魔法少女リリカルなのはVivid~私のパパは魔法剣士~ 作:ピーナ
とある日の朝、珍しく私はママに起こされる前に起きていた。というよりここ数日は朝早く起きている。
起きてすぐ、ジャージに着替えて家の外に出る。
「おはよー、咲耶」
「おはよ、ヴィヴィオ。待たせた?」
「ううん、私もちょっと前に出てきたところだから」
「良かった~。それじゃ、行こうか」
「そうだね。レッツゴー!」
そう言って私達は走り出す。目指すは近くの公園だ。
どうしてこんな事になったか。理由は数日前に戻る。
その日、私達の先生であるノーヴェに一人の女の子を紹介された。
名前はアインハルト・ストラトス。ウチの学校の中等部2年で古代ベルカの武術を修めている人。ヴィヴィオと同じオッドアイが印象的な人。
アインハルトさんとヴィヴィオがその時戦う事になった。
結果を言うと、ヴィヴィオは負けた。アインハルトさんが強かったのもあるだろうけど、なんていうか、戦いに対する気構えが違った。
その時の「趣味と遊びの範囲内」って言葉にムカッときたけど、結局その場で、二人は翌週再戦する事になった。
後でノーヴェに話を聞いたら、アインハルトさんはヴィヴィオと同じ、古代ベルカの王族の血を引いているとの事で、ノーヴェは同じだからこそ、迷っているアインハルトさんをヴィヴィオなら何とか出来るのではと信頼し、期待したのであの戦いを組んだのだった。
それを聞いてヴィヴィオは伝え合う事が難しいから、同じ格闘技者として、正面から正々堂々とぶつかる事を決めた。
私はそんなヴィヴィオを手伝いたいと思って、朝早く起きるようになった。
元々、練習はしてたから、そこまで苦では無い。むしろ早起きが辛い。
「咲耶いつも、ありがとね。私のわがままに付き合ってくれて」
「気にしなくて良いよ。私はこうやってヴィヴィオと一緒に練習してるのが凄く楽しいんだ。苦手な早起きをしちゃうくらいにね。こうやるのが私のわがままだから」
「そっか。じゃ、公園まで競争だ!」
そう言ってスピードを上げるヴィヴィオ。
「ちょ…負けないよ!」
私は追いかけるために全力で走り出す。
「「はあ…はあ…」」
全力で走って息が上がっている私達。結局着いたのは同時。
「…お前ら、ウォーミングアップの意味、知ってるか?」
「「おはよー、ノーヴェ」」
私達のコーチのノーヴェが来たので挨拶をする。
「おう、おはよう。…それで、さっきの質問の答えを、咲耶」
「ウォーミングアップはスポーツとかをする前の怪我をしないための準備運動だよ」
「じゃあ、何で全力で走ってんだよ!」
「「…つい」」
「…まあ、二人の事だから、どうせ最後少しを競争したとかだろうから、問題無いと思うけど今度からは気を付けろよ?」
「「はーい」」
普段は結構厳しい所があるけど、それは優しさの裏返し、それが私達のコーチのノーヴェ。よくパパが『ノーヴェは師範代とかコーチとか呼ばれるのが好きじゃないみたいだけど、性格的に向いてると思うんだよな』って言うけど、それには完全同意だ。私達にとっては良い先生、良いコーチだ。
「んじゃ、いつも通りのメニューやってくぞ」
ノーヴェの合図で私達は練習を始める。
こんな感じの日が一週間続いた。
結果だけ言うと、ヴィヴィオとアインハルトさんの二度目の戦いもアインハルトさんの勝ちで終わった。
でも、ヴィヴィオの言っていた「正面からぶつかって伝えたい事を伝える」というのは上手く行った。
その後、その戦いを見ていた私は思わず言ってしまった。「アインハルトさん、私と戦ってください」と。
しかも、タイミング良く目を覚ましたヴィヴィオが「私もぜひ見たいです! 咲耶はとっても強いですよ!」なんて言ったからアインハルトさんも乗り気に。
流石に連戦は不味いとノーヴェが言ったので、少しの休憩を挟んで私とアインハルトさんは戦う事になった。
別に言う気は無かったんだけど、どうして言っちゃったんだろう? 強い人を見て力試しをしたかったのかな?
「よろしくお願いします、アインハルトさん」
「こちらこそよろしくお願いします」
一礼してお互い構える。
さっき見た限りだとアインハルトさんは強打タイプ。しかも本気の大人モードだから、私より高い。まあ、そうじゃなくてもアインハルトさんの方が身長が高いけど。
背が高いって事は当然手足も私より長いからリーチの上でも勝てない。でも、懐に飛び込まなくちゃ始まらないよね…。
「二人とも用意は良いな。ルールはさっきと同じ格闘オンリーの五分間一本勝負だ。始め!」
ノーヴェの合図と共に私は全力で突っ込む。前に突っ込みながらの右ストレート。パパ直伝の「幻竜拳」だ。
アインハルトさんはそれをガードする。でも、それが目的だったから、問題無い。距離は詰めれた。私の得意技で行く! 高速の六連蹴り「連牙弾」を繰り出す。何発かは防がれたけど、確実にヒットはしている。少し、後ろに下がったアインハルトさんに追撃を掛ける。私は踏み込みながらのストレートからのラッシュ攻撃である、「幻竜拳」の派生技、「爆竜拳」で畳み掛ける。
しかし、アインハルトさんは冷静に技の終わりを狙って、右の打ち下ろしを仕掛けてくる。回避は間に合わない! ガードする!
「~っ!」
咄嗟にガードしたけど、アインハルトさんの一撃は私の想像以上に重かった。でも、それにビビっちゃだめだ! 前に出なきゃ! 魔法戦技戦ならともかく、今回は格闘戦なんだから!
ひるまず、私は前に出る。アインハルトさんは近付けさせまいと、応戦するけど、私はそれをかいくぐって飛び込む。
「一気に行きます!」
その言葉と共に私はもう一度ラッシュを仕掛ける。でも、さっきのような短い物では無い。拳撃、蹴撃を組み合わせた、高速の連撃技。これが私の得意技!
「殺劇舞荒拳! これで、終わり!」
締めの右ストレート! でも、アインハルトさんはまだ倒れていない。気を抜くな!
「これで決めます! 覇王断空拳!」
すぐさま、アインハルトさんも必殺の一撃を繰り出す。私は咄嗟に防ぐ。でも、勢いを殺しきれず、後ろに吹き飛ぶ。なんとか、倒れずに着地する。
「そこまで! 五分経った。引き分けだな」
結局、勝負は決着つかずだった。
全力は出したから不完全燃焼って訳じゃないけど、勝っても負けても決着は付けたかったな。まあでも、最後の一発だって、ヴィヴィオとの対戦を見ていて、アインハルトさんの打たれ強さを知っていたからだし、あのままじゃ負けてただろうな。
「アインハルトさん、ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます。…お強いですね、咲耶さん」
「いやいや、私なんてまだまだですよ! 今回これだけ良い戦いが出来たのは、ヴィヴィオとの戦いを見てたからですし。そうじゃなかったら、多分最後の一撃ガードできていませんし」
「それでも、あのラッシュのスピードは素晴らしいと思いますよ」
「ありがとうございます!」
実力が上の人に褒めてもらうのはやっぱり嬉しい。それに手数とその回転の速さは私の武器だし、そこを褒めて貰えたのならなおさらだ。
「二人とも、お疲れさん」
「ノーヴェも審判お疲れー。おっと」
ノーヴェの方に行こうとしたら、足がもつれて倒れそうになる。
「っと、大丈夫か?」
しかし、ノーヴェがそれを支えてくれる。
「うん、大丈夫。アインハルトさんの一撃で足に来てたみたい。少し休めばすぐ回復するよ」
「アインハルトの一撃は重いからな」
「一撃が無い私としては凄く羨ましいかな」
「その代わり、お前には速さが有るだろうが。隣の芝は青く見えるもんだよ」
そういう物なのかな? 私としてはアインハルトさんのパワーもヴィヴィオの目の良さも凄く羨ましいんだけど。
「ま、とりあえず今日はお疲れ様。ゆっくり休んで、皆で練習は明日からだな」
ノーヴェのその言葉でその日は解散になった。
たしかに疲れたけど、それは心地良い疲労な訳で、今日はぐっすり寝れそうだ。
でも、その前にパパのご飯とスイーツを食べてからだね。それで元気を回復さ!