リインフォースとヴィータを包囲した8本の巨槍に、目も眩む放電現象が起こる。放電は上空まで完全に2人を取り囲んでいた。 逃げ場は何処にも無い。放電は一斉に捕らえた獲物目掛けて放たれた。
「クソッ! リインフォース、アタシの側に来い!」
ヴィータはリインフォースごと、周囲にクリスタル状の防御シールドを張り巡らした。凄まじい衝撃がシールドを揺るがす。シールドに見る見る内に亀裂が入って行く。
「ちきしょう! 何てパワーだ!?」
ヴィータは歯軋りした。このまま防御シールドが破られたら、2人共消し炭になってしまうだろう。落雷など比ではない。常識を超えた放電だった。
絶縁も全く効かない。只の放電では無かった。騎士甲冑も保たないだろう。
《フハハハッ! 滅っしろ下朗共っ!!》
あの嘲笑う声が聞こえて来た。リインフォースも残りの魔力をシールドに注ぎ込むが、焼け石に水だった。転移魔法を使う余力も無い。
亀裂が更に広がり、ついにシールドがバラバラに崩壊した。超高電圧の電流が一気に2人に押し寄せようとした時、
『デリャアアアアアアッ!!』
一際高く、聞き慣れた気合いが響いた。巨大な何かが踊り込み、目前の巨槍が吹き飛ばす。陣形を崩された巨槍からの放電が途絶えた。そして盛大に水飛沫を上げてそびえ立つ雄々しい巨人の姿。
「ゼロォッ!」
ヴィータは思わず歓声を上げた。本来の身長49メートルの大きさに戻った『ウルトラマンゼロ』であった。
『わりい、待たせたな!』
「遅っせえっ! って何で此処に!?」
片手を挙げるゼロに、ヴィータは照れ隠しで叫んだ。ゼロは苦笑するように肩を竦める。
『はやて達と合流したんだが、何かすげえ嫌な予感がしてな……2人と連絡は付かねえしで、捜しにテレポートしまくっていたら、運良く見付けたって訳だ』
ゼロは微弱な気配を感じて2人を見付ける事が出来たのだ。リインフォースに混ざり混んだウルトラマンの因子に反応したのだろうか?
それはともかくと、ゼロは巨槍に視線をやる。只の槍では無いと身構えた。跳ね飛ばされた巨槍は海に落下すると、水銀のようにドロリと形を変え一つに集合し、巨大な人型を形成する。
光る単眼に『カラータイマー』に酷似した 『ライフゲージ』中世の騎士の如く、銀色の鎧を纏ったような姿だ。アパテーの『ウルトラマンガイア』の姿を参考にした戦闘形体である。
ガイアと戦ったアパテーとは別の個体の筈だが、電波を傍受し情報を集める習性などから見て、ガイアと戦った個体のデータを傍受し取り入れているようだ。
『見ねえ奴だな? まあいい……この野郎! 家の者をよくも可愛がってくれたな!? 只じゃおかねえぞ!!』
ゼロは吼えた。少々チンピラっぽいが、本当に怒っている。先手必勝と、波を蹴立てて猛然とアパテーに殴り掛かった。
砲弾のような正拳突きを腹に食らい、銀色の身体がよろめいた。その隙にヴィータとリインは、一旦後方に退がる。
ゼロが追撃の拳を更にボディーに放つと、アパテーはその手を掴み、一本背負いの要領でゼロの巨体を海面に叩き付けた。
スポーツ柔道のように、綺麗な弧を描く投げでは無い。実戦の真下に叩き付ける投げだ。戦闘不能もしくは殺す為の投げである。
『グハァッ!?』
豪快に水飛沫を上げて、背中から叩き付けられたゼロは呻く。受け身が取れない投げだ。凄まじいパワーで叩き付けられれば、海面でも鋼鉄に叩き付けられるに等しい。
アパテーは空かさず、巨大な脚で踏み潰そうとする。ゼロは腹筋だけで素早く立ち上がり攻撃を避けた。
かわされたと見るや、アパテーは後方に飛びすさる。腰を落とし両腕をクロスさせ拳を構える、独特のファイティングポーズを取った。
(コイツ……やるな……!)
ゼロは左手を突き出した『レオ拳法』の構えで迎え撃つ。
アパテーは此方の世界に現れていない為ゼロは知らないが、アパテーはウルトラマンガイアの戦闘パターンを受け継いでいる。ある意味、ゼロ対初期ガイアとも言えるかもしれない。
『オラァッ!!』
ゼロの鋭い正拳突きが飛ぶ。アパテーは拳を弾き返し、鋭いキックを放って来た。重装甲な外見に似合わぬ身軽な動きだ。
ゼロは体を捌いてキックをかわすと、その顔面にカウンター気味の正拳突きを叩き込む。顔部装甲がひしゃげ、巨体がぐらついた。象の鳴き声のような咆哮を上げて飛び退くアパテー。
『くたばりやがれえぇっ!』
ゼロはもう一撃お見舞いして、頭部を完全に砕いてやろうと追撃を掛ける。だがアパテーは態勢を立て直し右腕を掲げた。その腕がグニャリと形を変え、巨大な槍を形成する。
その槍を突っ込んで来るゼロに、カウンターで繰り出した。槍に変化させた分、リーチはアパテーの方が長い。先に当たってしまう。
『こなクソォッ!!』
ゼロはとっさに攻撃目標を変更し、槍に横合いから拳を叩き込んで軌道を反らした。すれ違う形で離れたゼロは水飛沫を上げて方向転換し、頭部の『ゼロスラッガー』2本を両手に構え、アパテーに斬り掛かる。
アパテーも方向転換し、右腕の槍を繰り出して来た。スラッガーと槍が激突し、激しい火花が飛び散る。金属をぶつけ合うような轟音が鳴り響く。
『甘えっ!!』
ゼロは突きの連打を紙一重でかわし、スラッガーですくい上げるようにして、槍を根本から叩き斬った。 直径5メートル以上はある切り落とされた槍が落下し、アパテーは海面に倒れ込む。
『止めだ!』
ゼロが『ワイドゼロショット』を放とうと左腕を伸ばした時、突如海中から次々と巨大な槍が飛び出して来た。
『何だと!?』
振り向いたゼロの後ろで、倒れていたアパ テーの身体がグニャリと変形し、再び8本の巨大な槍に姿を変える。
『しまった! もう1体居たのか!?』
気付いた時は既に遅かった。ゼロの周りに、計16本の槍が次々と突き刺さり檻を形成する。完全に閉じ込められてしまった。
ゼロは檻を砕いて脱出しようと拳を振り上げるが、逃さんとばかりに凄まじい電撃が四方から襲う。
『グァアアアアアアッ!!』
全身を強力な電流が駆け巡る。一度はガイアをダウンさせた程の攻撃だ。それが2体分。身を焼く電撃にゼロは苦痛の叫びを上げる。完全に捕らえられ脱出出来ない。だが……
「ラケーテン・ハンマァアアアッ!!」
「夜天の雷っ!」
闇夜を赤い光と紫の魔法光が翔ける。檻の一部に、ヴィータとリインフォースの同時攻撃が炸裂した。巨槍数本が吹き飛び、檻の一部が崩れる。バランスを崩した包囲陣からの電流攻撃が弱まった。
『ありがてえっ!』
ゼロはその隙に檻を力任せに打ち破り、一気に外に飛び出した。
『悪い、助かったぜ!』
距離を取って海面に降り立ったゼロは、頭上に浮かぶヴィータとリインフォースに礼を言う。
「ったく、ゼロは搦め手に弱いな……」
ヴィータは憎まれ口を叩くが、ゼロを心配しての事だ。 戦闘能力は凄まじいが、正統派で真っ正面からの堂々とした戦いをして来たゼロは、搦め手や汚い手段に遅れを取る事がある。
その点様々な戦いを経験し、戦闘経験に勝るヴィータには心配になる事がある。尤もそれはゼロに限らず、ウルトラ戦士特有のものかもしれない。
しかし他のウルトラ戦士は経験で補う事が出来る。だがゼロはまだ若い。経験で補うにはまだまだだ。こればかりはどんなに強くとも仕方が無い。
その辺りは自分達がフォローしなくては、と思うヴィータだった。
そんなヴィータを見てリインフォースは微笑んだ。少女の心配はお見通しらしい。
「まったくゼロは、手が掛かってしょうがねえ な……」
内心を見透かされた鉄槌の騎士は、ぶつくさ言いながらアパテーの変化した槍目掛けて突っ込みむ。
「リインフォース無理すんなよ? 病み上がりだろ」
共に敵に向かうリインフォースを気遣った。祝福の風は微笑を浮かべる。
「まだ行ける……これ位どうと言う事は無い…… 一緒に戦わせてくれ!」
「ったく……判ったよ!」
リインの頑固さにヴィータは苦笑すると、 『グラーフ・アイゼン』を構えて敵に備える。 勿論リインをしっかり守るつもりだ。
一方巨槍群は再び集合し、2体のアパテーとなり3人に襲い掛かる。それと同時にゼロの 『カラータイマー』が点滅を始めた。
思ったより長く引っ張り回されてしまっている。どうも向こうの動きもそう見えた。
『行くぜ! この野郎っ!!』
ゼロは舌打ちしたい気分に駆られたが、今は戦闘に集中する。スラッガーを片方に投擲した。銀色の刃は白 熱化してアパテーの肩口を切り裂く。
ヴィータとリインフォースはもう1体の顔面を狙い、砲撃魔法を撃ち込んだ。単眼にまともに攻撃を食らったアパテーにダメージは少ないようだが、一瞬視界を奪われよろめく。
攻撃を受けた2体のアパテー達の肩がぶつか る。一ヶ所に集められた形となっていた。3人がそのように誘導したのだ。言葉など交わさなくとも考える事は同じだった。
「行けゼロォッ!」
「今だ!」
『オオッ!!』
ヴィータとリインフォースの合図にゼロは、 左腕を水平に挙げた。エネルギーが集中し、L 字形に組んだ右腕から放たれる光の奔流『ワイドゼロショット』の掃射がアパテー達に炸裂する。
火花と白煙を上げて、アパテー達は盛大に水飛沫を上げて海に倒れ込んだ。ピクリとも動かない。反応もまったく無い。
倒したと3人はようやく緊張を解いた。ヴィータとリインフォースは、ゼロの巨大な顔の直ぐ側に降下する。ヴィータはニヤニヤ笑う。
「これで一つ貸しだな? 夕食のデザートはアタシに寄越せばチャラにすんぞ」
『何言ってやがる、その前に助けただろうが? おあいこだ。お・あ・い・こ!』
何時も通りの低レベルな話をするヴィータとゼロに、リインフォースは思わずプッと吹き出してしまった。
「本当にヴィータとゼロは、兄妹のようだな……?」
それを聞いたヴィータは、人の悪い笑みを浮かべてゼロを見て腕組みする。
『それにしちゃあ、頼り無い兄貴だなあ……アタシが姉貴でいいんじゃね? なあリインフォース?』
『ヴィータお前……頼り無えとは何だ?』
などと返すゼロだが、ヴィータがしっかりとリインフォースの名前を呼んでいる事に気付く。
(そうか……頑張ったなヴィータ……)
とても嬉しくなった。飛び上がりたい位だ。妹を心配する兄の気持ちとは、こういうものなのだろうと思う。だがそこでハタと重大な事に気付いた。
(やべえ……ヴィータが頑張ったって事は、俺も師匠にちゃんと謝らねえと駄目って事か……? 先を越された…… )
情けないながら、まだ心の準備が出来ていないゼロは非常に困ってしまった。
まさか意地っ張りのヴィータが、自分より先にリインフォースと仲直りするとは思っていなかったのであ る。ヴィータとリインフォースは、下を向いてぶつぶつ呟いているゼロを見て首を傾げた。
そんなほっこりしたやり取りをしていた3人の背後で、倒された筈のアパテー達の単眼が光を発していた。
アパテーには再生能力が有る。ガイアもそれで絶体絶命の危機に陥ったのだ。ゼロ達はまだ気付いていない。巨人達はその腕に再び槍を形成する。
《危ないゼロ兄っ!》
その時不意にはやての声が頭の中に響き、強力な砲撃魔法がアパテー達に撃ち込まれた。背後からゼロに襲い掛かる寸前であった。
『貴様ら、まだ生きていたのかぁっ!?』
まだ動いている2体に、ゼロはワイドゼロショットを更に撃ち込んだ。止めを受け、流石に再生能力の限界を超えたアパテー達は、大爆発を起こし粉々に吹き飛んだ。
「はやて!」
「我が主……」
破片が舞う中、夜天の空から6枚の羽根を広げて降りて来たのは、彼女達の主であった。その後にシグナム、フェイトになのは、アルフにシャマル、ザフィーラが続く。
その小さいながらも頼もしい姿を見てヴィータは、やっぱり最後の締めははやてだな、とつくづく思った。
*
ゼロ達がアパテーとの戦闘に突入したのと同時刻。色の無い静まり返った森に、2匹の恐獣の鳴き声が響き渡った。ガロンとリットルは大木をなぎ倒しながらゲンに迫る。
身体が以前現れたものより一回り大きい。各部のトゲや牙はより凶悪に鋭く長くなっている。強化されているようだ。対峙するゲンのテレパシー回線に連絡が入った。
《おおとりさんユーノです。数分でそちらに着きます!》
ユーノからだ。到着したらしい。ゲンはタイミングが良いと、
《ならば此方に近付かず、この辺り一帯に結界を張ってくれ。ユーノ君は結界の維持に努めて欲しい。奴らの火力は並みでは無い》
《分かりました!》
返事と共に、辺り一帯の風景が色を失い、結界に包まれる。それと同時だった。頭部に一本角が有る兄ガロンが凶悪な顎を開くと、花火の如く無数の光弾が発射された。
ゲンの周囲が立て続けに爆発し、樹木が吹き飛び爆炎が吹き上がる。生体ロケット弾だ。やはりゲンを狙って来る。
ゲンは地を蹴って跳躍すると、周囲の大木を蹴って更に数十メートルは跳躍し、三角飛びの要領でロケット弾の攻撃をかわす。常人など及びも付かない身体能力と跳躍力だが、それでも限界は有る。
兄弟怪獣は周囲を火の海と化しながら、執拗にゲンを追う。闇夜に爛々と凶気に満ちた赤い眼が輝いた。
(本拠地が近いらしいな……怪獣を差し向けて来るとは何者だ……? しかもガロンとリットルとは……)
ゲンは炎と爆発を避けながら敵の動向に考えを巡らす。『アーマードダークネス』の情報は既に聞き及んでいる。
その事から推測するに、自分に対して兄弟怪獣を差し向けて来た事は偶然では有るまい。兄弟怪獣が揃えば、レオを上回るという過去のデータを持っているのだろうとゲンは推測する。
(恐らく……俺を倒せても倒せなくとも、どちらでも良いのだろう……)
更にゲンはそう考える。勝てば良し、勝てなくともエネルギーを消耗させる事が出来る。そこまで計算しているのだろう。容易な相手では無いと思った。
ゲンは腕に填めている青いランプが灯ったブレスレットに目をやる。新たに改良追加機能を盛り込んだ次元移動ブレスレットだ。 これで『光の国』からやって来たのである。
使用制限は無い。太陽エネルギーをチャージする事で何度も使用が可能だ。その分のエネルギーを変身エネルギーに転換する事も出来る。
『ウルトラコンバーター』と 同じ機能を持っているのだ。ただしチャージには時間が掛かる上、短時間の連続使用は出来ない。身体の負担もある。
つまり今変身すると、 チャージしたエネルギーを使わざる得ないのだ。エネルギーを節約しても、後一度の変身が限度という所だろう。
『アーマードダークネス』の事も有る。無駄な消費は避けたいところでは有るが…… ゲンは炎の中で、超然と兄弟怪獣を見上げた。
「やむを得んな……」
その双眸が射抜くような光を放つ。周囲の炎が眼光に威圧されるが如く退いた。ゲンは両手を剛剣のように振り上げる。僧衣の袂(たもと)が煽られて舞った。熱風を吹き飛ばす拳を繰り出しゲンは叫ぶ。
「レオォオオオオッ!!」
左指の『レオリング』の獅子の瞳が、鮮烈な光を放った。ゲンの身体が超人『ウルトラマンレオ』に変換されて行く。
爆発的な蒼い光に包まれて、真紅の巨人が大地を揺るがし兄弟怪獣の前に降り立った。獅子の鬣(たてがみ)の如き頭部、くっきりした雄々しき風貌。ウルトラマンレオ参上である。
『エイヤアアアッ!』
左手を突き出したレオ拳法の構えと共に、レオの裂帛の雄叫びが森に木霊す。その闘気と気合いに、空気がびりびりと震えた。
ガロンとリットルは、凶暴な唸りを上げて殺到する。レオは同時に迫る兄弟怪獣の中央を、素早く飛び越えていなす。
直ぐ様方向転換して襲い来るリットルの鋭い爪をレオは僅かに身体を捻ってかわし、前蹴りを腹部に叩き込んだ。よろめくリットル。追撃の拳を振り上げるレオの後方からガロンが迫る。
巧みなコンビネーションだ。片方が危機に陥ればもう片方が空かさず援護を入れ、同時に攻撃を行う。単体より、2匹の時の方が威力を発揮するのだ。
このコンビネーションの前に、以前のレオは兄弟怪獣に敵わず、アストラとのタッグでようやく撃滅する事が出来たのだ。
今アストラは居らず、ゼロもアパテーと戦っている最中である。果たしてレオは兄弟怪獣に勝てるのだろうか?
降り下ろされる凶器の爪の一撃。しかしレオは、まるで後ろに目が有るかのようにガロンの右腕をいなして掴み、その突進力をも利用し投げ飛ばした。
巨体が大地を震わせて、豪快にまともに頭から落下する。怒り狂ったリットルがロケット弾を連続発射して来た。 レオの真紅の身体が宙を舞う。
爆発が巻き起こり炎が吹き上がる中を、連続してバク転しロケット弾の乱射から離脱する。起き上がったガロンも加わり、ロケット弾の掃射が暴風雨の如くレオに降り注いだ。その火力は凄まじい。
「なっ、何て火力だ!?」
ユーノは結界を維持するのに苦労した。下手をすると破られてしまう可能性が高い。結界を張っていなければ山が消し飛び、甚大な被害が出ているだろう。
MACに最大の被害をもたらした破壊力は健在だ。 しかしレオに当たらない。紅蓮の炎の中を軽々と飛び交う姿は、まるで炎の化身のようだった。
『イヤァアアアッ!』
ロケット弾の雨を全て避けきったレオの身体が、矢の如く空を飛ぶ。兄弟怪獣の頭上を軽々と越えて真後ろに着地すると、2匹に纏めて後ろ蹴りを叩き込む。
ガロンとリットルは樹木をなぎ倒し、森を更地にして地面に突っ込んだ。だが流石にしぶとい。身を起こすと、怒り狂って突撃して来る。レオは退かない。真っ正面から大地を蹴って竜巻の如く側転する。
『エイヤアアアッ!!』
その反動をも破壊力に転換して、2匹にダブルキックをお見舞いする。再び地面に倒れ込むガロンとリットル。
かなりのダメージを受けた筈だが再び立ち上がると、ガロンの角が閃光を放った。それに呼応してリットルの頭部から肉を突き破って角が生えた。
その角が同じく閃光を放つ。2匹の光が空中でスパークすると、レオ目掛けて凄まじい落雷状の破壊光線が放たれた。
以前は無かった攻撃だ。どうやら以前現れたリットルは幼体だったらしい。成体になると2匹合わせてこのような攻撃が出来るようだ。
破壊光線が森を焦土と化し、樹木が吹き飛び土砂が爆発したように舞い上がった。まともに食らってはレオでも危ない。
しかし獅子の戦士は恐れる事無く、兄弟怪獣に向かって飛び出した。破壊光線の中を疾風の如く疾走する。
破壊光線は次々とレオの周囲に着弾し、破壊の槌(つち)を振るう。だが当たらない。恐るべき動体視力と体術で、全ての攻撃を最小限の動きでかわしていた。
数千年の間、己の技と力を磨き抜いて来たレオに取っては何程の事も無い。敵が持っているデータはあくまで過去のもの。今のレオにとって、強化された兄弟怪獣など、ものの数では無かった。
『タアアアアッッ!!』
破壊光線を飛び越えて、真紅の巨体が宙を舞う。その右脚が炎の如く赤熱化した。
空気を切り裂き唸りを上げる『レオキック』が、ガロンの頭部を粉々に蹴り砕き上半身ごと爆砕する。
更に既に骸(むくろ)と化したガロンの身体を足場に跳躍し、炎の拳『レオパンチ』をリットルの腹部に深々と叩き込んだ。
炎の拳はリットルの鳩尾をぶち抜き背中まで突き抜け、勢い余って腹に風穴を穿つ。レオが大地に降り立つと同時に、兄弟怪獣は断末魔の声を上げる間も無く粉々に吹き飛んだ。
この間僅か1分。ガロンとリットルは、レオに触れる事すら出来なかった。恐るべき手並みであった。格闘戦最強は伊達では無いのだ。
ユーノがあまりの凄まじさに、しばし言葉を失う程の迫力である。正に雄々しき獅子の戦士。炎の中にそびえ立つレオは、静かに腕を下ろした。
「ふん……両方共倒されたか……使えぬ奴らよ……」
薄暗い結界内で、その様子をモニターしていたディアーチェに似た女は、詰まらなそうにぼそりと呟いた。
「まあよい……今はな……目的は充分に達した……奴らにエネルギーを消費させ、完全に気配を絶った今、鎧と砕け得ぬ闇覚醒まで時間は稼げよ う……後はあの下郎共次第だが……?」
そこで女は背後に鎮座している『アーマードダークネス』の破片に視線を向けた。邪悪な気配が更に増している。軋むような音も以前より高くなっていた。
「せいぜい踊るがよい……」
女は暗い表情で暗黒の鎧を見上げるのが、複雑そうに視線を落とす。
「……主様……」
呻くように低く、哀しげに呟いていた……
*
星明かりに照らされる山中を、3人の少女が探し物を求めて、あちこちをうろついていた。 ディアーチェ、レヴィ、シュテルのマテリアル達である。
ディアーチェは見付からない事に苛立って悪態を吐きながら探し、レヴィは茂みに頭を突っ込んでお尻だけピョコンと出ている。シュテルは至って冷静に、黙々と周囲を探っていた。
そんな感じで各自が手分けして探し回っていると、
「王……レヴィ……有りました……」
シュテルがポーカーフェイスのまま、2人を手招きした。一抱えは有りそうな黒い破片を頭上に掲げて見せる。
「有ったか!?」
王こと、ディアーチェは表情を明るくし駆け寄る。レヴィも大喜びで駆け寄って来た。
「凄いやシュテるん!」
「良くやったシュテル、誉めて取らす!」
大喜びの2人に、シュテルはやっぱりポーカーフェイスのまま胸を張る。
「エっヘン……」
いたって低く自慢した。表情はほとんど変わらないが嬉しいらしい。3人はやっと見付けた漆黒の破片を、目を輝かせて囲んだ。
「フフフ……これで『皇帝の鎧』は甦る……そして復活させた『砕け得ぬ闇』に装着させれば、我らに恐れるものなど無くなるぞ! ア~ッハッ ハッハッハッ!!」
高笑いするディアーチェの頭の中で、パチモノくさい巨大ロボットが黒い鎧を装着し、大暴れする姿が有り有りと浮かんでいた。
ハッキリ言って非常にカッコ悪かったが、残念ながら頭の中なので指摘してやれる者は居なかった……
つづく
次回『我は闇統べ王様や』