あ、パイモンだ。好きぃ〜   作:黒姫凛

1 / 3
連載にしました。


プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風だけが音を立てて過ぎ去っていく。崖下から吹き上げる突風がそれを巻き込んで嵐のように強い風が吹き荒れる。

風神を祀るモンドではこの風も当たり前のようなものだが、今程鬱陶しいと思ったことは無い。

 

視界が塞がれる。気配が上手く読めない。

あの男の前で自身のコンディションを落としたとなれば一瞬で見抜かれてどつかれる。

それをわかっていてこの場に呼んだのかは分からないが、対して自分の目的は変わらない。

 

 

 

 

 

ーーー刹

 

 

 

はっと目を見開いた時、身の毛がよだつ残酷なイメージが脳裏を掠める。

寸前に、いやもっと早く。一瞬よりも更に間の開かない出来事が、圧倒的スピードで押し寄せてきた。

思わず全体重を後ろに倒し、握った得物を無我夢中で振り切る。何かに当たった衝撃とその反動により後ろに吹き飛ばされた。数回地面をバウンドし体勢を立て直すと同時に着地。

 

視線を前に向ける。先程までいた場所には人一人入れそうなクレーターが出来上がっていた。

 

頭と身体が同時に、直感と肌を刺激する殺気を読み取り行動に移すまでにコンマ1秒遅れていたら、どうなっていたのかなどと悠長に考えてられるだけ、自分が如何に落ち着いているというのがよく分かる。

冷や汗を流すが、それでも対応出来るだけの冷静さを無くしてはいなかった。

 

 

ニヒルに笑うあの男、見ているだけで苛立ちを感じる。歴戦の勇士を思い浮かばせる右目の上についた三つの傷跡。強面の印象だが、内面は世話焼きの女好き。暇があっては女を口説く一番関わりたくない人物である。

ふつふつと湧き上がるあの男への感情をどう表現すればいいのか、自分では分からなかったが今思えば至極真っ当な事なんだろう。

 

 

 

ーーー僕はあの男が嫌いだ。

 

 

 

たった二言。嫌い、ただこの二言で済むのだと理解した。それほどまでに自分の感情は折り合いをつけて認識していた事に、我ながらため息しか出ない。

 

ガイアとはまた違った苦手意識だが、あの男に関してははっきりと言える。

 

 

嫌いだ。あの男は心底嫌いだ。

 

 

見透かしているのか、あの男は面白いものを見るような笑みを浮かべながら、この場を楽しんでいる。

今の衝突ですら試すかのように、お遊戯のように手を抜いたものだ。構えてなかったから防げなかった、で言い訳する時には身体が真っ二つに割れているだろう。あの男なら何時でもそれが出来る。

 

 

 

「………なんだぁ?怖い顔しやがってからに。突然の事で漏らしでもしたのか?」

 

 

 

聞くに絶えない挑発。何処までも人の顎を逆撫でしてくるあの男。言い返せば更に跳ね返しが飛んでくる。あの男に言葉で組み伏せた事など有りやしない。

 

 

 

「………武器を握った相手を前に口を開くのは、剣士として三流だとか言ってなかったか?」

 

 

「おろ?なんだよぉ、覚えてるじゃねぇかよォ。ジンには忘れただの知らんだのと言ってる癖に、意地悪な奴だなぁ」

 

 

「僕の時間を使ってまでも彼女に教える価値は無い。最も、何故僕に聞きに来るのかが分からない。アンタが居るんだから直接聞けばいいものを……」

 

 

「俺がジンに言ってやってるんだ。それは先輩であるお前に聞けってなっ」

 

 

「……アンタは何処まで僕に嫌われれば気が済むんだ」

 

 

「嫌い嫌い言っても俺はお前の事が大好きだからノーカンだぜっ」

 

 

「………本当に、なんなんだ………」

 

 

頭が痛くなる。何処までも自分に苛立ちを植え付けてくるあの男が本当に嫌いだ。

 

だが迷う事は無い。元よりあの男の方が格上だ。格上の奴が手加減を前提に武器を握っているとなれば、こちらは全力で押し切るただそれだけだ。

手加減される事に嫌悪を抱くが、それを後悔させてやると逆に自分を鼓舞する。

 

 

「俺がぺちゃくちゃ喋ってるのはお前の為に言ってるんだぜ、ディル坊」

 

 

男は表情を殺した。先程までとは違う冷たい声。あの男にしては珍しい姿だった。

 

 

「………僕の為?意味が分からない」

 

 

「お前がどれだけ今回の事に熱心になってるのか聞きたいのさ。いつもクールな癖して扱う元素は灼熱の炎とかお前中々癖のある奴だよなぁ」

 

 

「………それはもう何度も聞いている。そんな下らない事を聞く為の筈ないだろ」

 

 

「冷たいなぁディル坊。剣を振っては俺に転がされてた頃が懐かしいぜ」

 

 

 

キッと、男を睨みつける。要件を言えと叫んでやりたい所だが、それは向こうにとっては好都合な流れだ。挑発的な会話なんてあの男からしたら日常茶飯事。何とか言葉を押し留める。

 

 

「………はぁ、わかったわかった。そう睨むなって。…………手掛かりが、犯人が、元凶がお前だけで見つかるとそう思ってるのか?」

 

 

「………そんな事を聞く為に長い前振りをしたのか?あんただって、分かっている筈だろう」

 

 

「だが後味が悪いだろ。団長であるお前が抜けたとなれば、それこそモンドでの騎士団の真意が問われる。それを加味しても、団長脱退の報を聞いた犯人サイドがどう動くか分からないんだ。今回の件で単独で動く可能性を考えてない訳じゃないだろうぜ、向こう側も」

 

 

「………騎士団のやり方では、何年何十年とかかる事は明白だ。それに、騎士団の上層が既に割り切っているとなれば、最早僕個人で探すしか手は無い」

 

 

「元々群れることがあまり好きではなかったお前が騎士団に入隊すると聞いた時は驚いたが、ある程度人脈も作ったようだな」

 

 

「家を背負うんだ、当然だろう。それに、外交との関わりもかなり深いところまで手が届いている。このまま僕が表立って動かなければ、団長脱退の件も肉親を失った悲しみにくれた団長が降りただけだと犯人グループも思ってくれるだろう」

 

 

「………二度と、普通の顔して表を歩けないぞ」

 

 

「……何を今更。とうの昔に分かっていたよ」

 

 

「………今日は流暢に話すじゃねぇか。専ら半端な覚悟してねぇって訳だな」

 

 

 

ーーーそれを、分かっていて僕に聞いているのだろう?

 

 

 

何かを考えるように男は表情を歪ませた。言ってもあの男も騎士団の隊長格。しかし他の隊長格と違うのは騎士団の中で話の通じる数少ない人物である事だ。

今の現状をどう受け止め、今の騎士団に対する考えを明確に言ってくれるのは他でもないあの男だ。憎たらしい話だが、巫山戯ているように見えて周りをしっかりと見据えているのがあの男。モンド中を探してもあの男に勝る人物は居ないと断言出来る。

 

 

「……分かっているさ。お前の肉親、感情、プライド、全て今回の件で蔑ろにされた事。何より、報復という名の感情が新たにこみ上げていることも。こんな事……考えたくも無いが、俺には難しすぎるぜ」

 

 

「……あんたがそこまで考えてくれなくてもいい。僕は、不本意だがあんたがそうやって難しい顔をしているのを見ると斬りかかってしまいたくなる」

 

 

「んだァこらぁ。悩みのねぇやつみたいに言いやがってからにぃ」

 

 

「それは事実だろう?あんたが悩んでいる事は極々当たり前のことか、僕達ですら考えたことも無い途方も無いであろうスケールの大きさに違いない」

 

 

「振り幅が極端過ぎるだろ。0か100しか悩んでねぇじゃねぇか」

 

 

「鹿狩りで食事した時を覚えているか?アンタは人参とお肉のハニーソテーを食べた時、どうしてこれはこんなにうまいのか従業員を困らせていただろう」

 

 

「あれはあの料理が悪い。俺も生まれてこの方ずっと食い続けてるが訳わかんねぇんだよ!どうしてあんなにも美味いのか!」

 

 

「……理解し難い。どうしてそう気にするんだ。割り切ればいいだろう」

 

 

「なんだぁ?ディル坊はどうして美味いのか分かってるのかぁ?」

 

 

「だから言っているだろう。僕も割り切っていると」

 

 

「……おめぇもわかってねぇじゃねぇかよ。……まぁなんだよ。騎士団に属してる俺からしたらお前の選択肢も間違いではないと思う」

 

 

 

何処か遠い目をしながら男は口を動かした。何かを懐かしんでいるような、そんな印象を見せる。

 

 

「所詮王が居ない自由の国。それを統治している騎士団がいる時点で権力はどうしても騎士団が握っちまう。聖教でも無理だろうな。罪を犯した者には武を持って罰を。外敵には武を持って鎮圧を。歌を歌おうが舞を見せようが料理を振舞おうが、相手側が武を用いたのならこちらも武で対抗しなければならない」

 

「だから騎士団は必要だ。その為に騎士団が作られたと言ってもいい。……だが、その騎士団の中にも、権力維持のために動く輩は数多く居るだろう。上層は騎士団の地位を揺るぎないモノにするために、汚い手を使ってでもモンドには騎士団が必要だと思わせ続ける事に尽力するだろうさ。それが名誉の為、地位のため、権力の為なのかは分からないがな」

 

 

「騎士団が正しいともお前が正しいと思えない。あくまで俺は中立を張ってはいるが、ここまで来るとどちらかに揺るがない限り進展が無いと見える。だから敢えて言おうーーー」

 

 

 

 

 

「ーーー俺はそれでも、騎士団(こっち側)だ。恨むなら、とことん恨んでくれて構わない」

 

 

 

 

 

 

弾けた。バチンと電撃が地を、空を弾けた。火花飛び散る電火は男を包み込むように無数に拡がっていた。

完全な、あの男の戦闘スタイルであった。

 

 

「………分かっていた事だ。アンタは僕に賛同してくれると思っていたし、無論最後まで騎士団側に立つのだと知っていた」

 

 

「なんでぃ、分かってるなら聞かなくても良かったじゃねぇかよ」

 

 

「確認したかったんだ。アンタは、貴方はまだ僕の知る尊敬する師なのかどうかを」

 

 

「………へぇ。で?確認は取れたかい?」

 

 

「……フッ、充分にっ!!」

 

 

肌を焼く灼熱の炎が周囲から燃え上がった。火の鳥を象徴する化身が自分の周りを飛び回り、その身を刀身に流れ込ませた。

 

 

「お前に譲れない意思があるように、当然俺にも譲れない意思があると知れ」

 

 

「………元よりそのつもりだ。あんたこそ、手加減なんてしたら承知しないよ」

 

 

「………けっ、ディル坊、揺らぐなよ。お前が決めた道だ。今さら怖気付くくらいなら、俺が叩きのめしてジンの足に括りつけてやる。覚悟を俺に見せたのなら、騎士団除隊を認めてやる」

 

 

「……僕は必ず犯人を捕まえる。だから、そこを退け……()()()()!!」

 

 

「上等だぁガキンチョ!!てめぇの弱っちぃ焔で俺に傷をつけられるか試してみやがれぇ!!」

 

 

 

 

互いに構える両手剣。方は紅の炎を。方は旺る紫炎を。

互いの代名詞たる元素の焔を滾らせ、その刀身に纏わせる。

 

 

 

「ーーー推し通るっ!!」

 

 

「ーーーははぁっ!!」

 

 

 

バシりと激突した双方。互いの元素が反応し合い激しい元素爆発が起こされた。

周囲の草に燃え移る炎、電撃が走る大地。

 

 

 

 

2人の激闘は、未だ序章に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




パイモンパイモン皆言ってるけど、非常食にたかるんじゃねぇ!!

ディルック様にたかれぇ!!


パイモンにお腹いっぱい食べさせてモラをチラつかせて欲しかったら言うこと聞きなとあれよこれよと全身くまなく撫で回してやりたい(切実
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。