意外に考えが出てくるものでした。
蝉の声がうるさくなり始めた七月の下旬。
どこの学校も終業式が終わったことだろう。
そういう僕は、終業式が終わり、家に帰っているとこだ。
家には帰りたくないんだよな……
嫌と思うほどの宿題を沢山渡され、憂鬱になっているのに、日々の稽古とくれば、更に僕の憂鬱は増していくばかりだ……
高校三年生にもなり、受験が近づいてきてこともあり宿題の量は半端じゃない。
既に僕の学生カバンの中には参考書やら、プリントやらで一杯だ。
おまけにこの暑さときた。
うんざりするよ。本当。
あ、ちなみに日々の稽古っていうのは、僕の家の昔からのしきたりだ。
僕の家の先祖は、かの有名な真田 幸村とかいう武将で戦国時代にその名を馳せたらしい。
よくおじいちゃんが僕にお偉いご先祖様の戦歴を語ってくるので、よく知っている。
が、別にどうでもいい。そんなこと。自慢なんてできるもんじゃないし。それに、迷惑なことなんだ。これが。
なんせ、その先祖からのしきたりやらで僕は武術、馬術、弓術、槍術やらなんやらかんやら毎日稽古を受けさせられているのだから。
全く。今この時代に武術やらがどう役に立つというのか?摩訶不思議なことだ。
まぁ、でも、小さい頃からやらされているのでもう慣れた。
††††††††††
稽古も終わり、僕は地元の神社で行われている祭りに幼馴染の三人と来ていた。
僕の左で、右手にたこ焼きを持ち、左手に綿あめを持ち、はし巻を口にくわえてる長身の男は、四宮・ジョン・ボナパルト。
名前の通り、父親がフランス人のハーフだ。が、別に金髪であったり青い目だったりなんてことはない。黒髪黒目で普通の日本人だ。
顔が整っていて、喋り方が独特な奴だ。
こいつも、僕と似たような境遇で、馬術やら、武術やら、ヨーロッパのスポーツを嗜んでる。
そして、僕の右にいるのがクラスの人気者で、密かにクラスメイトの奴らから大和撫子と呼ばれている、淀川 美鈴だ。
優しくて、少し大人びていて、落ち着きがある。
クラスの人気者と言われても別段おかしくはないだろう。
まぁ、僕たちは家が近所で小さい頃からよくいる。いわば、幼馴染ってやつだ。あ、さっきも言ったか。
花火も終わり、屋台も片付けて行く人々。
「あーぁ、もう終わりだね祭りも。もう今年で最後だもんね。ここで祭りを一緒に過ごすのも。」
淀川が、手に持った綿あめを頬張りながら言う。
「そーいえばそーだネ。もう来年はみんなバラバラになっちゃうネ。」
あ、そーか。そーいや、来年はみんなバラバラだな。ジョンはハーバード大学だったっけ?
淀川は東京大学。
えと、僕は…….地方大学。
あれ?なんか僕だけ違くね?
「ジョンも、雪平くんとも今年限りか……寂しいなぁ……」
おいおい、なんかこれが根性のお別れみたいじゃないか。まだあと半年先だぞ。
あ、ちなみに、僕の名前は真田 雪平な?
そして、よしてくれ、君付けは。
昔からの癖はそう簡単に治らないな。
「ねぇ。ジョン、雪平くん。三人でさ、参拝しない?これからも仲良しであり続けるために。」
そーいえば、参拝なんて久しぶりだな。
「僕はいいよ、ジョンは?参拝は初めてじゃないか?この神社の祭りは何回も来てるけど……」
「オォ〜!参拝ネ!初めてだヨ!一回はしてみたかったんだよネ!」
テンション高いな……まぁ、いつものことか。
そして、僕たちは賽銭箱の前に来てお金を投げ入れた。
二回拍手をして念じる。
『この三人がいつまでも仲良くいられますように。あと、僕の日々の稽古が無駄になりませんように。』
神様。頼みますよ。
「三人で仲良くいられるよーニ!あと、ヨーロッパ行きたいナ!あとそれとー、戦いたいネ!」
おいおい。こいつはなんで願い事を口にしてるんだよ。
参拝の仕方を教えるべきだったな……
てか、ヨーロッパ行ったのとないのかよ⁉︎
それに戦いたいってお前は何を考えているのよ‼︎
とまぁ、そんな具合で参拝を終わらし僕たちは帰る予定だった。
だがしかし、帰るのは当分先のこととなる。
††††††††††
僕たちは参拝を済ませ、振り返り階段を降りようとした時、刹那、後ろの神社が光り僕たちの背中を照らし尽くす。
そして神社の扉が開き、僕たちはその中へと吸い込まれていった。
最初は短めにいきます。
徐々に文字数を伸ばしていきたいと思います。