軋むような音が木霊し、復活した『アーマードダークネス』の周りに、荒れ狂うように雷が走る。久々の復活に、歓喜の声を上げているようにも見えた。
そして『U-D』がその膨大な力のチャージを完了する。それを見下ろすディアーチェ似の女は、満足げに不遜な笑みを浮かべた。
「準備は全て整った……ユーリ……!」
「はいっ」
ユーリと呼ばれた少女は頷くと、魄翼を使って眠らせ行動不能にしていた『U-D』を覚醒させる。
「はっ……?」
『U-D』はボンヤリ眼を開けた。その眼前に黒い禍々しい鎧がそびえ立っている。
「……これは……?」
彼女の目に明確な恐怖の色が浮かぶ。これは極めて善くないものだと判るのだろう。だがそれも束の間。強烈な破壊衝動が少女を襲う。頭を抱えて懸命に衝動を抑えようとするが……
「……駄目……っ!」
しかし暗黒の鎧と全てを破壊する『砕け得ぬ闇』同じもの同士が引き合ったのか、『アーマードダークネス』と『砕け得ぬ闇』双方に反応するように雷が走る。
「こ……来ないで……」
『U-D』はせめてこの場から逃れようと試みるが、彼女にプログラミングされた破壊衝動がそれを許さない。そしてその背後にあの少女が位置していた。
「ごめんなさい……」
心底申し訳無さそうに頭を下げて謝ると、自らの異形の羽根を『U-D』の首筋に打ち込んだ。
「あぐっ……!?」
その顔が蒼白になった。小さな身体がビクビクっと瘧(おこり)に罹ったように痙攣し、彼女の魄翼が展開される。
それに呼応するように『アーマードダークネス』の仮面の口にあたる部分が、牙を剥くようにガッと開かれた。元の性質上中身を求める機能が働いているのだ。
アーマードの巨大な顔が『U-D』に迫る。そしてその巨大な顎が、彼女を喰らうようにバクリと飲み込んだ。
「いやあああああああぁぁぁっ!!」
悲痛な叫び声が軋むような音にかき消されて行く。破壊衝動に加え、『アーマードダークネス』の強烈な暗黒の波動が『U-D』を蝕む。
その波動は内部の彼女を暴走させていた。感情の高まりと共に、身体の色彩が変化して行く。白かった服が燃えるような紅い色となり、髪の色は黄金色と変化し瞳が翡翠色に変わる。
更に全身に刺青のような紅い紋様が刻まれた。暴走しているのだ。『U-D』を吸収した『アーマードダークネ ス』の紅い眼が一際強く輝いた。
「ああああああああああああああ あぁぁぁっ!!」
慟哭のような『U-D』の叫びと、アーマードの軋むような音が入り交じった音が山中に木霊する。その黒く禍々しい姿が更に凶悪さを増したようであった。
暗黒の鎧を取り巻く雷が勢いを増し、周囲の木々を一瞬で炭化させ消し飛ばす。そしてその背に炎の如く光る翼が展開されていた。
『アーマードダークネス』は、狂ったように手にしている三ツ又の槍を振り回す。その先から放たれる稲妻状の光線と炎の翼が、瞬く間に周囲を瞬く間に焦土と化す。
その中を魔鎧装は進撃を始めた。目指すは眼下に拡がる街の灯り海鳴市街地。眼に付くもの全てを破壊するつもりなのだ。
「中々のものだ……さて、もう少し手間を掛けてやるか……」
ディアーチェに似た女は、黒い笑みを浮かべると、黒い杖『ギガバトルナイザー』を再び取り出し悠々と掲げた。
*
アースラに着いたゼロ達八神家とおおとりゲンは、一度報告にリンディの元に寄った後、会議を行うミーティングルームに向かって通路を歩いていた。その道すがら、はやてを背に乗せた狼ザフィーラが全員に尋ねた。
「主……彼女らマテリアルは、信用出来ると思いますか……? 皆はどうだ……? 以前に現れた連中とは本当に違うのか……?」
確認の意味である。ヴィータとシャマルも同意見だ。2人などは、彼処で初めてディアーチェ達と会ったのだ。
既に得体の知れないマテリアル達と一度戦っている。此方の彼女達がどんな連中なのか判らない。すると背のはやては苦笑を浮かべた。
「そうやねえ……何か企んでそうではあるんやけど……」
あっさり見も蓋も無い事を言う。続いて隣を歩くゼロも苦笑する。
「バレバレだけどな……」
シグナムも同じく微苦笑を浮かべた。
「まあ……レヴィに関してなら、完全に別人だと言えるな……それにあの子は嘘は吐けないだろう……」
あのレヴィと名乗る女とは全く違う。此方のレヴィは微笑ましいのである。ゲンもその意見に静かに頷いていた。
「私は彼女達を……『U-D』を助ける手助けをしたい……!」
リインフォースは、はっきりと自分の意思を皆に告げた。シャマルは3人の答えに心配そうな表情を浮かべる。
「別人らしいのは判ったけど……何か企んでるなら、不味いんじゃあ……?」
そう思うのも無理はない。腹に一物抱えている連中に協力する事になる。はやては不安げなシャマルを見上げ、指を一本示して見せた。
「それはそうやけど……一つ信用出来る所が有ると思うんよ……」
「どの辺りがでしょう?」
「王様達があの子『U-D』を心の底から助けたいと思っとる事……根は悪い子達やないと思うんよ……」
はやてはディアーチェ達に関して深刻な心配していない。勘のようなものと印象だが、彼女らに非道な真似が出来るとは思えなかった。キャラクターがとても陽性なのだ。
「そう言う事だよな……」
ゼロはその考えに賛成しながら、消え去る前の『U-D』 を改めて思い返す。
「それによ……あの子『U-D』が最後に言ったんだ…… ごめんなさい……さよならってよ……今にも泣き出しそうな顔でよ……」
自分の事のように胸が痛んだ。本当に悪いものなら、あんな哀しそうな顔はしない。あれは哀しむ事の出来る真っ当な心の持ち主のものだった。ゼロは確信していた。
そして悲痛な表情で 『U-D』に手を伸ばすディアーチェ。それは引き裂かれようとしている、家族そのものの姿に見えた。それを何で見過ごせると言うのか。
「俺は放って置けねえ!」
「それが判れば充分だ……」
ザフィーラは静かに頷いた。狼の口許に僅かに微笑みが浮かんだように見える。ヴィータは頭の後ろで手を組んで呆れたように、
「それじゃあ仕方ねえなあ……まったくみんなはお人好しだなあ……」
そう言う彼女も同類である。不気味なシュテルと戦ったヴィータに、わだかまりが無いと言ったら嘘になるが、レオに子猫のようにぶら下げられている有り様を見ると、何か色々萎えてしまう。
はやてはそこで真剣な表情をして、改めて皆を見回した。
「王様達は4人で1つ……家族なんやと思う……だったら私は全力で手助けしたい……あの時の私らと同じやと思うんよ……みんなはどうやろう?」
「聞かれるまでも無い。はやてと同じだぜ?」
「主はやてと同じです……どうして我らが放って置けましょうか……?」
ゼロとシグナムが頼もしく応えた。リインフォースは静かに頷き微笑を浮かべる。どうして自分達が見過ごせるだろう。それはあの時リインフォースを死なせる事と同じだ。 ヴィータは張り切って腕捲りして見せる。
「一丁やってやるとすっか!」
「そう言う事でしたら、私達が放って置く事なんか出来ませんよねっ」
「盾の守護獣の名に懸けて……」
シャマルとザフィーラも賛成する。皆の心は決まった。そのやり取りを後ろで静かに見守っていたゲンは、ゼロの肩をポンッと叩いていた。
「ゼロ……良い仲間に恵まれたな……」
「……自慢の……家族だよ……」
ウルトラマンの少年は、少し照れ臭そうにしながらも師匠に誇らしげに笑って見せた。ゲンは自分が最初に任された時と比べて、本当に成長したなと感慨深い。
あの時のゼロは自分の殻に閉じ籠り、誰の言葉も聞き入れず荒んでいた。それがこんな言葉を言えるようになったのだ。
それにはやて達の、誰かを助けたいという優しさと心。やはり何処の世界でも人の心の光は変わる事は無い。それが有る限り、ウルトラマンは人と共に戦うのだ。
ゲンは一瞬だけ温かな笑みを浮かべると、直ぐに眼光鋭くゼロに対し、
「ゼロ、必ずあの子を救うぞ……!」
「おうっ、師匠っ!」
頼もしげに不退転の意思を示す弟子の頭を、ゲンはわしわしと撫でゼロは目を白黒させた。
*
アースラに招かれたマテリアルの3人組は、既にミーティングルームに通されていた。 ディアーチェは偉そうに腕組みしてふんぞり返り、レヴィは出されたお茶とクッキーをムシャムシャ平らげ、シュテルは静かに座っている。
そしてリンディ達アースラメンバー。そこにゲンとゼロ達八神家の全員が加わり席に着く。ゼロはディアーチェ達の怪我の具合が気になり声を掛けた。
「おい、身体の方は大丈夫か?」
「まもなく基体の修復は完了する。要らぬお世話だ」
ディアーチェは素っ気なくプイッとそっぽを向くが、シュテルはペコリと頭を下げる。
「お陰さまでこの程度で済みました……あれ以上ダメージを受けていたら、修復にはもっと時間が掛かっていたでしょう……」
礼儀正しく感謝を述べた。ディアーチェは文句を言おうと口を開け掛けたが、気まずそうに止める。そこでクッキーを食べ尽くしたレヴィが、ゼロに空のクッキーの容器を差し出した。
「悪そうで格好いい兄ちゃん、お代わり!」
「悪そうは止めろ、って人の姿の今もそんなに悪そうに見えるのかよ!?」
見事な平常運転である。ゼロは地味に傷付いた。仮にも正義のヒーローに悪そうは無いだろう。 はやては慰めるの意味で笑って、
「まあまあゼロ兄、格好いいが付いとるから良いやないの?」
「まあ……ゼロは変身前も後も大して変わらんからな……」
シグナムがからかい顔で、誉めてるんだか貶してるのか判らない台詞を吐く。
「確かに、両方目付き悪いもんな……」
ヴィータがニヤニヤ笑って追随した。フェイトは場を取りなそうと、お代わりをものすごく待っているレヴィに、
「ダークヒーローみたいで、格好いいって意味じゃないかな……? ねえレヴィ……?」
「悪そうなのは格好いいんだよ! オリジナル、ええと……ヘイト!」
レヴィは、フェイトの名前を上手く発音出来ないようだ。ヘイトでは悪い意味である。
「ヘイトじゃないよ……? フェイト……」
「ええ~っ、言いづらいよぉ?」
言い聞かせようとするが、レヴィはいい加減である。生真面目なフェイトは、逆にペースに巻き込まれてしまっている。
なのははフェイトの言い方だと、あまりゼロのフォローになってない気がしたが、何だか微笑ましい光景なのでついニコニコして眺めてしまう。だが言われた方のゼロはと言うと……
「ダークヒーロー……?」
何時からウルトラマンはダークヒーローになってしまったのだろうか。ぐぬぬとゼロが何か言い返そうとすると、リンディが保母さんのようなノリで手を叩いた。
「それじゃあ皆さん、そろそろ始めましょうか?」
マテリアル達の顔付きが引き締まる。レヴィもである。ディアーチェがシュテルに目配せした。任せるという事だ。理のマテリアルは頷いて静かに立ち上がる。
「それでは失礼します……『シュテル・ザ・デストラクター』です……『砕け得ぬ闇』こと 『U-D』と私達は揃って一つのシステムで す……『U-D』は体内に 『永久結晶エグザミ ア』なる不滅の機関を持っています……」
「永久結晶エグザミア……?」
クロノは聞いた事の無い単語を呟いた。
「無限魔力連鎖機構とも言うべきものです……」
現管理世界でも、無限にエネルギーを発生させる機関は存在しない。彼女らも古代ベルカが 生み出した『ロストロギア』なのだろうか。
「盟主である『U-D』は言ってみれば動力炉……単体では長く存在出来ないのです……制御するには私達、特にシステム制御を司る『紫天の書』を持つ王が必要不可欠になります……
最初に言っておきますが、紫天の書を使えるのは王唯1人……他の者には使えません……他に誰1人として『U-D』を利用する事は出来ませんので悪しからず……」
管理局にも利用する事は出来ないと釘を刺したのだ。従う気も無いと言う訳である。リンディが代表し質問する。
「それ以外に手段は無いのね、シュテルさん?」
「それ以外の方法では暴走を抑える事は不可能です……」
シュテルはクールな表情を僅かに曇らせた。
「『U-D』が力を蓄え完全に再起動すると、暴走を始めてしまいます……そうなれば完全に破壊衝動に呑み込まれ、無差別破壊行動に出てしまいます…… そして……何れ耐えきれなくなり、自壊してしまう……
そうなれば『U-D』の心は消えてしまうかもしれません……そしてその前に甚大な被害が出るでしょう……」
「何でそんな……?」
「そのようにプログラムされてしまったとしか……そこでまずは、一時的に動きを鈍らせるワクチンを撃ち込む必要があります……これがデータです……」
シュテルは端末を操作し、データを転送して見せた。クロノは直ぐにワクチン製造に掛からせる。システム的にカートリッジシステムになるようだ。
「そして内部と外部からの攻撃で魔力障壁を破壊し、本体に大ダメージを与え停止させ、 ディアーチェが接触、『U-D』のシステムを掌握します……今回が初になりますが、大丈夫でしょう……」
クロノはワクチンの効果と、シュテルの言う事から概要を理解しだが……
「成る程……内部と外部から同時に攻めると言う訳か……えっ、今回が初めてなのか?」
「ええ……私達が一同に会したのは今回が初めてですから……」
一度も試した事が無いらしい。それは明らかに不確定要素だ。クロノは少し考え込むとシュテルに尋ねていた。
「大丈夫なのか?」
「愚問だ! 我らは元々一つ、必ず盟主を救う!」
代わりにディアーチェが断言する。シュテルは頷くと続けた。
「今までは制御ユニットである王が居らず、動力炉である『U-D』を使おうとしたので無理が有ったのです…… 言ってみれば、ハンドルもブレーキも無く、エンジンだけで車を動かそうとするようなもの……上手く行く筈がありません……そして王は他人に強請されるような方ではありませんので……」
「成る程……」
クロノは二つの意味で納得したようだ。こういうタイプは絶対に他人の命令など聞かない。だがシュテルは僅かに浮かない顔をした。
「問題は『アーマードダークネス』です……私達に情報を流した女は言っていました……『砕け得ぬ闇』ならば、暗黒の鎧をコントロール出来ると……」
「その女とは何者なんだい……?」
クロノが質問する。そもそもの黒幕にあたる人物に思える。放っては置けない。するとディアーチェが忌々しいそうに舌打ちした。
「得体の知れん女だった……あれが本当の姿がどうかも知らんが……我のこの世界における同一存在だと、抜かしておったわ! 今となってはそれすらも謀りだったやもしれんが……」
同一存在。ゼロやはやて達の頭に、嫌でも 『ウルトラセブンアックス』の事が浮かぶのは無理からぬ事だった。しかし確証は無い。やり口も違う気がした。
その辺りはリンディやクロノ、ゲンには既に話してある。3人も断定はせず保留としたようだ。推測だけでは判断のしようが無い。
静まり返る待機室。沈黙を破ってゲンが口を開いた。
「まず、コントロール出来ると言うのが、そもそも間違いだな……」
「私達は最初から嘘の情報を流された訳ですか……?」
「うむ……あれは元々の持ち主『エンペラ星人』以外にコントロール出来る代物では無い……乗せられたな……」
シュテルは僅かに眉を寄せた。理のマテリアルである自分が、もっとしっかりしていればとでも思ったようだ。
「それに関しては、返す言葉もありません…… 向こうの方が一枚上手でした……あの女は『U-D』を『アーマードダークネス』に埋め込むつもりのようです……」
「危険だな……『アーマードダークネス』は内部に取り込んだ者を吸収してしまう特性もある……何れ『U-D』 も吸収されてしまうかもしれん……」
「そんな……」
同じく不滅の『アーマードダークネス』は、永久結晶エグザミアごと『U-D』をも吸収してしまう可能性が高い。
他の怪獣などであったら、無限の魔力と不滅故に最後には打ち勝つ事が出来るだろうが、同じく不滅の存在の魔鎧装。相性が悪いと言うより相手が悪すぎる。
「そんな事は絶対にさせん!!」
ディアーチェは身を乗り出し、怒りを顕にした。ゼロはその態度に確信を強める。はやて達もゼロに頷いて見せた。
「まるでコントロールが効かないアーマード に、無差別破壊を始める暴走した『U-D』 か……それが合わさるとなると、想像したくないな……」
クロノは眉をしかめる。どう考えても最悪の組み合わせと言えた。リンディは一通りの考えを纏めたようで一同を見回した。
「皆さん、こういうのはどうでしょう? まずはアーマードの中から『U-D』さんを救出……ゼロさんとおおとりさんは『アーマードダークネス』を破壊する。宜しいですか?」
「任せてくれ、リンディさん!」
「うむ……任せてもらおう……」
ゼロは景気よく、ゲンは静かに了解した。他の者も異存は無い。
「彼女『U-D』さんが暴走を始めた場合、魔導師の皆さんはワクチンを撃ち込み、最大火力で機能停止に追い込み暴走を止め、ディアーチェさん達の援護をする」
これを同時に行わなければならない。ゼロとレオの活動時間内にだ。でなければ『U-D』 を静められても『アーマードダークネス』が残ってしまう。それも最悪だ。
既に一度変身してしまっているゼロ達が、今変身出来るのは後一度のみ。二度目は無い。ゼロが勢い込んだ時だ。突然赤い表示が空間モニターに示され、アラーム音が鳴り響いた。緊急連絡だ。
《大変です! 計測不能な程の高エネルギー反 応!『アーマードダークネス』が動き始めました!》
オペレーターの強張った声が響く。『アーマードダークネス』が進撃を開始したのを、アースラのセンサーがキャッチしたのだ。クロノは厳しい表情を浮かべていた。
「早い……いくら何でも早すぎる……ワクチンカートリッジの製作にはまだ時間が掛かる……」
「まだ手は有る……」
するとゲンが立ち上がり、何処からともなく銀色のマントを取り出して見せた。不思議な光沢を放つ、大きなものだ。
「『ウルトラマント』……ウルトラ族の長老 『ウルトラマンキング』より授かったものだ……防御に優れ、何より相手を無力化出来る力がある……ワクチンカートリッジの代わりになるだろう…… 接近した時、これを相手に被せるのだ……その隙にシステムを掌握すれば良い……」
「その役目は、私に任せてください……!」
他の者の機先を制し、リインフォースがいち早く名乗り出た。どうしても自分がやらなけれ ばならないと思ったのだ。心配したシグナムが声を掛ける。
「リイン大丈夫なのか……?」
彼女は以前より遥かにパワーダウンしている。難しいのではないかと思われた。するとはやてが続いて手を挙げた。
「私もやります。私がリインとユニゾンすれば行ける思います!」
「主……残念ながら、今の私は……」
リインは申し訳無さそうに目を伏せた。以前の力を失った彼女は、融合能力をも失っている。少なくとも今現在ユニゾンは不可能だ。
「リインが私に融合はできんやろうけど、逆ならどうや?」
本来なら術者にユニゾンデバイスが融合するのを、術者自身がユニゾンデバイスに融合しようと言うのだ。
「逆……? 主が私にユニゾンなさるのです か……? 確かに可能だと思われますが……それでは主に無理が掛かってしまいます……」
リインは気が進まないようだ。通常のユニゾンと比べて、術者であるはやてに負担が掛かってしまうだろう。だがはやてはニッコリ笑ってリインを見上げた。
「少しくらいの無理、どうって事あらへん。私らで王様達のお手伝いをしよ?」
穏やかだが、確固とした強い決意の言葉であった。こうなればはやては絶対に退かないだろう。彼女もリインと想いは同じだった。
「頑張れよ、2人なら絶対やれるさ!」
それが判っているゼロは、はやてとリインを激励する。同じ闇の書関連の事件。絶対に 『U-D』を助けたかった。他の者もそれを察し任せる事にする。
ディアーチェは然り気無く顔を逸らしていた。
「ふ……ふんっ……礼は言わんぞ、子鴉……」
その表情は見えない。しかしゼロはディアーチェが顔を逸らす前に見た。照れ臭そうなはやてと同じ顔を。
「それでは皆さん、お願いします」
リンディの言葉に全員が立ち上がった。ゼロ達八神家とアースラ組、ディアーチェ達マテリ アルは急ぎ武装転移ポートに向かう。
ユーノとアルフは武装局員達の方に回る。戦闘中結界を張り、現実世界の被害を抑えなければならない。今現在武装局員総出で張っている強装結界も、何時まで保つか判らないのでその応援だ。
転移ポートに着いたはやて達は、それぞれ騎士甲冑、バリアジャケットを装着し、ゼロは 『ウルトラゼロアイ』を取り出し両眼に当てる。
「待ってろよ『U-D』! デュワッ!!」
目映い光に包まれ、ゼロは赤と青の勇ましき超人に姿を変える。ゲンも拳を振りかざし『獅子の瞳』を繰り出した。
「レオオオオォォッ!!」
青い光に包まれ、真紅の超人『ウルトラマンレオ』が雄々しき姿を現す。レヴィが、「おおっ、格好いい!」などと目を輝かせている。
戦闘態勢を整えたゼロ達は決戦に赴くべく『アーマードダークネス』の元へと転移した。
*
雷を伴い荒れ狂う『アーマードダークネス』 見境なく三ツ又の槍を振り回し、地響きを上げて海鳴市に向かっていた。
増幅された背中の魄翼が、もう一つの腕のように辺りの木々を薙ぎ倒して行く。このままだと、結界を突破し現実世界に暴れ込んでしまう。
全てを破壊し尽くすまで止まりはしない。いや、全てを破壊し尽くしても尚止まらないだろう。アーマードはひたすら荒れ狂う。
ゼロ達は魔鎧装の進撃コース上に転移した。まだ黒い鎧の姿は見えない。此処を防衛線とし迎え撃つのだ。
各自が空中で態勢を整える中、突然その前に光の粒子が2つ発生し、巨大な何かが地響きを上げ大地に降り立った。
『こいつらは!?』
等身大のゼロは何かを見て、油断なく身構える。怪獣が2匹、まるで『アーマードダークネス』の先陣を勤めるように立ち塞がったのだ。
見た事の無い怪獣だった。それぞれ赤と黒い体色をした怪獣だ。頭部に巨大な角を生やし、その巨躯の各部に同じく巨大な角を刀の如く生やした厳つい怪獣。体色が違うだけで、2匹は良く似ていた。
『気を付けろゼロッ!』
同じく等身大のレオは怪獣に覚えがあるのか、2匹を眼光鋭く見下ろした。
『間違いない! こいつら『双子怪獣レッドギラス』と『ブラックギラス』の強化体だ!』
そう元の双子怪獣の一回りは巨大な躯に、巨大な各部の角。『EXレッドギラス』『EXブラックギラス』と言うべき、進化を遂げた『EXギラス兄弟』であった。
つづく
最悪の混戦に持ち込まれてしまうゼロ達。刻々と変身リミットが迫る。その時はやては……その影で真紅の魔神に動きが?
次回『兄弟怪獣大進撃や』