【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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エヴァ原作20話ぐらいのセクシー描写があるので注意だ!


暗中飛躍

碇シンジは、悩んでいた。

 

先日行われた、使徒とヒトの第一次接触実験。その被験体となった彼は、第3使徒サキエルを相手に、シンクロを試みたのである。

 

そして、彼は使徒の魂に触れた。

 

……ああなるほど、この生き物は、本当に天使なのだろう。

 

そう思ってしまうような、巨大な魂に、無限の包容力で受け止められたシンジ。実験中なのに、敵なのに、その温かみは、どうしようも無くシンジの心を癒やしてしまったのだ。

 

もう一度、あれに包まれたい。

 

一度そう考えてしまうと、もうダメだ。愛されて来なかったシンジにとって、彼との交流はあまりに心地の良いものだったのだから。

 

 

————それが概ね演技だと見抜くのは、愛に飢えた14歳には不可能である。

 

 

* * * * * *

 

 

①自分以外の使徒は全部殺す

②エヴァパイロットのメンタルに干渉してデストルドーを妨害する。

 

『何としても生き残る』という大目標の為にそんな2つの中目標を設定したサキエル。

 

しかし、①の為には現在の自身の肉体の絶え間ない強化が必要だが、②を考えると巨体の怪物はむしろ邪魔である。

 

ならばどうするかと考えて、サキエルが考えついたのは、食った使徒のコアの再利用だった。

 

小型のコアを子機として作成し、サブの肉体として先日作ったヒトアバターを物理的に構成してそれに子機コアを搭載するのだ。

 

要は人間型の端末を用意するのである。そして②にはこちらを利用するというわけだ。ついでに、勉強にも役立てたい。

 

そんな意図でサキエルが生み出したアバターは、夜の闇に紛れて無事に芦ノ湖から上陸し、夜の第3新東京市へと進入した。当然、ATフィールドの位相をうまく調整して、パターンオレンジを偽装している。

 

使徒の基本的なATフィールド波形を検出できるとは中々凄まじい科学力だが、知ってしまえば欺くのは容易だ。

 

もちろん、プラグスーツ姿では怪しまれてしまうのは当然。なのでサキエルが第一に実行したのは、服の入手である。

 

目立たない様に路地裏を進み、目指すのはゴミ集積場だ。人間が生活する上で絶対に存在するその場所で探すのは、廃棄された衣料類。今日が衣類ゴミの日なのは、事前にしっかり市内無線で把握済みだ。だが探しているのは古着ではない。

 

衣料ロス。シーズンオフなどを理由に新品のまま廃棄される衣類が、サキエルの目当てなのだ。

 

ゴミ処理場にも当然監視カメラの類はあるが、そんなものはサキエルの障害にはなり得ない。というか軍事施設でもないので、結構お粗末な監視なのだ。普通に死角が存在しているので、それを伝って進めば良い。

 

そうして、サキエルは無事に、ユニセックスな夏用ハイネックとジーンズを回収。それらを着用して何食わぬ顔で街へと繰り出した。

 

道行くヒトはまばらで、この第3新東京市がもはや『ネルフ職員とその関係者だけの街になりつつある』というシンジからの知識をしっかりと反映している。むしろこの戒厳令の中でも街に残るのは、この町で暮らすしかないネルフ職員達か、よほどこの土地に思い入れがある者ぐらい。それ以外の人々は疎開して当然である。

 

そして、職員では無いがこの街で暮らす者達というのは、大きく分けて2通りなのだ。一つは、この街が「箱根」であった頃から暮らす古参の住民。

 

もう一つは『ここ以外に行き場がない』者達。第3新東京市の影の部分とでもいうべきか。ヒト・モノ・カネが集まる所には、欲望もまた集まるものだ。

 

その最たる例が、歓楽街。ネオンが灯るその街は、ネルフ職員の保養も兼ねて『あえて色々と見逃されている』都市区画。キャバクラ、ソープ、パチンコ、ホスト、スナックにハプニングバー。

 

『東京と名がつくからといって歌舞伎町や吉原まで移設する必要は無いのでは?』などと週刊誌に揶揄されるこの場所は、ヒトという生き物の仄昏い欲望に塗れている。

 

サキエルが目指すのは、その歓楽街であった。

 

先立つものが無い場合に容姿を活かして可能な最大効率の収入源。そんなもの、サキエルが調査して知り得た範囲ではこれしかなかったのだ。

 

「そこのお兄さん、良いことしない? 手なら1、口なら5。あ、夏目さんで良いよ?」

 

そんな甘言を酔っ払いにささやくサキエルは、どう考えても堕天使であった。なお、このセリフおよびこの後に予定している行為の知識は先程ゴミ処理場で閲覧したエロ本ベースの知識である。相場より随分安く、またこういう街娼行為は多くの場合地域の元締めがおり無断で客引きをしたのがバレるととっちめられる、などなど色々詰めが甘いのだが、サキエルは知る由もない。

 

単体完結型の準完全生命体には、性欲という概念はさっぱり実感が湧かないので、ガバガバなのも致し方がないのだ。「顔の良い者がこういうことをすると金がもらえるのか。覚えておこう」というのが混じり気のないサキエルの感想である。

 

 

* * * * * *

 

 

————ヒトゲノムサンプルと金銭の入手に成功。ゲノム解析開始。

 

————獲得金銭の増加を計画。パチンコ店に入店。ATフィールドによる不可視干渉により強制的に当たりを誘発。あえて困惑して店員を呼ぶことでビギナーズラック感を演出しつつ、換金を実施。現在所持金5万円。

 

————予定通り、中古の携帯電話端末を購入。トイレにて摂食吸収し解析開始。インターネット接続プロトコルおよび基本OSの複製が目的。

 

————碇シンジ、居住地発見。高級マンション。

 

————綾波レイ、居住地発見。……廃墟? 潜入の容易さから此方を優先予定。

 

————ネルフ保安部と推測される存在を多数確認。

 

 

端末から送られるそれらのデータは、着々とサキエルの糧となり、その進化を促進する。

 

秘密裏に人間社会に潜り込んだ天使は、自身の意のままに展開を操るべく、本格的に暗躍を開始するのであった。

ところでこのお話のヒロインなんですが

  • LAS(ラブラブアスカシンジ)こそ至高。
  • カヲシンは乙女の嗜み。
  • LRS(ラブラブレイシンジ)こそ究極。
  • 全員サキエルが抱く。

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