たいへんお待たせしました。色々忙しかったもので(汗)すいません。今回はウルトラマンレオと紫天一家のその後のお話です。
複数の月の青白い光が、深い森をぼんやりと照らしていた。
森の動物達が何かを察したように、一斉に逃げ出した。野鳥の慌ただしい羽ばたきが夜の森に響く。大型の肉食動物までが一目散に逃げ出していく。
それから数瞬遅れて、巨大な何かが3つ地響きを上げて森に降り立った。
月光が雲に隠れ詳細は不明だが、それは3体の巨人であるらしかった。その中の1人が尊大に口を開く。
『フフフ……やっと見付けたぞ、ウルトラマンレオ……』
『他の世界にもウルトラ族が何名か派遣されているようですが、どうしますか? 邪魔が入るかもしれません』
他の2人が敬語で最初に声を発した巨人に質問する。どうやら2人はもう1人の部下のようなものらしい。
『俺の邪魔はさせん……あくまで狙いは奴1人……その為の策は考えてある……』
その仮面の下の片眼が光を増した。それは狂気と憎しみに満ちたものだ。憎しみの光だ。冴えざえとした月光よりも冷たい光だ。眼光だけで人間を射殺せそうであった。
『奴は並大抵ではありません。大丈夫でしょうか?』
『その為奴に気取られないよう、密かにあくまで密かに準備するのだ……抜かるなよ!』
『はっ!』
2体の巨人は、もう1人を怖れるように跪き畏まる。恐怖なのか畏敬なのか、巨人達はもう1人に絶対の忠誠を誓っているようであった。
『ウルトラマンレオ! 以前の恨みは忘れていないぞ! 今度こそはマグマサーベルの餌食としてくれる!!』
もう1人の巨人は、右腕に装備されている巨大なサーベルを掲げた。刃が複数の月明かりを反射し、ギラリと冷たい光を放つ。そして月光に露になった巨大な姿は、半身を機械化したマグマ星人であった。
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子供達の元気な歓声が響く。幼稚園程から小学校くらいの少年少女達が、元気に空き地を駆け回っていた。
その中で張り切って走り回る、青い髪をツインテールに括ったフェイトに良く似た少女と、彼女より年下の亜麻色の髪をした可愛らしい少女。
雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャーと、紫天の盟主ユーリである。地球で言う、鬼ごっこのような遊びをしているらしい。
泥だらけになって近所の子供達と遊ぶ様は、年相応の子供であった。
駆け回って陽が暮れる。めいめいに家に帰る子供達に別れを告げ、2人は空きっ腹を抱えて走って帰路に着く。
「今日の晩御飯は何かな、カレーが良いな!」
「ハンバーグかもしれないですよ」
互いに好きなメニューを言い合いながら走っていると、下町風情が残る住宅街に出る。道行く人にレヴィは元気よく挨拶し、ユーリはペコリと丁寧に挨拶しながら住宅街を走り抜ける。
小綺麗な2階建ての家が見えてきた。今の紫天一家の住まいである。カレーの良い匂いがした。家の前に二つの人影がある。はやてとなのはに良く似た少女達だ。
「お前達は……また泥だらけになりおって……夕食の前に風呂だ!」
呆れたように、はやて似のエプロン姿の紫天の王こと、ロード・ディアーチェが声を上げる。板に付いていた。
「お帰りなさい……レヴィ、ユーリ」
その横で頭に猫を乗せたなのは似の少女、星光の殲滅者こと、シュテル・ザ・デストラクターが迎える。
猫は別に飼っている訳ではない。どうもシュテルには猫に好かれる質らしく、何時も寄ってくるのである。
早くもカレーの匂いに気付いたレヴィは、満面の笑顔で両手をバタバタ振ってディアーチェに走り寄った。
「うわあっ、王様今日はカレーだね!?」
「ハンバーグカレーだ」
ディアーチェは偉そうに腕組みして答えを言う。ちょっとどや顔である。それを聞いてユーリが目を輝かせた。
「2人共ハンバーグカレーを食したければ、さっさと風呂に入って来んか!」
「わあいっ♪ ユーリ行っくぞぉっ!」
「はいっ!」
ディアーチェのほとんど母親の一喝に、レヴィとユーリは小躍りせんばかりに喜び勇んで家に入る。ディアーチェとシュテルはその後からのんびり歩いて行く。
その様子を近所の住民達は微笑ましく見ている。ディアーチェとシュテルはご近所さんに会釈すると我が家に戻り、腕白坊主2人の着替えとタオルの用意をする。
世界征服を狙っている彼女ら紫天一家は、表向きは一介の善良な市民として暮らしているのだ。多分……
小綺麗に掃除された居間で、4人は食卓を囲む。レヴィとユーリは欠食児童よろしく、もりもりと夕食を食べている。空腹もあるが、ディアーチェの料理はとても美味しい。
2人の食べっぷりについ目を細めながら、ディアーチェはふと、隣のシュテルに尋ねていた。
「シュテルよ、獅子の王子は今何処をほっつき歩いておるのだ?」
獅子の王子。『ウルトラマンレオ』こと、おおとりゲンの事らしい。
「ええ……昨日のニュースで、怪獣が出たのではと言ってましたから、そちらに出向いているのでしょう……」
シュテルは応えると気になったのか、テレビを点ける。怪獣が出現するようになってから、報道番組でも何処の世界に怪獣宇宙人が現れたか流すようになっていた。
丁度今先週にあった怪獣事件を報道している。ウルトラマンレオも映っていた。
「まったく慌ただしいな……本当に最初に言った通りだな……」
「ええ……自由に暮らしていればいいとの言葉は本当でしたね……」
シュテルの声には染々とした響きがある。ゲンは実際この家には住んでいない。時折様子を見に来るだけである。2人は最初にこの家に来た時のことを思い出した。
「此処が今日からお前達の家だ」
ゲンは2階建ての住宅を指差した。中古だが小綺麗な外観のしっかりした造りの家。今ディアーチェ達が住んでいる我が家。ゲンが手配してもらったものだ。
「うわあっ!」
荷物を担いだレヴィとユーリは、目を輝かせて家を見上げている。鍵を開け中に入るゲンに続き、紫天一家も後に続いた。
「ライフラインも既に通っている……これはキャッシュカードだ。生活費はここから使え。あまり無駄遣いはするなよ?」
ゲンはクレジットカードをディアーチェに手渡した。ゲンの口座である。彼の嘱託魔導師としての給料を使えとの事だ。
嘱託の給料は良い。余程の贅沢をしなければ不自由なく暮らせるだろう。
ゲンはその後数日掛けてこの世界の説明と、暮らしていく上での注意点を一通り教えた。
「まあ、こんなところだ……この世界は平和で暮らしやすい……住んでいる人々も親切で穏やかだ……あまり迷惑を掛けないようにな……困った時は私に連絡しろ」
ゲンは説明を済ませると、一つだけ持っていたサンドバック状の荷物を肩に担ぎ出て行こうとする。ディアーチェは慌てた。
「待て、獅子の王子よ! 何処へ行くつもりだ!?」
「私は受け持っている世界を回って歩こうと思う……たまには様子を見に来よう……」
「良いのか? 我らが何か仕出かすかもしれんぞ?」
ディアーチェの半ば脅すような問いに、ゲンは苦笑を浮かべた。眼光鋭い顔が意外な程柔らかになる。
「それは心配はしていない……お前達がそんな者達なら、元からこうはしていない」
それは彼女らを信頼していると言っているのだ。お人好しと言うより、彼女らの根っ子を理解しているが故であった。下手な誤魔化しや、性根の腐った者のへつらい言などゲンには通用しない。
「それではな……あまり無茶はするなよ」
ポカンとする4人を残し、ゲンは風のように去っていったのだ。
そしてあれから2年近く、紫天一家はすっかりこの世界に慣れ親しんでいた。近所の住人達も、奇妙だがどこか憎めないこの4人の少女達を温かく受け入れていた。
元々管理世界は様々な世界の人間との交流が盛んである。多国籍国家のようなものか。排他的ではないと言うか、懐が広いのだ。その点も紫天一家には有りがたかった。
もうすっかり彼女達は溶け込んでいる。生活にも不自由はない。紫天一家は今の生活を楽しんでいた。しかしディアーチェはどうにも気になる事がある。
「獅子の王子は、いったい何処で寝泊まりしておるのだ?」
ディアーチェは首を捻る。あれから月に一度程は様子を見に来るが、それ以外は何処でどうしているのか分からない。
来る時も監視の為ではなく、無事に過ごしているか気にかけてやって来る感じである。お土産も持ってくる。レヴィとユーリなどはお土産を心待ちにしているくらいだ。
皆の無事を確かめ不自由が無いか確認すると、また風のように去ってしまう。一番近いのは、娘達を気に掛ける単身赴任の父親であろう。
ディアーチェは態度こそ尊大であるが、馬鹿でも愚か者でもない。今こうして皆と穏やかに暮らせているのが、ゲン達のお陰だという事を判っているし感謝もしている。まあ口にはしないであろうが。
それは他の者も同じだ。シュテルやユーリはもちろん、あのレヴィでさえそれは判っているだろう。
「せめて……食事でもしていかんか……」
ディアーチェは、満面の笑みで彼女の作った料理を頬張る皆を見て、ついこぼしていた。
彼女は凄まじい程に料理の腕を上げていた。はやてを元に実体を持ったせいか、料理がとても得意である。今現在のディアーチェの料理の腕前ははやてと互角であろう。
しかしその手料理を、ゲンは一度も食べていなかった。
「おおとりさんは、本当にすぐ行ってしまいますからね……」
シュテルはそんな王の気持ちを察してか、表情の変化は乏しいながらも染々と頷いた。ゲンはこの家に長居しないのだ。来てやることは、まず皆の話を聞くことである
「おおとりさん、こないだね、皆で動物園に行ってきたんだよ! みんな格好良かったんだ!」
「ご近所の方から、たくさんお裾分けを貰うんですよ。皆さん良い人達で」
「そうか……それは良かったな……」
ゲンは目を細めてレヴィやユーリの話を聞く。その様子は子供を思いやる父親のようだった。2人はゲンに懐いていた。
ユーリが懐いているのは意外に思えるが、元は人間であった彼女には、今は記憶すら定かではない父親をゲンに見ているのかもしれない。
そしてゲンは、4人から最近あった出来事などを聞き必要な事を確認すると、止める間も無く居なくなってしまう。
「ふっ、ふんっ、まったく慌ただしい事よ。我の腕前で度肝を抜いてやろうと思ったのだがな……」
「そうですね……次こそはおおとりさんに目にもの見せてやりましょう……」
素直でないディアーチェに合わせ、シュテルはとても料理でとは思えない程物騒な返しをする。
そのやり取りを聞いて、レヴィはご飯を頬張りながら目を輝かせた。
「おおとりさんは、怪獣と戦ってるのかあ……もぐもぐ……良ひなあ……僕もかいひゅうと、しょおぶしてみたひなあ、もぐもぐ……」
「喋るか食べるか、どっちかにせんか……行儀が悪いぞ」
ディアーチェはレヴィに注意しておく。そこで先程から何か思案していたシュテルが、
「王……おおとりさんは必要以上に此処に長く居るのを避けてるように思えるのですが……」
「お前もそう思うか……?」
ディアーチェもそう感じていたらしい。するとユーリが食事の手を止め、おずおずと口を開いた。
「……この間私1人の時、アインスが訪ねて来たのは言ってますよね?」
「近くに仕事で来たので、寄ったんでしたね……? たまたま私達は出掛けてましたが……」
シュテルが応えた。そこでユーリは口ごもる。少し言いづらいことらしい。
「言ってみろユーリ……」
ディアーチェが優しく先を促したので、ユーリは話し始めた。
「私その時おおとりさんのことを話したら、アインスが言ってたことが有るんです……」
「ほう……?」
相槌を打つディアーチェ。アインスはユーリに親近感のようなものを抱いているので、小さな盟主を気にかけている。
「長居しないのは、気を使わせないようにしているだろうとのことでしたが、もう一つ……おおとりさんは昔大切な人達をほとんど無くしているって……」
ディアーチェ達は意外な話にハッとする。
「私達を万が一にも戦いに巻き込みたくないせいもあるのではと、アインスは言ってました……亡くした人達の中には私くらいの子もいたそうです……」
「余計な気を回しおって……」
ディアーチェは不機嫌そうに腕組みした。確かに彼女達は消滅したとしても、時間を掛ければ何れ復活する事ができる。
しかしM78ワールドは様々な力を持った怪獣、宇宙人の宝庫。封印されたり吸収されたり、2度と復活できなくされてしまう危険もある。
プログラムに直接干渉できるものまでいるのだ。一概に紫天一家も安全とは言えないのである。
ドキュメントデータを見ても、こいつとは戦わない方が良いと思うものも少なくない。ゲンの心遣いは判るが、釈然としないディアーチェであった。
紫天一家はヴォルケンリッターとアインスのように、永い間人間の勝手な都合で自由など無かった。ゲンはせめて彼女達に平穏に暮らしてほしいのだろう。
シュテルはもう一つフォローを入れておく。
「王……私達は表向きは消滅したことになっています……あまり目立つなと言うこともあるのでしょう……」
「それは判るがな……まったく……」
紫天の王は、ニュース画像に流れるウルトラマンレオの映像を、不満げに見詰めた。すると画面が切り替わり、無人機によるものと思われる画像が流れる。
「あっ、これ今のやつだ!」
レヴィが画面を指差す。他の次元世界のリアルタイム映像だ。ゲートから現れた怪獣が、街に向かって進撃しているところであった。逃げ惑う人々。炎に包まれる家屋。
まだ人家の少ない場所なのと、避難誘導のお陰で被害はまだ少ないが、このままでは甚大な被害が出てしまうだろう。
怪獣は前面が赤、背面が青いが前後全く同じ姿をしていた。前後どちらから見ても顔がある。まるで赤鬼と青鬼の前面だけを1つに張り付けたようだ。
怪獣は前後ろ二つの顔からそれぞれ超高温の火炎『ダブルフェイスファイヤー』を吐き、辺り一面を火の海と化す。そして管理局の武装隊の攻撃をまったく受け付けず、高ランク魔導師の攻撃すらものともしない。
並みの怪獣なら高ランク魔導師で対処できる場合もあるのだが、この怪獣には全く通用しない。
それもその筈。阿修羅像に更に鬼を加えて禍々しくしたような奇怪な姿。『二面凶悪怪獣アシュラン』だ。その姿は怪獣と言うより怪人に近い。以前出現したアシュランの別個体だ。
その戦闘力はかつて、ウルトラ戦士単独では太刀打ち出来ないと評された程の強力怪獣である。
魔導師部隊を羽虫のように蹴散らし、大都市に乗り込もうとするアシュラン。暴虐の本性のままに荒れ狂おうとする。
恐るべき破壊力と暴虐に、さしものディアーチェ達も息を呑んだ時だ。目映いばかりの光が輝き、その前に真紅の雄々しき巨人が立ち塞がった。
ウルトラマンレオだ。レヴィとユーリは箸を止めて、レオに声援を送る。
「ウルトラマンレオだあっ! 行っけぇっ! おおとりさん!!」
「おおとりさん、頑張れ!」
ディアーチェとシュテルも画面に見入っていた。アシュラン。以前レオ単独では勝てないと言われた程の強力怪獣。
以前のアシュランは、ウルトラマンジャックとレオとの2人掛かりでようやく倒したのだ。果たしてウルトラマンレオは?
『エイヤアアアッ!!』
ウルトラマンレオの、烈帛の気合いが大地に響く。左手を前に突き出し右拳を引いた得意のレオ拳法の構えだ。
アシュランは敵の出現に、凶悪極まりない顎を開き咆哮を上げる。
巨人と怪獣は大地を揺るがし激突した。アシュランの剛力無比の腕がレオを襲う。
獅子の戦士は突進の勢いをいささかも緩めず、首を振って剛腕をかわすとカウンターで、アシュランの横っ面に右正拳突きを叩き込む。
吹っ飛ぶ巨体。顔面から大地に倒れ込む。追撃を掛けようとするレオだが、アシュランの背面の青い顔が牙を剥く。その口から超高温の炎が吹き出した。
『ぬっ!』
寸前で後退するレオ。アシュランは背面も前面であるのだ。死角が無い。素早く起き上がった二面怪獣は、青面のままレオに猛攻を加える。
その暴風雨のごときパワーの前に、レオも防戦一方に見えた。あのウルトラマンレオがじりじりと追い詰められていく。胸のカラータイマーが点滅を始めていた。
ウルトラマンレオの次元世界での活動時間は2分40秒。地球と変わらない。時間が無い。
「頑張れ、おおとりさん! ウルトラマンレオォッ!!」
「おおとりさん、頑張れぇっ!」
レヴィとユーリは声を張り上げて、届けとばかりに危機に陥る獅子の戦士に声援を送る。その中でディアーチェとシュテルは、戦況を冷静に見ているようだった。
『タアアッ!』
レオは高く跳躍して、ようやくアシュランの猛攻から逃れる。周囲を連続してジャンプし、相手を幻惑しようとしているようだった。
捕まえられないことに業を煮やしたアシュランは、二面両方からダブルフェイスファイヤーを一気に吹き出した。凄まじい火力だ。これでは周囲が壊滅状態になってしまうが……
「あれ……?」
レヴィが画面に目を凝らした。何時の間にか周りに何も無い、岩場のような場所にレオとアシュランは移動していた。人家や避難民はおろか、山火事になるような木々すら無い。
「そう言うことだ。獅子の王子は、完全に被害が及ばない場所まで防戦のふりをして敵を誘導していたのだ。それに見ろ。王子は先程から敵の攻撃をまともに食らっておらん。全て捌いておる……恐るべき手練れだな……」
ディアーチェは、狐に摘ままれたような顔をしているレヴィとユーリに説明してやる。
「始まりますよ……おおとりさんの反撃が……」
シュテルが僅かに微笑を浮かべたようであった。それに応えるように、ウルトラマンレオの双眼が光を増した。
『エイヤアアッ!』
獅子の戦士が雄叫びを上げる。火炎熱戦を最小限の動きでかわし、アシュランに中段回し蹴りを連続して叩き込む。堪らずよろめく二面獣。レオの猛攻は終らない。
更に鋼鉄の拳が、アシュランの顔面に、ボディーに次々に炸裂する。まるで至近距離でミサイルを放っているかのようだ。
剛腕を振り回し反撃を試みるアシュランだったが、レオはその腕を巧みに掴み、一本背負いで頭から大地に叩き付ける。土砂が巻き上がり、大地が地震のように震えた。
地面に半ばめり込んでしまったアシュランだったが、ダメージを無理矢理ねじ伏せ猛然と立ち上がる。前後両方の口から、超高温火炎熱戦を火山のように吐き出した。
あっという間に周囲が焦熱地獄と化す。巨大な岩石群が高温で真っ赤に赤熱化し、終いにはプラズマ化してしまう。
熔鉱炉のような有り様になった大地を、ウルトラマンレオは疾走する。死角無しのアシュランは火炎熱戦を吐き続け、レオを寄せ付けないつもりだ。
そうはさせじと獅子の戦士は、地上1000メートルの跳躍力を生かし大きく宙に飛び上がる。アシュランはレオを撃ち落とそうとするが、当たらない。掠りもしない。
自在に跳躍してダブルフェイスファイヤーを全てかわしたレオは、赤面の顔に炎の『レオパンチ』を放つ。音速を遥かに超えた速度で拳が耳朶を打つ唸りを上げる。
「イヤアアアッ!!」
強力極まりない赤熱化した拳がアシュランの顔面を叩き潰す。どす黒い血が飛び散り、牙が砕け散る。絶叫を上げる二面獣。しかし前面がやられてもまだ裏面がある。
青面に切り替えたアシュランは口から火炎熱戦を吐こうとする。しかし既にレオの姿は無かった。
姿を見失ったアシュランは慌てて辺りを見回すが、時既に遅し。天空に真紅の巨人が舞う。
空中で軽業のごとく回転するレオの右脚が炎と化す。必殺の『レオキック』!
『タアアアアアアアッ!!』
炎のキックがアシュランの顔面を粉々に蹴り砕く。その威力の前に頭部が上半身ごと爆砕した。
レオが大地に降り立つと同時に、死体となったアシュランは火柱を上げて吹き飛んだ。
以前地球で戦った時とは違うのだ。今のウルトラマンレオにとって、アシュランなど敵ではなかった。
レオは『ウルトラマント』を取り出し、焦熱地獄と化した大地に翻すと、炎は鎮火し大地は元の穏やかな温度に戻る。
それを確認すると、レオは空に飛び上がり姿を消した。
《いったい彼らは何者なのでしょうか?》
戦いが終わり、カメラがスタジオに戻る。中年の男性ニュースキャスターが、しかめ面で視聴者に問い掛けるように話した。
《今のところ彼ら、ウルトラマンと呼ばれる常識を遥かに超えた力を持つ巨人達は、ゲートから現れる巨大生物を撃破もしくは捕獲すると姿を消しています。
味方なのではないかとの意見も有りますが、いまだ正体不明で、更には以前の巨人『ダークザギ』の件もあり、危険なのではないかとの声も根強いようです》
やはりそう簡単に信じてもらう訳にはいかないようだ。ゼロ達ウルトラマンは、これからも行動で示していくしかない。信頼を得るのは難しいのだ。失うのはとても簡単なのに……しかしやはり紫天一家には面白くないようだ。
「何だい、助けられて疑うなんて!」
レヴィがプンスカ怒ってテレビに抗議している。ユーリも納得いかないようだ。シュテルも判りづらいが少しムッとしているようだ。正直ディアーチェも面白い訳ではない。
彼らウルトラマン達が、純粋な善意と使命感で戦っていることを知っているからだ。実際に会って直接彼らを知ればそれは判る。
納得いかない面々を他所に、次のニュースが流れる。それは最近この世界で起こっている事故のニュースだった。それを見たシュテルは、眉を僅かにひそませる。
「王……そう言えば最近妙に感じることが有るんです……」
「妙な事……?」
ディアーチェは首を傾げた。この世界は平和そのものの世界だ。戦争も無い。それなりに争いはあるが、それは何処の世界にもある程度のものだ。
それに此処には、まだゲートも怪獣宇宙人も現れていない。シュテルは少し自信が無さそうだったが疑問を口にする。
「今も言ってましたが、最近機械トラブルで、他世界との通信に不具合が生じてしまっているのはご存知ですよね?」
「うむ……何か事故があったらしいが……お陰で今他世界との連絡に支障をきたしているようだな……」
「最近こうしたトラブル続きが多い気がするのです……」
「むう……」
ディアーチェはシュテルの言いたいことを察する。少し不穏な気配を感じる気がすると言いたいのだろう。
「考えすぎだと良いのですが……」
シュテルは画面を見ながら呟いた。偶然である可能性も否定できないが、気になっているのだ。ディアーチェは考えすぎと笑う気にはなれなかった。
「何か厭なものの前触れかもしれんな……」
右腕であり、知のマテリアル、シュテル・ザ・デストラクターの言は信頼できる。それにディアーチェ自身も妙に心がざわつくものを感じた。
「そろそろ獅子の王子が様子を見に来る頃だ。その時に伝えておこう」
しかしさすがに彼女達も気付かなかった。その僅かな異変は、まさにおおとりゲン、ウルトラマンレオがこの世界に寄るタイミングを狙って起こっていたことを……
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『手筈は……?』
『万全です』
サイボーグマグマ星人の問いに、跪く2体のマグマ星人は報告する。
『ウルトラマンレオは月に一度必ずこの世界に戻る……』
サイボーグマグマの口許がニヤリと歪に歪む。作戦の為に、かなり前から様子を探っていたようだ。
『行き先はさすがに気取られる恐れがあるので判りませんでしたが、この世界にレオが定期的に滞在するのは間違いありません』
『来いウルトラマンレオ! その時が貴様の最期だ!!』
憎しみに燃えたサイボーグマグマの片眼が、再び狂気の火を帯びた。
つづく
それでは次回『紫天の恩返し(後編)』でお会いしましょう。