恋の駆け引き after OPENING   作:しおり@活字は飲み物

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りゅうおう14巻発売まで後三ヶ月…!?
長いようでいて。あっという間に来てしまいそうですね。


《8》前夜祭 of 帝位戦第二局

 神戸で行われた帝位戦第二局の前夜祭には銀子ちゃんも参加してくれた。 

 明日から二日間全く連絡が取れなくなるから、今夜一度でもいいから隙を見て、キスの一つや二つだけでもしておきたいと思っていた。

 指し直し局が開催できるように、御守り代わりに。

 開会の挨拶が終わると、於鬼頭さんはさっさと自室に引っ込んでしまったけど、そんな理由で俺は銀子ちゃんと二人きりになれるタイミングを図ろうとグズグズしていた。

 

 そこに、例のあの人がやってきてしまったのだ。

 シューマイ先生である。

 かの人は今年のお正月の指し始め式で大暴れした結果、将棋界から出禁を言い渡されていた。ただ、ついに四段に昇段できたお祝いを、どうしても直接銀子ちゃんに伝えたかったらしい。 

 棋院と将棋連盟の協議の結果、両職員に監視され、酒をかなり抜いた状態で、今日の神戸での前夜祭に参加することを許可されたらしい。

 

 シューマイ先生は会場に入るなり、銀子ちゃんを見つけて駆け寄り、思い切り抱きしめながら、四段昇段の祝いの言葉を述べた……はずだった。

 

「銀子! おめでとう! よくやった!!」

「先生…ありがとうございます…」

 

 尊敬する先達からの祝福に感動して、思わず抱きしめ返す銀子ちゃん。 

 そんな美女二人の感動的なシーンを会場中が暖かく見守る中、シューマイ先生は全く予想外の手を打ち込んできた。

 

「それで、相手は誰だ?」

「え?」

「顔を見れば分かる。処女喪失したんだろう? よくヤった! 相手は誰だ? やはり八一か!?」

「しょ!?」

 

 ボンッ! とさっきまで真っ白だった肌をリンゴを通り越してトマトばりの真っ赤に紅潮させた銀子ちゃんは、お正月の時みたいに即座に否定すればいいものを、パニックになってしまったらしい。

 アワアワしながら助けを求めて、無意識に振り向いて、目を合わせてしまったのだ。

 

 壇上にいる俺と。

 

 そして、俺は俺でそんな真っ赤に紅潮した銀子ちゃんを見た瞬間、無意識に思い出してしまったのだ。同じように彼女のあの柔肌が紅く染まった、あの夜の情事(アレコレ)を。

 カァァァっと自分の顔が火照って真っ赤になるのが分かり、慌てて右手で口元を覆ったけど、多分全く隠せていなかったんだろう。

 会場全体、それどころか今後この話を聞くであろう将棋界全体が、

「あっ…………(察し)」

という雰囲気に包まれたのは言うまでもない…

 

「やはり八一なんだな! うらやましいっ!! 十代の〜〜〜(以下略)」

 

 などとまた卑猥な単語を並べ立て始めたシューマイ先生は、棋院および連盟職員と会場の警備員に取り押さえられ、再度、長期の出禁を食らったらしい。

 

 頓死した方がマシと思うほど恥ずかしい状況の中で、結局この日は夜が明けるまで、俺は壇上から降りることを許されなかった。

 なぜなら『浪速の白雪姫』ファンおよび隠れ『白雪姫』ファン(つまり、会場にいたほとんどの男)に次から次へとからかわれ、嫌味を言われ、絡まれ続けたから。

 

 タイトル挑戦者なのに…

 タイトル戦の前夜なのに…

 全く寝かせてもらえなかった…

 

 ちなみに、銀子ちゃんはあのままフラフラになって、なぜかいつもより冷たい態度の桂香さんに付き添われ、早々に退席してしまったから、結局二人きりになれずに第二局を迎えることになった。

 

 

 眠いし、恥ずかしいし、銀子ちゃんとイチャイチャ出来なかったし…とコンディションもメンタルも最悪な状況の俺は、タイトル戦にも関わらず、ヤケを起こして八つ当たり気味に序盤から急戦を仕掛け、於鬼頭さんもソフトも盤面の優劣が判断つかない混沌状態にまで陥し入れ、それでも指し直し局のことが頭を過ぎるから負けられないし! とがむしゃらに指していったら…

 

 大天使の予言が当たったのか、二日制の対局なのに、封じ手の前に投了を受け、一日目で勝利してしまった…

 

 歴史的短期決戦になり、ネットは盛り上がったらしいんだが、タイトル戦という『イベント』としては大問題が発生した。二日目に見せるべきものが、何もないのだ。お客さんは来るのに。

 

 その結果、俺は二日目で行われる予定だった大盤解説に責任を取って出演することになった。それなのに、自分の帰宅後に起きた前夜祭での師匠の醜態を知った、聞き手役の天衣には同じ壇上にいるのに完全に無視され、針の(むしろ)

 見るに見かねたスタッフに依頼されて、たまたま来ていた鹿路庭さんが聞き手役を交代してくれたんだけど、混迷を極めた上に一日目で終わってしまった、昨日の対局の解説を長引かせるのには将棋界随一の聞き手であっても限界があったらしく、後半ではネタが尽きてしまった。

 それでどうしたかと言うと、昨日の事件を詳しく知らされていなかった鹿路庭さんは、いつもの調子で前回の帝位戦の裏話として、終局後に俺が三段リーグ最終局を戦っている銀子ちゃんに会う為に、東京の将棋会館に駆けつけた話を披露してしまった。クズ竜の女性問題をイジるのは定跡だからね。テッパンの定跡。

 

 ただ、今回は、シャレに、ならなかった…

 

 後日、前夜祭で俺と銀子ちゃんが真っ赤になってる写真と大盤解説の様子を撮っていた動画、第一局で月夜見坂さんのバイクから飛び降りて将棋会館に駆け込む俺の写真がどこかから流出して週刊誌とネットで公開され、『前夜祭での赤面カミングアウト』とか『大盤解説で惚気全開』とか書き立てられ、週刊誌とネットでは今も大炎上中だ…

 

 

 ん?

 指し直し局はどうなったかだって?

 朝から晩まで記者やらリポーターやら白雪姫ファンやらに追いかけ回されてる、こんな状況で二人きりで会えるわけないだろ!?

 

 お預けだよ!

 

 お・あ・ず・け!!

 

 せっかく頑張って勝ったのに…

 研究部屋がバレるのが怖くて、研究会すらできやしないよ…

 

 なに?

 今後の予定?

 こっちが聞きたいよ!!

 とりあえず、

 今は、ほっといてくれ!!!




13巻でシューマイ先生が出てきた時はビビりました。
きっとテレビ出演では調子に乗って、何かしらやらかしてくれたでありましょう…
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