夜天のウルトラマンゼロ   作:滝川剛

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第44話 再戦-リマッチ-

 

 

 はやてとシャマルは、近所のスーパーに買い出しに来ていた。 今晩はすずかが夕食を食べに来るので、張り切るはやては色々と食材を吟味している所であ る。その最中ふとシャマルを見上げ、

 

「まだ皆帰っとらんかな? 早く戻って来れたらええんやけど……」

 

 何気無い一言だったが、シャマルはドキリとしてしまう。だがはやてにバレないよう、細心の注意を払った来たのだ。感付かれている筈は無い。

 そんなに器用な方では無い湖の騎士は、取り敢えずニッコリ笑って見せ、

 

「ええ……その~……念の為と言うか……」

 

「うん、判っとるよ、ビーストがまだ何処かに隠れとらんか調べとるよね?」

 

 はやてはしどろもどろになるシャマルに笑い掛ける。念の為調査をしていると伝えてあるのだ。

 管理局の目をかい潜る為、遠い世界で『蒐集』しなければならない今、そうでも言っておかないと留守がちなのが不自然になって来ている。

 

 ビーストの警戒は本当の事なので嘘では無いと自分に言い聞かせるシャマルだったが、やはり後ろめたさが付きまとう。しかしお陰で、鋭い所のあるはやてに怪しまれずに済んでいるのは皮肉であった。

 

 ゼロ達は家に全く居ない訳では無いが、はやては以前より一緒に過ごす時間が少し減った事を寂しく感じ、つい口に出してしまった事を後悔した。

 

(あかん……みんな頑張っとるのに、私がこんなんだと……)

 

 我が儘だと自分を戒め、精肉コーナーで大量の肉のパックを纏めて手に取るとシャマルに笑い掛け、

 

「じゃあ、今晩はすずかちゃんも来てくれるし、みんなお腹空かせて来るからお肉はこれくらい……」

 

「はい」

 

 シャマルは誤魔化せた事に、内心ホッとしながら相槌を打つ。吟味して一通りの材料を籠に入れたはやては、

 

「外は寒いし、今晩はやっぱり温かおでんやね?」

 

 張り切る小さな主に、シャマルは優しく微笑んだ。

 

 

 買い出しを終え外に出たはやては、シャマルが買い物カートに食材を詰め込む間ブルッと身を震わせる。 気温も大分下がって来ていた。かじかむ手に息を吐きながら、ふと夜空を見上げ、

 

「みんなも外で寒ないかな……?」

 

 冬の張り詰めた空気で、いやに冷たく見える夜空は星ひとつ見えない。はやては暫しこの場に居ない家族達に思いを馳せた。

 

 

 

 

 街中の1区画を丸々飲み込む程広い範囲に、ドーム型の結界が張られていた。それを上空から見下ろす2つの人影。人間大の『ウルトラマンゼロ』とシグナムである。

 

「強装型の捕獲結界……ヴィータ達はあの中に閉じ込められたようだ……」

 

 冷たい夜風に八重桜色の髪を煽られながら、シグナムはゼロに状況を説明した。

 

『チッ……罠を張られてたって訳か……周囲にも十数人、当然ネクサスの奴も居るだろうな……』

 

 ゼロは電飾のように夜空に光る眼を結界に向ける。その超感覚に、包囲する武装局員の反応が捉えられていた。

 

《Wahlen sie.Aktion!》(行動の選択を!)

 

 『レヴァンティン』がシグナムに、次の行動の指示を求める。剣の騎士は古くからの相棒を見据え、

 

「レヴァンティン……お前の主は此処で退くような騎士だったか……?」

 

《Neln!》(否!)

 

 お互い永い付き合いだ。阿吽のやり取りと言うやつである。シグナムは戦鬼の眼差しでレヴァンティンを掲げ、

 

「そうだレヴァンティン……私は今までもずっとそうして来た……ゼロも良いな?」

 

『聞かれるまでもねえ! 速攻でヴィータとザフィーラを拾ってバックレようぜ!!』

 

 ゼロの即答にシグナムは不敵に微笑み、カートリッジをロードしようとすると、

 

『カートリッジの無駄使いは止めとけ、結界に穴を開けるのは任せろ!』

 

 ゼロがそれを止めた。現在度重なる『蒐集』 と戦闘続きで魔力カートリッジの消費が激しい。

 カートリッジの作り置きの時間が足りない上、魔力注入作業は実質シャマルのみという状況だ。当然シグナムとヴィータが使えるカート リッジの数は限られる。

 『闇の巨人』に管理局の2つを敵に回し、何が起こるか判らない現状では、カートリッジの無駄使いは避けるべきだ。

 

「済まないが……此処は頼む……」

 

 シグナムもそれを察し任せる事にした。ゼロは結界を見据えると、右脚にエネルギーを集中させる。その右脚が炎の如く赤熱化した。

 

 

 

 

 

 

 ヴィータはなのはとフェイトに『グラーフアイゼン』を威嚇するように向ける。フェイトはそれに対し、険しい顔で『バルディッシュ・アサルト』を構えようとするが、その間に入るようになのはが前に出て制止した。

 

「なのは……?」

 

「フェイトちゃん、まず私とあの子とで話をさせて」

 

 フェイトは友人に危険だと言い聞かせようとするが、なのはは静かに首を横に振って見せ、

 

「フェイトちゃんの気持ちも判るけど……クロノ君もまず話をしてみようって言ってたじゃない、お願い!」

 

 真剣な面持ちで頭を下げた。フェイトは困惑してしまう。クロノが話をしてみようとは言うのはゼロとであって、守護騎士達では無い筈である。

 何故と思ったが、前になのはが言っていた事を思い出した。前回の戦いで、あの紅い服の少女に助けられたのではないかと疑問を抱えていた事を。

 

 友人は性格上、確かめずにはいられなかったのだろう。凝り固まっていた自分に、諦めずに呼び掛け続けた事と同じだ。

 フェイトは問答無用で攻撃するつもりだったが、なのはの頼みにバルディッシュを下げた。

 

「……判ったよ……でも相手が何かして来たら、直ぐに攻撃するよ……?」

 

 一旦は矛を納める事にする。他ならぬ大切な友人の頼みだ。この友はこうなったら梃子でも退かない。しかし無論フェイトは退く気は無い。何か有れば直ぐに対応するつもりだ。

 

「ありがとう、フェイトちゃん……」

 

 なのはは友人が我慢して、自分を立ててくれた事に感謝する。顔を上げたなのはは改めてヴィータ達を見上げ、

 

「私達は戦いに来たんじゃない、話し合いに来たの!

 

 しっかりと語り掛けた。ヴィータは不信感全開で眉をひそめるが、なのはは話を続ける。

 

「それに……この間は私を助けてくれたんじゃないの? 『闇の書』の完成を目指しているのも、理由が有るなら聞かせてくれない?」

 

「こいつ……」

 

 ヴィータは少し迷った。『ガルベロス』や偽者のせいで、此方を完全に悪人だと決め付けられていると思ったからだ。

 だがどうも様子を見る限り、疑問を抱いているのはこの白い魔導師だけのように見える。つまり個人の感想だ。管理局の総意ではあるまい。

 過去他のマスターの元でやり合った事もある敵だった管理局。その所属の魔導師、どこまで信用出来るのか。演技かもしれない。

 

 ゼロからの話と、フェイトに化けた時のしつこい印象しか無いヴィータには、なのはを信用出来なかった。何よりはやてに類が及ばない保障は無い。

 鉄槌の騎士は、最終的に相手にしないのが一番だという結論に達した。一度胸襟を開けば全幅の信頼を寄せる彼女だが、そうならない限り野良猫のように警戒心を顕にする。

 

 そこでヴィータは少し悪戯心を出した。此方の都合も知らず、話し合いを望むなのはをからかってやりたくなったのだ。

 

「あのさあ……地球のことわざに、こう言うのが有んだよ……」

 

 ヴィータは偉そうに腕組みして、なのは達を見下ろした。ザフィーラは意外そうに彼女を見る。あまり言い出しそうに無い台詞だったからだろう。ヴィータは如何にも偉ぶった様子で、

 

「ザラブ、ファンタス……自称和平の使者の奸計ってな……」

 

 人の悪い笑みを浮かべて見せた。アタシちょっと格好いい事言ったみたいなドヤ顔である。なのはとフェイトは困ったように顔を見合わせた。意味が全く解らないのである。

 ヴィータはやっぱり知らないか、このお子さま共がと得意気に、グラーフアイゼンをズイッと突き出してなのはを指し、

 

「善人顔して、兄弟だの話し合いだの言って近付いて来る奴には気を付けろって意味だよ。おまけに御大層な改造デバイス持って来て何が話し合いだ。バ~カ、バ~カッ!」

 

『ザラブ星人』や『ファンタス星人』が最初に友好を求めた後に、実は陰で侵略準備を整えていた事に引っ掛けたものらしい。

 なのはは一瞬面白い顔になってズッコケ掛けるが、辛うじて持ち直し、

 

「有無を言わさず、襲い掛かって来た子がそれを言う!? ってザラブって何?」

 

 流石にムッとして文句を付けた。するとヴィータの横でやり取りを黙って聞いていたザフィーラが一言。

 

「ヴィータ……言い辛いが……それはゼロの世界の地球での話で、更にはことわざでは無くネタ話の格言だ……」

 

 冷静に勘違いを指摘した。言わずにはいられなかったようである。この世界の人間に分かる訳が無い。

 ヴィータはゼロから向こうの話を聞くのが面白いので、色々聞いている内に混ざってしまったらしい。こうして彼女の知ったかは5秒で露見してしまった。

 

「うっせえな! どうだっていいだろう!?」

 

 決まりが悪いので逆ギレ気味に開き直るろうとした時、頭上の結界の一部が轟音を上げス パークを起こした。結界に穴が開いたのだ。

 そして2つの光が、近くのビル屋上に凄まじい勢いで降下して来る。 結界に穴が開いた余波で、爆煙のような煙が辺りを舞った。

 

『来たか……』

 

 黙ってヴィータ達のやり取りを聞いていた 『ウルトラマンネクサス』が低く呟く。

 煙が晴れると、膝を着いて降り立ったウルトラマンゼロとシグナムが姿を現した。ゼロの右脚はゼロキックの余韻で、僅かに赤く赤熱化している。2人は身を起こし一同を見据えた。

 

「ゼロさん……シグナム!」

 

 フェイトは超人と白い剣士の姿を認め、それぞれに真逆の感情の籠った視線を向けて叫んだ。

 

「ゼロさん、その人達と一緒に居てはいけない! 理由が有るのなら私達が手助けしますから、此方へ来てください!!」

 

 必死に呼び掛ける。彼女の叫びにゼロは申し訳ないと思いつつも、

 

『済まねえな……だけどよ、今の状況でそれは出来ない相談なんだ……このまま見逃してくれないか……?』

 

 更に一応偽者の件を伝えておこうとするゼロの前に、シグナムが立ち押し留めた。

 

「この状況では何を言っても無駄だ……お前が我らにそう言えと、強制されているとしか受け止められんだろう……今は此処を切り抜けるしか無い……!」

 

 そのやり取りがまたフェイトの神経を逆撫でする。彼女にはシグナムが、ゼロをたぶからしているとしか思えない。

 

「なのは……やっぱりゼロさんを助ける為には、シグナム達を倒すしか無いよ……!」

 

 友人の怒りの感情が込められた言葉に、なのはは一 瞬躊躇したが腹を括りコクリと頷いた。どの道話を聞くには、相手に勝たなければならない。

 

「ユーノ君、クロノ君! 手を出さないでね、私あの子と1対1だから!!」

 

 なのははヴィータを見据えてタイマン宣言をする。後方で合流していたクロノとユーノは、その漢女振りに若干退いたのは内緒だ。同じくその様子を見ていたアルフに、フェイトからの思念通話が入る。

 

《アルフ……私も彼女と……!》

 

 フェイトは此方を無感動に(少なくとも彼女にはそう見える)見詰めるシグナムを険しい目で見据えている。彼女も1対1の対決を望んでいた。アルフは主の決意を感じ取って頷き、

 

《ああ……アタシも野郎にちょいと話があ る……》

 

 ヴィータの隣のザフィーラをギロリと睨み付ける。我慢ならないと言った表情だった。守護獣に対して、思う所が有るらしい。

 

『当然お前は俺相手って訳か……』

 

 ゼロは先程から此方をじっと見ているネクサスを、挑発するように指差すが、

 

(チッ……こちとらサッサッと逃げたいだけなんだがな……簡単には行かないか……)

 

 理想はこのまま全員で脱出することだが、そう簡単には逃がしてくれそうに無い。ネクサス達を退けない限り脱出は難しかった。

 

(敵の思う壷かよ……クソッタレッ!)

 

 嵌められているのは分かっていても、こうするしか無い。今捕まる訳にはいかないのだ。少なくとも『蒐集』を終え、はやてを助けるまでは……

 

 お互いの対戦相手は決まったようだ。互いの相手と視線をぶつけ合うなのは達を見て、後方のクロノとユーノは思念通話でやり取りし、

 

《ウルトラマンゼロは聞いてくれないか……人質でも取られているのかもしれないな……ユーノそれなら僕と手分けして『闇の書』の主を捜すんだ》

 

《『闇の書』の……?》

 

 不思議そうなユーノにクロノは、守護騎士達が書を持っていない事から、もう1人が近くに 居る可能性を示唆した。

 そちらを押さえる事が出来れば状況は変わる。クロノは結界の外、ユーノが結界内を分担して捜索に掛かる事にした。ユーノはその前にゼロを一瞬見ると、

 

(待っていてください……今度は僕らが力になる番です!)

 

 何度も命を救われた恩は忘れない。ユーノもゼロを助けたいのは同じだ。クロノもそうだろう。固く誓うとその場を素早く離れた。

 

 

 

 

 

「レイジングハート、カートリッジロード!」

 

「バルディッシュ、カートリッジロード……!」

 

 なのはとフェイトの指示に、レイジングハートとバルディッシュが応える。 ヴィータ達の眼下でビル屋上に立つ2人のデバイスが、カートリッジシステムを起動させた。以前とは比べ物にならない程の魔力が感じ られる。

 

「デバイスを強化して来たか、気を付けろヴィータ!」

 

「言われなくても!」

 

 ザフィーラの警告にヴィータは突っ掛かる。何か言われるとつい反発するのは、彼女の仕様である。 シグナムはレヴァンティンを構え、フェイトを見据えた。その表情は冷静そのものだ。

 

 ゼロはネクサスに対峙し、どんな攻撃にも反応出来るように全身の無駄な力を抜く。変に身体に力を入れ過ぎると反応や動きが鈍くなってしまう。『ウルトラマンレオ』の教えだ。格闘技の基本である。

 各自の戦意が高まった次の瞬間、8つの光がほぼ同時に空に飛び出した。

 

 

 先行するヴィータを、なのはは高速で追尾する。鉄槌の騎士は軽蔑したように振り返り、

 

「何だよ口だけか……結局やんじゃねえかよ!」

 

 挑発に対し、なのはは拳を握り締めて、

 

「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ、いいね!?」

 

 ヴィータは強引さに鼻白みながらも、急制動を掛け空中で停止すると、素早く鉄球を取り出しアイゼンで打ち出した。

 鉄球に魔力をプラスした『シュワルベフリー ゲン』4発の攻撃を、なのはは高度を取ってかわす。間髪入れずアイゼンの推進剤が勢い良く噴射し、ヴィータの身体が独楽のように猛回転した。

 

「でえええええいっ!!」

 

 その勢いで高速で飛び出し、なのはに『ラケーテンハンマー』の一撃をお見舞いする。前回のように障壁を打ち抜いた後に打撃と魔力ダメージで、戦闘不能に追い込むつもりだったが……

 

《Protection》

 

 レイジングハートの声が響くと同時に、なのはの突き出した右手から前面に張り巡らされた桜色の障壁が、強固な盾となってアイゼンの一撃を阻んだ。

 

「硬ええ~っ」

 

 火花を散らすアイゼンのスパイクと魔法障壁。予想以上の頑丈さだ。魔法障壁を抜けない。

 会心の笑みを浮かべるなのはは、障壁を一旦バーストさせた。中規模の魔力爆発が起こり、ヴィータとなのははほぼ同時に吹き飛んだ。

 

「クソオッ!」

 

 吹き飛ぶヴィータを、いち早く態勢を立て直していたなのははが射出した目標追尾型砲撃魔法『アクセルシューター』十数発が襲う。

 不意を突かれた形のヴィータだが、周りを飛び交う桜色の魔力弾に視線をやり、

 

「阿呆かっ、こんな大量の弾、全部制御出来る訳がっ!」

 

 どんな魔導師でも、あまりに多くの魔法を同時に行使すると処理しきれずコントロール不全に陥ってしまう。魔導師の並列思考マルチタスクでも限界はあるのだ。

 恐れるに足りずと判断した鉄槌の騎士は、再びシュワルベフリーゲンを打ち出した。なのはを囲むように四方から同時攻撃のコントロールをする。少女は動かない。

 

《It can be done.as for my master》(出来ます、私のマスターなら)

 

 レイジングハートが応えた瞬間、制御仕切れないと思われた魔力弾が、なのはに迫る鉄球を同時に粉々に打ち砕いた。破片と化してしまう鉄球。

 

「ああ……?」

 

 ヴィータは思わず息を呑んだ。徹底的にカートリッジシステムの特訓をした成果と、『バグバズン』との死闘を潜り抜けて来た成果であった。

 それを差し引いても、これで魔法と出会ってから1年と経っていないと言うのだから驚きである。

 ヴィータも永い人生の中、これ程の才能は滅多にお目に掛かった事が無い。紛れもなく天才であろう。

 

「約束だよ、私が勝ったら事情を聞かせてもらうって!」

 

 なのはは改めて約束を口にし、周囲を飛び交う残りの魔力弾をヴィータに一斉に向かわせる。

 

「こいつ、明らかに化けやがった……クッ!」

 

 ヴィータは自分の周囲に、クリスタル状の魔力障壁を張り巡らし対抗する。障壁に桜色の魔力弾が雹の嵐のように、何度も激突を繰り返す。強固なベルカ式の防御壁にヒビが生じて行く。これでは長くは保つまい。

 

「このお~っ」

 

 ヴィータは目前の白い魔導師を焦りと共に睨み付けた。

 

 

 

 

 紫と金色の光が火花を散らし、くすんだ夜空を何度も激突し合う。

 

「はああああああっ!」

 

 フェイトはバルディッシュを大きく振りかぶり、高速で上昇を掛けた。

 

「うわああああああっ!!」

 

 シグナムは更に上に昇ると急降下し、レヴァンティンを大上段から両断せんばかりの勢いで降り下ろす。鋭い金属音を立てて、2人のデバイスが打ち合わせられる。

 競り合うシグナムとフェイト。流石に力負けし不利と見たフェイトは、次の瞬間弾かれるように離脱し距離を取った。その周囲に金色の魔力スフィアが次々に出現する。砲撃魔法の態勢だ。

 

「プラズマランサーfire!」

 

 雷の如き轟音を上げ、シグナムに迫る電光の槍の群れ。フェイトの得意魔法『フォトンランサー』の強化版だ。シグナムは動じず、炎の魔剣と化した愛刀を振りかぶり正面から迎え撃つ。

 

「ふあああっ!!」

 

 気合い一閃。レヴァンティンの斬撃波で、プラズマランサーが跳ね飛ばされた。

 しかしフェイトの操作で、弾き返したランサーは空中で向きを変え、再びシグナムに襲い掛かる。

 厄介な攻撃であった。フェイトの攻撃には一切の容赦が無い。胸に秘めた怒りが込められているようだった。

 咄嗟に上空に逃れるシグナムだったが、外れたプラズマランサーの群れは更に向きを変え追撃して来る。

 

「はああああっ!!」

 

 素早くカートリッジをロードしたシグナムは、再びレヴァンティンを業火の剣とし、横殴りの炎の斬撃波『疾風』でプラズマランサーを纏めて消滅させた。

 しかし息つく暇も無い。隙を狙ってフェイトがバルディッシュを『ハーケンセイバー』電光の大鎌に変形させ斬り掛かって来る。

 

 研ぎ澄まされた反射神経で反応したシグナムも、レヴァンティンを『シュランゲルフォルム』蛇腹状にして迎撃に掛かる。

 ぶつかり合った魔力が空中で爆発を起こした。 爆発直前に一瞬早く離脱していた2人は、間合いを取って再び対峙する。

 

 シグナムの胸部騎士服が切り裂かれていた。 フェイトも腕に痣が浮いている。

 バリアジャケットは、素肌を晒している部分も含めて全身を防御している。互いに防御を破られたのだ。

 

 シグナムはこんな時にも関わらず、高揚する ものを感じていた。確かに此方は連戦続きな上に不得手な手加減、尚且つカートリッジの使用も控えなければならず不利な状況で戦っている。

  一方のフェイトは支給品なのか、カートリッジを惜し気も無く使って来る。しかしそれを差し引いてもシグナムは、彼女の実力に感心した。

 生半可な魔導師なら、とうにシグナムに倒されている。自然烈火の将は笑みを浮かべていた。

 

「フッ……強いなテスタロッサ……それにバルディッシュ……」

 

 レヴァンティンを剣形態に戻しつつ、称賛の言葉を送る。彼女なりの最大限の誉め言葉だ。

 

《thank you》

 

 バルディッシュが光栄だとばかりに応えた。フェイトはしばらく黙っていたが、

 

「……悔しいですが……あなたとレヴァンティン も……」

 

 賛辞の言葉を返した。認めるしか無い。確かに彼女は強いと思った。無視しても良かった筈だが、何故かフェイトは返さなければならない気になった。自分でも不思議だった。

 

《danke》

 

 レヴァンティンも律儀に返す。奇妙な讃え合いを終え、シグナムは鞘を出現させ愛刀を一旦収めた。居合い抜きの構えだ。

 

「この身に為さねばならぬ事が無ければ、心踊る戦いだった筈だが……仲間達と主の為そうも言ってられん……悪いがしばらく動けなくなってもらおう……」

 

 淡々と語る彼女の足元に紫色のベルカ式魔方陣が展開され、剣の騎士は抜刀の構えを取る。

 正直フェイトを殺さずに済ませる自信は無い。それ程少女は力を付けていた。だがゼロとの誓いを絶対に破る訳には行かない。

 

 自信が無くともやり抜くしか無い。自分が不利になろうとも必ずやり遂げる。それが八神はやての騎士たる誇りだった。

 

 フェイトは何故憎むべき敵を称賛してしまったのかと少し混乱していたが、ゼロに助けられた時の事を思い返して身を引き締める。

 

「勝つのは私です……ゼロさんを助ける為に、必ずあなたを倒します……!」

 

 戦意を紅玉色の瞳に込め、バルディッシュを下段に構えた。

 

 

 

 

 ウルトラマンゼロとウルトラマンネクサスは、色の無い結界の空を超音速で飛び交い激突する。ネクサスはすれ違い様ゼロに、

 

『お互い巨大化は止めておこう、結界が僕らの戦いで壊れたら大きな被害が出る……』

 

『言われるまでもねえ!!』

 

 ゼロは怒鳴ると同時に牽制で額のビームランプから、『エメリウムスラッシュ』を放つ。

 ネクサスは避けず、緑色の光線を右腕の 『アームドネクサス』で吸収してしまった。アームドネクサスは相手の光線系の攻撃を吸収する事が可能なのだ。

 

『此方も行かせてもらうよ!』

 

 空を翔けるネクサスは、アームドネクサスを発動させた。青い波長が全身を包み込む。

 

『何だ!?』

 

 ゼロはネクサスの変化に声を上げる。ネクサスの身体が青を基調としたものとなり、生体甲冑も変化増設した。『ジュネッス・ブルー』形態だ。

 

(また姿を変えやがった? アイツ単独で何種類のフォームチェンジが出来るんだ!?)

 

 ゼロが直接知っているフォームチェンジ出来るウルトラマンは2人だ。『ウルトラマンメビウス』と『ウルトラマンダイナ』である。

 

 メビウスは単独で『バーニングブレイブ』と言う強化形態になる事が出来、他のウルトラマンや人間と合体する事で『インフィニティー』 『フェニックスブレイブ』などの形態になる事が可能だ。

 

 ゼロは直接見てはいないが、ダイナは状況に応じてパワー形態、特殊能力形態にフォームチェンジが可能だという。

 姿を変えたネクサスの能力はどのようなものか? ゼロは追いすがりながら頭部の『ゼロスラッガー』を引き抜き、先手必勝とばかりに突撃した。

 相手の能力を計るつもりなのだ。対するネクサスは、右腕のアームドネクサスを発動、その甲部分から光の剣が出現した。『シュトロームソード』である。

 

『シェアアアッ!!』

 

 光の剣を携えたネクサスは慣性を無視して空中で急停止し、反転するとゼロに電光の如く斬り掛かって来た。

 

『野郎っ!!』

 

 シュトロームソードとゼロスラッガーが、火花を上げ打ち合わされる。互いの強力なエネルギーがスパークした。

 

『ウオオオッ!?』

 

 シュトロームソードの痛烈な一閃に、ゼロスラッガーを持った両腕が跳ね上げられてしまう。打ち負けてしまったのだ。ゼロはソードの追撃を避け、後方に飛び退いて間合いから脱出する。

 

(コイツ……! 姿が変わって、明らかに赤い時よりパワーアップしてやがる!?)

 

 スラッガーを持つ手が痺れる。ゼロはどんどん力を増して行くネクサスに正直脅威を感じた。尤もだからと言って、此処で大人しく退くようなタマでは無い。

 負けん気を爆発させて反撃に出るべく、スラッガーを再び構えた。

 

 

 

 

 その頃ユーノは結界内部を探索魔法で必死に探り、クロノは結界周辺をしらみ潰しに捜索していた。

 2人共魔力反応を探すのに気を取られ、他の存在が結界内部に入り込んだ事に気付けなかった。

 だがそれは他の武装局員達も同様だった。その存在達は音も無く何の反応も示さず、影のように結界内に侵入していたのだ。

 

 侵入した影は3つ。まるで闇が凝固して人の形を取ったような影達は、激戦を繰り広げるゼロ達を地上から見上げる。影の1人が前に踏み出し、

 

『……儀式は順調のようだ……』

 

 そう呟いたのは骸骨のような生体甲冑に、漆黒と血で濡れたような紅のボディー。人間大の 『ダークメフィスト』であった。

 

『……全ては『冥王』の御心のままに……』

 

 3本の角に赤と銀色の姿『ダークファウスト』が続ける。

 

『…………』

 

 無言の影は異形の三つ首『ダークルシフェル』だ。

 

『……では我々も行くぞ……』

 

 メフィストが指示をすると、闇の巨人3体は 一斉に前に踏み出した。

 

 

 

つづく

 

 




※ザラブ星人、ウルトラマン登場。友好を装って近付き影で暗躍。ウルトラマンに化けたり姑息な手を使う。大怪獣バトルでは一周回って却って憎めないキャラになってます。

 ファンタス星人、ウルトラマン80登場。友好使節として地球に来たが、本当は本物のファンタス星人を皆殺しにして成り代わったアンドロイド軍団。機械こそ優秀であると生命体抹殺を目論む。

 次回『共闘-ジョイントストラグル-』
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