※なお私の画力は小林ゆう画伯と互角に戦える力量
「エヴァ飛行訓練!?」
「エヴァって飛べるの!?」
「羽が無いのに……?」
「んな機能あったかにゃー?」
「え、逆に、みんなは飛べないのかい?」
教えられなくても飛べるし派1、なにそれ知らない派4。若干1名本職の使徒が混じっているチルドレン達が集まっているのは、ジオフロントに設けられたエヴァ稼動試験用の空き地。
地下の格納庫から無人でリフトアップされてきたエヴァ3機を背後に置いた彼らの前にあるのは、なんだかやたらとチグハグなエヴァだ。
いや、チグハグというよりは、ツギハギだろうか。零号機と初号機と弐号機のパーツが渾然一体としており、鵺かキメラか? と言いたくなるようなその機体の名は『にせエヴァンゲリオン』。予備パーツどころか使用済みのお下がりパーツを縫い合わせて作ったエヴァのパチモンというかエヴァのゾンビである。フランケンシュタインでもいいだろう。
装甲パーツもお下がりなので、一度も出撃して無いのに全身傷だらけだし、色がめちゃくちゃ。腕の長さが左右で違うのはパーツがなかったので片手を『足パーツの余りの先に手をつけて作った』から。一番ひどいのは顔で、頭のパーツが半分弐号機で半分零号機なせいで目が『片側に2つある』というアンバランスすぎる仕上がりだ。
廃棄パーツを使っている関係でヘイフリック限界を超えて全身がネクローシスを起こしてもおかしくないのだが、この偽エヴァ、サキエルがS2機関から闘魂注入したのでスペックだけはちゃんとしている。
そんな『にせエヴァンゲリオン』だか『妄想エヴァンゲリオン』だか『幻影エヴァンゲリオン』だかに乗るのはゼロチルドレン……という架空の肩書きを持つルイス。
彼が強烈な光と共にエヴァの背に光輪を発生させて明らかに『ワイヤーでプラーン』としかいえない浮き方をするのを見れば、『エヴァで飛ぼう』というのが無茶でないというのは分かる。分かるのだが色々シンジ達は突っ込みたい事があったので、偽エヴァを着地させプラグから出て来たルイス、もといサキエルに対し無言で挙手を行った。
「はい、何かなシンジ君」
「パーツがあれば幾らでもエヴァ作れるならたくさん作った方がいいんじゃないかな」
「プレーンなエヴァって僕とレイちゃん、それからカヲル以外が乗るとパイロット食おうとしてくるけど良いかな?」
「あ、やっぱり良いです」
「じゃあ次レイちゃんかな。どうぞ」
「やり方が分からないわ」
「それはこれから僕とカヲルで教えよう。次、アスカちゃん」
「羽根とかジェットじゃダメなわけ?」
「燃料バカ高いので却下で」
「ケチ!」
「一応この訓練で無理だったらそっちも考えるよ。じゃあマリちゃん」
「羽根生やせないかにゃあ」
「そっちはりっちゃんが検討中だね。どっちも使えれば便利だとは思うよ。じゃあカヲル」
「僕ここにいる意味あるかい?」
「飛ぶのを教えるんだよ君が」
「やだよ」
「仕方ないな報酬を出そう」
「シンジ君かな?」
「欲が深いね?」
「シンジはアタシのよ!」
「姫はヤキモチ焼きで可愛いにゃあ」
「私の報酬は?」
「レイちゃん、指導される側に報酬はないよ?」
「そんな……!」
「兄さん、僕の報酬は?」
「んー、僕のおやつのきなこ棒を一個あげよう」
「二重の意味で渋いね」
「じゃあキャベツ太朗も付けるよ」
「さあシンジ君早速練習に行こう!」
「こいつバカじゃないの……? ブタメンが一番美味しいでしょ」
「あー、私はバカウケとかポッキーが良いにゃあ」
「ウメトラ兄弟……」
「待ってよカヲル君! 鶯ボールのほうが美味しいよ!?」
「ちょっとシンジ、ウグイスボールって何よ」
「あー、姫は知らないかにゃー。あれ関東じゃあんまり見ないし」
「嘘!? こっちにないの鶯ボール!? じゃ、じゃあおにぎりせんべいとか」
「それもこっちにはほぼ無いにゃ。そっかそっか、わんこ君実家どっちも関西だもんにゃー」
「よし兄さん。今あがったの全部が報酬でどうだろう」
「うーん、まぁ良いかな。買っとくよ」
弟を軽く弄ろうと報酬に駄菓子を提示したら何故か多様な種類を買い込む事になったサキエルは展開に首を傾げつつ了承する。
そうして、練習の為にエヴァに向かう道中、シンジとマリが「冷やし飴は流石にあるよね?」「無いにゃー」「嘘ぉ」などとやっていたが、意外な会話の共通点があるものである。
そして、愛するシンジが大きな胸のぽっと出の女と会話しているのが嫌だったのか、アスカがその会話に割り込んだ。
「というか、シンジって関西出身だったの?」
「先生……えっと、京都の母方のおじさんのところにいたんだ。それで」
「でもシンジって関西弁じゃないわよ?」
「その、先生は関西人じゃないんだよね。京都大学の先生だから京都に住んでただけで、普通に標準語。……学校は、行ってなかったし。勉強は先生に習ってた」
「あー。でもオヤツは関西のものばっかりだった、ってわけね……」
「うん」
そう身の上を語るシンジだが、実の所、彼の母方にあたる碇家はゼーレの有力者の家系だ。シンジが『先生』以外との関わりを絶たれていた裏にはゼーレの暗躍があったりする。
しかしそんな事を知らぬシンジは、「調布とか生じゃない方の八橋も美味しいよ」などと京都のお菓子情報をアスカに吹き込んでおり、先生との生活は孤独ながらもそれなりに悪くない思い出になっているらしい。
先生の勧めでチェロを学んだ、ということからも先生は先生なりにシンジとうまくやっていたようだ。
そんなこんなの会話を交えつつも、カヲルとシンジが初号機、レイとマリが零号機、ルイスとアスカが弐号機にそれぞれ相乗りして『光輪』の出し方を練習し、どうにかこうにかそれぞれのエヴァがぎこちなくフヨフヨと浮遊を開始する。
到底実戦投入は出来そうにないとはいえ、空を飛べるようになったエヴァ各機とそのパイロット。その感覚を掴むべく慣熟練習を繰り返すチルドレン達は、お八つ時まで訓練をこなした後、無事駄菓子にありつくのであった。
なお全員分用意されていたお菓子に、「僕の報酬なはずでは」とカヲルが疑問符を浮かべていたりするが、その疑問は皆で菓子を食べるという楽しい経験で押し流されたようである。
「アスカ姫〜! ポッキーゲームしよ?」
「誰がするかっての!」
「と言いつつシンジ君となら?」
「さ、やるわよシンジ」
「ほほう。じゃあ僕もシンジ君とそのなんとかゲームを……」
「アスカ!? カヲル君!? ちょっと!?」
「あらら〜ワンコ君モテモテだにゃ〜。でもちょっと寂しいかも?」
「……マリ」
「んにゃ? ————ッ!?!!? ちょ、ちょっとレイパイセン? その咥えてるポッキーは何かにゃ?」
「ポッキーゲームしないの?」
「えっと、えーっと。ええいままよ! やってやろうじゃん!」
シンジとキスする口実ならなんでも乗っかるアスカ、よくわかってないけど友達と遊びたいカヲル、マリが寂しそうなのでアスカの代わりにやってあげようとするレイと『初恋の人のそっくりさん』とのポッキーゲームの機会に覚悟を決めるマリ。
和気藹々としたそのやりとりは、各々実際の年齢はともかく、見た目通りの少年少女らしい楽しげなもの。
それを見守るサキエルは、日本を高速で飛び回って掻き集めた甲斐があったと一安心するのであった。