【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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XX. JUDGEMENT

中国支部から飛来した量産機は、ジェットアローン3号機とトライデントの奮戦により日本海で消滅。

 

だが残る量産機12体は、『エヴァンゲリオン』としてのダミーシステムに組み込まれていた情報共有システムによりネルフの戦法を学習し、その身にATフィールドを分厚く纏う。

 

一方的に為されるがままであった最初の1体は、いわば捨て駒。勝てば良し、負けたとてリリスの覚醒を誘発する鍵となる。だが、後者の覚醒誘発に関してはサキエルによる干渉の影響で不発に終わった。

 

やはり、真に戦うべき敵は魔王サマエル。その認識を新たにするのは、その魂を量産機に捧げたゼーレの面々。肉体を棄て、機械に意識を宿していた彼らは、自身の思考回路の複製を量産機用のダミープラグへと実装していたのだ。

 

故にこそ、量産機は13機製造された。ゼーレのメンバー分、というわけだ。まぁ、そうは言っても本人は既に嬉々として補完されているのであくまでコピー。先程消滅した1機の損失にも全く心を痛める様子はない。

 

なお、彼らゼーレのメンバーに戦闘センスがあるわけではないので、戦闘はダミーシステムに依存している。ゼーレの人格コピーが行うのは大まかな作戦指示のみだ。

 

そんなゼーレ搭載量産機達は現在、日本国上空に着々と集結しつつあった。

 

流石に老人達も、戦力の逐次投入が愚にもつかない下策だということぐらいは知っている。12機という数の利を活かして一気呵成に畳み掛けるのが最良と判断したのだ。

 

だが、ネルフとて、量産機の集結を座して待ってやる筋合いは無い。

 

集結しつつある量産機の群れへと射出され、天を駆けるのはエヴァンゲリオン零号機、初号機、弐号機、3号機、4号機。そして(J.A.) 2

 

量産機諸共派手に散ったものの制御ユニットは脱出に成功していたジェットアローンが、調整を終えたばかりの最新鋭機にデータを複製して再出撃している他は、『いつものメンバー』と呼ぶべき顔触れである。

 

発進の段階でシンクロの限界を越えてエヴァと融合したチルドレン達の影響を受け、急激にその機体を『進化』させながら宙を舞うエヴァンゲリオン達は、画一的にアダム化した量産機に比べると随分と個性的。

 

零号機はリリスとしてのレイの影響を受けた結果元々近づきつつあった体型が完全にレイのものとなり、異なるのは全身が『白く輝いている』という点と胸に輝く赤いコアぐらいになる。

 

胸と腰の装甲は『女性らしく』膨らんだ肢体によって爆散し、頭部を覆っていた装甲も急激な頭部の膨張により喪失。唯一『エヴァとヒトの身体であまり差異がない』背部だけには装甲が残り、N型装備化で背部に移設されていたウェポンラックは健在だ。

 

それと対応するのが、4号機。こちらはカヲルとの同化によりエヴァンゲリオンのコスプレをした渚カヲルというべき姿になった。レイとの差としては、胸部や腰部の装甲がほぼ残った点。少年的な肢体はエヴァンゲリオンの素体との差異が少なく、装甲にも無理が掛からなかったのだろう。

 

だが、それを煩わしく感じたのか、4号機はあろうことか素体からATフィールドを発散する形で装甲を破壊して、零号機と同じ全裸ウェポンラックのちょっとアレ過ぎる格好に変異した。

 

生命始祖として自らの肉体構造がエヴァに反映されすぎた2人は、光っていることでその細部はあやふやなものの、完全に巨人となった自身の身体を晒しているが、そこに羞恥心は無いらしい。

 

ある意味リリスとアダムそのものとなった彼らは、上空の量産機に向けて一層加速しながら、自身の身に神威の証たるアンチATフィールドを纏うのであった。

 

 

一方で、特異な変化を遂げたのは、一体だけ『獣型』なエヴァ3号機。シンクロ率を全開にしたマリを取り込んだことでヒト型に戻るのかと思いきや、むしろ3号機はその肉体をより獣として完成させていく。

 

————ゼーレによって、サキエルの欠落を埋め合わせる『獣』として送り込まれたマリ。

 

改造によってその身に組み込まれたのは『贖罪の山羊(スケープゴート)』としての呪詛であり、マリを構成する肢体には多くの動物のDNAが組み込まれている。

 

だがその呪詛を、エヴァンゲリオンと融合したマリは自ら書き換え、悪魔の象徴たる『赤い獣』へとその身を捻じ曲げた。

 

裏コード:666 『黙示録の獣(The Beast)』。

 

マリの女性性とエヴァンゲリオンの獣性を複合した怪物は、女と獣の因子を得たギリシアのスフィンクスの如き姿を取り、ATフィールドを蹴って天を駆ける。その度に欠け落ちる装甲と、全身から噴き上がるATフィールドの奔流。

 

大きく顎を開き、頭部装甲を吹き飛ばしたその顔は、頬まで口が裂けては居るが紛れもないマリのものだ。

 

人面獣身の怪物と化した3号機は、ジグザグの軌跡を残して天を駆け、量産機へと飛びかかっていく。

 

 

そして。リリンにして使徒であるアスカとシンジと一体化したエヴァンゲリオン初号機と弐号機は、彼らのカタチを模しながらも、天使の特徴を色濃く滲ませた。

 

輝く白い肉体の背から3対6翼の翼をはためかせるのは、アスカの姿を形取った弐号機。それを追うシンジの姿の初号機は、その背に背負う光輪の中に、無限の闇の如き『ディラックの海』を顕現させ、両機が空を駆ける様は天使が舞うが如き宗教的畏敬をすら目撃者に抱かせる。

 

リリスの子たるリリン。一説には『リリスとサマエルの子供』とされる悪魔。

 

なるほど夢魔と語られる様に、シンジとアスカの肢体を模ったエヴァンゲリオンは艶かしい生命の美に満ち溢れ、ヒトの『憧れ』を具象化したかの如き悪魔的美しさで天へと駆け昇る。

 

 

————天上に在します神へと叛逆する5機の悪魔と人形(ゴーレム)。それを迎え撃つべく結集する12機の天使。

 

まさしく神話の戦いが、今、始まろうとしていた。




大アルカナ20番 審判

正位置:覚醒
逆位置:行き詰まり

カードの位置は変わらずとも、相対する両者からは異なる向きに見えますが、さて。

————

101匹連載ちゃんだしバレンタインなのでご褒美に感想とか推薦とか評価とかください(強欲で貪欲な壺)

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