【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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寝た子を起こすな

「深度800……あの、これ以上は安全域を超えるんですが……」

「理論限界値の1200までお願いします」

「絶対壊れますよ!?」

「ご安心ください。ネルフの設備課の方で同等以上の性能を持つ代替機を建造中です。今週中にはこちらに搬送及び設置までいたしますので、皆様の職務には極力ご負担のないように致します。ご迷惑をおかけしますがご協力のほどお願いいたします。……我々は急がねばならぬ職務ですので」

「うーん……どうします所長」

「現物で賠償してくれるのならば、まぁ」

「もちろん破損した場合は金銭的にも謝罪はさせて頂きますよ。あ、賠償に関する書面はこちらです」

「……まぁ、大深度のデータを一度タダで取れると思えば研究の一環としても悪くないだろう」

「ではスタッフの皆さん1200までお願い致しますね。それ以降もスキャンしつつ限界まで深度を上げて下さい」

 

そう告げてデータ取りに勤しむのは、ルイス・秋江。

 

「……ええ。カバーストーリーは噴火の兆候ありで行くのが無難でしょう。実質部分で言えば、そうですね、浅間山の避難マップで示される火砕流危険区域の住民の避難を。もちろんネルフの方でも諸々手を回しますよ。ええ。首都に使徒襲来など洒落になりませんからね。……ええ。その件はもちろん。先日の戦略自衛隊からの購入物資代金に上乗せする形で誤魔化して……そうですね。額面はおいおい」

 

施設の隅で秘匿回線を用いて内閣府相手に折衝をこなすのは、加持リョウジ。 

 

そんな様子を眺めつつ出力されてくるデータの解析を行なっていたリツコは、何処か手持ち無沙汰なミサトに対してからかいの言葉を投げた。

 

「お互い、優秀な彼氏と出会ったものよね」

「ばッ……誰が彼氏よ!?」

「加持君。縒りを戻したんでしょ?」

「…………」

「ルイスからゴミ出しの日に加持君と玄関でよく会うって聞いてるわよ」

「…………ハイ」

「ところで……ん。秋江一尉! 結果が出たわ!」

「よかった。たった今圧壊してしまったんだ」

「ギリギリだった訳ね。————結果はパターン青。間違いないわ。使徒よ」

「ありがとうリツコ博士。……さてみなさん! 現時点で我々ネルフの特務権限が過去に遡って適用されましたので、我々の来訪以降、つまり過去28時間の情報は部外秘となり————」

 

そんな風に研究所のスタッフに声を掛けていくサキエルに対して、リツコは肩を竦めて微笑むと、スキャン結果の画像化作業を行いながら、先の言葉の続きをミサトに投げかける。

 

「ところでミサト」

「何よ」

「式の日取りは早めに教えて頂戴。スピーチ原稿を考える時間も必要だし」

「……そんな予定、当面ないっての。全く」

 

 

* * * * * *

 

 

「マグマの中の使徒ぉ!? どう倒すってのよそんなの!」

「サキエルがマグマを凍らせるとかかな?」

「サキエル頼りは不味いでしょシンジ。案の一つには入れるべきだけど……」

「マグマから、引き摺り出す」

「んー、どうやるのよレイ?」

「マグマの中にN2」

「却下。長野には首都があんのよ?」

「じゃあATフィールド張りながらマグマに潜るとかしかないような……」

「……うーん。確かに……」

 

訓練の結果ATフィールドをかなり自在に操れるシンジ達なら、マグマの熱を遮断する程度は可能だろう。

 

それしかないか、とシンジ達がウンウンと頷いたところで、マグマの中に使徒が居るという連絡をチルドレン達が控えるエヴァの仮設給電所に持ってきたミサトががっくりとした雰囲気で声をかけた。

 

「あの〜。アタシ、一応作戦課長なのよ?」

「良いじゃない、アタシ達が案を出し合うくらい。……で、その作戦課長様の案は?」

「それなんだけどね。ちょっち困った事態があって」

「ん? どうしたのよ」

「スキャンの結果がコレなのよね」

 

そう言ってミサトが示したのは、スキャン結果から画像化された使徒の状態。

 

「……卵?」

「繭にも見えるわね」

「胎児っぽい感じ……」

「そ。あろうことか火口の使徒はサナギみたいなのよねこれが。で……どうしようかなって」

「サナギならブチッと潰せば死ぬでしょ」

「……ミサトさんが言ってるのは、もしかして、捕まえるって事ですか? このサナギを」

「危険だわ葛城一尉」

「……そうよね。よし。……じゃあ殲滅作戦で行きましょう、第5使徒に使ったN2爆雷砲を今度は垂直に打ち込んで——」

 

そう告げて、作戦概要を説明しようとするミサト。だがその瞬間、仮設給電所にミサトの部下である日向マコトが駆け込んできた。

 

「葛城さん! 火口内部に高エネルギー反応が発生! ですが————」

「ですが、どうしたっての?」

「————ですが、その。逃げられました……!」

 

そう告げたマコトの表情は、焦りと困惑の色が濃いもので。

 

当然、それを聞いたミサトとチルドレン達にも、その混乱は伝播する。

 

「に、逃げたぁ!?!!?」

 

第8使徒サンダルフォン。羽化と同時にマグマの底へ底へと向かったその使徒は、ネルフの観測可能範囲から忽然と姿を消した。

 

今までにないその事態に混乱するネルフ。

 

そんな中、サキエルは何か薄ら寒い『嫌な予感』を覚え、眉間に皺を寄せるのだった。

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