夜天のウルトラマンゼロ   作:滝川剛

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下ネタ注意です。まあ、氏家作品レベルですけど。しょうもないネタばかりです。
メビウスを観ていた当事、ミライが下ネタ振られたら愉快な事になるんだろうなと思ったのが切っ掛けです。



第30話 電光石火エロ作戦や

 

 

 シグナムはたいへん焦っている所であった。 夜風呂に入る前に、走り込みに出るゼロに付き合って外に出たまでは良かったのだ……

 

 夜道を走っている最中、シグナムはふと視線を感じて並走するゼロを見た。すると……

 

(なっ!?)

 

 ゼロが走りながら、シグナムを血走った目でガン見しているではないか。しかもその視線の先は、

 

(わわわ私の胸を見ている!?)

 

 明らかにシグナムの豊かに揺れる二つの駄肉……もとい胸を見ているように見えた。そこで以前にしてしまった約束が甦る。超獣3体との戦闘の後の、胸うんぬんの話である。

 

(どどどどうすれば?)

 

 思わず胸を隠しそうになってしまうが、ゼロに邪な感情が無い事は分かっている以上、ここで下手な行動をとると自分だけ意識している形になってしまう。それはとても悔しかった。

 

 守護騎士ヴォルケンリッターの将として、そんな無様を晒したくない。でも恥ずかしいものは恥ずかしい。将はとても恥ずかしがり屋さんなのである。本当に戦闘しかして来なかったのだろう。

 しかしこうなると、ゼロになまじ邪な感情が無いのも質が悪い。シグナムはたいへん焦ってしまった。

 

(くくく来るのか? 遂に……! このまま触らせたりしている内にゼロが目覚めてエスカレートし、終いには直に触らせろと言われたら、それ以上を望まれたら、わわわ私はどうしたら……?)

 

 走りながら想像が変な方向にエスカレートし、走りながら器用に苦悩する烈火の将である。

 

(そそそそんな事になったら、私は……っ!)

 

 シグナムの煩悶を他所に、ゼロは不意に脚を止め、意を決したように口を開いた。

 

「シグナム……」

 

 同じく立ち止まった剣の騎士は、思わずビクンとしてしまう。しかし内心の動揺を気取られる訳にはいかないと平静を装い、

 

「ど……どうした……?」

 

 声が上擦り顔が真っ赤っかで全然成功したとは言えないが、取り合えず取り繕う事は成功したようである。

 するとゼロは視線を逸らさずに、とても良い笑顔を 浮かべてシグナムの胸の辺りを遠慮なく指差し、

 

「やっぱりそうだ! あそこを走ってるのは最近噂になってる屋台ラーメンの車だぜ、シグナム食って行こうぜ!」

 

「はっ……?」

 

 シグナムはポカンとして、ゼロが指差した方向を見てみた。すると丁度、屋台の軽トラックが走っているのが見える。チャルメラのパ~プ ~という独特の音も聴こえた。

 何て事は無い。ゼロはシグナムの向こうに屋台が見えたので、確認していただけであったのだ。

 

「…………」

 

「どうした? シグナム……?」

 

 ゼロは立ち尽くすシグナムを怪訝に思い声を掛ける。すると彼女はワナワナと肩を震わせ、

 

「駄目だ! そんな事より鍛練だ! 来いラーメンなど後回しだ!!」

 

 もの凄い剣幕で即座に却下した。憤りをぶつけるように、鍛練する事を提案ならぬ命令する。

 

「お、おお……っ?」

 

 稽古をする予定ではなかったが、尋常では無い迫力にたじたじになったゼロは思わず頷いていた。下手に逆らったら殺されそうである。

 この後明らかに殺気が込められた狂ったような攻撃を散々打ち込まれ、青くなるゼロであった。

 

 さて……こんな調子で、朴念仁と言ったら、朴念仁の人に怒られそうなゼロではあるが……

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

「頼むっ! この通りだ!!」

 

 その大学生程の黒髪青年は、ゼロを拝むようにと言うか、実際に拝み倒すつもりで頭を下げ両手を合わせた。

 7月も後半に入り、日射しが酷しい日曜日の昼下がりの公園。蝉の鳴き声が鬱陶しい程響く中、ウルトラマンの少年は、呼び出された早々に頭を下げられビックリである。

 

「……いや……別に構わねえけどよ……」

 

 ゼロは戸惑いながらも承知していた。困っているようだったのでつい引き受けてしまう。この辺り何だかんだで人が良い。

 

 ちなみにこの最近出来た大学生の友人は、たまたま1人でトレーニングにしていた時に知り合い、妙に馬が合った。それ以来友人付き合いをしている。

 その友人は戦友そっくりな声で礼を言うと、かなり大きめのダンボール箱をゼロに手渡し、とても良い笑顔で帰って行った。

 

(……おかしな奴だな……? そんなに困ってたのか……)

 

 ゼロは、重荷を降ろしたかのように軽い足取りで、スキップせんばかりに帰って行く友人の後ろ姿を見送り、良い事をしたと素直に思った。

 

(……でも……何なんだこれは……? 俺くらいの歳の人間男子には素晴らしいものだって言ってたが……?)

 

 不思議そうに箱を見る。興味が湧いて来た。まだまだ人間の習慣には疎い部分が多々ある。

 

(人間修行になるかもな……)

 

 帰って早速開けてみようと、ダンボール箱を抱えて家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 買い物に出ていたはやては一通りの物を買い揃え、シグナムとシャマルと共に自宅へと向かっていた。

 ヴィータはザフィーラを散歩に連れて行き、ゼロは友人に呼び出されて出掛けてまだ帰っていない筈だ。

 家が見えて来た。3人が初夏の日射しから逃れるように玄関に滑り込むと、ゼロの靴がある。

 

「あっ、ゼロ兄帰っとる、ただいまあっ」

 

 はやては中に呼び掛けるが、反応が無い。だがリビングの方から微かに音が聴こえて来る。

 

「ゼロ兄……どうしたんやろ……?」

 

 リビングから何かの音がする。確かに帰っている筈なのだが。不審に思いながらも、はやて達は中に上がった。すると後ろからヴィータの声がする。

 

「ただいま~っ」

 

 丁度ザフィーラの散歩から戻って来たのだ。 全員揃って話しながらリビングに向かう。近付くに連れ、やはりリビングから何かの音と言うか声のようなものが聴こえて来た。

 

「なあんや、ゼロ兄やっぱり居るやないの」

 

 はやては妙に思った。こちらの声は幾らなんでも聴こえている筈である。シグナムも妙に思い、先に立ってリビングのドアを開けた。

 

「ゼロ……? 帰ったぞ、聴こえなかったの……」

 

 そこまで言った所でシグナムは、突如戸口で硬直してしまい、持っていたエコバックをドサリと落としてしまった。大根だの玉ねぎなどが、ゴロゴロと廊下に転がってしまう。

 ドアが開くと同時だった。その場に居た全員の耳に、艶っぽい女性の甲高い声が響いた。

 

《あ~ん!  イく! イくうう~っ! イッ ちゃううぅぅぅ~っ!!》

 

 全員その場で固まってしまっていた。別に何処かに行きたい訳では無い。ましてやただ叫んでいる訳でも無い。

 その声は紛れも無く、アレの時に女性が発する声と言うヤツである。 はやて達はしばらくの間思考停止状態になってしまい、口を開けて静止してしまっていた。

 そんな中、先頭で茫然自失状態だったシグナムは湧き上がる怒りのせいで、辛うじてその状態から抜け出した。

 湯気を出しそうな程顔が真っ赤になっている。押さえ切れない怒り。額に青筋がビキビキと浮かぶ。女を引っ張り込んだ? しかもこんな真っ昼間から。

 あんな邪な感情など無いという顔をしておきながら、とんだ女ったらしだったのだと思う。シグナムはその表情に明確な殺意を浮かべ、

 

「ゼロォォッ!!」

 

 ダカダカと中に踏み行り力の限り怒鳴った。 殺意が押さえきれない。

 

「貴様ぁっ! 何をしている!? 女を連れ込むとは万死に値するぞ!! 何処の女だ!? 此処に出せ!!」

 

 古い友人が付けた名の通り、烈火の如く怒り狂ってリビングに飛び込んだシグナムの目に映ったものは……

 世間で言う所のH本、見も蓋も無い事を言うと『エロ本』を大量に床に広げて、それらをクソ真面目な顔をして読んでいるゼロの姿であった。

 

 そしてご丁重に、リビングの大型液晶テレビにはアダルトDVDがかけられ、画面いっぱいに女と男の〇〇〇シーンが音量MAXで流れている。

 

 シグナムは最早どこから突っ込めばいいのか判らない有り様に、しばし頭が真っ白になってしまった。しかし同時にホッと胸を撫で下ろしたのも事実である。

 だが女こそ連れ込んではいないが、これはこれで困った状況であると気付く。

 

「ゼロ兄?」

 

 その時皆が止めるのも聞かず、はやてがリビングに入って来た。慌てて他の面々も続いて来るが、リビングの惨状を見て目を丸くする。

 はやてはシグナムが怒り狂ったお陰でワンクッション置け、あの声がテレビのものだと気付いたのだが、予想以上の有り様に顔を引きつらせてしまった。

 

 そんな主と、後から顔を出した鉄槌の騎士の目を咄嗟に隠すシャマルであるが、既に手遅れである。

 そんな超気まずい緊迫した空気の中、ゼロはようやく皆が帰って来た事に気付き顔を上げた。余程集中していたらしい。

 

「ようお帰り、どうした……? みんな何でそんな所で突っ立ってんだ?」

 

 いたってごく普通に向かえ入れる。しかしそれに応える者は無い。ゼロは固まったままの皆を不審そうに見回し、

 

「……どうしたみんな……? シグナムも何で怒鳴ってんだ……?」

 

 心の底から不思議そうに首を傾げた。シグナムもはやても、シャマルもヴィータも、何と言ったら良いか解らない。

 すると蒼い毛並みを揺らして、狼ザフィーラが静かにゼロに歩み寄った。女性陣には、その姿が救世主のように映ったと言う。それはともかく、ザフィーラは口を開き、

 

「……ゼロ……そういったものは普通、人に見られないようにするものだ……特に異性にはな……」

 

「ヘエ……そうだったのか……判った」

 

 守護獣の分かり易い噛んで含めるような説明に、ゼロは成る程と納得したようだ。

 いそいそとH本をダンボール箱に仕舞いDVDをデッキから取り出すと、さっさと自分の部屋に戻って行った。

 ゼロが去っても、しばらく呆けていたはやて達女性陣だが、ハッと同時に顔を見合わせ、

 

「「「「ゼロ(兄、君)が色気付いたあ あぁぁっ!?」」」」

 

 見事にハモった叫びが八神家に響き渡った。

 

 

 

 

 はやての部屋に女性陣全員が集合していた。 ドアには張り紙がしてある。それには『緊急会議中、男子入室禁止』と書いてあった。

 室内では、はやて、シグナム、ヴィータにシャマルが顔を突き合わせて、深刻な顔で何やら話し合いをしてる。はやては、真面目くさった顔で周りを見回し、

 

「問題は、ゼロ兄への対応をどないするかという事や……」

 

 分別くさい台詞を吐く。そんな主を見てシャマルは困ったように眉をハの字にし、

 

「……あのう……はやてちゃんとヴィータちゃんには、刺激が強すぎると思うんですけど……?」

 

 最もな意見である。小学生が率先して語る事では無い。続いてシグナムが、

 

「ど……同感です……ここは私とシャマルとで何とかしますので、主達は……」

 

 顔は赤いが、腕組みしてコクコク頷く。子供扱いされたヴィータは不満そうに口を尖らせ、

 

「何だよ、アタシだって立派な大人だぞ! 似 たような歳じゃんか!」

 

 拗ねている。それもそうなのだが、やはりメンタリティーが子供なので、厳しいものが有るのではないだろうか? はやては怯まず反論する。

 

「私は家長として責任てもんが有るんや、ゼロ兄が道を踏み外さんようにせなアカン義務が有るんよ」

 

 胸を張って宣言する。何だか息子の部屋でH本を見付けてしまったお母さんのようである。

 

「それに……こんなに周りに女性が居るのに、他の女の裸見るやなんて許せへんと思わんか?」

 

 はやては拳を振り上げて力説である。非常に面白くなかった。どうやらお母さんでは無かったようである。H本に焼き餅を焼いてしまったのだ。

 確かに! と何か殺気立つ3人。特に約1名は凄まじく殺気立っているようだ。誰かは言うまでも無い。

 こうしてシグナムとシャマルを言いくるめたはやては、改めて気になった事を口にする。

 

「だいたいゼロ兄は、あないな物どっから持って来たんや?」

 

 自分で買ったとは思い辛い。新品には見えない物もあったようだ。するとシャマルが、

 

「ザフィーラに聞いてもらったんですけど…… 友達に押し付けられたみたいです……何でも最近彼女が出来たからと言う事で、棄てるのも勿体無いからと……」

 

「要らん事を……」

 

 はやては、やれやれとため息を吐く。するとシャマルが生徒よろしく手を挙げ、

 

「でもはやてちゃん……ゼロ君は人間とのハーフと言う事ですし、高校生くらいの年頃だったら、ああいう事に興味が出るのは男の子として仕方無いんじゃ……?」

 

 恐る恐ると言った感じで思った事を言う。 中々話の判る意見であるが、はやてはゆっくりと首を振り、

 

「……ゼロ兄な……そっち方面の知識は、ほとんど幼稚園レベルなんよ……それがいきなりアレやと刺激が強すぎるわ……」

 

 などと一端の口を叩くが、実は本などで聞きかじったくらいの耳年増なだけで、そんなに詳しい訳でもないのは内緒だ。しかしゼロが幼稚園レベルなのははやてが原因である。

 ゼロが地球に流れ着いて間も無い頃、地球の事人間の事を教える時意識的にせよ無意識にせよ、そっち方面は避けてしまったのだ。

 尤も僅か8歳の少女にしてみれば、無理も無い話ではあるが……

 

「例えば……みんなが来る前に、こんな事があったんよ……」

 

 はやては身を乗り出して、重々しく語り始めた。

 

「2人でテレビを見とったら、ドラマでたまたまラブシーンをやっとったんよ……」

 

 家族でテレビを見ている時に流れると、非常に気まずい瞬間である。

 

「結構もろなヤツでな……思わず画面から目を逸らそうとした時に……」

 

 3人は揃ってコクコク頷いた。はやては一旦全員を見回すと、ゼロの口真似をし、(似てない)

 

「はやて、あの2人仲がいいなあ……口くっ付け合ってから服を脱ぎ出したぞ。ひょっとしてアレか? レスリングとやらの練習するでもするのか? なんて真顔で言うんよ……流石に参ったわ……」

 

 深々とため息を吐いた。その時はやては困り果て、『格闘家カップルなんやないの……』などと言ってお茶を濁しておいたものである。

 

「……あの馬鹿……」

 

 ヴィータは顔を赤らめ、同じくため息を吐いた。シグナムとシャマルも俯いて顔を赤らめるしか無い。

 

 流石に犯罪になりそうな事は教えてあるが、それ以外は小学生以下のゼロであった。多分 『ウルトラマンメビウス』こと『ヒビノ・ミラ イ』以下だと思われる。

 以前ザフィーラが、ゼロがはやて達の腐ネタを聞いたら怒るのではと思った事があったが、 実際の所は意味が解らなくて首を傾げるだけだったと思われる。

 話を聞いていてシグナムは、ゼロとの以前のやり取りを思い出す。冒頭の胸うんぬんのアレである。

 

(……そう言えば……)

 

 彼女としては、清水の舞台どころか、東京スカイツリーから魔法無しで飛び降りるくらいの覚悟を決めて応じたというのに、肝心のゼロが忘れているくさいのだ。

 冒頭の通り、何時頼まれるかハラハラしていたというのに。こちらも深くため息を吐くシグナムであった。まったく1人焦っていた自分が馬鹿みたいであると思う。

 

「と、言う訳でや……」

 

 はやては再び3人を見回し、何時もの優しく穏やかな笑みを浮かべて見せる。しかしシグナム達には、その笑顔がとても恐いものに見える気がした。狸の耳ならぬ、鬼の角が生えているような……

 はやてはまだあまり凸凹の無い自分の身体を見て、

 

(……私はちゃんと育つんかな……?)

 

 ぶつぶつ独り言を呟いていたが気を取り直し、手をB〇団張りにビシッと掲げ、

 

「ゼロ兄の持っとるH関係のもんは全部没収! 跡形も無く破棄や!!」

 

「「「おお~っ!!」」」

 

 揃って拳を掲げ、気勢を上げる女性陣であった。

 リビングで床に丸くなって昼寝をしていたザフィーラは、響いて来た声に一瞬ビクッとしたが、我関せずとばかりに再び昼寝を楽しむ事にする。

 盾の守護獣は、あの勢いでは何を言っても無駄だろうと覚りきっているのだ。

 

 

 

 

 シグナムとシャマルはドカドカと階段を駆け上がり、勇ましくゼロの部屋目指して進撃していた。はやてとヴィータは下で待機である。シャマルたっての頼みだ。シグナムはその事に関して少し大袈裟に思い、

 

「シャマル…主はやてとヴィータが着いて来るのを必死で止めていたが、どうしてだ……? 確かに幼い主達に見せるにははばかられるだろうが、随分必死だったな?」

 

 シャマルは立ち止まると、顔を赤らめ恥ずかしそうに頬を押さえた。

 

「……3件隣の山本の奥さんに聞いたのよ……最近中学生の息子さんが、ゼロ君と似たような感じになったって……」

 

「何? それはどういう事だ?」

 

 シグナムは湖の騎士の様子に唯ならぬものを感じた。シャマルは真剣な顔でリーダーを見やり、

 

「……それが……山本の奥さんが息子さんの部屋にノック無しで入ったら……息子さんがHな本を見ながら〇〇〇〇してたって、ゲラゲラ笑いながら話してたのよ!」

 

「なな何と! つまりゼロも!?」

 

 シグナムは金縛りに遭ったように固まってしまった。シャマルはお姉さんぶってウンウン頷くのである。

 説明しよう。ご近所付き合いを一手に引き受けているシャマルは、近所のおばちゃん達の井戸端会議などで余計な知識を大量に仕入れているのだ。

 でも山本の奥さん、ゲラゲラ笑わって他人に言わないで欲しいものである。息子さんが哀れだ……

 

「だから、もしそんな事になっていたら、とてもはやてちゃんとヴィータちゃんに見せる訳にはいかないわ!」

 

「なっ、成る程……最もだな……」

 

 シグナムは生真面目に感心してしまった。何だか知ったかぶりをして、同級生に聞きかじりの知識をひけらかしている小学生と、それを真に受ける同級生みたいになっている。

 そんなやり取りの末、変な覚悟をした2人はゼロの部屋の前に到着していた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 着いたはいいものの、シグナムとシャマルは、無言でドアの前で立ち往生してしまっていた。しばらくそのままの姿勢が続いたが、

 

「……シャマル……」

 

「……何……? シグナム……」

 

 シグナムは硬い表情で隣のシャマルを見ると、

 

「わっ、私はこう言った事に馴れてはいない……と言うか、どうしたらいいか解らん、シャマル頼む!」

 

 そう言うと敵の前では一度もした事が無い事、後ろに退いた。シャマルはギョッとして、

 

「むむむ無理よおっ! 私だってどうしたらいいか解らないわよお~っ!」

 

 大慌てで両手をあたふた振って、こちらも後ろに一歩退く。するとシグナムも対抗して、更に後ろに一歩退き、

 

「シャ、シャマルはこのような事に耐性があるのだろう? ならば適材適所という事で頼む!」

 

「ひっどお~い! シグナム私だって耐性なんか無いわよお~っ、奥さん達に話を聞いてるだけなのにぃ~っ、私達のリーダーでしょ? シグナムが行ってよおっ」

 

 戦闘ならともかく、こんなデリケートな問題など扱った事は無い。2人で不毛な言い争いをしていると、不意にゼロの部屋のドアがガチャリと開いた。

 

「「きゃっ!?」」

 

 シグナムとシャマルは、思わず揃って可愛らしい悲鳴を上げてしまう。

 ドアから顔を出したゼロは、部屋の前で固まっている2人を見て怪訝そうな顔をする。だが何か思い付いたようで、いたって自然な様子で声を掛けた。

 

「丁度いい、2人共俺とやらないか? ちょっと付き合ってくれよ」

 

「なっ!?」

 

「ええええ~っ!?」

 

 ゼロの露骨な言葉に湯気を出しそうな程顔を赤くし、驚いてしまう2人である。やはり悪影響を受けてしまったのだろうか?

 

「なななな……何をいきなり言い出すのだ、お前はぁっ!?」

 

「ゼゼゼゼロ君、そんな飛ばし過ぎでしょう!? シャマルお姉さんは哀しいです!!」

 

 もう2人はパニック状態である。中々愉快な光景であった。するとゼロはとても残念そうに肩を落とし、

 

「何だ、2人共忙しいのか……? じゃあヴィータにでも頼むか……」

 

 とんでもない事を言い出し、シグナムとシャマルはギョッとした。

 

「犯罪者になる気か貴様あっ!!」

 

「いけませ~ん!!」

 

 ゼロに猛然と食って掛かる。ゼロは2人の剣幕に目を白黒させ、

 

「じゃあ……ザフィーラにでも……」

 

「お前は見境なしかあっ!?」

 

「ゼロ君には実際そういうのは、駄目だと思いま す!!」

 

 シグナムとシャマルは、血相を変えてゼロに詰め寄った。シグナムはゼロがウホッな変態に進化してしまったと、目の前が暗くなる気がした。

 ゼロは何故怒られているのか訳が解らない、といった風に目をパチクリさせ、

 

「いや……みんなの都合が悪いならいいんだけどよ……なら1人で技の特訓すっから……しかし何で2人共そんなに怒ってんだ?」

 

 それを聞いた剣の騎士と、湖の騎士の目が点だけになっていた。

 

「……技の……特訓……?」

 

「……やるって……そっちの……?」

 

 何て事は無い。ゼロは最初から特訓に付き合ってくれと言っていただけだったのだ。だが H本の事といい、直前までその事で揉めていた2人にはそうとしか思えなかったのである。

 ようやくシグナムとシャマルは、自分達がこっ恥ずかしい間違いをしていた事に気付いた。顔がとんでもなく赤くなって行く。

 

「シグナム、シャマル……どうした……?」

 

 目の前には2人の葛藤などまるで判っていない、のほほん顔のゼロが居る。その表情に、一瞬殺意すら覚えるシグナムとシャマルだった。

 2人はおもむろに顔を見合わせた。以心伝心でコクリと頷き合う。

 

「えっ? 何だあ?」

 

 困惑するゼロを押し退けて、2人はドカドカと部屋の中に上がり込んだ。部屋に置いてあるH本とアダルトDVDをやり場の無い憤りをぶつ けるように、乱暴に片っ端から段ボール箱に放り込む。

 

「ああっ? お前ら何すんだよぉっ!?」

 

 ゼロが慌てて止めようとするが、シグナムとシャマルは額に青筋を浮かべ、

 

「「2万年早い!!」」

 

 声を揃えて思いっきり怒鳴ると、ぷりぷり怒って段ボール箱を持って部屋を出て行った。

 

 

 

 

「さあ、派手にやってな!」

 

「「「おお~っ!!」」」

 

 八神家の庭に女性陣の叫びが木霊す。惨いと言うか、鬼気迫る勢いではやて、シグナムにヴィータ、シャマルはDVDを粉々に砕き、H本をビリビリに引き裂いた。

 止めとばかりにシグナムが、レヴァンティンの炎で残骸に火を点ける。高熱で煙も出さず、 あっという間にゼロ初めて所有のエロ関連は灰になってしまった。

 

「お~い!」

 

 其処へシグナム達の勢いに呑まれて固まっていたゼロが、ようやく復活して駆け付けて来た。庭の無惨な有り様を見るとビックリして、慌てて走り寄って来る。

 

 恨み言でも言うつもりかと女性陣の目付きが険しくなった。そんなはやて達にゼロは、ぷりぷりとさも怒った様子で、

 

「お前ら! 庭先でゴミを燃やすのは条例違反だぞ!」

 

「「「「突っ込むのはそっちか! この鈍感宇宙人っ!!」」」」

 

 全員のツッコミが辺りに響き渡り、H本の灰が風にヘナヘナと舞った……

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 それから数日後、そろそろ夏の暑さも本格的になる夏休み前の平日である。八神家の面々は、近場のレジャーランドに来ていた。

 流れるプールや、ウォーターコースターが完備されている大きな所だ。商店街の福引きで当たったのでやって来たのである。シグナム達女性が増えたので、はやても色々不都合が無くなり皆でやって来たのだ。

 まだ夏休み前という事でさほど人は多くなく、程よい人出である。そんな中、水着に着替えたゼロと人間形態のザフィーラは、プールサイドではやて達を持っていた。

 

 端正な鋭い顔に、鍛えられ引き締まった身体のゼロと、褐色の肌にゴツイ筋肉のザフィーラは目立っており、奥様方の視線を集めている。更にしばらく経った頃、

 

「ゼロ兄ぃっ、ザフィーラ、お待たせや」

 

 はやての声が聴こえた。振り向くと、水着に着替えた女性陣が此方にやって来るのが見えた。はやてはシグナムにお姫様抱っこされている。

 

 はやては白地に青が所々に入ったワンピースの水着で、シグナムは紫色の結構際どいビキニ。

 シャマルも際どい緑系のセパレーツ水着で、ヴィータは赤系のフリル付きのワンピース水着である。

 非常に華やかな光景だ。はやてとヴィータは可愛らしく、シグナムとシャマルは見事なプロポーションに露出の多い水着も手伝って、えらく色っぽく見える。

 

 ヴィータはともかく、(それでも照れ臭そうだが)シグナムとシャマルは非常に恥ずかしそうだ。今まで水着を着た事など無い上に、この露出の多さが困る。

 周りの男性のいやらしい視線や、奥様方の嫉妬の視線が痛い。

 水着を買う時、露出の少ない物をと頼んだのだが、ノリノリで選ぶはやてが聞き入れる訳もなく、結局押しきられてしまった。ちょっとはやての将来が不安だ……

 歩み寄ろうとしたゼロは、何故か心臓の鼓動が速まった気がして立ち止まっていた。

 

(何だ……?)

 

 怪訝に思ったが特に気にせず、はやて達を再び見る。皆馴れてないせいかモジモジしているようだった。ゼロは最近覚えた事を思い出す。

 

(確かこういう場合は……誉めるといいんだったな……)

 

 不敵な笑みを浮かべて一歩前に踏み出した。 ザフィーラは気になって、

 

「ゼロ……どうするつもりだ……?」

 

「なあに、みんな緊張してるようだから、ちょっと解してやろうと思ってな、こういう時のいい言葉を知ってる」

 

「ほう……」

 

 ザフィーラは感心した。大分地球の文化に馴れて来たのだなと感慨深い。伊達に1年以上地球に居た訳ではないようだ。

 ゼロは自信満々な様子ではやて達女性陣に歩み寄ると、いたってナチュラルに片手を挙げ、

 

「おおっ、みんな水着良く似合ってるな、可愛いし綺麗だぞ」

 

 意外にまともなゼロの反応に、はやて達は一斉に照れ臭そうな表情を浮かべた。ゼロはクソ真面目な顔で更に、

 

「みんな凄えエロいな、今晩お相手願いたいもんだ、俺の我慢ももう限界だぜ!」

 

 と全然意味が判っていないのが明らかな棒読みでのたまった瞬間、強烈極まりない蹴り×3を食らい流れるプールに叩き込まれた。

 伊達だったかと、ザフィーラは頭が痛いらしくこめかみを押さえる。 水死体のようにプカリと浮かぶゼロに、

 

「まっ、まったく……ここの鈍感宇宙人がっ!」

 

「ゼロ兄……早速変な影響受けて……」

 

「やっぱりゼロ君には、あーいうのは2万年早いです!」

 

「わきまえないにも程があんだろうが……」

 

 大ひんしゅくの声を背に受けプールを流されながら、皆の水着姿を見て何で心拍数が上がったんだろう? と疑問に思うゼロであった。

 

 

 

つづく

 

 

 

 




 次回幕間ラスト。それぞれが自分の道を歩み始める中、フェイト達が出会った青年とは。そしてゼロはある予感に襲われる。
次回『うたかたの空や』
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