紅美鈴がリリなのの世界に迷い込んだようです(仮)   作:照明弾P@ハーメルン

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外伝1

幻想郷、博麗神社。

そこには、この地を守護する巫女がいる。幻想郷においての全ての異変においてのカウンターたる存在。それが博麗の巫女だ。今代の博麗の巫女はなかでも歴代の巫女の中で最も才に溢れる存在とこの地に住まう妖怪達は理解していた。

故に、妖怪達は問題を起こす事を嫌う。もし、博麗の巫女に目をつけられてでもしたら、その先に待つ自身の運命はこの世界からの消滅に他ならないからだ。

幻想郷にいる妖怪ならそれはだれでも暗黙の了解として知っている事なのだ。

だからこそ、この幻想郷の地にいる妖怪たちは先ほど、メイド服を着た妖精達が配っていた(・・・・・・・・・・・・・・・・)紙の内容を見て、困惑するのだった。

 

――――――――――

 

今代の博麗の巫女たる私、博麗霊夢(はくれいれいむ)はいつもの様に、境内の掃き掃除をしていた時だった。めったに人が来ない神社にある一団が訪れた。

 

「……あら、こんな時間に、随分珍しいじゃない。」

「…ええ。そうね。私もそう思うわ。」

私の見る先、其処にいたのは幻想郷の有力者の一人、紅魔館に住まう吸血鬼、レミリア・スカーレットだった。彼女の後ろには、ある一名(・・・・)を除いた全員が揃っていた。

 

「随分見ない組み合わせよね。特にパチュリーが外に出てるなんて。」

「パチェだってたまには外には出るわよ。」

「ふーん…まぁいいわ。…で?こんな大人数で、一体なんなの?」

面倒な事は勘弁してほしい、どんな理由でこんな時間に此処に訪れたのか、私はレミリアに尋ねる。それにレミリアは首を動かす事で応じた。直後、私の目の前に、ある人物が現れる。銀髪にメイド服を着た少女、十六夜咲夜。そんな彼女が、私の友人である、霧雨魔理沙を気絶させた状態で縄で簀巻きにして現れた。

 

「こいつとある件で、霊夢とスキマ妖怪に話がしたくてね。」

「悪いけど、私は紫とは連絡できないわよ。アイツはいつも突然来る奴なんだから。」

「大丈夫よ。仕込み(・・・)がすんでるから。必ず来るわ。」

「………いいわ。あがりなさい。」

簀巻きの魔理沙と、剣呑な雰囲気を放つレミリア一向を一瞥した私は、彼女達を神社の一室にあがらせた。

 

部屋にあがったレミリア達は不気味なまでに静かだった。あのフランドールでさえ、騒がずに座っているのだ。レミリアに至っては、此方が出した緑茶にも手を出さず、目を瞑って紫を待っているようだった。

 

そんな彼女達に、何か嫌な予感を感じ始めた時だ。私が座っていた場所の横の空間が裂けた。

 

「はぁい。霊夢…それにレミリア達も。」

「紫…!あんた、又なんかやらかしたんじゃないでしょうね?」

裂けた空間から、スキマ妖怪こと、八雲(やくも)紫(ゆかり)と、彼女に仕える式神達が現れる。こんな風に神出鬼没な彼女は、私に色々と面倒ごとを持ってくる存在で、今回のレミリアたちの件も、恐らく紫の仕業だろう。私は、座り込む紫達に袖から取り出した札を向けながら、紫に尋ねる。すると、今まで黙っていたレミリアが口を開いた。

 

「いいや。今回は誰もやらかしてはいないよ。」

「…?ならアンタは一体何の用件できたのよ?」

「これから話すよ。」

そういって、レミリアはその場から立ち上がり宣言する。

 

「スカーレット家当主、レミリア・スカーレットが今代の巫女に宣言する。私が出す要求を呑まないのであれば、我々は幻想郷に宣戦布告をする用意がある。」

 

――――――――――

 

「…レミリア、頭でも打ったの?」

「いいや、霊夢。私は頭など打っていないよ。至って正気さ。」

私は、ふざけた冗談だと思い、心配してみたが、レミリアは至って平静に応える。つまり、さっき言った内容は本気という事だ。紫も、真剣な表情でレミリアの話を聞いていた。

 

「私の出す要求は唯一つ。幻想郷から消えた私の従者、紅美鈴を連れ戻す事よ。」

「……は?」

レミリアの要求の内容を聞いて、私はあっけにとられた。幻想郷に喧嘩を売る理由があの門番を連れ戻すこと?

 

「…なるほどね。」

私がそんな風に疑問に思っていると、紫はため息をつきながら呟く。今回の件について何かしっているのだろう。私は紫に尋ねた。

 

「…紫、どういうことなの?」

「…実はさっき、藍から報告があってね。結界の不安定によって生まれた歪みに、あの門番が頭から突っ込んだらしいの。そのせいで、本来の外界とは異なる外界に飛び出しちゃったのよ。しかも、彼女のところのメイド妖精が、幻想郷各地にある契約書をばら撒いてたのよ。内容は、人間との会戦が決定した際、彼女に協力するなら、人間を好きに襲っていいという契約書よ。」

全く、面倒だわ。などとぼやきながら、紫はレミリアが手をつけなかった緑茶に口をつける。

 

「あの娘がその結界に吹き飛ばされたのは、安全性を確保しなかった魔理沙の未完成なスペルカードによるものだったと、本人をシメて確認したわ。私はコレを、人間が私を舐め、増長した事によって起きたものと捉えている。」

紫の言葉に、レミリアも頷きながら、簀巻きになった魔理沙を指差して続ける。

 

「あの娘は、私にとってかけがえの無い臣下であり、愛すべき従者。その関係を人間(・・)の手で引き裂かれたとするならば、私は継いできた家とこの血の誇りに賭けて、人間への報復を辞さないわ。」

その言葉は、普段の彼女からは想像も出来ないほどに重みのある言葉だった。彼女のいう、家と血の誇りが彼女を此処まで変貌させていた。

 

「私が今代の巫女に要求する内容は、そのスキマ妖怪にあの娘を捜索させる事。それだけよ。」

「……もし、その要求を呑まなかったら?」

私は、一応として要求を断ったときの話を尋ねる。レミリアは面倒そうに言った。

 

「その時は会戦の証として、魔理沙の屍を人里に晒すと同時に宣戦布告しましょう。その後は、私の名の下に集めた妖怪達と共に、人間にを襲うだけよ。」

私はそう話すレミリアを睨むが、睨まれた当の本人は全く動じない。しばし、沈黙が流れたが、緑茶を飲み終えた紫が沈黙を破る。

 

「ねぇ吸血鬼。霊夢には魔理沙っていう人質が通用するけど、私にそれは通用しないわよ?」

紫は挑発的な笑みを浮かべてレミリアに言う。その笑みは横目で見ている私でさえ不愉快にさせるほどのもので、正面から見せられているレミリアからすれば、直ぐに血相を変えて怒りだすだろう。…普段ならば。だが、今回のレミリアはそんな紫の笑みを見ても怒りもせずに、寧ろ愚者を見るような哀れみの目で紫に応えた。

 

「アンタは、紅霧異変の時にスペルカードルールを布教させる為に私達にそのルールでの戦いをして欲しいと借りを作っただろう。それを今、この件で返せ。幻想郷で賢者を名乗るアンタが、まさか忘れる訳がないでしょう?」

「……それを此処で出すとはね。」

紫としては此処で、話を切り返されるとは思ってもみなかったのだろう。その表情は先ほどの嫌な笑みと打って変わって屈辱に耐えるような表情をしていた。

 

「これでわかっただろうが、お前達にこの要求を拒否する材料は一つも無い。……返答は二日まで待とう。それまでに応えなければ……その時はわかるだろう?…皆、一度、紅魔館に戻るわよ。咲夜は先に魔理沙をつれて帰りなさい。彼女からはマジックアイテムを全て没収して、約束の日までフランの部屋で監禁しておきなさい。パチェ、フラン、帰るわよ。」

 

そういい残すと、レミリアは席を立ち、部屋を出て行く。彼女に付き従う一団も、それに従って部屋を出て行き、この場に残ったのは重い空気に支配された私と紫たちだけだった。

 




※7/23…余分な改行の削除。誤字修正。
痛い者→愚者に修正。

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