ヴィータはフェイトと、互いのデバイスを打ち合わせたまま正面から睨み合う。しかしこのままでは援軍に包囲されてしまう。
「ちいっ!」
ヴィータは相手の呼吸を見計らい、後方に跳んで距離を取った。跳び退きつつ、忌々し気にフェイトを睨み付ける。
(コイツら、良い奴らだと聞いてたのに…… ゼロを封印だと? とんだ恥知らず共だ!)
そんな相手の心の内は知らず、フェイトは 『バルディッシュ』をサイスフォーム、電光の鎌に変化させると、何時でも斬撃を放てる構えを取り、
「時空管理局、嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ……」
静かな怒りを込めた口調で、一歩前に踏み出す。
「……抵抗しなければ弁護の機会が君には有る……同意するなら武装を解除して……」
「誰がするかよ! その気もねえクセに!」
口上を遮り、ヴィータは吐き捨てると床を蹴り、割れた窓から素早く外へ飛び出した。それとほぼ同時にユーノが転移して来る。フェイトはユーノになのはを任せ、ヴィータの後を追ってビルの外へと飛び出した。
ユーノは動けないなのはに治療魔法を施し、魔力ダメージを抜く作業に掛かる。不思議そうな彼女にユーノは、直ぐに駆け付けられた理由を説明した。
あの後フェイト達はただ事では無いと、直ぐに転移ポートで此方に跳んだのである。お陰で間に合ったようだ。ユーノは治療を施しながら事情を聞くが、覚えの無いなのはは首を振り、
「……分かんない……急に襲って来て……変な事ばっかり言って来るの……」
相手がなのはを知っているらしい事も、混乱に拍車を掛ける。正直訳が解らなかった。そんな彼女にユーノは、安心させるように笑い掛け、
「もう大丈夫……フェイトも居るし、アルフも、それに孤門さんも来てくれてる」
「……孤門さん……?」
なのはは思い当たる。フェイトからのビデオメールに、何度か出て来た名前を呟いていた。
その頃ヴィータは、フェイト達と熾烈な空中戦を繰り広げていた。ヴィータの『シュワルベ・フリーゲン』魔力付与の鉄球が飛び交い、フェイトの『アークセイバー』電光のブーメランが飛ぶ。両者共一歩も退かないが、
「バリアァァッ、ブレイク!!」
フェイトに気を取られている隙に、下方から接近していたアルフが、ヴィータの魔法障壁を拳で打ち抜いた。得意の魔力無効化の魔法だ。
「てめえっ!」
鉄槌の騎士はお前もかと、怒りを込めてアイゼンでの一撃を食らわす。その破壊力の前に、アルフは防御壁ごと吹っ飛ばされた。
しかしフェイトはその隙を見逃さない。空かさず攻勢に出て来る。2対1ではヴィータの不利であった。
(くっそお……ぶっ潰すだけなら簡単なのに……!)
それをやる訳には行かないヴィータは、攻撃を凌ぐしか無い。ベルカ式はミッド式に比べて手加減が難しい。手加減する分格段に不利になる。
しかもどんなに相手が悪かろうが、絶対に殺したり怪我をさせる訳には行かない。そう固く誓ったのだ。
此処は逃げるしか無いと思ったが、それも難しい。封鎖領域の外に出られないのだ。
解析して出るか、最大攻撃魔法で破壊るかのどちら かだが、どちらにせよこの状況では難しい。ヴィータは歯噛みした。
*
ウルトラマンゼロとシグナムは、封鎖領域内への侵入に成功していた。 確かにベルカ式の結界で、シグナムが一部を解除して入り込む事が出来たのである。
2人が封鎖領域内に足を踏み入れた時、不意にゼロが頭を押さえた。
『何だ! この波動は!?』
「どうしたゼロ……?」
静まり返った辺りを見回すゼロの顔を、シグナムは不思議そうに覗き込む。ゼロは頭に手を当てたまま将を見、
『強烈な催眠波動が中に満ちている! シグナム対精神攻撃の魔法があるだろ? そいつを使え! これじゃあ中に居る人間は、まともな状態じゃいられねえぞ!』
「何!?」
どうやらレヴァンティンのセンサーには、無害なものとされてしまっているようだ。未知のもので機械類には感知出来ないらしい。ウルトラマンの脳は、その手のものには敏感なので感知出来たのである。
シグナムは直ぐに精神防御の魔法を発動させた。機械類では判別出来なくとも、魔法には対精神攻撃用のものもちゃんとある。
その時数キロ程先の高層ビルの谷間に、飛び交う紅い光と金色の光が見えた。シグナムはそれを見て、
「あの魔法光はヴィータだ!」
『ヤバそうだ、行くぜ!』
ゼロとシグナムは飛び上がり、急ぎ戦闘が行われていると思しき空域へと向かった。
一方治癒を受け幾分快復したなのはは、ユーノの転移魔法で離れた位置に在るビルの屋上に降り立っていた。丁度フェイト達の戦闘を見守る形になる。
治療魔法を受けても完全に復活した訳ではなく、戦闘に参加までは出来ない。
「アルフさんも来てくれたんだ……」
弱々しく微笑むなのはを支えてやるユーノは、安心させるように笑って見せ、
「クロノ達も、アースラの整備を一旦保留にして動いてくれてるよ」
頼もしい限りだった。封鎖領域内をスキャン出来ない為、クルー達は総出で状況の確認に動いている。ジン……と来てしまうなのはであった。
その頃『孤門一輝』は転移ポートにより、なのは達より少し離れたビルの屋上に降り立っていた。その手に短剣状の変身アイテム『エボルトラスター』を持ち、油断なく辺りを見渡している。
「ん……?」
孤門はふとエボルトラスターを見るが、中央のビースト反応を報せるクリスタル部分は沈黙したままだ。難しい顔でトラスターを見詰め、
「一瞬反応が……? むっ!?」
孤門はハッとして顔を上げた。何かを感じ取ったのだ。その全身に燃えるような気と力が満ちる。
「来たか……」
普段の穏やかな彼とは違う、戦闘者の表情を浮かべエボルトラスターを握り締めた。
ヴィータはフェイトとアルフ相手に、苦戦を強いられていた。手加減のせいも有るが、フェイト達も以前とは格段に腕を上げている。
更に彼女達ならではの、息の合ったコンビネーションでヴィータを追い詰めて行く。あれから半年、漫然とせず相当な研鑽を積んできたのだろう。
「こんのおっ!」
ヴィータがコンビネーションを崩そうと、アイゼンを振りかざした時、突然周りを金色の光のリングに囲まれていた。
(しまった!?)
気付いた時には遅い。手足を計4つの魔力のリングが拘束していた。空中に磔(はりつけ)のように固定されてしまっている。ヴィータは外そうともがくが、そう簡単には外れない。
フェイト達の連携プレーだ。フェイトが引き付けている内にアルフが設置式の罠を張り、見事捕らえる事に成功したのだ。
フェイトは磔にされたヴィータに、勝ち誇ってバルディッシュを向ける。
「終わりだね……? さあ観念してマスターと仲間の居場所を教えてもらうよ……害悪!」
ニヤニヤと厭な嗤いを浮かべる金髪の少女 を、ヴィータはキッと睨み付けた。
(こんな奴らに負けてたまっか!)
怒りのままにバインドを外そうと四肢に力を込める。その様子をフェイトとアルフが、馬鹿にするように嘲笑っていた。
少なくともヴィータの眼には、そうとしか映らない。いや……フェイト達も同様であった。互いの言葉も態度も、何もかもが違って相手に伝わっている事に誰も気付いていない。
自分 達が誰かに踊らされている事に…… その時、アルフが鋭い獣の感覚で接近するものを捉えた。
「何かヤバイよ!!」
叫ぶと同時だった。疾風の如く、ヴィータとフェイトの間に踊り込む影。その人物は鋭い一撃でフェイトを弾き飛ばす。
「シグナム……」
磔状態のヴィータは声を漏らした。愛刀レヴァンティンを構え現れるは、自分達のリーダー剣の騎士シグナムだ。 アルフが新たなる敵に向かい拳を向けると同時に、
「ウオオオオオッ!!」
横合いから雄叫びを上げて突っ込んで来る影。人間形態のザフィーラだ。異常を察知して駆け付けて来たのだ。守護獣はその勢いでアルフに、強烈な回し蹴りを叩き込む。
ザフィーラにもフェイト達が嘲笑いながら、 ヴィータに止めを刺そうとしているようにしか見えなかった。
『待てザフィーラ!』
ザフィーラが吹っ飛んだアルフに追撃を掛けようとすると、ゼロが背後に現れそれを押し止めていた。
「ゼロか、何をする? ヴィータが危ない……!」
やはりザフィーラも催眠波動に惑わされている。ゼロは必死に訴え掛けた。
『ヴィータはシグナムに任せろ! 今はまず対精神攻撃防御の魔法を使うんだ!!』
「何故だ……?」
『頼む! 今は俺を信じてくれ!!』
ゼロの尋常では無い剣幕に、ザフィーラも対精神攻撃防御の魔法を発動させる。幸い味方の方の声は、テレパシーと思念通話でまともに届くようだ。
「どう言う事だゼロ……? む……さっきと様子が……?」
ザフィーラは周囲の様子から、違和感を直ぐに感じ取った。流石は冷静な守護獣た。
『簡単に言うと……俺達は嵌められたらしいって事だ……』
ゼロは此方の姿を見て、唖然としているフェイト達に視線を向けながら、苦々し気に説明した。
「な……何でゼロさんが……?」
思いも寄らない再会に、フェイトは動揺を隠しきれない。様子を見守っていた、なのはとユーノも驚いている。
フェイトの目前のポニーテールの女性は剣型のデバイスを携え、冷やかな眼で彼女を見下ろしていた。その隣にゆっくりと浮かんで来たのは、良く見知ったウルトラマンゼロの姿。フェイトは思わず叫んでいた。
「ど……どうして、なのはを襲った人達と一緒に居るんですか!? 離れて下さい! その人達を捕まえないといけないんです!!」
呼び掛けにゼロは、哀しそうに首を横に振り、
『仕方ねえんだ……邪魔をするなら……お前らでも容赦は出来ねえ……頼む……退いてくれ……』
酷く沈んだ声だった。フェイトにはゼロの全てが苦しく哀し気に映る。そして厭な笑みを浮かべる紅い髪の少女と、ポニーテールの女性。
女性はフェイトにニヤリと嗤い掛けると、後ろからゼロの首に妖しく両手を回し、見せ付けるように豊満な肉体を押し付けて見せる。
まるでゼロは、自分の物だとでも言いたげだった。それを見たフェイトの中で、ふつふつと抑え切れない程の怒りが湧き上がる。汚らわしかった。大事なものを汚された気がした。
「ゼロさんに何をしたぁっ!?」
フェイトは紅玉色の瞳に怒りの色を燃やし、バルディッシュを女剣士シグナムに向けた。
「ゼロ……テスタロッサの私を見る目が、恐ろしく悪くなったようだ……」
シグナムはため息混じりに、愛刀を構えながらぼやく。まさか自分が、ゼロに絡み付く妖しい女に見えているとまでは思ってもみない。
『今更何言っても通じねえんだろうな……此方の言葉やら様子やら、どう見えて聞こえてんだか……?』
ゼロも困惑するしか無い。今フェイトに、全ては誤解だから話を聞いてくれと伝えた所だが、まるで通じていないようだ。すると後ろで磔状態のままのヴィータが、
「おいっ! どう言う事だよ!? あの高町なんとかがいきなり襲って来たんだぞ!」
状況が掴めず苛ついた声を出す。何が何だか解らないのだ。シグナムは振り向き、
「簡単に言うと……お前達全員、強力な催眠波動で踊らされていたのだ……」
「何だと!? そんな馬鹿な!!」
ヴィータは驚愕して顔色を変えていた。今までの出来事が全て幻覚だったとは。だが本当にそうだろうか? 最初のなのはは本当に幻覚なのか? 混乱するヴィータにシグナムは、
「考えるのは後だ。まずは精神防御魔法を使え……それでなくては、此処ではまともに動けん……」
ヴィータは言われた通り、対精神攻撃防御の魔法を発動させる。そうしている間に、フェイトがシグナム目掛けて突っ込んで来た。一番の敵だと判断したようだ。剣の騎士はレヴァンティンを構え、
「今は何を言っても無駄なら……少し大人しくしていて貰おう!」
『おいっ、シグナム、無茶すんな!?』
ゼロは慌てて止めようとするが、シグナムはチラリと横目で視線を送り、レヴァンティンの刃を返すと、
「仕方あるまい、手加減はする……レヴァンティン、カートリッジロード!」
《Exposion!》
レヴァンティンから魔力カートリッジが排出され、刀身が業火と化す。シグナムは一瞬で間合いをゼロに詰め、フェイトにカウンター気味に突っ込んだ。
「紫電……一閃っ!!」
フェイトは降り下ろされる炎の攻撃を、バルディッシュで辛うじて受け止める。しかし一撃でバルディッシュの柄部分は真っ二つにへし折られた。
「うおぅっ!」
鋭い気合いと共に、返す刀で二撃目が襲う。フェイトは防御魔法で受け止めようとするが、痛烈な打撃に防御シールドごと吹き飛ばされ、向かいのビルに叩き込まれた。ビルの屋上に大穴を穿ち、フェイトは瓦礫と共に転がされる。
「フェイトォォッ!!」
アルフは落下したフェイトの元に駆け付けた。怪我こそ無いようだが、魔力ダメージと打撃のショックで呻いている。ゼロは人間形態だったら青くなりそうな様子で、
『シグナム……やり過ぎじゃあねえか……?』
「安心しろ……峰打ちな上加減はした……テスタロッサは腕が立つ……これくらいでないと行動不能に出来ん……」
シグナムは涼しい顔で言ってのける。確かにそのようだが、それにしてもキツイ。ゼロを騙している悪女呼ばわりされて、少し怒っているのかもしれない。
ゼロはため息を吐くように肩を竦めると、まだ磔状態のヴィータに近付き、バインドを『ウルトラ念力』で粉々に砕いてやった。
「悪い……ゼロ……」
ヴィータは腕を擦りながら、素直に礼を言う。するとシグナムが近寄って来た。
「ヴィータ……良く我慢したな……」
妹に対する姉のように微笑する。将には判っている。こんな状況下でもヴィータが、相手に怪我をさせまいとした為に不覚を取った事を。
「た……たりめえだ……約束だかんな……アタシを誰だと思ってる……」
その事を汲み取ってもらい、ヴィータは照れてわざと膨れっ面をして見せる。シグナムは誇らしげに微笑し、
「そうだな……紅の鉄騎に失礼だったな……」
ヴィータの頭に先程撃ち落とされた、のろいウサギの着いた帽子を被せてやる。
「破損は直しておいた……大事な物だろう……?」
ヴィータは帽子を大事そうに被り直すと、上目使いにシグナムを見上げ、
「シグナム……あんがと……」
呟くようにお礼を言った。普段何かとシグナムに突っ掛かる事が多いヴィータだが、本心は違う。こうして見ると2人は姉妹のように見えた。
ゼロは一瞬状況を忘れホッコリしてしまうが、無事の再会を喜んでばかりもいられない。4人は集まり、背中合わせに一塊になった。
『このままやり合う訳には行かねえ……此処から離脱しようぜ……』
ゼロは逃げる事を提案する。敵ならまだしも、フェイト達と戦う訳には行かない。何者かの策略にむざむざ乗る気は無かった。しかしシグナムは厳しい表情を浮かべ、
「それが出来ないのだ……私もそう思って入った時と同じく、封鎖領域の一部を解除しようとしたが駄目だ……入った時と術式が組み換えられてしまっている……」
『何だって!? じゃあ俺達もまんまと嵌められた上に、此処に閉じ込められたって事 か!?』
「そうだ……これを破るには恐らくゼロの光線か、私かヴィータの最大クラスの魔法攻撃もしくは、解析しての解除が必要だろう……」
『判った、それなら俺がやる!』
ゼロは頷くと、左腕を水平に挙げ『ワイドゼロショット』のエネルギーを集中させた。
シグナム達が周りを見渡すと、復活したフェイトがアルフと共に向かって来るのが見える。ユーノもなの はを防御結界の中に退避させ、援護の為に向かって来ていた。
「何をするつもりか知らないが……そうはさせない!」
戦局を見守っていた孤門はゼロの動きを察し、エボルトラスターの鞘にあたる部分を一気に引き抜いた。短剣部を頭上に勢い良く掲げる。
「うおおおおおっ!!」
刃先が眩いばかりの光を発し、彼の身体は光に包まれた。
『何だ!?』
ゼロは突如として現れた、天空まで届きそうな光の柱を見て、ゼロショットの手を止める。容易ならない力の気配を感じ取った。
眩い光と共に巨大な何かが、大地を揺るがしビル街中心に降り立つ。
『ばっ、馬鹿な! ウルトラマンだと!?』
ゼロはその姿を見て、驚愕の声を上げていた。光が晴れると、其処には片膝を立てた光り輝く巨人の姿が在った。
全身銀色のボディーに、赤く発光する胸部のYの字形のクリスタル部。『ウルトラマンネクサス・アンファンス』の出現であった。
ネクサスは片膝を着いた体勢からゆっくりと立ち上がり、その銀色に輝く数十メートルの偉容を示す。
「あ……アイツはゼロの仲間なのか……?」
ヴィータがネクサスの巨体を見下ろし聞いて来るが、ゼロは首を振り、
『いや……あんなタイプの同族は居ない……誰だアイツは……?』
一見ウルトラ族に良く似ているが、胸部の形状といい腕の籠手状のアームガードといい、明らかに違う点が窺える。生命体として別種の存在に見えた。
見覚えと言う点では、胸のクリスタル部の形状が『ウルトラマンノア』に似ているくらいかとゼロは思う。
敵か味方か不明だが1つハッキリしているのは、容易ならざる相手だと言う事だ。警戒して身構えるゼロは、そこである事に気付く。
(催眠波動が消えている……?)
何時の間にか、あれだけの催眠波動が消えてい る。疑問に思うゼロだが、最悪のタイミングで切られた気がした。困惑するゼロの頭の中に声が響く。
《君がこんな事までするとはね……》
《誰だお前は? 俺を知ってるのか!?》
巨人ネクサスは、静かにゼロを見上げ、
《ウルトラマンネクサス……ウルトラマンゼロ、君を倒しに来た……まさかとは思っていたが……やはり今まで魔導師を襲っていたのは君達だったのか……!》
《ふざけるなあっ! いきなり出て来て訳の解らねえ事ぬかしてんな! 俺達は誰も襲ったりなんかしてねえ!!》
《この後に及んで、そんな事が信じられるとでも思うのかい……? どの道僕は君を倒す!》
『くっ……!』
やはり今更催眠波動が切られても状況は好転しない。相手もやはり信じてはくれなかった上、どうもそれだけでは無いようだった。こうなればやるしか無い。
ゼロも対抗して、一気に身長49メートルの巨人と化し、地響きを上げてネクサスの前に降り立った。互いの光る眼がビル街をぼんやりと照らし出し、2体の巨人は対峙し合う。
《闘る気かゼロッ!?》
シグナムが呼び掛ける。ゼロはネクサスを正面から見据え、
《コイツと闘り合ってる最中に、俺が光線をぶっ放して封鎖領域を破壊する。その隙にバックレるぞ。俺達は今捕まる訳にも、出頭する訳にも行かねえ!》
シグナムは頷いて、レヴァンティンを構える。
《判った……此方は邪魔されないようにテスタロッサ達を抑える!》
《任しときなゼロ!》
ヴィータもグラーフアイゼンを構える。ザフィーラは無言で頷き拳を固める。3人は上昇して来るフェイト達に備えた。
フェイト達は見た事の無い巨人の出現に戸惑っていた。すると全員の念話回線に、聞き覚えのある声が入って来る。
《僕だ、孤門だよ。ウルトラマンゼロは僕が引き付けておくから、その間になのはちゃんを連れて脱出の準備を!》
《えっ? 孤門なの……? 孤門のレアスキ ルって……》
フェイトは驚くが正直ありがたい。さっきま で4対3だった上、ウルトラマンゼロを抑えるのは不可能に近いと思っていたからだ。
どんな力を秘めているか不明だが、今は頼らせて貰うしか無い。思わぬ援軍だった。
此方にはダメージを負ったなのはが居る。今は脱出を優先しなければならない。フェイト達が相手を引き付けている間に、全員を結界の外に転送するのが彼女達の考えだ。
ゼロ達もフェイト達も互いに気付かず、それぞれ脱出の算段をしている事になる。これを仕掛けた者は、きっと陰でせせら嗤っているだろう……
ゼロはネクサスと対峙し、間合いを計っていた。どんな能力を持っているのか、まるで未知数の相手だ。 油断は出来ない。感知出来るエネルギー量も半端では無い。見かけ倒しでは無かろう。
(まずは攻めて出方を見る!)
先手必勝と、ゼロはアスファルトを砕いて飛び出した。1秒と掛からず数百メートルの距離を一瞬で詰め、ネクサスの顔面目掛け正拳突きを放つ。
『ディヤアアアッ!!』
ネクサスも棒立ちではいない。電光の如く反応し、大砲のような拳を左腕の『アームドネクサス』で受け止め、逆にゼロの顎目掛け痛烈なアッパーを放つ。
ゼロは上体を反らしてスウェーバックで、その一撃をかわす。ネクサスの拳の衝撃波が唸りを立てた。
《やるじゃねえか!》
素早く上体を起こしたゼロは、空振りでがら空きになったネクサスの脇腹にボディーブローを繰り出した。しかし、
『シェエアアッ!!』
ネクサスはアッパーから切り替えて、肘打ちでゼロの拳を叩き落とす。まるで巨大な杭で打たれたようだ。
(野郎っ!!)
ゼロは後方に飛び退くと、ネクサスの側頭部を狙って鉞(まさかり)のような回し蹴りを放った。ネクサスも迎撃の回し蹴りを放つ。
2体の巨人の豪脚が唸りを上げて、空中で激突した。互いの攻撃に込められたエネルギーが火花を散らし、 衝撃波が周りのビルの窓ガラスを粉々に砕く。
『ウオリャアアアッ!!』
『シェエアアッ!!』
双方の巨体に凄まじいまでの力が満ちる。強大なパワーとパワーとのぶつかり合いだ。
『デリャアアアアアッ!!』
ゼロが吼える。右脚が炎のように赤熱化し炎と燃える。ゼロのパワーがネクサスを怒涛の勢いで押し返した。
『ウオオッ!?』
耐え切れなくなったネクサスは、爆発に呑まれたように吹き飛び、横のビルに頭から突っ込んだ。ビルが積み木のように崩れ落ちて倒壊し、瓦礫と粉塵が辺りを白く染める。
《見たか、この野郎!!》
ゼロは唇を親指でチョイと弾き、得意気に吐き捨てた。だが……
(チッ!)
ゼロは『レオ拳法』の構えを取る。ネクサスは何事も無かったように瓦礫を押し退けて立ち上がった。ダメージは全く無いようだ。
《そろそろ本気で行くよ!》
ネクサスは不敵な台詞を吐くと、右腕を胸に当てた。『アームドネクサス』のクリスタル部分が輝くと、赤い波長がその全身を被って行く。
『何だあっ!?』
ゼロの目の前で、ネクサスの身体が変化を起こした。両肩に生体プロテクターが加わり、赤を基調とした特殊戦闘形態『ジュネッス』に姿を変える。
(コイツ……『ウルトラマンダイナ』や『メビウス』と同じく姿を変えられるのか!?)
今のゼロにフォームチェンジはまだ出来ない。ゼロの驚きを他所に、ネクサスは両腕を左側にクロスさせる。右腕の『アームドネクサス』が激しく光を発した。
《悪いけど、付き合って貰うよ!》
赤い巨人は右腕を天高く掲げた。その手から眩い黄金の光の奔流が空に放たれる。
(何をする気だ?)
身構えるゼロは、周囲の空間異常を感知した。ネクサスの放った光が巨大な金色のドーム 型を形成し、2体の巨人を包み込んで行く。
「ゼロッ!?」
驚くシグナム達の前で、ゼロとネクサスの巨体が金色の光と共にぼやけて行き、遂には跡形も無く消え失せてしまった。
ゼロが金色の光を抜けると、目の前には見た事の無い異様な空間が在った。 赤や紫などの色が混じりオーロラのように揺らめく空に、異形の大地が広がる荒涼とした所だ。妙な息苦しさを覚える気がした。
(奴の力か……? 別の空間に閉じ込められたのか?)
辺りを見渡すゼロの前に、眩い光が現れる。 光は人型を成し、『ウルトラマンネクサス・ ジュネッス』が姿を現した。
《コイツは貴様の力か!?》
ゼロの問いに、ネクサスは胸部に形成された 『コアゲージ』を青く輝かせ、
《そう……特殊戦闘空間『メタフィールド』来い、ウルトラマンゼロ!!》
メタフィールドで、今2体のウルトラマンによる戦いが始まろうとしていた……
つづく
メタフィールドで激突するウルトラマンゼロと、ウルトラマンネクサス。ゼロはネクサスの圧倒的パワーに苦戦を強いられる。一方の守護騎士達は、奇怪な事態に遭遇する。
次回『激戦-フェースファイティング-』