ハイスクールD×D 碧の断罪者   作:まるきゅー

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会話とコメディを意識しました。
楽しんで頂ければ幸いです。

では、どうぞ。


和やかに

◇◇◇◇◇

 

「嘘を吐かない人は、人でないか、周りが人では無いのだろう」

 

ーーー名前も無い誰か。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「強いって、どういうことですか?」

「それを考えなくなることだ」

 

ーーー西尾維新。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「人の死には、必ず《悪》が存在する」

 

ーーーとある殺人鬼の長兄。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「傑作だぜ」

 

「戯言だろ」

 

 

ーーー《人間失格》、《欠陥製品》。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「笑えねぇ」

 

「カハハ!」

 

 

ーーー《水色の殺人鬼》、《断罪の碧》。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「邪魔者は?」

 

「生かさず殺さず」

 

ーーー名前も無い誰か。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

流れを止めよう。流れを変えよう。

 

前から後ろへ、右から左に、上から下へ、飽きたら逆に。

 

視界に入った誰かを殺そう。視野に映った誰かを崩そう。

 

間合いに入った誰かを引き裂き、エリアに入った誰かを廻そう。

 

名前も知らない誰かと遊ぼう。名前も知らない誰かを捨てよう。

 

流れは進む、加速する。流れは止まる、道変わる。

 

水の糸から貴方の意図へ、私の意図を伝えましょう。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

後日というか何というか。

 

六色伊式が烏丸鈍色と『喧嘩』し、そして玖賀出流が烏丸鈍色を惨殺した日から、二日が経っていた。

 

両者は共に駒王学園に通う三年生であり、片方は学園きっての問題児であるとはいえ、 二人とも仲は良い。

 

無論、お互いの正体(・・)も、さらけ出した上の、友人として。

 

「ーーーよお出流!おはよう!」

 

「ああ……お前か。おはよう」

 

故に今日も変わらず、伊式が登校中の出流に声をかけ、彼もそれに応じた。

 

「おい伊式。学生としての俺の名は糸牧詩絃(いとまきしいと)だ。何度も言わすな」

 

「ん?ああそうだったな。悪い悪い」

 

まったく悪びれずに、カハハと笑う伊式。

 

それに対し、笑えねぇ、と呆れる出流。

 

のんびりという程遅くもなく、早急というには早過ぎない、いたって普通の歩行速度で並んで進む彼らは、駒王学園までの道のりを毎日変わらずに歩んでいる。

 

「そういやさ、サボリ魔のお前は知らないかもしれないが、兵藤一誠って二年生が悪魔になったようだぞ」

 

「あれ、アイツ死んだんじゃなかったのか?」

 

「転生したようだ。紅いヤツのか、蒼のヤツのかは知らんがな」

 

「へえ……わざわざ死にかけの一般人をねえ。どっちが生き返らせたのかはどうでもいいが、大層な馬鹿者ってのは確かだな」

 

周りに人が居ないとはいえ、遠慮無く《裏側》の会話をする二人。

 

もしも彼らの掛け合いを、そういった事情を知らない常人が聞いた場合、「ああなんて可哀想な人達なんだろう………」と憐憫の眼差しでもって見るのだろうが、そんな事はないのだ。

 

 

と、その後も、「カレーにサイダーをぶち込んでみたら意外と美味かった」「いやそれは無い」、「生徒会に二年生の元ヤンが入ったらしい」「ハーレムじゃねえか羨まけしからん」、「二年生といえばイケメン剣士だが、今度剣道で叩きのめしてやろうか」「防具無しのルール無しでやれ」「笑えねぇ」「カハハ!」、などと言った他愛もない(?)雑談に興じながら登校していると、校門付近にまで近づいてきていた。

 

流石にこの辺りまでくると、チラホラと駒王学園の生徒や職場へ急ぐ通行人も増えてくるので、二人は会話を打ち切った。

 

「じゃ、俺は今日も今日とて屋上でサボるか!」

 

「お前学校ってモンを舐めてるだろ」

 

「いいじゃねえか、どうせ高等学校で修了する過程ってヤツァ、将来使わねえ知識ばっかなんだしよ」

 

「頭の回転や、論理的思考とやらが磨かれると思えばいい」

 

「家でも出来るぜそんな事」

 

「しかし国語の教科は中々馬鹿に出来ないだろう」

 

「どっこい俺は古典と現国、どちらも学年一位だ」

 

「他の教科は?」

 

「赤点ギリ回避」

 

「やっぱお前真面目に授業受けろ」

 

むしろ常日頃から授業をエスケープして、赤点をギリギリとはいえ回避しているのも凄まじい。

 

伊式は小言を言い始めた出流から逃れるように、「また明日なー!」と言って走っていった。明日といった辺り、今日は一日中寝て過ごす気のようだ。

 

どうしようもない友人の悪業に、しかし出流は諦めしか感じず、いつも通りに歩いていった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

駒王学園の生徒会室。その窓から、登校中の生徒たちを上から、文字通り見下ろしながら話し合う二人の女子がいた。

 

一人は、燃えるように過激で、これ以上ない程に鮮やかな真紅の長髪を持ち、豊満でグラマーなプロポーションの美女。見るものをあっと言わす堂々とした風格の《悪魔》リアス・グレモリー。

 

もう一人は、淑やかに濡れる艶やかな黒髪を、ショートに纏めた美少女。アメジスト色の美しい双眸に、ややスレンダーながらも理想的な体型。切れ長で意思の強そうな、鋭く尖った刃の如き両眼で射抜かれた者は、たちまち頭を下げるだろう程に怜悧。こちらも、長としてのオーラを纏う《悪魔》ソーナ・シトリー。

 

和やかに歩む生徒たちを眺めながら、二人は険しい表情で言葉を交わす。

 

「どうやら、この街に堕天使が侵入しているようね」

 

「でしょうね。生徒会の方でも、それらしき情報が入っています」

 

「恐らくは私の領地内にいる強力な神器使いの取り込み、あるいは抹殺………といった所でしょうね。事実ーーー堕天使に殺されたあの子も、《兵士(ポーン)》とはいえ、八つも消費したのだから」

 

「ええ、その線で確定でしょう。………匙が巻き込まれていたらと思うと、ぞっとしませんね」

 

すうっと、目を細めながら、まだ見ぬ侵入者に敵意を剥き出しにする二人。

 

と、そこで。

 

「ーーーあら?」

 

ソーナの視界に、ある男子生徒が映った。

 

留学生やハーフ、クウォーターなど、外国の血が入っている生徒が多いこの学園だからこそ許される、脱色した長めの髪。それを後ろに掻き上げ、ヘアピンで無理矢理結い止めた髪型に、明るい緑色の眼。

 

両耳にはピアスを、右に三つ、左に二つ。手には指輪を幾つも嵌め、ベルトには鎖をじゃらじゃらとぶら下げた、見た目からしてガラの悪い本校屈指の問題児。

 

毎日休まず登校するくせして、授業は殆どサボっている不良生徒ーーーーーー六色伊式。

 

「………………」

 

「………?どうしたの、ソーナ………ああ、()ね。まったく、彼氏だからって、御執心なのは分かるけど、今はそんな時じゃ」

 

「ごめんちょっと待ってリアス。今とんでもなくスルーし難い発言をしなかった?」

 

「あら、違ったの?」

 

「違うわよ!」

 

「皆最初はそういうのよ」

 

「皆って誰よ!」

 

「それに椿姫も『ソーナが最近あの問題児にかかりっきりで仕事が捗らない』と嘆いていたわ」

 

「椿姫………!!」

 

「それに実際、今貴方真っ先に彼を見つけたしね」

 

「そ、それは………彼が、あまりにも目立つ風貌をしているからに決まって」

 

「別にあの髪色はこの学園じゃあ目立たないでしょう。あの攻撃的なアクセサリだって、見ようとしなければ見えないし、そもそも気にしていない相手なら視界に入った程度、分かりはしないわよ」

 

「う、く、ぐ……………」

 

「付け加えて言うなら」

 

「まだあるの!?」

 

普段は冷静沈着に、氷のような仕草と態度でもって業務を着々淡々とこなすソーナだが、その実『押し』にはとことん弱い。

 

しかして今日も、幼馴染みのリアスに、そこからいじられるのだった。

 

「と、とにかく!私の方でも連中の隠れ家や他の被害状況と、警戒パトロールを行います!」

 

「誤魔化したわね」

 

「と・に・か・くっ!!何かあったら貴女にも連絡しますから、そちらからもお願いしますね!?」

 

このままでは小一時間は遊ばれる。そう判断した彼女は、リアスから逃げるように部屋を後にする。

 

逃亡ではない。戦略的撤退だ。ただ反撃の手法が無いだけで。

 

顔を真っ赤にして生徒会室を出ていくソーナ(生徒会長なのに会室から逃げるとは、これいかに)に、穏やかな眼差しと笑みを浮かべたまま、「教室でね♪」と手を振るリアス。

 

「頑張ってね、ソーナ」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

さて。

 

何故かソーナと伊式がそういう関係になってる、あるいはなりそうな雰囲気ではあるが、実際のところフラグも何も建設されていないので、別にそんないちゃいちゃ恋愛(ラブコメ)ってるような間柄には至っていない。

 

そもそも、学園一の秀才である生徒会長と、学園一の問題児である不良がそんな関係になったら、悲恋物語でも始まってしまう。

 

閑話休題。

 

この学園には悪魔、あるいはそれに準ずるもの、あるいはそれに関わるもの、または化物の世界ではなく暴力の世界に生きるもの。

 

所謂、普通ではない連中が、割と多数在籍している。

 

それはこの街の裏の主、リアス・グレモリーが率いるオカルト研究部であったり、表の支配者たる生徒会を担うソーナ・シトリーとその眷属。さらには陰陽師、惨殺を生き様とする殺人鬼集団のリーダー、人類史上最上の力を誇る人間でもある。

 

《気の短い核兵器》、《砂漠の嵐(デザート・ストーム)》、《断罪の碧》、《人類最上》、その他数多くの異名を持つ、人間という分類(カテゴリ)のトップに常に居座る六色伊式も、そのうちの一人だ。

 

そんな彼は今、例の如く屋上で惰眠を貪っていた。

 

屋上に備えてある貯水槽の真上。そこで足を組み、手を枕代わりにして寝転がっていた。

 

(あーいい昼寝日和だ………ポカポカとした朝日が心地いい……………)

 

施錠されていた扉を、いつも通りにピッキングして(伊式は大抵の事は出来る)侵入した彼は、のんびりまったり船を漕いでいた。

 

「いやー授業をサボっての安眠は、何故こうも気持ちが良いのか」

 

「授業をサボっての安眠を妨害して大変申し訳ありませんが、いい加減にしてください。ここは立ち入り禁止区域です」

 

と、伊式の隣に。

 

ソーナ・シトリー改め、支取蒼那が立っていた。

 

その鋭利で怜悧な刃の如き眼光で、真下の伊式を射抜かんばかりに睨んでいる。

 

「立ち入り禁止区域とか、別にいいじゃん。え、何?自殺とか危惧してんの?あんな構ってちゃんや『死』を逃げ道、あるいは自ら『死』を迎えるなんて、《最悪》の思想だぜ」

 

「貴方がそう思うのは構いませんが、規則は規則です」

 

「そういうモンかね………」

 

「そういうものです」

 

「ところで生徒会長」

 

「何でしょう伊式君」

 

「パンツ見えてるよ?」

 

「ッッ!?!?」

 

超音速でスカートの端を抑えるソーナ。しかし時既に遅し。

 

ニヤニヤと笑う伊式は、ばっちりしっかり純白のシルク製(見ただけ分かるらしい)の秘蔵の御宝を目に焼き付け、網膜に刻み込み、脳内に保存した。

 

変態である。

 

「変態ですか貴方は!!」

 

「最近自分でもそうなんじゃないかと思い始めてる」

 

「自覚症状を持ってください!」

 

「ここ数週間、生徒会長のスカートの中をどう覗こうかをずっと考えてるんだ」

 

「そんなカミングアウトは知りたくありませんでした!」

 

「やれやれ、これが噂に聞くツンデレってヤツか」

 

「そんな不名誉な名称は断固拒否します!ていうか今の何処にツンデレ要素が!?」

 

「いやいや、ここ最近新たなジャンルが開拓されてるからな、割と名誉な称号だぜ?」

 

「私にとっては侮辱以外の何物でもありません!」

 

「あーだこーだと喧しいなぁ生徒会長。そんな厳しく注文しないでくれよ」

 

「まるで私が『自分の属性を認められない我儘な奴』みたいに言わないでください!」

 

こいつら実は仲良いんじゃないだろうか。

 

かたや余裕綽々に嫌な笑みを浮かべ、かたや肩で息を切らしながら未だスカートを抑えている。

 

まるで漫才のような会話を繰り広げる二人の掛け合いは、まだ続くようだった。

 

ゼーハーと疲れ果てたようなソーナの姿を見て、流石にからかい過ぎたかと反省する伊式。事実彼女はここにくる前にリアスから好き放題弄られたばかりなのだ。

 

良心でも働いたのか、伊式が気遣った。

 

「…………ところで生徒会長」

 

「何ですか?」

 

「『困』り事に『備』える『心』と書いて?」

 

「………書いて?」

 

困憊(こんぱい)

 

「ぶち殺しますよ!?」

 

「君の瞳に困憊☆」

 

「☆をつけないでください!!」

 

違った。さらに弄りに磨きがかかっただけだった。

 

しかも☆をつけられると、ソーナを猫可愛がりするシスコンの姉、《四大魔王》セラフォルー・レヴィアタンが想起される為、ソーナにとっては二重に疲れる。

 

まさか狙ったわけではないだろうが、伊式は中々どうしてSっ気が強いようだ。

 

「カハハ!楽しいなぁ」

 

「私は全く、これっっっっぽっちも楽しくありませんが」

 

「そこまでか…………」

 

「貴方の楽しさ度をエベレスト山頂とするなら、私はマリアナ海溝ぐらいです」

 

「そこまでか!!」

 

ちなみにエベレスト山頂は世界最高峰の山脈で、マリアナ海溝は世界最深とも言われる深海である。

 

つまりは文字通りに『天地の差』ということだ。

 

そんな他愛もない話をしていると、HRの予鈴を告げるチャイムが鳴り響いた。

 

………キーン、コーン、カーン、コーンーーー…………。

 

「バーイ、バーイ、キーン」

 

「国民的アニメのネタを使いますか」

 

「いや字面がそこはかとなく似てたから」

 

「それよりも」

 

流石にこれ以上は付き合ってられないと見たのか、再度伊式を睨みつけるソーナ。

 

しかし、並の者なら震え上がる程の鋭いその瞳でも、伊式はどこ吹く風と言わんばかりに目を閉じて眠りの世界へ逃げようとする。

 

溜息を零したソーナは、意を決したように声を掛ける。

 

「起きてください」

 

「それは出来ない相談だ」

 

「いいですか?五秒待ちます。ごー、よーん」

 

カウントダウンを始めたソーナだったが、そんな事では伊式は起き上がらない。

 

むしろ光の透き通る宝石のように綺麗な彼女の声を、子守唄代わりにでもしているかのようだ。

 

「さーん、にー、いーち、起きたら私の下着を一枚あげます、ぜろッッ!!」

 

「はい起きたー!!今起きたー!!いや今じゃなくてさっき起きたー!!一と零の狭間にはちゃんと起きてましたー!!」

 

(この男、ちょろい)

 

ソーナの中で伊式の扱い方が定まった瞬間であった。

 

勿論、下着をあげるなんて嘘だし、そもそも彼は零と言った後に起き上がった。いやそれでも、あと0.2秒速かったら間に合っていたのだが。

 

とにかく。

 

六色伊式、しょうもない敗北である。

 

立ち上がって直立する彼の手を掴み、スタスタと歩を進めるソーナ。

 

起き上がった以上、これ以上の抵抗は無粋と諦めた伊式も、別段逆らう事なく従った。

 

それに、どうやら彼女は生徒指導室や職員室へ伊式をぶちこもうという考えではなく、単に授業を受けさせる為だけに、このような強引な手段にようだ。

 

それでも年頃の娘が、その気は全く無いとはいえ『下着をあげる』などと発言するのはどうかと思うが。

 

(まあ………たまにゃ真面目に授業を受けてみるか)

 

それにーーー伊式自身も、満更ではないようだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

とある廃れた教会の中。

 

そこに一人の人間と、四人の堕天使がいた。

 

「ーーーどうやら、私たちの存在が勘付かれたようね」

 

リーダー格の女が告げた。

 

「ふむ、ではこれかは、派手には動かず慎重に、という事ですかな?」

 

堕天使唯一の男が、顎に手を添えながら述べた。

 

他二人の女堕天使も、同意というようにうなづいている。

 

「そうね、あまり私たち(・・・)が目立つと、後々にまで響く影響があるわ」

 

そう言って、リーダー格の女は目の前の男に視線をやった。

 

法衣のようなゆったりとした服装に、流れるような長い髪。

 

蘭々と輝く両眼は、獣のように瞳孔が縦に割れている。

 

堕天使が金で雇った、用心棒兼使い勝手の良い尖兵役を務めさせている、暴力の世界の住人。

 

まだ無名に等しい知名度だが、その内実は並のプレイヤーよりも遥かに高いレベルの人間だ。

 

彼を僅かに知る者たちは、彼をこう呼ぶ。ーーー《塵芥送り(アナイアレイター)》と。

 

 

 

 

「だからーーーまずは貴方に暴れてもらうわ、《塵芥送り》」

 

 

 

 

 




いかがでしたか?少しでも笑って頂けたのならば嬉しいです。

感想、御意見、いつでも歓迎です。
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