夜天のウルトラマンゼロ   作:滝川剛

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第36話 亜空間-メタフィールド-

 

 

 

 ヴィータはフェイトと、互いのデバイスを打ち合わせたまま正面から睨み合う。しかしこのままでは援軍に包囲されてしまう。

 

「ちいっ!」

 

 ヴィータは相手の呼吸を見計らい、後方に跳んで距離を取った。跳び退きつつ、忌々し気にフェイトを睨み付ける。

 

(コイツら、良い奴らだと聞いてたのに…… ゼロを封印だと? とんだ恥知らず共だ!)

 

 そんな相手の心の内は知らず、フェイトは 『バルディッシュ』をサイスフォーム、電光の鎌に変化させると、何時でも斬撃を放てる構えを取り、

 

「時空管理局、嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ……」

 

 静かな怒りを込めた口調で、一歩前に踏み出す。

 

「……抵抗しなければ弁護の機会が君には有る……同意するなら武装を解除して……」

 

「誰がするかよ! その気もねえクセに!」

 

 口上を遮り、ヴィータは吐き捨てると床を蹴り、割れた窓から素早く外へ飛び出した。それとほぼ同時にユーノが転移して来る。フェイトはユーノになのはを任せ、ヴィータの後を追ってビルの外へと飛び出した。

 

 ユーノは動けないなのはに治療魔法を施し、魔力ダメージを抜く作業に掛かる。不思議そうな彼女にユーノは、直ぐに駆け付けられた理由を説明した。

 

 あの後フェイト達はただ事では無いと、直ぐに転移ポートで此方に跳んだのである。お陰で間に合ったようだ。ユーノは治療を施しながら事情を聞くが、覚えの無いなのはは首を振り、

 

「……分かんない……急に襲って来て……変な事ばっかり言って来るの……」

 

 相手がなのはを知っているらしい事も、混乱に拍車を掛ける。正直訳が解らなかった。そんな彼女にユーノは、安心させるように笑い掛け、

 

「もう大丈夫……フェイトも居るし、アルフも、それに孤門さんも来てくれてる」

 

「……孤門さん……?」

 

 なのはは思い当たる。フェイトからのビデオメールに、何度か出て来た名前を呟いていた。

 

 

 その頃ヴィータは、フェイト達と熾烈な空中戦を繰り広げていた。ヴィータの『シュワルベ・フリーゲン』魔力付与の鉄球が飛び交い、フェイトの『アークセイバー』電光のブーメランが飛ぶ。両者共一歩も退かないが、

 

「バリアァァッ、ブレイク!!」

 

 フェイトに気を取られている隙に、下方から接近していたアルフが、ヴィータの魔法障壁を拳で打ち抜いた。得意の魔力無効化の魔法だ。

 

「てめえっ!」

 

 鉄槌の騎士はお前もかと、怒りを込めてアイゼンでの一撃を食らわす。その破壊力の前に、アルフは防御壁ごと吹っ飛ばされた。

 しかしフェイトはその隙を見逃さない。空かさず攻勢に出て来る。2対1ではヴィータの不利であった。

 

(くっそお……ぶっ潰すだけなら簡単なのに……!)

 

 それをやる訳には行かないヴィータは、攻撃を凌ぐしか無い。ベルカ式はミッド式に比べて手加減が難しい。手加減する分格段に不利になる。

 しかもどんなに相手が悪かろうが、絶対に殺したり怪我をさせる訳には行かない。そう固く誓ったのだ。

 此処は逃げるしか無いと思ったが、それも難しい。封鎖領域の外に出られないのだ。

 解析して出るか、最大攻撃魔法で破壊るかのどちら かだが、どちらにせよこの状況では難しい。ヴィータは歯噛みした。

 

 

 

 

 ウルトラマンゼロとシグナムは、封鎖領域内への侵入に成功していた。 確かにベルカ式の結界で、シグナムが一部を解除して入り込む事が出来たのである。

 2人が封鎖領域内に足を踏み入れた時、不意にゼロが頭を押さえた。

 

『何だ! この波動は!?』

 

「どうしたゼロ……?」

 

 静まり返った辺りを見回すゼロの顔を、シグナムは不思議そうに覗き込む。ゼロは頭に手を当てたまま将を見、

 

『強烈な催眠波動が中に満ちている! シグナム対精神攻撃の魔法があるだろ? そいつを使え! これじゃあ中に居る人間は、まともな状態じゃいられねえぞ!』

 

「何!?」

 

 どうやらレヴァンティンのセンサーには、無害なものとされてしまっているようだ。未知のもので機械類には感知出来ないらしい。ウルトラマンの脳は、その手のものには敏感なので感知出来たのである。

 

 シグナムは直ぐに精神防御の魔法を発動させた。機械類では判別出来なくとも、魔法には対精神攻撃用のものもちゃんとある。

 その時数キロ程先の高層ビルの谷間に、飛び交う紅い光と金色の光が見えた。シグナムはそれを見て、

 

「あの魔法光はヴィータだ!」

 

『ヤバそうだ、行くぜ!』

 

 ゼロとシグナムは飛び上がり、急ぎ戦闘が行われていると思しき空域へと向かった。

 

 

 

 一方治癒を受け幾分快復したなのはは、ユーノの転移魔法で離れた位置に在るビルの屋上に降り立っていた。丁度フェイト達の戦闘を見守る形になる。

 治療魔法を受けても完全に復活した訳ではなく、戦闘に参加までは出来ない。

 

「アルフさんも来てくれたんだ……」

 

 弱々しく微笑むなのはを支えてやるユーノは、安心させるように笑って見せ、

 

「クロノ達も、アースラの整備を一旦保留にして動いてくれてるよ」

 

 頼もしい限りだった。封鎖領域内をスキャン出来ない為、クルー達は総出で状況の確認に動いている。ジン……と来てしまうなのはであった。

 

 

 その頃『孤門一輝』は転移ポートにより、なのは達より少し離れたビルの屋上に降り立っていた。その手に短剣状の変身アイテム『エボルトラスター』を持ち、油断なく辺りを見渡している。

 

「ん……?」

 

 孤門はふとエボルトラスターを見るが、中央のビースト反応を報せるクリスタル部分は沈黙したままだ。難しい顔でトラスターを見詰め、

 

「一瞬反応が……? むっ!?」

 

 孤門はハッとして顔を上げた。何かを感じ取ったのだ。その全身に燃えるような気と力が満ちる。

 

「来たか……」

 

 普段の穏やかな彼とは違う、戦闘者の表情を浮かべエボルトラスターを握り締めた。

 

 

 

 ヴィータはフェイトとアルフ相手に、苦戦を強いられていた。手加減のせいも有るが、フェイト達も以前とは格段に腕を上げている。

 更に彼女達ならではの、息の合ったコンビネーションでヴィータを追い詰めて行く。あれから半年、漫然とせず相当な研鑽を積んできたのだろう。

 

「こんのおっ!」

 

 ヴィータがコンビネーションを崩そうと、アイゼンを振りかざした時、突然周りを金色の光のリングに囲まれていた。

 

(しまった!?)

 

 気付いた時には遅い。手足を計4つの魔力のリングが拘束していた。空中に磔(はりつけ)のように固定されてしまっている。ヴィータは外そうともがくが、そう簡単には外れない。

 フェイト達の連携プレーだ。フェイトが引き付けている内にアルフが設置式の罠を張り、見事捕らえる事に成功したのだ。

 フェイトは磔にされたヴィータに、勝ち誇ってバルディッシュを向ける。

 

「終わりだね……? さあ観念してマスターと仲間の居場所を教えてもらうよ……害悪!」

 

 ニヤニヤと厭な嗤いを浮かべる金髪の少女 を、ヴィータはキッと睨み付けた。

 

(こんな奴らに負けてたまっか!)

 

 怒りのままにバインドを外そうと四肢に力を込める。その様子をフェイトとアルフが、馬鹿にするように嘲笑っていた。

 少なくともヴィータの眼には、そうとしか映らない。いや……フェイト達も同様であった。互いの言葉も態度も、何もかもが違って相手に伝わっている事に誰も気付いていない。

 自分 達が誰かに踊らされている事に…… その時、アルフが鋭い獣の感覚で接近するものを捉えた。

 

「何かヤバイよ!!」

 

 叫ぶと同時だった。疾風の如く、ヴィータとフェイトの間に踊り込む影。その人物は鋭い一撃でフェイトを弾き飛ばす。

 

「シグナム……」

 

 磔状態のヴィータは声を漏らした。愛刀レヴァンティンを構え現れるは、自分達のリーダー剣の騎士シグナムだ。 アルフが新たなる敵に向かい拳を向けると同時に、

 

「ウオオオオオッ!!」

 

 横合いから雄叫びを上げて突っ込んで来る影。人間形態のザフィーラだ。異常を察知して駆け付けて来たのだ。守護獣はその勢いでアルフに、強烈な回し蹴りを叩き込む。

 ザフィーラにもフェイト達が嘲笑いながら、 ヴィータに止めを刺そうとしているようにしか見えなかった。

 

『待てザフィーラ!』

 

 ザフィーラが吹っ飛んだアルフに追撃を掛けようとすると、ゼロが背後に現れそれを押し止めていた。

 

「ゼロか、何をする? ヴィータが危ない……!」

 

 やはりザフィーラも催眠波動に惑わされている。ゼロは必死に訴え掛けた。

 

『ヴィータはシグナムに任せろ! 今はまず対精神攻撃防御の魔法を使うんだ!!』

 

「何故だ……?」

 

『頼む! 今は俺を信じてくれ!!』

 

 ゼロの尋常では無い剣幕に、ザフィーラも対精神攻撃防御の魔法を発動させる。幸い味方の方の声は、テレパシーと思念通話でまともに届くようだ。

 

「どう言う事だゼロ……? む……さっきと様子が……?」

 

 ザフィーラは周囲の様子から、違和感を直ぐに感じ取った。流石は冷静な守護獣た。

 

『簡単に言うと……俺達は嵌められたらしいって事だ……』

 

 ゼロは此方の姿を見て、唖然としているフェイト達に視線を向けながら、苦々し気に説明した。

 

 

 

「な……何でゼロさんが……?」

 

 思いも寄らない再会に、フェイトは動揺を隠しきれない。様子を見守っていた、なのはとユーノも驚いている。

 フェイトの目前のポニーテールの女性は剣型のデバイスを携え、冷やかな眼で彼女を見下ろしていた。その隣にゆっくりと浮かんで来たのは、良く見知ったウルトラマンゼロの姿。フェイトは思わず叫んでいた。

 

「ど……どうして、なのはを襲った人達と一緒に居るんですか!? 離れて下さい! その人達を捕まえないといけないんです!!」

 

 呼び掛けにゼロは、哀しそうに首を横に振り、

 

『仕方ねえんだ……邪魔をするなら……お前らでも容赦は出来ねえ……頼む……退いてくれ……』

 

 酷く沈んだ声だった。フェイトにはゼロの全てが苦しく哀し気に映る。そして厭な笑みを浮かべる紅い髪の少女と、ポニーテールの女性。

 

 女性はフェイトにニヤリと嗤い掛けると、後ろからゼロの首に妖しく両手を回し、見せ付けるように豊満な肉体を押し付けて見せる。

 まるでゼロは、自分の物だとでも言いたげだった。それを見たフェイトの中で、ふつふつと抑え切れない程の怒りが湧き上がる。汚らわしかった。大事なものを汚された気がした。

 

「ゼロさんに何をしたぁっ!?」

 

 フェイトは紅玉色の瞳に怒りの色を燃やし、バルディッシュを女剣士シグナムに向けた。

 

 

 

「ゼロ……テスタロッサの私を見る目が、恐ろしく悪くなったようだ……」

 

 シグナムはため息混じりに、愛刀を構えながらぼやく。まさか自分が、ゼロに絡み付く妖しい女に見えているとまでは思ってもみない。

 

『今更何言っても通じねえんだろうな……此方の言葉やら様子やら、どう見えて聞こえてんだか……?』

 

 ゼロも困惑するしか無い。今フェイトに、全ては誤解だから話を聞いてくれと伝えた所だが、まるで通じていないようだ。すると後ろで磔状態のままのヴィータが、

 

「おいっ! どう言う事だよ!? あの高町なんとかがいきなり襲って来たんだぞ!」

 

 状況が掴めず苛ついた声を出す。何が何だか解らないのだ。シグナムは振り向き、

 

「簡単に言うと……お前達全員、強力な催眠波動で踊らされていたのだ……」

 

「何だと!? そんな馬鹿な!!」

 

 ヴィータは驚愕して顔色を変えていた。今までの出来事が全て幻覚だったとは。だが本当にそうだろうか? 最初のなのはは本当に幻覚なのか? 混乱するヴィータにシグナムは、

 

「考えるのは後だ。まずは精神防御魔法を使え……それでなくては、此処ではまともに動けん……」

 

 ヴィータは言われた通り、対精神攻撃防御の魔法を発動させる。そうしている間に、フェイトがシグナム目掛けて突っ込んで来た。一番の敵だと判断したようだ。剣の騎士はレヴァンティンを構え、

 

「今は何を言っても無駄なら……少し大人しくしていて貰おう!」

 

『おいっ、シグナム、無茶すんな!?』

 

 ゼロは慌てて止めようとするが、シグナムはチラリと横目で視線を送り、レヴァンティンの刃を返すと、

 

「仕方あるまい、手加減はする……レヴァンティン、カートリッジロード!」

 

《Exposion!》

 

 レヴァンティンから魔力カートリッジが排出され、刀身が業火と化す。シグナムは一瞬で間合いをゼロに詰め、フェイトにカウンター気味に突っ込んだ。

 

「紫電……一閃っ!!」

 

 フェイトは降り下ろされる炎の攻撃を、バルディッシュで辛うじて受け止める。しかし一撃でバルディッシュの柄部分は真っ二つにへし折られた。

 

「うおぅっ!」

 

 鋭い気合いと共に、返す刀で二撃目が襲う。フェイトは防御魔法で受け止めようとするが、痛烈な打撃に防御シールドごと吹き飛ばされ、向かいのビルに叩き込まれた。ビルの屋上に大穴を穿ち、フェイトは瓦礫と共に転がされる。

 

「フェイトォォッ!!」

 

 アルフは落下したフェイトの元に駆け付けた。怪我こそ無いようだが、魔力ダメージと打撃のショックで呻いている。ゼロは人間形態だったら青くなりそうな様子で、

 

『シグナム……やり過ぎじゃあねえか……?』

 

「安心しろ……峰打ちな上加減はした……テスタロッサは腕が立つ……これくらいでないと行動不能に出来ん……」

 

 シグナムは涼しい顔で言ってのける。確かにそのようだが、それにしてもキツイ。ゼロを騙している悪女呼ばわりされて、少し怒っているのかもしれない。

 

 ゼロはため息を吐くように肩を竦めると、まだ磔状態のヴィータに近付き、バインドを『ウルトラ念力』で粉々に砕いてやった。

 

「悪い……ゼロ……」

 

 ヴィータは腕を擦りながら、素直に礼を言う。するとシグナムが近寄って来た。

 

「ヴィータ……良く我慢したな……」

 

 妹に対する姉のように微笑する。将には判っている。こんな状況下でもヴィータが、相手に怪我をさせまいとした為に不覚を取った事を。

 

「た……たりめえだ……約束だかんな……アタシを誰だと思ってる……」

 

 その事を汲み取ってもらい、ヴィータは照れてわざと膨れっ面をして見せる。シグナムは誇らしげに微笑し、

 

「そうだな……紅の鉄騎に失礼だったな……」

 

 ヴィータの頭に先程撃ち落とされた、のろいウサギの着いた帽子を被せてやる。

 

「破損は直しておいた……大事な物だろう……?」

 

 ヴィータは帽子を大事そうに被り直すと、上目使いにシグナムを見上げ、

 

「シグナム……あんがと……」

 

 呟くようにお礼を言った。普段何かとシグナムに突っ掛かる事が多いヴィータだが、本心は違う。こうして見ると2人は姉妹のように見えた。

 ゼロは一瞬状況を忘れホッコリしてしまうが、無事の再会を喜んでばかりもいられない。4人は集まり、背中合わせに一塊になった。

 

『このままやり合う訳には行かねえ……此処から離脱しようぜ……』

 

 ゼロは逃げる事を提案する。敵ならまだしも、フェイト達と戦う訳には行かない。何者かの策略にむざむざ乗る気は無かった。しかしシグナムは厳しい表情を浮かべ、

 

「それが出来ないのだ……私もそう思って入った時と同じく、封鎖領域の一部を解除しようとしたが駄目だ……入った時と術式が組み換えられてしまっている……」

 

『何だって!? じゃあ俺達もまんまと嵌められた上に、此処に閉じ込められたって事 か!?』

 

「そうだ……これを破るには恐らくゼロの光線か、私かヴィータの最大クラスの魔法攻撃もしくは、解析しての解除が必要だろう……」

 

『判った、それなら俺がやる!』

 

 ゼロは頷くと、左腕を水平に挙げ『ワイドゼロショット』のエネルギーを集中させた。

 シグナム達が周りを見渡すと、復活したフェイトがアルフと共に向かって来るのが見える。ユーノもなの はを防御結界の中に退避させ、援護の為に向かって来ていた。

 

「何をするつもりか知らないが……そうはさせない!」

 

 戦局を見守っていた孤門はゼロの動きを察し、エボルトラスターの鞘にあたる部分を一気に引き抜いた。短剣部を頭上に勢い良く掲げる。

 

「うおおおおおっ!!」

 

 刃先が眩いばかりの光を発し、彼の身体は光に包まれた。

 

 

 

『何だ!?』

 

 ゼロは突如として現れた、天空まで届きそうな光の柱を見て、ゼロショットの手を止める。容易ならない力の気配を感じ取った。

 眩い光と共に巨大な何かが、大地を揺るがしビル街中心に降り立つ。

 

『ばっ、馬鹿な! ウルトラマンだと!?』

 

 ゼロはその姿を見て、驚愕の声を上げていた。光が晴れると、其処には片膝を立てた光り輝く巨人の姿が在った。

 全身銀色のボディーに、赤く発光する胸部のYの字形のクリスタル部。『ウルトラマンネクサス・アンファンス』の出現であった。

 ネクサスは片膝を着いた体勢からゆっくりと立ち上がり、その銀色に輝く数十メートルの偉容を示す。

 

「あ……アイツはゼロの仲間なのか……?」

 

 ヴィータがネクサスの巨体を見下ろし聞いて来るが、ゼロは首を振り、

 

『いや……あんなタイプの同族は居ない……誰だアイツは……?』

 

 一見ウルトラ族に良く似ているが、胸部の形状といい腕の籠手状のアームガードといい、明らかに違う点が窺える。生命体として別種の存在に見えた。

 見覚えと言う点では、胸のクリスタル部の形状が『ウルトラマンノア』に似ているくらいかとゼロは思う。

 敵か味方か不明だが1つハッキリしているのは、容易ならざる相手だと言う事だ。警戒して身構えるゼロは、そこである事に気付く。

 

(催眠波動が消えている……?)

 

 何時の間にか、あれだけの催眠波動が消えてい る。疑問に思うゼロだが、最悪のタイミングで切られた気がした。困惑するゼロの頭の中に声が響く。

 

《君がこんな事までするとはね……》

 

《誰だお前は? 俺を知ってるのか!?》

 

 巨人ネクサスは、静かにゼロを見上げ、

 

《ウルトラマンネクサス……ウルトラマンゼロ、君を倒しに来た……まさかとは思っていたが……やはり今まで魔導師を襲っていたのは君達だったのか……!》

 

《ふざけるなあっ! いきなり出て来て訳の解らねえ事ぬかしてんな! 俺達は誰も襲ったりなんかしてねえ!!》

 

《この後に及んで、そんな事が信じられるとでも思うのかい……? どの道僕は君を倒す!》

 

『くっ……!』

 

 やはり今更催眠波動が切られても状況は好転しない。相手もやはり信じてはくれなかった上、どうもそれだけでは無いようだった。こうなればやるしか無い。

 ゼロも対抗して、一気に身長49メートルの巨人と化し、地響きを上げてネクサスの前に降り立った。互いの光る眼がビル街をぼんやりと照らし出し、2体の巨人は対峙し合う。

 

《闘る気かゼロッ!?》

 

 シグナムが呼び掛ける。ゼロはネクサスを正面から見据え、

 

《コイツと闘り合ってる最中に、俺が光線をぶっ放して封鎖領域を破壊する。その隙にバックレるぞ。俺達は今捕まる訳にも、出頭する訳にも行かねえ!》

 

 シグナムは頷いて、レヴァンティンを構える。

 

《判った……此方は邪魔されないようにテスタロッサ達を抑える!》

 

《任しときなゼロ!》

 

 ヴィータもグラーフアイゼンを構える。ザフィーラは無言で頷き拳を固める。3人は上昇して来るフェイト達に備えた。

 

 

 

 フェイト達は見た事の無い巨人の出現に戸惑っていた。すると全員の念話回線に、聞き覚えのある声が入って来る。

 

《僕だ、孤門だよ。ウルトラマンゼロは僕が引き付けておくから、その間になのはちゃんを連れて脱出の準備を!》

 

《えっ? 孤門なの……? 孤門のレアスキ ルって……》

 

 フェイトは驚くが正直ありがたい。さっきま で4対3だった上、ウルトラマンゼロを抑えるのは不可能に近いと思っていたからだ。

 どんな力を秘めているか不明だが、今は頼らせて貰うしか無い。思わぬ援軍だった。

 此方にはダメージを負ったなのはが居る。今は脱出を優先しなければならない。フェイト達が相手を引き付けている間に、全員を結界の外に転送するのが彼女達の考えだ。

 

 ゼロ達もフェイト達も互いに気付かず、それぞれ脱出の算段をしている事になる。これを仕掛けた者は、きっと陰でせせら嗤っているだろう……

 

 

 

 ゼロはネクサスと対峙し、間合いを計っていた。どんな能力を持っているのか、まるで未知数の相手だ。 油断は出来ない。感知出来るエネルギー量も半端では無い。見かけ倒しでは無かろう。

 

(まずは攻めて出方を見る!)

 

 先手必勝と、ゼロはアスファルトを砕いて飛び出した。1秒と掛からず数百メートルの距離を一瞬で詰め、ネクサスの顔面目掛け正拳突きを放つ。

 

『ディヤアアアッ!!』

 

 ネクサスも棒立ちではいない。電光の如く反応し、大砲のような拳を左腕の『アームドネクサス』で受け止め、逆にゼロの顎目掛け痛烈なアッパーを放つ。

 ゼロは上体を反らしてスウェーバックで、その一撃をかわす。ネクサスの拳の衝撃波が唸りを立てた。

 

《やるじゃねえか!》

 

 素早く上体を起こしたゼロは、空振りでがら空きになったネクサスの脇腹にボディーブローを繰り出した。しかし、

 

『シェエアアッ!!』

 

 ネクサスはアッパーから切り替えて、肘打ちでゼロの拳を叩き落とす。まるで巨大な杭で打たれたようだ。

 

(野郎っ!!)

 

 ゼロは後方に飛び退くと、ネクサスの側頭部を狙って鉞(まさかり)のような回し蹴りを放った。ネクサスも迎撃の回し蹴りを放つ。

 2体の巨人の豪脚が唸りを上げて、空中で激突した。互いの攻撃に込められたエネルギーが火花を散らし、 衝撃波が周りのビルの窓ガラスを粉々に砕く。

 

『ウオリャアアアッ!!』

 

『シェエアアッ!!』

 

 双方の巨体に凄まじいまでの力が満ちる。強大なパワーとパワーとのぶつかり合いだ。

 

『デリャアアアアアッ!!』

 

 ゼロが吼える。右脚が炎のように赤熱化し炎と燃える。ゼロのパワーがネクサスを怒涛の勢いで押し返した。

 

『ウオオッ!?』

 

 耐え切れなくなったネクサスは、爆発に呑まれたように吹き飛び、横のビルに頭から突っ込んだ。ビルが積み木のように崩れ落ちて倒壊し、瓦礫と粉塵が辺りを白く染める。

 

《見たか、この野郎!!》

 

 ゼロは唇を親指でチョイと弾き、得意気に吐き捨てた。だが……

 

(チッ!)

 

 ゼロは『レオ拳法』の構えを取る。ネクサスは何事も無かったように瓦礫を押し退けて立ち上がった。ダメージは全く無いようだ。

 

《そろそろ本気で行くよ!》

 

 ネクサスは不敵な台詞を吐くと、右腕を胸に当てた。『アームドネクサス』のクリスタル部分が輝くと、赤い波長がその全身を被って行く。

 

『何だあっ!?』

 

 ゼロの目の前で、ネクサスの身体が変化を起こした。両肩に生体プロテクターが加わり、赤を基調とした特殊戦闘形態『ジュネッス』に姿を変える。

 

(コイツ……『ウルトラマンダイナ』や『メビウス』と同じく姿を変えられるのか!?)

 

 今のゼロにフォームチェンジはまだ出来ない。ゼロの驚きを他所に、ネクサスは両腕を左側にクロスさせる。右腕の『アームドネクサス』が激しく光を発した。

 

《悪いけど、付き合って貰うよ!》

 

 赤い巨人は右腕を天高く掲げた。その手から眩い黄金の光の奔流が空に放たれる。

 

(何をする気だ?)

 

 身構えるゼロは、周囲の空間異常を感知した。ネクサスの放った光が巨大な金色のドーム 型を形成し、2体の巨人を包み込んで行く。

 

「ゼロッ!?」

 

 驚くシグナム達の前で、ゼロとネクサスの巨体が金色の光と共にぼやけて行き、遂には跡形も無く消え失せてしまった。

 

 

 

 

 

 

 ゼロが金色の光を抜けると、目の前には見た事の無い異様な空間が在った。 赤や紫などの色が混じりオーロラのように揺らめく空に、異形の大地が広がる荒涼とした所だ。妙な息苦しさを覚える気がした。

 

(奴の力か……? 別の空間に閉じ込められたのか?)

 

 辺りを見渡すゼロの前に、眩い光が現れる。 光は人型を成し、『ウルトラマンネクサス・ ジュネッス』が姿を現した。

 

《コイツは貴様の力か!?》

 

 ゼロの問いに、ネクサスは胸部に形成された 『コアゲージ』を青く輝かせ、

 

《そう……特殊戦闘空間『メタフィールド』来い、ウルトラマンゼロ!!》

 

 メタフィールドで、今2体のウルトラマンによる戦いが始まろうとしていた……

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 





 メタフィールドで激突するウルトラマンゼロと、ウルトラマンネクサス。ゼロはネクサスの圧倒的パワーに苦戦を強いられる。一方の守護騎士達は、奇怪な事態に遭遇する。

 次回『激戦-フェースファイティング-』
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