【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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多勢に無勢

————紀伊半島沖にてパターン青を捕捉。

 

その報を受けての、新生——したのを知っているのは上層部の一部だけ——ネルフの面々の反応は多種多様であった。

 

「アタシ達の出番ってわけね!」

 

と意気込みを見せるのは、弐号機パイロットのアスカ。

 

「出番なんて無い方が良いのに……」

 

と平穏な日々に水を注されてイヤそうなのはシンジ。

 

「……」

 

レイは割と興味が無さげで、『命令があれば出撃する』というスタンス。

 

一方でそんな彼らを指揮する立場にあるミサトは、「早期に発見できたからには、こちらから打って出るわよ!」と早くも戦端を開く腹積りらしい。

 

リツコはノーコメント。加持は出張中。

 

そして、サキエルはといえば、大変に焦っていた。

 

「まだ食べ終わってないのに……!」

 

そう。彼の本体は、未だにガギエルの死体処理に追われていたのである。

 

 

* * * * * *

 

 

どことなくサキエルのシルエットに似た、首のない人型の使徒、第7使徒イスラフェル。

 

その使徒に対し、ネルフが選択したのは上陸地点でのエヴァ3体による電撃作戦。

 

ミサト立案のその作戦は、まぁ案としては悪くはない。敵を早期に発見したのならば奇襲するのは常道だ。

 

だが、使徒という存在は、えてして非常識なものなのである。

 

先鋒として見事に空挺降下を見事に決めつつ、落下の勢いそのままにソニックグレイヴで使徒を唐竹割りにしてみせたアスカの弐号機。だがその直後、彼女は『2つに分裂した使徒』によるダブルアッパーカットで吹き飛ばされてしまう。

 

その2体の片割れに対してレイの零号機がスマッシュホークで分断するも、更に分裂した使徒によるダブルラリアットで同じく吹き飛ぶ。

 

挙句にレイとは別の個体をシンジがエヴァに内蔵されたビームグレイヴの二刀流で3分割すれば、それが3個体に分裂して、ビルの上に立った個体に2体がエヴァを投げ渡してのスーパーパワーボムで初号機を地面に埋没させて見せた。

 

流石に、エヴァ各機もATフィールドでダメージを最小限に抑えてはいるが、立ち上がったと思えば赤、黄、青、緑、桃色の使徒軍団による絶妙な連携技で吹き飛ばされたり叩きつけられたりと大苦戦を強いられている。

 

両サイドから挟み込んでのクロスボンバー、『俺ごとやれ!』とばかりに1体がエヴァを羽交締めしたところに2体がダブルドロップキックを叩き込む、1体が背負い投げをかけた事で叩きつけられたエヴァへのフライングニードロップ。

 

投げ技や打撃技を多用するそれらのコンビネーションは、ATフィールドで軽減しても身体の芯にダメージが響く嫌な戦法だ。

 

もちろん、エヴァもやられるばかりでは無い。武器を使い、迫る使徒を切り刻んでいる。

 

だが、恐ろしい事に、半分に切ろうが、回し蹴りで頭を爆散させようが、この使徒は即座に再生してしまうのである。

 

「なんてインチキ!!」

 

とミサトが吼えるが、そう言ってしまうのも仕方がないだろう。最終的に、タコ殴りにされたエヴァ各機は、投げっぱなしジャイアントスイングやトリプルドロップキックなどで吹き飛ばされて今度こそ沈黙し、再合体した使徒は、悠々と第3新東京市を目指そうとして————慌てて出てきたサキエルにより、凍結させられた。

 

だが、砕いた瞬間5体になろうとしたため、サキエルも凍結する以外に身動きが取れず、使徒の破片をひたすらに凍らせるのみ。それをチャンスとみたのは、国連軍。ネルフから指揮権を奪い、第3使徒ごとN2爆雷の大量投下で第7使徒を焼却したのである。

 

お互いのATフィールドを中和しあっていたサキエルとイスラフェルは、コレにより体表の67%以上を損傷して沈黙。

 

爆風で犬神家の如く頭から山に突っ込んだエヴァ3機はどうにか回収され、再起を図る事となったのであった。

 

5体に分裂する使徒。サキエルを含めたとしても、相手が人数で上回っている上に、5体で1体の使徒故かその連携は強烈。

 

『囲んでブン殴りまくると勝てる』というガギエルが受けた戦訓を活かしたイスラフェルは、かつてない強敵としてエヴァとネルフの前に立ち塞がったのであった。

 

 

* * * * * *

 

 

「いやいやいやいや……あれはちょっちマズいんじゃないの……?」

「連携攻撃を使いこなす分裂使徒。記録分析をした限り、1体でも生き残っていれば0.3秒で残りの4体を復活させる。つまりほぼ同時に5体を消滅させなければ勝てないわけね……厄介だわ」

「厄介ってレベルなの? アレ。プロレス技とか使ってたわよ?」

「プロレスに似たのは流石に偶然でしょうけど、うまく連携して体術で戦うのが基本みたいね。……ただ、使徒が今までの戦いで敗れた他の個体から学習しているとすれば、ビーム系兵装の有用性には気づいているはず。遠距離攻撃が無いと考えるのは危険よミサト」

 

そう言って、リツコとミサトは揃って溜息を吐く。

 

幸い、『全個体が大ダメージを負った』現在のこんがり丸焼き状態では再生が鈍くなるようで、再生速度はサキエルに遠く及ばない。コレは単純にS2機関の出力が5体同時再生のエネルギーに対して少ないのが原因だろう。1つの身体に4つのS2機関を詰め込んでいるサキエルがもう既に負傷しつつも移動を開始し、太平洋に一時撤退したのとは大きな差だ。

 

だが、再生速度からMAGIが試算した猶予は6日間。

 

それまでに、どうにか必勝の策を考えねば。

 

そう悩むミサトの前に、追加の悩み事を抱えてきたのは、オペレーターの日向マコトと青葉シゲル。

 

「葛城一尉。関係各所から抗議文と請求書が……」

「N2で何でもかんでも吹っ飛ばしたのは国連軍の連中でしょ!?!!?」

 

そう吼えるミサトの安息の日は、遠い。




(∵)アカレンジャイ‼︎
(∵)キレンジャイ‼︎
(∵)アオレンジャイ‼︎
(∵)ミドレンジャイ‼︎
(∵)モモレンジャイ‼︎
(∵(∵(∵)∵)∵)5体揃って、イスラフェル!

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