ハリー・ポッターと天使の眼 作:はぎ
僕、グレイス・ハーマーは物心着いた頃から他の人とは違う世界を生きていた。僕の目は愛してくれる両親を映さず、緑鮮やかな自然、形あるものを一切映さなかった。僕が生まれて直ぐに、そう診断されたことにより、魔法使いであった両親は色々な医者を点々とし、僕の目の代わり、もしくは治す手段を探しまわったらしい。
結果は今のとおり、僕の目は相変わらずに何も見えない。いや、一つだけ見えるようになったものがある。ある日、僕は両親の綺麗な青い目を失い、
初めて目を開いた日は驚いたさ。視界を覆う様々な色に。僕はそれが物だと思ったんだが、両親の顔も上手く認識できなかったし、二人の話からどうにも違うことがわかった。僕の視界に映ったのは二つの眩しくて、黄色い人型の光。それが両親だと理解したのはちょうど七歳の誕生日、妹の生まれた年だ。
母が妊娠していることに気づいたのは僕だった。母の黄色い光のちょうど人間のお腹の辺りに映る、淡いオレンジ色の光。その色がとっても綺麗で、毎日母の大きくなったお腹を撫でた。
妹が生まれ暫くすると、両親は手間のかかる僕の相手をしなくなった。
妹はまだ幼いが、物覚えも良く、何より目が見える。それに加え、僕は強すぎる光のせいで、すぐに体調を崩すのだ。
──これのためにいくら金を使ったことか
父は僕の存在を無かったもののように扱い。
──それくらい自分でやりなさいよ
母は僕を放棄した。
──お兄ちゃんはなんで私たちと違うの?
待ち望んだ妹は壊れた玩具のように毎度決まった言葉を口にする。
ああ、やっぱり僕は邪魔だったんだなぁ
いつしか僕の目は人の魔力だけでなく、周囲に漂う魔力、ものに宿る魔力すらも映し出していた。これで、僕は大体のことは一人で出来るようになったんだ。でも、それだけじゃない、この目は天使の目なんかじゃない、怪物の目だったんだ。
事件は妹が僕の背中に石を投げたのがきっかけだった。人以外も認識できるようになった僕は外に出ることが増え、体全体で自然を感じることが好きだった。その日もいつものように、外に出て、上機嫌で木々の間を抜けていたんだ。その時突然感じた背中の痛みによって僕はよろけてしまったんだ。その様子を見てなのか、後ろからキャッキャと笑う妹の笑い声がし、僕は注意しようと顔を後ろに向けると、次は額を拳大の石が打った。
先程とは比べ物にならない激痛。まだ幼かった僕は涙を流しながら、妹に迫った。
「エリーシャ…なんでこんなことするの? 人が嫌がることをするなってお父さんやお母さんに教えて貰ってるでしょ?」
どんなに酷いことをしようと、彼女、エリーシャは血の繋がった家族であり、妹。その瞬間までは笑って許そうとまで思っていた。
「気安く名前を呼ばないでよ、私は人の嫌がることなんてしてないし、それに今ここに私以外の人がいるの? 不良品の癖して調子に乗らないで。」
妹の言葉に僕は固まることしか出来なかった。僕が小さく「えっ」と漏らすとエリーシャの顔は大きく歪み、付近にはキンキンとした笑い声が響き渡る。
「まさか、あなた自分のこと人だって言うの? お父さんも言ってるよ…何であんな厄介者が生まれて来たのかって。 お母さんも…金と一緒に面倒事も消えて欲しかったのに…てね! まだあるわ、あんたの…」
「だまれ!!」
僕の怒号とともに、エリーシャの嘲笑は止まり、鮮やかなオレンジの色は急速に薄くなる。色が薄くなるにつれて、彼女の息は上がり、膝をつき、胸を抑える。唐突な妹の変化により、僕は焦り、滅多に呼ぶことのなかった両親を呼び寄せた、当然そのことは後悔してない。妹は助かり、僕のことを恐れるようになり、両親は恨みの対象として僕を再認識した。
その日から、僕は常に目を閉じ、色のない暗闇を生きている。うっかりと目を開き、またエリーシャのような事件を起こしてはいけないんだ。
そして、家族の誰からも相手にされることなく過ごしてきて、ついに今日、ホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証が届いた。