【完結】我思う、故に我有り:再演   作:黒山羊

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矢面に立つ

第5使徒の気配、鳴り響く爆音。それらは鋭敏なサキエルの感覚器官に戦闘の始まりを認識させるに十分。加えて芦ノ湖の近く、二子山に何やら紫巨人とお友達の黄色巨人の気配もあるとなれば、彼のやる事は一つだ。

 

毎度差し向けてきたということは、ヒトの最強戦力はあの巨人と見て間違いない。であれば、二子山を射線に入れないように立ち回るのみ。

 

そう、サキエルの作戦は単純明快。『此処は俺が食い止める! 俺に構わず奴を撃てェ!』というやつだ。

 

もちろんサキエルも、2度目をまともに食らうつもりは全くない。

 

その意思が明らかに現れているのが、彼のプロポーションだ。具体的にいうと、撫で肩になった。というよりは肩の構造がヒト寄りになり、脚部はむしろ発達したというべきか。

 

パーツの縮尺を調整してバランスの良い体格になっているのである。

 

そんなサキエルは勢いよく湖底を蹴って第3新東京市に向けて跳躍。大量の湖水を撒き散らしながらラミエルに向けて怪光線を乱射する。だがその光線は、恐るべきことに『ラミエルのATフィールドをすり抜けた』。

 

その原理は、なんの事はない。サキエルが撃ち込んだのは凄まじく高出力過ぎて可視化されているだけの遠赤外線だ。要は熱そのもの。

 

放熱の為にATフィールドで熱を遮断していなかったラミエルは、それをまんまと食らってしまったのである。もちろんラミエルにとっては完全に意識外の攻撃であり、その『ヘイト』は大きくサキエルに傾いた。

 

そこに追い討ちをかけるのは、今度はゴリ押しでATフィールドを貫徹するサキエルの『光のパイル』。リツコが参考にしたというこの武装だが、サキエルは肉体を修復する際にこのパイルを改造していた。

 

杭を、ATフィールドで構成する形に変更したのである。

 

そんなものを高速で打ち込めば、どうなるか。

 

「KYAAHHHHHH————!?!!?」

「LUOAAAAAAA————!!!」

 

前者はダメージに喘ぐラミエルの絶叫。後者はしてやったりといった様子のサキエルの雄叫び。まさに怪獣大決戦なその状態で、サキエルはあえて一歩飛びすさり、ラミエルに一瞬余裕を与えてやる。

 

受けたダメージに対して『激昂』したラミエルが、そんなサキエルに対して最大出力の荷電粒子砲をブチ込んだのは、もはや必然。

 

だがそれが「誘い」であると判別できなかったのが、ラミエルの敗因だ。

 

サキエルは荷電粒子砲の発射に対し、腰を低くし、思いっきり踏ん張って、ATフィールドで『斜めに受けた』のである。

 

————前述の通り、荷電粒子砲というのは水鉄砲のオバケのようなものだ。では、傾けた板に水鉄砲を撃てばどうなるか?誰もがよく知るように、跳弾するのである。

 

天空に向けて弾かれる、ラミエルの荷電粒子砲。

 

その輝きが雲を貫いたのと、MAGIが『発射』の決断を下したのは同時だった。

 

「シンジ君! レイ!」

「「ATフィールドッ全開ッッ!」」

 

直後、爆音。炸裂したN2爆弾によって超加速を遂げた劣化ウラン徹甲弾は、灼熱の金属ジェットと化してラミエルのATフィールドを打ち砕き、その中枢のコアを寸分違わず貫いた。

 

直後に停止した荷電粒子砲の先には、大きく後ろに下がらされ、太腿まで地面にめり込んだ、丸焦げのサキエル。

 

その眼前で崩れていくラミエルに対して、サキエルはその目を怪しく輝かせ————怪光線で吹き飛ばして、その巨体を芦ノ湖に突き落とした。

 

————第5使徒の遺骸、強奪さる。

 

その状況のヤバさを即座に理解したネルフ司令部はサキエルへの追撃を敢行するものの、ラミエルの死骸に続いて即座に芦ノ湖に身を投げたサキエルに有効な手立てはなく、彼らはまたしても、使徒のサンプルを逃すこととなる。

 

……ラミエルの初登場時に捥げとんだ、サキエルの四肢以外には。

 

 

* * * * * *

 

 

大勝利。まさにそう言う他ないリベンジマッチを果たしたサキエルは、ラミエルの死骸をペロリと丸ごと取り込むと、その構成情報を学習しつつ3つ目のS2器官を駆動させて自己修復を開始する。

 

サキエルはもちろん、ラミエルのような荷電粒子砲に興味はない。ラミエルが巨大なのは、荷電粒子砲発射のためという理由が10割。体格が違いすぎるサキエルには向かない武装だ。

 

だが、その前段階。莫大な電力や磁力を生み出すその能力は、サキエル的にはかなり有益そうだった。

 

何しろこの電気というエネルギー、ヒトの使う様々な装置のエネルギー源なのである。

 

これさえあれば、拾って構造を理解したあんな機械やこんな機械が使えるかもしれない。そう考えたサキエルは、さっそく興味を持っていたある機械を体内で再現すると、幾許かの失敗の末、起動させることに成功した。

 

『————第3新東京市の明日の天気は、晴れのち曇り。神奈川県内はところにより雨の降るお天気となるでしょう』

 

————サキエル、ラジオリスナーデビューの瞬間であった。

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