夜天のウルトラマンゼロ   作:滝川剛

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第34話 遭遇-コンプリーケーション-

 

 

 

「そう言う事だ……貴様如きに我が名を名乗ろうとも思わん……」

 

 シグナムは無様に倒れ伏す魔導師を、虫けらか塵でもでも見るように無感動に見下ろした。

 

「欲しいのは、この戦いに貴様と賭けたもののみ……さあ、立って戦うか、敗北を認めるか決めて貰おう……?」

 

 魔導師は屈辱に唇を噛み締めた。男は道中いきなり現れた女、シグナムに挑戦されたのだ。

 勝てば何でも言う事を聞いてやるとの申し出に、腕に覚えがあった男は相手がいい女だった事も手伝い、邪な考えが浮かびつい乗ってしまった。

 妙な使い魔らしき者も居たが、負ける筈も無いと余裕を持って勝負に応じた結果がこの様だ。だが魔導師にはまだ切り札が有った。

 

「おのれ……無頼の分際で……!」

 

 身体を起こした魔導師の足元に魔方陣が浮かび上がる。それに呼応し、魔導師の後ろに巨大な魔方陣が更に現れると、十数メートルはある真っ赤な異形の竜が出現した。

 召喚魔法で呼び出された赤竜である。魔導師は召喚魔導師でもあったのだ。召喚魔法を使える者はあまり多くは無い。お陰で彼に戦いを挑む者は、今まで殆ど居なかった。

 それ程赤竜の戦闘力は強力だ。管理局武装局員1個小隊にも匹敵するだろう。赤い竜は甲高い雄叫びを上げシグナムに襲い掛かる。魔導師は逆転勝利を確信していた。しかし……

 

「何っ!?」

 

 魔導師は目を見張った。ゼロが一瞬の内に赤竜の頭上まで跳躍していたのだ。魔導師も赤竜にも、ゼロが何時動いたのかも全く判らなかった。

 気が付くとシグナムも既に目の前に居ない。 超人は手刀を軽く振り上げると、赤竜の頭部目掛けて無造作に降り下ろした。

 赤竜は魔法障壁を張り巡らすが、手刀は硝子でも砕くように障壁を叩き壊し、青色の死の凶器となって、竜の鋼鉄より硬い頭蓋骨をあっさり叩き割る。

 

 それだけでは収まらず、手刀は巨大な頭部を切り裂き、その衝撃波だけで巨体を真っ二つに両断してしまった。

 脳漿とどす黒い血が辺りに飛び散り、地面の岩盤が余波だけでバックリ裂けてしまう。2つに割れた赤竜は地響きを立てて大地に倒れ込み、只の肉の塊と化した。呆気ない最期だった。

 

 切り札をも失いガックリと力尽きた魔導師に、シグナムがゆったりとした足取りで近付いて来る。

 

「では……約束のもの頂いて行く……」

 

 手を伸ばして来る白い姿は、魔導師の目には死神の如く映った。そして背後の鋭い眼の超人のギラリと光る眼。

 

「ぐはああああぁぁっ!!」

 

 魔導師の恐怖に彩られた悲鳴が、月夜に虚しく響き渡った。

 

 

 

********************* *

 

 

 

 次元航行艦『アースラ』は長期任務を終え、次元の海を航行し『時空管理局本局』に帰艦の途上であった。ブリッジにてリンディは、例のインチキ日本茶でホゥ……と一息吐いた所である。

 クロノは明日に控えるフェイトの裁判最終日に向けて、フェイト、アルフにユーノと打ち合わせ中だ。

 フェイトは嘱託魔導師の試験に無事合格し、裁判も無罪は確定したのも同然なので気持ち的には随分楽である。

 アースラの正面スクリーンに、次元の海に浮かぶ巨大な本局が見えて来た。ゴツゴツした機械を集めて一塊にしたような武骨な偉容の周りを、幾つかのリングが囲んでいる姿。

 後1時間程でドッグへのドッキング態勢に入る。長い航海を終えるクルー達の表情は皆明るい。

 ブリッジの一番後ろで壁にもたれていた『孤門一輝』の表情も心無し明るく見えた。リンディは横目でチラリと青年を見て、

 

(『ウルトラマンネクサス』……孤門一輝さんか……)

 

 心の中でのみ呟いた。最初彼を預かる事にリンディは困惑していたものだ。歩く『ロストロギア』のような存在に、どう接すれば良いのか判断し辛かったのである。

 しかしそんな心配は無用だった。孤門には強大な力を持つ故の驕りや傲慢さなど欠片も無く、実に親しみやすい青年であったのだ。

 

 正直ごく普通の人物に見えた。とてもあんな力を持っているようには見えない。フェイト達やクルーともすっかり打ち解けたようだ。

 孤門の力の事は上からの指示で、出来る限り他には知られないようにとの事だった。

 確かに魔法とは違う、強大な力を持つ人物の存在が広がるのは避けたい所であろう。それでも何れ、エイミィやフェイト達にも話さなければならないかもしれない。

 

(それにしても……)

 

 リンディが気になるのは、孤門が希望してアースラに乗り込んだ理由であった。 最初に話した時の事を思い返す。リンディの、何故この艦に来たのかとの問いに孤門は、

 

「漠然とした感覚なんですが……この艦に乗っていれば、何かに辿り着ける気がするんです……」

 

「何かとは、あの『スペースビースト』の事? それともまったく別の事かしら……?」

 

 リンディから続けての質問に、孤門は何とも言えないように首を傾げ、

 

「それすら判りません……ただ……そう感じるとしか言えないんです……」

 

 リンディは孤門の話を思い出し眉をひそめた。何とも不確かな話ではあるが、不吉とも取れる。彼の力故のものなのかもしれない。

 アースラは、その何かと遭遇する事になるのだろうか。何れにせよ、今はまだ可能性の段階にしか過ぎないようだが。

 上も孤門をもて余しているらしく、取り敢えず彼の希望を受け入れたというのが本当らしいと、レティから聞き及んでいる。

 

(不確かな事で、今から不安に駆られても仕方無いわね……)

 

 リンディは気分を切り替える事にした。頭から否定するつもりは無い。もしもの時には、迅速に対応出来るようにしておけばいいのだ。それが様々な現場を潜り抜けて来た、彼女なりの判断である。

 

 間も無く入港する。後は入港許可を待つだけだ。空港と同じである。管制官の指示待ちだ。

 外周で待機していると、艦長席の通信モニターに『レティ提督』からの通信が入った。 2週間振りに見る彼女は、相変わらずの冷静そうなポーカーフェイスである。

 

《お疲れ様リンディ提督、予定は順調?》

 

「ええレティ、そっちは問題無い?」

 

 リンディの屈託の無い返事に、画面のレティは少し表情を曇らせた。

 

《ドッキング受け入れと、アースラ整備の準備はね……》

 

 リンディは何か有ったなと直感する。やり取りの最中ブリッジの扉が開き、打ち合わせを終えたクロノが入って来た。唯ならぬ母の様子に気付き立ち止まる。

 レティは眼鏡のズレを直しながら、深刻な表情を浮かべ、

 

《此方の方では、あんまり嬉しくない事態が起こってるよ……》

 

「嬉しくない事態って……?」

 

《『ロストロギア』よ……『一級捜索指定』が掛かってる超危険物……》

 

 リンディは表情を引き締める。『ロストロギア』滅んで今は存在しない文明が産み出した、オーバーテクノロジーの遺産。

 かつての『ジュエルシード』のように、世界を滅ぼしかねない危険な『ロストロギア』を回収確保するのが、時空管理局の重要な仕事の一つである。

 

 その内でも最も危険度が高い一級捜索指定の名が出たので、リンディは自然居住まいを正すした。それに覚えが有るのか、後ろのクロノはハッとしたようだ。

 息子には気付かず、リンディはレティからの事の推移を聞いている。

 

《幾つかの世界で痕跡が発見されているみたいで、捜索担当班はもう大騒ぎよ……》

 

「そう……」

 

《捜査員を派遣して、今はその子達の報告待ち ね……》

 

「そっかあ……」

 

 リンディは額に手をやり、静かに目を閉じため息を吐いた。その仕草と表情には、普段の彼女とは違うものが含まれているようだった。

 クロノは無言で立ち尽くしたままだ。その耳にレティとリンディの声が響く。

 

《……それで……これは未確認情報なんだけど……一応リンディの耳には入れておいた方がいいと思って……》

 

 ひどく言い難そうな響きの声だった。不審に思ったらしいリンディが、

 

「どうしたのレティ……?」

 

 しばらくの間の後だった。レティは衝撃的な事実を口にした。

 

《その第一級捜索指定に『ウルトラマンゼロ』が関わっている可能性があるのよ……》

 

「なっ、何ですってぇ!?」

 

 リンディは思わず声を漏らし、クロノは持っていた情報端末を床に落としてしまった。

 

 

 

**********************

 

 

 

 12月2日PM4:34

 

 風芽丘図書館前に黒塗りの高級車が滑るように静かに停車した。日本ではあまり見ない、外国製の高そうな車である。

 その車から白い制服を着た少女が降り立った。紫がかったロングヘアーに、白いカチューシャを着けた物静かな雰囲気の少女である。

 

「じゃあ……また明日ね」

 

 少女は車内に居る2人の少女に手を振った。どうやら彼女の家の車では無く、友人の車に乗せてもらっていたようだ。

 車内の2人も手を振って応える。その内の1人、金髪の少女はこの車の所有者の1人娘『アリサ・バニングス』である。

 そしてもう1人の茶色がかった髪をツインテールにした少女は、あの『高町なのは』その人であった。そう、この少女『月村すずか』は、なのはの数年来の友人なのである。

 すずかは2人に別れを告げると、いそいそと静かな図書館の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 ゆったりと西陽が照らす図書館で、ゼロは本を探してゆったり歩いていた。病院帰りにはやてとシャマルとで来ているのである。

 

 ふとはやての方を見ると、上の棚の本を取ろうとして懸命に手を伸ばしていた。これはイカンと歩み寄ろうとすると、紫がかったロングヘアーの少女がその本を先に手に取った。

 

「……これですか……?」

 

 少女は照れた様子で、はやてに本を手渡している。はやては頬を染めて、

 

「はい、ありがとうございます……」

 

 嬉しそうに少女に笑顔を見せた。

 

 

 

 

 それから2人は、自習コーナーの椅子に座って話し込んでいた。それを物陰に隠れて怪しさ全開で見ているシャマルとゼロである。

 

「ゼロ君あれ……」

 

 シャマルは今にも感涙しそうな様子で、はやてを見守っていた。同い年の子と話しているのを初めて見たのである。

 後ろのゼロも小さな家主を温かく見守っていた。はやて達の会話がその鋭敏な耳に聴こえて来る。

 

「そうかあ……同い年なんだあ……」

 

「うん……時々此処で見掛けてたんよ……あっ、 同い年くらいの子やなあって……」

 

「実は私も……」

 

 確かにゼロも少女に見覚えがあった。少女の方もはやてが気になっていたらしい。2人共会ったばかりの筈なのに、気心の知れた友人のように笑い合った。

 人には時たま、こんな出会いが巡って来る時がある。過ごした時間と関係なく親友になれる、そんな出会いが……

 はやてにも変化があった。以前ならお礼を言って、関わらないように早々にこの場を辞していただろう。

 だが彼女もゼロや守護騎士達と関わり様々な経験を経て、自分の中だけに閉じ籠るのを辞めたのだ。例え何があろうと、その時まで精一杯生きるのだと……

 

「私……すずか……月村すずか……」

 

 すずかははにかみながらも自己紹介する。 元々社交的な性格では無いのだろう。はやてはその名を噛み締めるように、

 

「すずかちゃん……八神はやて言います」

 

「はやてちゃん……」

 

 すずかも、相手の名前の響きを確かめるように声に出した。はやては急に恥ずかしくなってしまい、

 

「ひらがなで、はやて……変な名前やろ……? 男の子みたいで……」

 

「そんな事無いよ、綺麗な名前だと思う、ふんわりしたそよ風みたいだし……」

 

 お世辞抜きの即答だった。お世辞が得意なタイプでもないだろう。素直にそう思ったのだろう。

 本当は両親が付けてくれた名前だ。実際に変だと言われたらショックだったろう。はやては嬉しさのあまり満面の笑みを浮かべ、

 

「あっ、ありがとう」

 

 すずかもそれを察して微笑む。何だか可笑しかった。2人は長年の親友のように、ごく自然に笑い合っていた。

 

 

 

 

 夕暮れの橙色の光が射し込む図書館通路を、はやてはすずかに車椅子を押してもらい出口に向かっていた。

 あの後時の経つのも忘れて話し込んでしまい、もういい時間になっていた。それでも2人は名残惜しそうに、談笑しながら通路を進んでいる。出口前でゼロとシャマルが待っていた。

 

「どうも」

 

 ゼロは感謝を込めて挨拶し、シャマルは会釈する。あと後流石に野暮だと思い、出口で待っていたのだ。同じく会釈したすずかは、ゼロを見てアッという顔をした。はやてはそれに気付き、

 

「ああ、ほんならすずかちゃん、ゼロ兄達も見掛けた事があるんやな?」

 

「……特にあのお兄さん目立ってたから……」

 

 すずかは少々言い難そうに笑った。何気にゼロは図書館の隠れた有名人である。

 分厚い本を山と積み上げ、人とは思えない程のスピードで読みまくり、尚且つ全て頭に叩き込む少年。それに先生役らしい車椅子の少女は、風芽丘図書館の隠れた名物になっていた。

 

(う~ん……やっぱしゼロ兄目立っとったんやなあ……)

 

 考えてみれば当然かと、苦笑するはやてである。ちなみに外国人が多い海鳴市では、シャマル達はそんなに目立たない。

 

「お話してくれておおきに、ありがとうすずかちゃん……」

 

「またね、はやてちゃん」

 

 2人は笑顔で別れの挨拶を交わす。メールアドレスの交換もしてある。はやては、またすずかと会うのが楽しみで仕方なかった。すずかも同様で、とても名残惜しそうだ。 すずかに手を振りながらはやては思う。

 

(またね、かあ……何てええ言葉なんやろ……)

 

 今まではやては表面上は明るく、人当たり良く振るまいながらも、決して他人に深く関わろうとはしなかった。

 それは恐れもあったのだろう。だが殻を破れば世界には、小さな優しさや良い事が意外にあるものだ。はやてはとても温かいものが胸に満ちるのを感じる事が出来た。

 

 

 

 

 夕暮れの中、車椅子をゼロに押してもらいながら家路に就くはやては、ニコニコと微笑みが止まらないようだ。

 

(同い年の友達が出来たから、嬉しくて仕方ないんだな……)

 

 ゼロは微笑ましくなって自然笑みを浮かべてしまう。シャマルも嬉しくてゼロと頷き合った。

 

 もう12月に入り、関東地方と言えど空気が冷たく感じる。足下のアスファルトからも、ひんやりした冬の足音が聴こえて来るようだ。シャマルが心配し、

 

「はやてちゃん、寒くないですか?」

 

「うん平気、シャマルもゼロ兄こそ寒ない?」

 

「私は全然、ゼロ君は……あんまり大丈夫じゃないかも……?」

 

 2人は可笑しそうにゼロを同時に見る。ウルトラマンの少年はフッと鼻で笑って見せ、

 

「何を言ってんだ……? これしきの寒さ着込めば大丈夫だぜ」

 

 頼り甲斐が有るんだか無いんだか、微妙な台詞をぬかす。結局寒いようで、しっかり着込んではやて手編みのマフラー手袋フル装備である。父親譲りで寒さに弱いのだ。

 

 しばらく歩いていると、途中でコート姿のシグナムが待っていた。出迎えである。彼女らしい。

 

「シグナムゥッ」

 

 はやてが手を振ると、シグナムは剣士らしく姿勢良く挨拶する。正に主人を待出迎える騎士と言った風情であった。

 4人での帰り道、はやては嬉しそうに隣を歩くシグナムを見上げ、

 

「シグナムは何食べたい? シャマルは、ゼロ兄は?」

 

 シグナムは微笑し、少し思案するが直ぐには浮かばないようで、それならスーパーで材料を見ながら考えようという事にした。

 はやての料理だと、全てが美味しいので悩み所である。何でもいいと言いたい所であるが、そういうのが一番料理を作る人が困るものだ。

 今日は確か魚が安いななどと、真面目くさった顔で献立の思案をするはやては、ふと車椅子を押すゼロを見上げ、

 

「そう言えばゼロ兄、ヴィータ今日は何処かへお出掛け?」

 

 ゼロはいきなりヴィータの事を聞かれ焦った。ボロが出ないように懸命に取り繕い、

 

「そっ、そうだなシャマル、どうだったか?」

 

「ああ……え~とですねえ……」

 

 話を振られて、こちらも焦ったシャマルもしどろもどろになってしまう。するとシグナムが何でも無いように、

 

「外で遊び歩いているようですが、ザフィーラが着いていますので、あまり心配は要らないですよ……」

 

 流石はヴォルケンリッターの将である。いざという時頼りになる。ゼロは尊敬の眼差しで見てしまい、シグナムは少々こそばゆい。

 

「そうかあ……」

 

 はやては感慨深く空を見上げる。今まで子供らしく遊んだ事など無いヴィータが、遊び歩けるというのは結構な事だ。だが少し心配にもなってしまう。

 勿論彼女がとんでもなく強い事を知っていてもだ。妹や子供をを心配する肉親のような気持ちになってしまうのは性格故か。そんな小さな主の気持ちを察しシャマルは、

 

「でも……少し離れていても、私達はずっと貴女の傍に居ますよ……」

 

「はい……我らは何時でも貴女の傍に……そうだなゼロ……?」

 

 シグナムもシャマルに続く。掛け値なしの素直な気持ちだった。同意を求められたゼロは明後日の方を向き、

 

「あっ……当たり前だろ……今更聞かれるまでもねえ……」

 

 まともに答えるのが恥ずかしいのか、わざとぶっきらぼうに応える。彼に取って当然過ぎる事であった。

 

「……ありがとうな……」

 

 はやては頬を染める。言葉に深い感謝の想いを込め、今の幸せを噛み締めるのだった。

 

 

 

********

 

 

 

 時間はもう直ぐ8時。辺りはすっかり暗くなり、街の灯りが夜の闇を照らし出そうと足掻く、そんな時間帯である。

 夕食を終えた『なのは』は、部屋で机に向かい宿題に集中している所であった。すると突然、机に置いていたペンダント状の『レイジングハート』 が声を発した。

 

《Caution.Emergency》(警告、緊急事態です)

 

「えっ?」

 

 なのはが聞き返すと同時に、彼女の家一帯を含む広い空間が異相空間と入れ替わった。

 

「結界!?」

 

 なのはは驚いて立ち上がる。以前何度か目にしている、結界魔法に良く似た感覚だった。

 通常空間と魔法が作用する空間をずらして作り出す、常人には感知出来ない特殊空間。その空間内になのはは1人取り残されていた。

 

《Itapproaches ata hlghs peed》(対象、高速で接近中)

 

「此方に?」

 

 ただ事では無い。なのはは直ぐ様レイジングハートを変形させ、飛行魔法で空に舞い上がった。色を失いゴーストタウンと化した街を見下ろし、見晴らしの良さそうなビルの屋上に降り立つ。

 

 なのはは改めて辺りの状況をチェックしてみる。確かに結界のようだが、ユーノ達が使っていたものと何か違うような気がした。だがじっくり観察する間も無かった。レイジングハートが警告を発したのだ。

 

《Itcmes》(来ます)

 

「!?」

 

 いきなりであった。赤い光に包まれた何かが、彼女目掛けて高速で飛来して来たのだ。

 咄嗟に防御魔法の盾を張り巡らす。強固な魔力の盾を重い衝撃が襲う。防御越しでも衝撃が伝わって来る凄まじい威力だ。生身で食らったら粉々になってしまうだろう。

 

「!」

 

 なのははゾクリとするような気配を感じて、空を見上げた。その瞳に真紅の色が映った。

 

「テートリヒ・シュラアアクッ!!」

 

 鋭い叫びと供に、真紅の騎士服をなびかせた 『ヴィータ』が『グラーフ・アイゼン』をなのは目掛けて一気に降り下ろした。

 

「ああっ!?」

 

 なのはは血の気が引く思いで息を呑んだ。

 

 

 

つづく

 

 

 

 




なのはに襲い掛かるヴィータ。何故? 事態は最悪の様相を見せ始める。

次回『錯綜-ベルミスティング-』
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