【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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高嶺の花

史上最大級の使徒と、それと戦うネルフのものらしきロケット、箱根があった辺りから天高くブチ上がる光の柱など、一般人でも『凄まじい戦いが行われている』事が容易に判る先日の一件は、箱根周辺を喪失した事で非難一辺倒だった民意を、掌返しで『ネルフ支持』に傾けていた。

 

コレをチャンスと見たのは、加持リョウジと、彼と繋がりのある与党のみなさん。情報の出しどころは此処だとばかりに今までの使徒戦の記録映像を『ヤバいところは編集しつつ』民間公開した事で、民意を更に傾けたのだ。

 

『山を吹き飛ばす荷電粒子砲を持つ使徒と戦うエヴァ』

 

『海を凍らせる全長3kmの白鯨と戦うエヴァ』

 

『分身殺法と縮退砲を使う怪人軍団と戦うエヴァ』

 

『溶岩と共に地面を突き破り箱根の街を崩壊させる大怪獣と戦うエヴァ』

 

『あらゆる物を消滅させる溶解液を撒き散らす超巨大使徒と戦うエヴァ』

 

テレビ局各社は今まで秘匿されていた死闘の様子をセンセーショナルに報じ、TwitterなどのSNSでも巨大怪獣と戦う巨大ロボットという胸が熱くなる要素がネット民の話題を掻っ攫っている。

 

此処で大きかったのは、疎開民の『生の声』だ。

 

そもそも、この情報公開以前にネルフと国への非難をおこなっていたのは、事情をよく知らぬ外野の声が大きい。

 

『とにかく巻き込まれ無いように周辺住人の避難と疎開を最優先とする』というネルフと国の立ち回りは、当の疎開民からは好意的意見や仕方のない事とする同情意見が多かったのだ。

 

何しろ彼らは、避難の際に『箱根に迫る大怪獣』を目視している者が多い。

 

ネルフが手配したVTOLによって助け出され、パイロットが緊迫した声で通信を叫びながら必死で怪獣から住民を逃す光景を覚えている彼らは、とてもでは無いが非難をする気にはなれなかったのである。

 

加えて、サキエルがこっそりちゃっかり行っていた避難民への配慮も身を結んだ。

 

北海道の土地を大金を叩いて買い占め、大型マンションを昼夜を問わぬ大工事で建造し、被災者をとにかく2LDKに詰め込んでいく。

 

家具支給、事態の解決まで光熱水料立て替え、必需物資配給の実施など迅速かつ手厚いケアを実施したサキエルの根回しによって、ストレスフルな避難所生活を最短時間で終わらせたのが大きいのだろう。

 

もはや新規に街を作ったと言っても過言では無いその剛腕は、一定の評価を勝ち取っていた。

 

建設先が過疎化対策に乗り気な北海道伊達市だったのも良かったと言える。超巨大マンションで団地を作るという狂気的な行いによる周辺への日照権問題を『日陰になる部分の土地を買って工場や商業区画にしてしまう』という凄まじいごり押しで乗り切れたのも、広大な田圃や畑を買い占められたのが大きいのだ。

 

ちなみに元の地主さんのお家はタワマン最上階に確保してあるので不満も今のところ出ていない。ネルフの誇る高速エレベーター技術をふんだんにぶち込んだので、最上階から地上までの行き来もストレスフリーなのだ。

 

そして、周辺に作った工場や商業施設では避難民を優先的に雇い入れ、製造した物資はネルフが買い取っている。職場ができて避難民もWin、物資が供給できてネルフもWinなWin-Winの関係と言えるだろう。ついでに言えばネルフがポンポン作った会社から法人事業税や法人住民税ががっつり入る伊達市もWinだ。

 

そして巨大な鉄骨構造を覆うシートカーテンにデカデカと印字された『特務機関ネルフ』のロゴマークは、広告としても機能しており、ネルフが支持を得る為の布石はがっつり打ってあったというわけである。

 

もちろん、政府与党側もこのネルフ支持の流れを親切で作った訳ではなく、ネルフとの一層の連帯とネルフの活動を今まで支援していた戦略自衛隊の功績を謳う事でちゃっかり支持率をゲットしていた。

 

————自分たちに影響がない場所で行われる大決戦。

 

それは民衆の好物であり、古くはローマのコロッセオで行われていた剣闘にも伺える『人類の獣性』の一端だ。

 

自分が痛くないなら、戦いが大好きなのが人間という生き物なのである。

 

そんな人間心理をうまく刺激する事で、ネルフは日本での地位を盤石とし、無人の関東での戦いに国家の助力を得られる事となった。

 

とは言っても、物資の供給と名義貸しを頼むだけ。兵力の供出は求めておらず、日本としては『超強力な軍隊の胃袋を握っている』という美味しい状態になっている。

 

加持とサキエルがここまで根回しをすることに『根っからの益荒雄』『超有能な分隊指揮官殿だが出世はできないタイプ』なミサトは首を傾げていたが、言うまでもなくコレは『ネルフ接収』というゼーレの打てる最悪な一手への牽制であった。

 

日本国に媚びを売りまくって『ネルフを潰すのは損だな』と思わせれば、如何にゼーレであっても容易に『戦略自衛隊を攻め込ませてネルフを抑えよう』などという暴挙はできないのである。

 

まぁ、攻め込まれたとしてもネルフにはサキエルが居る以上負けはないのだが、攻められない方が良いに決まっている。

 

そのための人気取り作戦、というわけだ。

 

 

そして、この人気取り作戦の一環として、ネルフが行った多種多様なイメージ戦略のうち、変なウケ方をしたのが『チルドレン』の広報だった。

 

 

* * * * * *

 

 

「ふーん。『美貌(びぼう)のヒーロー戦隊(せんたい)超兵器(ちょうへいき)エヴァンゲリオンを(あやつ)る5(にん)のパイロットとは!?』ねぇ」

「なんかこういうの見た事あるね、『てれびくん』とかで」

「シンジ君の言う通り、子供向けの広報として良くあるヒーロー戦隊風に冊子を制作してみたんだよね。ただ……」

 

そう言って苦笑するサキエル。その手にあるのは、ほぼ同様の文面を大人向けに直したゴシップ系週刊誌だ。

 

「私達が美少女美少年すぎて『大きなお友達』も釣れちゃったってわけかにゃー」

「まぁ、そうなるね」

 

そう。広報用に何枚か写真を撮って作った冊子なのだが、ネルフスタッフが『チルドレンの顔面偏差値』に慣れすぎていた事で悲劇が起こってしまったのである。

 

その辺のアイドルでは太刀打ち出来ない『顔面完全生命体』なチルドレン達は、子供だけでなく大人の目まで惹いてしまったのだ。

 

『講演会とかしませんか』的なお誘いが各所からひっきりなしに行われており、MAGIが合成音声で対応しているのが現状である。

 

だがまあ腹黒い加持とサキエルはこの人気を利用する方向で動いており、『使徒襲撃が終わったら是非!』的に来年の予定を仕込んでいたりする。

 

思いっきりヒーロー扱いして社会を味方につけよう、というのがネルフの戦略であり、その関係上仕方ないとはいえ、一躍時の人になってしまったシンジ達は、どこか背中のむず痒いような気持ちを感じるのであった。

 




美貌のパイロットの皆さん
 
『無口で甘えん坊な妹タイプ! クローン技術で生まれたスーパー美少女、ファーストチルドレン』

『頼りになる姉御肌、恋にも全力! 遺伝子工学で生まれたエリートガール、セカンドチルドレン』

『優しい心と勇気が武器! 両親は天才博士なサラブレッドボーイ、サードチルドレン』

『コミカル! シニカル! ビューティフル! 天才科学者で改造人間!? フォースチルドレン』

『ミステリアスな魅力の美少年! 超能力を持つエスパーヒーロー、フィフスチルドレン』


素敵な仲間
『カツラギ隊長』
『アカギ博士』
『ルイスさん』


付録は5人の関係性がよくわかる相関図付き!
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