗い顔をする実母に対し、慎二は嘲りの笑みを浮かべる。

 

テレジアに対し、母としての感情はまるでない。

慎二にとって、彼女は仕事上のパートナーであり、それ以外に何も感じないのだ。

 

「そいつが噂のNE‐αタイプか? シリアで同種のT型が何体か投入されたが、指示系統が効かず、散々な結果で終わったらしいが・・・大丈夫なんだろうな? 」

 

脚を組んでシートに座る大月が、分厚い眼鏡の下から、胡乱気に後部座席中央に設置された巨大な棺を眺める。

 

「ええ・・・T型は戦闘能力だけを取るなら、上級悪魔に匹敵する程のポテンシャルを持つけど、いかせん、知能が低すぎてね・・・・制御不安定になってしまうの。でも、Ne‐α型は違う。脳に制御チップを移植し、コンダクター(指揮者)とリンクする事で、その性能を遺憾なく発揮出来るわ。」

 

Ipadでバイタルチェックをするテレジアは、大月に向かって簡単な解説を行う。

 

人間の成人男性をベースに、上級悪魔(デーモン)の細胞を移植したBOW‐ タイラント001型 プロトタイプは、戦闘能力に特化した個体だった。

しかし、下位悪魔程度の知能しか無く、その為、簡単な命令しか受け付けない。

挙句、すぐ暴走状態になるので、戦地に派遣する時は、使い捨ての道具としてでしか、役目がなかった。

それでは、コストが異様に掛かるという問題が起こる為、脳に制御チップを植え込み、外部でコントロールするシステムが採用された。

それが、Ne(ネメシス)‐α型なのである。

 

「この起動実験が成功すれば、コンダクター(指揮者)に掛かる脳の負担をもっと軽くして、一人で5体程のNe‐α型をコントロールする事が出来る・・・・いえ、上手く行けば、もっと倍の数を統べる事が出来るわ。」

「凄いな・・・・・次世代は、ロボット兵器じゃなく、BOWの時代か。」

 

感嘆の吐息を漏らす大月に反し、右隣にいる横内は、無関心なのかスマホを弄っている。

スマホの液晶画面には、SNSで世田谷で起きている悪魔(デーモン)のパンデミックがリアルタイムで流れていた。

 

 

東京都世田谷区、大型商業施設、二子玉川ライズ。

壁やショウウィンドウを突き破り、醜い姿を晒す魔界樹の樹々の間を、紅茶色の髪をした16歳ぐらいの少女が走る。

異界化し、すっかりと様変わりしたモール内。

少女- 日下・摩津理は、懸命に記憶の糸を手繰り寄せ、叔母が経営するケーキショップを目指す。

店舗が立ち並ぶ広い通りに辿り着いた瞬間、誰かが摩津理の左腕を掴んだ。

振り向かなくても分かる。

女職人(ハンドヴェルガー)、ニコレット・ゴールドスタインの移動式作業場である大型バンから妹を探す為に飛び出した摩津理を追い掛けて来たネロだ。

 

「離して! ヒロコ叔母さんと日摩理を探さなきゃいけないの! 」

「落ち着け! お前一人じゃ無理だ! 」

 

恐慌状態の摩津理は、何時もの冷静さを完全に失っていた。

そんな少女に対し、ネロは何とか落ち着かせ様と、暴れるその身体を抑え付ける。

背後から、悪魔(デーモン)を全て始末した鋼牙と明が駆け付けて来た。

 

「ネロ、日下さんは大丈夫? 」

「ああ、何とかな。」

 

右手に大業物『備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)』を持つ、壬生・鋼牙が息を切らせながら、二人を交互に眺める。

そのすぐ傍らには、長い前髪をした”探偵部”の仲間、遠野・明が、最新型のアサルトライフルを手に立っていた。

 

「日下・・・・俺達は、八神の依頼で此処に来た。妹の日摩理は、命に代えても見つけ出すから、今は大人しくニコの車に戻ってくれ。」

「・・・・・・・。」

 

普段の明からは、考えられない優しい声。

摩津理は、言葉を失い、下に俯く。

と、何かを感じ取ったのか、急に顔を上げた。

振り返ったその顔が、ある一点を見つめ凍り付く。

 

「ひ、日摩理・・・・? 」

 

数店並ぶ飲食店のオープンテラス。

揺れる視線の先、彫像の如く固まる二つの亡骸。

 

「まさか・・・・そんな・・・・・。」

 

魔界樹により、全身の血を吸われ無惨に干からびた死体。

一つは成人した女性のモノだろうか?

一回り以上小さな死骸を護るかの様にして覆い被さっている。

その腕の中にいる小さな死骸。

枯れ枝の如く細い手首には、カラフルな色をしたミサンガが結ばれていた。

 

「嘘、嘘、嘘っ! こんなの嘘よ! 」

 

子供の死体を見て固まるネロから離れた摩津理が、叔母と妹だったモノへと近寄る。

腰が抜けたのか、力無くへたり込み、震える手で子供の手首に巻かれたミサンガに触れた。

ボロボロと崩れ落ちる少女の手。

両掌に乗ったミサンガを確認した瞬間、等々、摩津理の口から悲鳴とも鳴き声ともつかぬ叫び声が漏れた。

 

「日下さん! 」

 

地表を突き破り、幾本もの”クリフォトサップリング”と呼ばれる魔界樹の根が凶悪な姿を現す。

上手そうな少女を見つけ、その血を啜らんと鏃(やじり)の如く鋭い触手の先端で襲い掛かる。

 

モール内に轟き渡る数発の銃声。

鋼の牙に引き裂かれ、魔界樹の根が青紫の体液を辺りに飛び散らせる。

明が構えるアサルトライフルの銃口から、煙が出ていた。

魔界樹の根が、獲物である少女を貫くより早く、明がそれらを一本も漏らす事無く撃ち抜いたのだ。

 

「日下! 」

 

血の泡が地面から噴き出し、そこから次々と悪魔(デーモン)達が実体化していく。

それら悪魔の群れを機械仕掛けの大剣『クラウソラス』と『備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)』で薙ぎ払う、ネロと鋼牙の二人。

刹那、モール内にある露店を破壊し、巨大な触手が三本姿を現す。

 

「ちっ、ニーズヘッグか・・・・こんな奴まで現世に実体化するとはね。」

 

蹲る摩津理を、何とか抱き起そうとするネロを庇う様に、鋼牙が二人の前へと立つ。

ニーズヘッグとは、魔界樹”クリフォト”に寄生する妖虫の事だ。

知能はそれ程、高くないが、上級悪魔に匹敵するぐらいの戦闘能力を持ち、耐久力も高い。

 

「おでの餌場を荒らすのはオメェ達かぁ! 」

 

天井のガラス壁を破壊し、本体が鋼牙達の前へと降りて来る。

ゼリー状のブヨブヨとした身体に、鋭い棘が生えた両腕。

顔は目、鼻、口が無く、喋る度に、粘液を辺りに飛び散らせていた。

 

と、その醜悪な肉体に、弾丸の雨が突き刺さる。

クリフォトサップリングを全滅させた明が、アサルトライフルで狙い撃ちしたのだ。

着弾の衝撃で、ビルの壁面へと叩きつけられるニーズヘッグ。

弾丸を撃ち尽くした明が、アサルトライフルを肩に担ぎ、制服のポケットから、金色に輝く法具を取り出す。

 

「こいつは俺が始末する・・・・お前等は、日下を頼む。」

「分かった・・・・任せて。」

 

明の意図を読み取った鋼牙が応える。

鋼牙同様、ネロも何かを感じたのか、それ以上、何も言う事はしなかった。

泣きじゃくる摩津理を無理矢理立たせ、ニコのいるショッピングモール入口へと向かう。

 

怪物と対峙する明。

怨嗟の呻き声を上げながら、ニーズヘッグが三本の触手と共に起き上がる。

 

「こ・・・・この糞人間・・・・・ぐがぁっ! 」

 

ニーズヘッグの鳩尾辺りに深々と突き刺さる鬼の拳。

胃液を吐き散らすその顎に、再び鬼の鉄拳が突き上げる。

地響きを立て、再び地へと沈む寄生虫。

そんな無様な姿を、鬼へと転身した明が見下ろす。

 

「お前が喰った人間の数だけ、苦しんで死ね。」

 

紫色のバイザーの下から、明の冷たい双眸が炯々(けいけい)と光っていた。

 

 

 

東京都世田谷区上野毛にある五島美術館。

その前に数台の警察車両が停車していた。

 

「まさかついて行くつもりじゃないよね? 警部補。」

「はぁ? 俺ぁ、正義を守る警官様だぞ? 悪魔(デーモン)共をぶち倒すのは当たり前だろうが。」

 

ショットガンを両手に持ち、防護服で完全武装した百地・英雄警部補が、歯を剝きだして威嚇する。

 

「い、嫌・・・・別に悪いとかそうじゃなくって・・・・あのぉ・・・・。」

「アンタじゃ足手纏いだ。 仕事の邪魔だから引っ込んでてくれ。」

「ちょっと、旦那ぁ。」

 

すっかりやる気の百地警部補を、どう宥めすかして大人しくさせるか困り果てていた赤毛の忍- 猿飛・佐助の脇から、銀髪の魔狩人、ダンテが辛辣な言葉を浴びせた。

 

「警部補、私が彼等のサポートに入ります。」

 

それまで黙って、事の成り行きを見守っていた周防克哉警部が、両者の間に割って入る。

 

「はぁ? ざけるな! お前はアイツ等と一緒に生存者の身柄を保護しに行け。」

 

新人にしゃしゃり出られ、悪魔狩人としての矜持が大分傷つけられたらしい。

百地警部補は、防護服に身を包み、此方の様子を心配そうに見守っている部下達を指さす。

 

「お言葉ですが、私は特Aクラスの召喚術師で、階級は貴方より上です。現場の指揮権は私にあります。」

「ぐぬぬぬぬっ・・・・・!」

 

周防警部に痛い所を突き刺され、百地警部補は歯軋りして黙る。

 

「へぇ・・・・アンタ、悪魔召喚術師(デビルサマナー)だったのか。」

「・・・・・『特命係』に配属される前は、対悪魔特殊公安部隊にいました。その前は、防衛省で自衛官を・・・・・5年前のギザフで起こった悪魔によるパンデミックを覚えていますか? 」

「・・・・・? 覚えてるぜ、嫌な記憶だけどな。」

「私もそこにいました・・・・・貴方の事は良く覚えていますよ? ダンテ伍長殿。」

 

従軍時代の事を思い出し、秀麗な眉根を寄せる銀髪の大男に、周防警部は苦笑を浮かべる。

 

「魔導士(マーギア)としてギザフに派遣されたんです。その時、貴方に助けられました。」

 

5年前、”ソロモン12柱”の一人、堕天使・パイモンが起こした悪魔(デーモン)によるパンデミックに、周防警部は仲間数名と共に、現地に派遣されていた。

その時に、海兵隊の特殊部隊の一人だったダンテは、悪魔に襲われる克哉達を救ったのだ。

 

「悪いが、記憶にない。」

「ですよね・・・・助けた人間の顔なんて、一々覚えてはいないと思っていました。」

 

肩を竦めるダンテに対し、周防警部は、呆れた様子で苦笑を浮かべる。

 

周防の記憶の中にいるダンテは、身の丈以上もある大剣『リベリオン』を巧みに駆り、悪魔(デーモン)の群れを薙ぎ倒していく姿だけだった。

同じ部隊の衛生兵らしい人物に、怪我を負った同期の治療を任せ、自分は最前線へと颯爽(さっそう)に向かった。

 

機動隊の指揮を百地警部補に任せ、ダンテと佐助、そして『特命係』の刑事である周防警部が、美術館の敷地内へと入る。

館内は、すっかり異界化が進み、歴史ある美術品が収められている施設とは、到底思えない姿へと変貌していた。

魔界樹の根が、毛細血管の如く壁を敷き詰め、成人男性の胴体程の太さを持つ茎が、地面を突き破り、醜い姿を晒している。

その中を、三人は慎重に進んでいた。

 

「一つ気になるんだけど、何で周防警部殿は、『特命係』に移動したの? 言っちゃぁ悪いけど、あそこって不要な人材を切り捨てる『窓際部署』でしょ? 」

 

両手を頭の後ろに組んで歩く忍が、左隣にいる色眼鏡の若い警部に、当然とも取れる質問をぶつけた。

 

周防は、警察機構の中でも、エリート部隊と揶揄される特殊公安部隊出身だ。

いずれは、それなりの地位が約束される筈なのに、何故、警察の中でも『警視庁の陸の孤島』として白眼視される部署に態々、移動したのか不思議に思ったのである。

 

「勘違いされている様ですから説明しますが、”特命係”は、何処からの圧力を受ける事無く、自由に捜査出来る部署です。同じ警察官の中でも、貴方と同じ様に思っている連中が殆どですけどね。」

 

そもそも、『緊急対策特命係』が創設された理由は、通常では有り得ない事件・・・例えば、幽霊や悪魔(デーモン)等が起こす超常的な事件を解決する為である。

CSI(超常現象管轄局)が駘蕩(たいとう)する以前、今から30年以上も前に、警視庁に配属されたばかりの百地・英雄と矢来区で探偵業をする傍ら、『クズノハ』として悪魔討伐をしていた、13代目・葛葉キョウジの二人で警視庁公安部参事官だった早乙女・幸信(さおとめ・ゆきのぶ)を説き伏せて、魔導士や剣士からなる少数精鋭部隊を警視庁内で立ち上げた。

彼等の働きは目覚ましく、対悪魔特殊公安部隊の下地を作ったと言っても過言ではない。

早乙女参事官が退職した後も、『特命係』は存続し、現在に至るのである。

 

「へぇ・・・知らなかった。 あの百地警部補って凄い人なんだねぇ。」

「はい、あの人こそ本物の”警察官”ですよ。」

 

対悪魔特殊公安部隊は、警視庁の特殊部隊であるが、政府要人を悪魔の脅威から護る性質がある。

故に一般市民の要請に応じる事が決して無い為、それに腹を立てた百地警部補が、一度解体した『特命係』を上に無理を通して復活させ、たった一人で維持している。

早乙女参事官が退職し、後ろ盾を失っても尚、それでも市民の命を最優先に考え、身体を張っている百地警部補は、男の中の男と言えるだろう。

 

美術館本館を抜け、天裕庵門に差し掛かった時であった。

只ならぬ気配を感じ、一同に緊張が走る。

地面を突き破り、魔界樹の根が退路を完全に塞ぐ。

空間に魔法陣が幾つも形成され、中から甲冑を纏った騎士、プロトアンジェロを筆頭に従者のスクードアンジェロ数体が次々に地へと降り立った。

 

「随分と大歓迎してくれるじゃねぇかよ? おい。」

 

ダンテが、背負っている大剣『リベリオン』を引き抜き、構える。

 

「警部さん、覚悟出来てる? 」

「勿論です。」

 

得物である巨大卍手裏剣を構える佐助と、胸ポケットからスマホを取り出す周防警部。

液晶画面を操作し、悪魔召喚プログラムを起動する。

 

「力を貸してくれ太陽神・ヘリオス。」

 

周防警部の背後に黄金の魔法陣が描かれ、中から燃える様な深紅の鬣と黄金の鎧を纏う獅子が姿を現した。

オリュンポスの太陽神としてアポロンと双璧を成す神、ヘリオスだ。

 

「私は物理特化型です。 17代目の様な五大精霊魔法は使えませんが・・・・。」

 

巨大な盾を構え、周防警部へと肉迫するスクードアンジェロ。

袈裟懸けに斬り裂こうとする大剣を、左腕一本で難なく受け止める。

 

「肉弾戦なら誰にも負けません。」

 

人間如きに必殺の一撃をあっさりと止められ、慌てふためくスクードアンジェロの鳩尾に、拳を叩き込む。

粉々に粉砕される強固な鎧。

胴体を潰され、二つの肉塊と化したスクードアンジェロが、塵へと還る。

 

「ヒュー♪ やるねぇ、刑事さん。」

 

ヘリオスと一体化し、魔剣士の一体を撃破する周防警部の姿に、ダンテが思わず口笛を吹く。

 

「流石、特殊公安部隊出身だね。 俺様も負けてらんないよ。」

 

そう軽口を叩きながら、佐助がスクードアンジェロ達に踊り掛かった。

縦横無尽に走る巨大卍手裏剣。

魔剣士の両腕を斬り落とし、頭と胴体を切断する。

怒り狂った魔剣士の一体が、赤毛の忍へと斬り掛かるが、その刃が相手を捕らえる事は叶わなかった。

逆にカウンターの一撃が腹へと刺さり、後方へと吹き飛ばされる。

場内は、瞬く間に、血みどろの殺戮劇へと変わった。

 

 

「やっぱり即席で造った造魔じゃ足止めにもならんな? 」

 

そんな彼等の戦闘を眺める影が一つ。

漆黒のローブを纏い、フードを目深に被った人物は、崖の上からプロトアンジェロ率いる造魔軍団と死闘を演じるダンテ達を見下ろしていた。

 

あの造魔軍団は、昵懇(じっこん)にしているガイア教団の信徒から、土産代わりに渡された代物だ。

曰く、北の台地”フォルトゥナ公国”が、クリフォトの魔界樹を材料に造り出した人造の悪魔らしい。

人間と悪魔(デーモン)の生き血を糧とし、術師の命令を忠実に遂行するのだという。

 

(17代目の代理番と警視庁の刑事さんは一先ず置いとくとして、問題は摩虎羅だな。)

 

男の視線が、スクードアンジェロ数体を難なく撃破する猿飛・佐助へと向けられる。

舞い踊る様に戦うその姿に、一分の隙も無く、二対の巨大卍手裏剣を手足の如く操り、造魔兵を細切れの肉片へと変えていく。

体術だけを取るなら、十分、葛葉四家クラスの実力者だ。

おまけにあの忍は、神器『小鴉丸』を使用し、魔鎧化までする。

三人の中では、非常に厄介な相手だろう。

 

「悪いな? 佐助・・・・お前さんには、早々に退場して貰うぜ? 」

 

相手が本気を出す前に叩き潰す。

フードの男は、右手に日本刀を握り、崖から無造作に飛び降りた。

 

 

 

地響きを立て、地面へと無様に倒れる醜い肉塊。

クリフォトの魔界樹に寄生する妖虫・・・・ニーズヘッグだ。

その周りでは、頭を潰された分身達が、紫色の体液を噴き出し、地面に転がっていた。

 

「うぐぐぐぐっ・・・・・ぎゅぶっ! 」

 

呻き声を上げ、起き上がろうとするニーズヘッグの頭を何者かが踏みつける。

見ると紫を基調とした鎧を纏う、紅の鬼が、冷たく自分を見下ろしていた。

 

「お・・・・おめぇ・・・・人間じゃ・・・・。」

 

その後に続く言葉は、大型ハンドガン、MAXI8 アンリミテッドリボルバーHWの銃声が搔き消した。

柘榴(ざくろ)の如く、頭部を吹き飛ばされたニーズヘッグが、力無く地へと沈み、塵へと還る。

その姿を見届けた真紅の鬼は、MAXI8 アンリミテッドリボルバーHWを腰のホルスターへと納め、元の人間へと戻った。

 

 

二子玉川ライズオークモール駐車場。

移動式作業場である大型バンの後部座席で、女職人、ニコレット・ゴールドスタインに縋りついて啜り泣く日下・摩津理の姿があった。

その車外では、ネロと鋼牙の二人が、まんじりともしない表情で仲間である遠野・明の帰りを待つ。

 

摩津理に掛けてやる言葉が無かった。

最愛の妹と叔母は、クリフォトの魔界樹に襲われ、無残な姿へと変わったのだ。

落ちていく砂時計を戻す事が叶わない様に、死者を蘇らせる術は無い。

重苦しい沈黙が、一同の間へと流れる。

 

「明・・・・・・? 」

 

人の気配を感じた銀髪の少年、ネロが俯いていた顔を上げ、駐車場入り口へと顔を向ける。

薄暗い照明の灯りに浮かび上がる様にして、目元が隠れる程に長い前髪をした長身の少年が此方に向かって歩いて来た。

よく見ると、制服の袖口とズボンの裾に悪魔のモノと思われるドス黒い血痕が付着している。

摩津理の妹、日摩理とその叔母、そして店舗で働いていた従業員と客達を襲い、己の血肉へと変えた妖虫・ニーズヘッグとその配下である悪魔(デーモン)達のモノだろう。

たった一人で、広場にいた悪魔の群れを一匹残らず始末していたのだ。

 

「日下は? 」

「ニコ姐と一緒にいる・・・・この近くにシェルターがあるから、そこまで日下さんを連れて行こう。」

 

流石に、摩津理を五島美術館に連れて行く訳にはいかない。

モール付近にあるシェルターに彼女を預け、問題の美術館に向かうつもりだ。

明は、それだけ聞くと無言で二人の間を通り抜け、大型バンの中へと入る。

後部座席では、一頻(ひとしき)り泣いて落ち着いたのか、喪心(そうしん)状態の摩津理が俯いて座り、そんな彼女に熱いコーヒーを渡してやるニコの姿があった。

車両に乗り込んだ明が、俯くクラスメートの目の前に、何かを差し出す。

それは、変わり果てた姿となった歳の離れた摩津理の妹、日摩理が付けていたミサンガであった。

 

「・・・・・奴等に報いを受けさせてやる。 だから、お前はニコと一緒にシェルターで待っていてくれ。」

 

震える手でミサンガを受け取る摩津理にそれだけ伝えると、明は床に置かれているガンケースを作業台の上に置き、蓋を開いてマガジンを取り出し、背負っているアサルトライフルに装填。

制服の上着を脱ぎ捨て、ハンガーに掛けてあるタクティカルベストを装着すると、同じくケースから取り出した大型ハンドガンのマガジンを無造作に突っ込んでいく。

 

「明・・・・。」

「俺は先に行く・・・・アンタは、日下を連れてシェルターに向かってくれ。」

 

準備が粗方整った明は、背後にいるニコにそれだけ伝えると、作業台の脇に立てかけてあるアサルトライフルを担ぎ、移動式作業場である大型バンから降りた。

 

「まさか一人で行くつもりじゃ・・・・。」

「そのつもりだ。 日下とニコを頼む。」

 

バンから降りた明は、半ば強引に鋼牙の言葉を遮り、駐車場で横倒しになっている大型ネイキッドバイク、ホンダCB1300SFを起き上がらせた。

268kgという超重量級ではあるが、明は難なく車両を起こし、キーが付いている事を確認する。

車体に跨ぐと、黒い毛並みのハムスターを肩に乗せた銀髪の少年が無断で後部座席に乗り込んで来た。

 

「おい。」

「敵討ちしに行くんだろ? だったら一人より二人の方が効率的だぜ? 」

 

機械仕掛けの大剣『クラウソラス』を背に担いだ銀髪の少年は、シニカルな笑みを口元に浮かべる。

 

感情をあまり表に出さない明が、これ程、怒りを露わにする姿を見るのは初めてだった。

最初は、何を考えているのか分からない奴だと思っていた。

しかし、それは激し易い己の感情を抑え込んでいるだけで、実際は、誰よりも情に厚い男なのだろう。

普段、あまり面識が無い日下・摩津理の家族を不条理に奪った悪魔(デーモン)に対して、此方が怖気立つ程の憤怒を露わにした。

 

「そんじゃ、後は頼むぜ?”所長代理”。」

 

背後に控える黒縁眼鏡の少年に、気安く片手を上げ、明と共にパンデミックの発生源である五島美術館へと向かうネロ。

瞬く間に視界から消えていく、大型バイクの姿を、鋼牙は呆れた様子で腰に手を当てて眺めていた。

 

 

 

それは、あまりにも唐突過ぎる出来事であった。

異界化した五島美術館、敷地内。

歪に変形した天祐庵門前にて、見事な銀色の髪をした大男の身体が吹き飛ぶ。

地面から突き出た幾本もの魔界樹の根を薙ぎ倒し、血の池へと堕ちる。

 

「ダンテさん! 」

 

造魔兵・スクードアンジェロを粉砕した周防・克哉警部は、脇のガンホルスターから、ブローニング自動式拳銃を魔法の様な速さで抜き放つと、漆黒のローブを纏った正体不明の敵に向かって狙いを定めた。

 

パンデミックの発生源である稲荷丸古墳(いなまるこふん)に向かったダンテと猿飛・佐助、周防・克哉の三名だったが、その途中で、造魔兵軍団と交戦。

後少しで一掃出来ると思った矢先に、突如、何者かが乱入し、腕から衝撃波を発生させ、銀髪の魔狩人を吹き飛ばした。

 

相手が人間か悪魔かなど関係ない。

一つの躊躇いが即、死に繋がる。

特殊部隊に長年、籍を置いていた周防は、その経験から即座に発砲。

対悪魔用の弾丸が、敵の肉体を斬り裂くかに思われたが、弾丸が着弾する寸前でその姿が消失した。

気づくと、周防の斜め左へと移動し、右手に持った日本刀を鞘に収まった状態で、地面へと突き立てる。

忽(たちま)ち亀裂が走る台地。

台地が砕け、プロトアンジェロごと、地面の中へと呑み込まれる。

 

「うわぁあああああっ!! 」

 

鞘の一突きだけで、地表に大穴を開けたのだ。

底の見えない巨大な穴へと堕ちる周防。

フードを目深に被った乱入者が、卍手裏剣を構える赤毛の忍へと顔を向ける。

 

「噓でしょ? 特Aクラスを瞬殺ってアンタ・・・・。」

 

先程、ダンテを吹き飛ばした技は、身体を高速で震わせ、振動波を発生させる剣聖級の剣技だ。

又、同じ技を使用して、岩盤を砕き、大穴を開けてみせた。

あんな真似が出来るのは、佐助の記憶の中でも二人しか知らない。

 

漆黒のローブを纏う男が、右手に持った刀の鯉口を斬る。

突如、轟く銃声。

視認不可能な抜刀術で、己に迫る鋼の凶器を真っ二つに斬り裂く。

 

「だ・・・・旦那? 」

「勝手に殺すな・・・・糞猿。」

 

口の中に溜まった血を吐き出し、全身血塗れのダンテが血の池から立ち上がっていた。

二丁の大型ハンドガン”エボニー&アイボリー”を、両手をクロスさせる形で構えている。

 

咄嗟の出来事とはいえ、何とか致命傷だけは避けた。

アバラ骨の二、三本は持っていかれたが、戦えない訳じゃない。

 

「・・・・・。」

 

そんな悪魔狩人を無言で眺める、黒いローブの男。

ダンテと佐助が、それぞれ得物を構え、互いの間合いを詰める。

刹那、銀髪の大男の背後から水面を突き破って、何かが現れた。

巨大な顎を開き、目の前にいるダンテを咥えて、強引に深水(ふかみ)へと引きずり込む。

 

「旦那っ! 」

 

ダンテを血の池へと再び沈めたのは、ヤクママと呼ばれる妖獣であった。

全長50メートルを軽く超える巨大な蛇で、普段はアマゾン河と海を繋ぐ河口部でしか生息していない。

一体、何故、日本の・・・しかも異界化したこんな場所にいるのかは知らないが、動物の本能に従って、ダンテを獲物と判断し、襲い掛かったのだ。

 

成す術も無く、池の中へと引きずり込まれるダンテを助けに行こうと、佐助が向かうが、それをフードの男が邪魔をした。

行く手を阻む様に、立ち塞がり、鋭い眼光で赤毛の忍を睨み据える。

 

「何でこんな真似をするのさ? 13代目。 事と次第によっちゃぁ、只じゃ済まないよ? 」

「悪い・・・・俺の為に死んでくれ。」

 

腰に下げている封魔管を取り出し、筒を開ける佐助に、フードの男― 13代目・葛葉キョウジが冷たく言い放つ。

封魔管に封じられている神器『小烏丸』を開放する佐助。

忍の身体を光が包み、紺色を基調とした鎧を纏う騎士へと姿を変える。

 

ギィン!

 

金属同士がぶつかり合う橙色の火花が散る。

キョウジが繰り出す抜刀術を、佐助は得物である卍手裏剣で受け止めた。

 

「理由ぐらい教えろよ! 何で、こんな事をした! 」

 

いくら人並外れた戦闘技術と反射神経を持つとはいえ、相手は葛葉四家当主が一人だ。

一撃を受け止めるのが精一杯で、何時もの余裕は完全に失われている。

 

「・・・・・お前が、惚れた相手を裏切ったのと同じだ。」

「!? 」

 

予想外の言葉に、佐助が一瞬怯む。

その隙を逃さず、キョウジは日本刀で卍手裏剣の刃を跳ね上げると、人体の急所の一つである鳩尾に、重い一撃を打ち込んだ。

 

「ぐはっ!! 」

 

闘気術を十二分に乗せた一撃は、例え強固な鎧に身を固めても防ぎきれるモノではなかった。

まるで内臓をミキサーで掻き回された様な衝撃が、佐助の体内を突き抜け、口から血反吐を吐く。

くの字の形で身体が吹き飛び、数メートル転げ回って停止した。

再び、光が佐助の身体を包み、纏っていた鎧が強制解除される。

 

「がはっ・・・・ごふっ・・・・。」

 

胃液と血が混じった吐瀉物で地面を汚し、最早立ち上がる力すらない佐助。

あまりの激痛で霞む視界の中で、此方へと近づく漆黒のローブを纏う男の姿が映った。

 

「な・・・・何で・・・・? 」

「家族を救う為だ・・・・お前さんが、世界を護る為に、惚れた17代目を裏切ったのとは真逆だけどな? 」

「・・・・・・。」

 

言い返す言葉が見つからない。

全身を苛(さいな)む激痛も理由の一つであったが、13代目に自分が今迄隠し通していた本心をあっさりと暴かれ、容赦なく抉られた事が大きい。

 

銀色に光る刀の鋭い切っ先が、此方へと向けられる。

全てを諦め、佐助がゆっくりと瞼を閉じた。

と、その時、先程、ダンテを呑み込んだ血の池から大爆発が起きる。

驚く両者。

向けられた視線の先には、鋭利な姿をした真紅の魔人が、水面を突き破って現れた。

 




長くなりそうです。

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