【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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胸に一物

サキエル本体はリツコの胎内でしばらく自己の再構築中。だが、その間に彼は『分体』の再編成にも努めていた。

 

再誕を遂げたサキエルの本質は細胞。故にこそ、羊膜の向こう側に1細胞が遊走して母胎の外に行くのも不可能ではない。

 

母胎を脱し、細胞分裂を行なって羽虫となったサキエル分体は、そのまま飛び立つと、ジオフロント内を飛翔して『佐伯ルイ』の元まで到達すると融合を開始。内側から存在を塗り替え、速やかに『再誕サキエル』として再構築された佐伯ルイは、本体が操る肉人形ではなく、分体としての活動を再開する。

 

こういった時のために用意しておいた『書類』を手にルイス・秋江に接触した佐伯ルイは、書類の受け渡し時に指を触れさせる事で細胞を伝達。ルイスのアップデートも終えて、準備は上々。後は『技術二課』ということになっているサキエル分体用の一画でルイスが無限増殖を行えば、見る間に『使徒サキエルの分体軍団』は復活を遂げた。

 

今までと異なるのは、中性ルイス型以外に男女の型を用意した点。レイクローンやレイ本人の欲求は母親に向いており父親には全く興味がなさそうな為、思い切って育成担当を女性に変更したのだ。

 

そして男性は言わずもがな肉体労働用タイプ。

大柄に作っても違和感がないので、サキエル分体として見ても細胞数の関係上出力が大きくなるのだ。

 

ただパワー重視でアメコミヒーローじみた超マッチョ個体を一度作ったものの、目立ち過ぎるということで180cm 80kg程の『スポーツマン体型』で構築してある。ネルフの制服を着て認識を阻害しておけば気に留まらない範囲の細マッチョ君だ。

 

先日の戦いで日本各地で被害が出ている現在、ネルフの顔を日本で売るのなら今がチャンス。男性タイプには早速被災者支援の肉体労働で汗水を流してもらい——別に発汗機能はないが——頼れるネルフ感を自衛隊との共同作戦で演出してもらおう。

 

幸い、日本に被害が出たとはいえ、アメリカやオーストラリアの受けた激甚な被害が報じられた事で、『爆心地付近にも関わらず日本の被害を可能な限り抑え込んだネルフ』を持ち上げるスタイルで報道を操作しているので国内世論はマシ。

 

避難所の増設やら道路の修復やらに分体をこき使ういつもの日々を再開すれば、ネルフの国内評価は維持できるだろう。

 

ゼルエル戦を終えたネルフは、早くも完全復活を迎えつつあった。

 

 

* * * * * *

 

 

「というわけで、お姉さんバージョンの僕を連れてきたよ」

「うわ、すっげー巨乳にゃ」

 

中性タイプのビューティな胸や、レイのキュートな胸、アスカのエクセレントな胸とマリのファビュラスな胸をも越えるジャガーノート級おっぱい。

 

ただまぁこの個体はそもそも『母性重視』としてデザインされているため割と全体的にむちっとしており、海外のスーパーモデル的なイメージはないのだが、それでも思春期ボディの少女達には興味深いのか、割と遠慮なしに揉みまくっている。

 

「へー、このサイズだと結構重いわね。肩凝りそう。アタシは今ぐらいで良いかなぁ……でも男の子は大きい方が好きって聞くし……」

「んへへ、たまりませんな。……あと、姫は望む望まぬに関わらず乳首の感じ的にまだ膨らむと思うにゃ」

「は? 何よその変な判断基準」

「タナー段階による評価を変な判断基準扱いは酷くないかにゃー……?」

 

そんな事を言いながら揉み揉みと揉んでいるアスカとマリ。そんな状況に居た堪れないのが、さっきからその光景に背を向けてテレビゲームをしているシンジと、そのプレイを見守るカヲルだ。

 

「ねぇカヲル君」

「何かなシンジ君。あ、そこ隠し宝箱あるよ」

「本当だ。……300オーラムか」

「技の香薬1.5個分だね。……で、シンジ君の話は?」

「なんで僕たちリビングにいるんだっけ?」

「兄さんが復活ついでに新しい分体のお披露目をするからだね」

「……部屋に帰っちゃダメかな?」

「ダメだろうね」

「後ろのガールズトークが男子には辛いんだよカヲル君」

 

そう告げるシンジは耳まで赤い。

 

まぁ、可愛い恋人が胸がどうのこうのと自分の後ろで喋って居れば、思春期男子なら誰もがこうなる。というより、意地でも振り向かずアスカから意識を逸らすべくアスラと向き合っているシンジは稀有な存在であると言うべきだろう。

 

「……確かに辛そうだね。僕が慰めてあげようか?」

「カヲル君、君の優しい眼差しは出来ればズボンのチャックじゃなくて目に向けて欲しかったな」

「おっとごめん。やり直しのチャンスはあるかい?」

「無いかな……」

「そうか。じゃあせめて後ろの会話を終わらせようか」

 

そう告げて、カヲルはさりげなくATフィールドで拘束していたレイを縛めから解き放つ。

 

解放されたハンターの襲来により『女子のイチャイチャ』から『マリ・アスカVSママエルVSダークレイ』と化した背後の喧騒は、確かにシンジに『きゅうしょにあたった』と感じさせる威力はなくなったものの、冷静になった彼の脳は1つの疑問をカヲルに投げかける。

 

「ねぇカヲル君、レイを最初から拘束しなければよかったんじゃない?」

「バレてしまったようだね」

 

————シンジは龍神烈火拳を閃いた。

 




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