ライザー・フェニックスとのレーティングゲーム当日、俺たちは学園の部室にて各々の準備を進めていた。眷属のみんなは学園の制服、アーシアさんだけはシスターの格好だ。そして俺とサリエルの格好なのだが…
「なんでこの服があるんだ…?」
ブラッドの制服だった。レーティングゲーム前日に家に帰ると荷物が届いていたが、俺たちが不在だったので管理会社の方で預かってもらっているらしく、運んでもらったところ、海外で仕事をしている両親からの何やら大きめの箱が届いた。開けてみると中にはなぜかこのブラッドの制服が入っていた。耐刃、防弾性、通気性に優れ、どんな無茶な動きをしても破れないというSF染みた優れものなのだが…なぜか二人が知らないはずのサリエルの分、しかも絶対に知りえないはずのミッテルトの分まであった。サイズまでぴったりだから怖い…そしてそれと一緒に入っていた「がんばりなさい」と書かれたカード、もしかして俺たちのこと監視してる…?
「ウチは参加しないから、なんかもったいないっすね」
いつものゴスロリ風の帽子をかぶってブラッドの制服を着たミッテルトが少々残念そうにつぶやく。なんか妙に似合ってるなぁ。
「まぁ、堕天使のお前が悪魔のゲームに参加するわけにはいかないからな。残念だけど今回は、な」
「ミッテルトも出れればよかったのにー」
「ホントっすよ、あー! 今ほど悪魔と堕天使の関係が憎く思ったことはないっすよー!」
「ふふ、あなたが参加できれば、勝率も上がったんだろうけど…ごめんなさいね」
「ぶちょーさんが悪いわけじゃないっすよ、悪いのはこの関係を作った昔の人たちっす!」
張りつめていた雰囲気が緩み、朗らかな笑い声が上がる。だが、そんな笑い声を掻き消すかのようにガチャリとドアが開く。入ってきたのはあの時のメイドさん、グレイフィアさんだ。
「ゲーム開始の準備ができました。それとお嬢様、今回のゲームはルシファー様がご覧になっておりますゆえ」
「! そう…お兄様が…」
「ルシファー様って魔王様だよな…ってことは、え? 部長は魔王様の妹!?」
「ええ、イッセー君達は知らないんでしたね。今の魔王様は襲名制なんです。今はグレモリ―家の長男であるリアスのお兄様がルシファーを襲名なされているんです」
「へ、へぇ…部長のお兄さんってすげぇんだな…」
イッセーが感心しているとグレイフィアさんが俺たちに対して
「今回のゲームでは、あなた方二人は特別な駒、『
「わかりました」
「おっけーです!」
「それでは開始いたしますので、ミッテルトさんは私とご一緒に来てください」
「わかったっす、みんな、がんばるっすよ!」
「おう! 任せとけ!」
「いっぱい活躍しちゃうからねー!」
ミッテルトとグレイフィアさんが部屋を出ていくと部室の地面に魔方陣が浮かび上がる。視界が光に包まれ真っ白になり、それが晴れると、そこにはいつも通りの、既に見慣れた部室が移っていた。
「あれ? 失敗か?」
「イッセー先輩じゃないんですから…」
「グハッ!」
小猫ちゃんの何気ない一言で崩れ落ちるイッセー、まだゲーム始まってないのに大丈夫か…?
<皆様、私は今回のゲームの審判を務めさせていただきます、グレイフィア・ルキフグスでございます。フィールドは使い捨ての仮想空間ですので、いくらダメージを与えても問題はございませんのでご安心を。それでは、ルールの説明に入らせていただきます。今回のゲームのルールは
ルールは原作と同じか。向こうの陣地は新校舎一帯、こちらの陣地は旧校舎一帯…
「部長、向こうの兵士は8人いましたよね?」
「ええ、向こうは8人、こちらは1人…相手にプロモーションされないようにするのが重要ね」
「その件ですが、俺に任せてくれませんか?」
「それは構わないのだけれど、一体どうするの?」
「旧校舎の近くに迎撃用のアラガミを配置しておくんです。大型一体、小型を数体のグループを配置しておけば、近づかれてもプロモーションしていない兵士相手なら余裕をもって撃退できます」
「なるほど、ならお願いするわ」
部長の了承を得たのでいったん外に出る。なぜかついてくるみんなの視線を背に受けながら、左腕の袖をまくった後、右腕をカリギュラへと変化させブレードを展開する。痛いからちょっと苦手なんだよなー。
「…ッ!」
右腕をふるい自らの左手に傷をつける。背後でみんなの息を飲む声が聞こえるが傷が自然回復するまで血を流し、目を閉じ精神を集中させながら、血からアラガミを作り出す。小型はオウガテイルでいいだろう、近距離でも遠距離でも戦える。ヴァジュラテイルも数体作っておこう。ザイゴードも必要か。大型は遠距離攻撃ができるクアドリガとグボロ・グボロ、機動力があるヴァジュラでいいか…
目を開けるとそこには、巨大な要塞戦車の如き姿で威圧感を放つクアドリガと、砲塔を持った巨大な魚類のようなグボロ・グボロ、獅子の如き雄々しさと風格を持つ姿のヴァジュラ、そして合計18体のオウガテイルとヴァジュラテイル、6体のザイゴードがいた。
こんな感じでどうですか、と言おうと後ろを向くと、サリエル以外の全員がポカーン、と口を開けて言葉を失っていた。
「あ、あれ?」
「いきなり腕ぶった切って、血をだらだら流して、そこからこんなおっきいモンスターが何体も出てきたら、そりゃあこうもなるよねー。何が言いたいかっていうと、やり過ぎ」
「…アハハ、すいませんでした…」
やれやれと首を振るサリエルが手をたたくと、ハッ、と全員が気が付く。
「ちょ、ちょっと待ってアラト! あれなんなの!?」
「何って、迎撃用のアラガミですけど…?」
「あんなに出せるなんて聞いてないわよ!?」
「いや、言ってないですし」
詰め寄ってくる部長を受け流しながら、アラガミ達に命令を下す。
「クアドリガ、グボロ・グボロ、ヴァジュラをリーダにしてそれぞれチームを作れ、ザイゴードはそれぞれのグループに2体、オウガテイルとヴァジュラテイルは6体ずつだ。ザイゴードは周囲を警戒、敵を発見し次第オウガテイルとヴァジュラテイルが迎撃、リーダーが来るまでの時間を稼ぎ、敵を戦闘不能まで追い込め。決して敵を旧校舎に近づけるな!」
俺の言葉にそれぞれが雄叫びを上げ答えてくれる。作られたアラガミは絶対に俺の命令に忠実である、たとえそうだとしても嬉しいなぁ。
それはさておき、これで守りは万全だ。俺たちは攻めの一択でいい。
警備をアラガミに任せ、仮想空間に作られた本物と瓜二つの部室に戻り各々精神を研ぎ澄ませている。木場は壁に寄りかかり、姫島先輩はお茶を入れ、イッセーはグレモリ―先輩に膝枕されている。小猫ちゃんは指貫グローブを着けていて、サリエルは鼻歌を口遊んでいる。俺は持ってきていた菓子類をガツガツと食いまくっていた。戦闘になれば、菓子を食べてる余裕はないだろう。今のうちに食い貯めておかなければ。菓子につられた小猫ちゃんとサリエルと一緒に、持ってきていた分をすべて食べつくすと、ちょうどゲーム開始の知らせが届く。
<それではこれよりゲーム開始でございます>
「みんな、行くわよ!」
「「「はいっ!」」」
俺、サリエル、イッセー、小猫ちゃん、木場で新校舎と旧校舎の中間地点である体育館へと行き、向こう側から来るであろうライザーの眷属を迎え撃つ。むこうは兵士3人、戦車1人、騎士1人、木場とライザーの騎士が剣を打ち合わせ、小猫ちゃんが戦車の攻撃をかわしながらカウンターを放っている。イッセーはミラと呼ばれていた兵士と戦っている。こちらに向かってくるのは、チェーンソーを持った少女二人。
「「あはははは! バラバラになっちゃえー!」」
「なってたまるか」
両腕をアラガミへと変化させる。このゲームのために使えるようにしたアラガミの腕へと…
「プリティヴィ・マータ…!」
両腕へと力を込めると、冷気が収束する。収束した冷気を光線の如く放つオリジナルの技!
「
放たれた冷気はチェーンソーを振りかぶっていた少女たちを飲み込み、体育館の天井を貫き、仮想空間の空へと消えていった。
<ライザー様の兵士2人、戦闘不能です>
自らの新技が成功したことに安堵していると、突然悲鳴が上がる。見るとそこではイッセーが戦っていたミラさんの服を消し飛ばしているところだった…
「見たか! これが俺の
かっこよく決めたイッセーだったが向けられるのはとんでもなく冷たい視線。小猫ちゃんに関してはゴミでも見るかのような目だった。
「あ、あれ?」
「…女の敵…」
小猫ちゃんの言葉にサリエルと、敵であるはずの騎士と戦車までうなずく。
どうにか変態魔法を覚えさせないように頑張ってきたが…駄目だったか…
親友がどんどん変態の道に進んでいる事実にうなだれていると、通信機から声が聞こえてくる。
<みんな! 準備ができたわ、すぐに撤退して!>
「了解! みんな、行くぞ!」
通信機ですでに指令を聞いていたみんなが俺の言葉と同時に体育館から撤退する。
「撤退した!? ここは重要地点のはずなのに!?」
後ろでライザー眷属が驚いているが、それを気にしている暇はない。今すぐ逃げないと…!
俺たちが出るのとほぼ同時に体育館に極大な雷が落ちる。
ガアァァァン!!
<ライザー様の戦車1名、騎士1名、兵士1名戦闘不能です>
煙が晴れるともうそこには体育館は跡形もなく、完全に消し飛んでしまっていた。
姫島先輩の雷魔法強すぎだろ…アラガミ形態なら食らっても平気だろうが、できれば食らいたくはないなぁ…
そんな中感じた殺気、その対象は…!
「危ない、小猫ちゃんっ!」
「えっ!?」
瞬時に小猫ちゃんを突き飛ばす、すると巨大な爆発が俺を巻き込んだ。
空から敵の
「先輩っ!」
「
「そうみたいだな!」
「なっ!?」
残念ながら、俺が今着ているのは耐熱性にも優れた特別性の服なのだ。さらにアラガミ化させた腕で防げば、どうということはない。ダメージを負うことなく防ぎきった俺は、油断している向こうの女王に向かって本日2度目の女王の澪槍を放つ。俺を倒したと思って完全に油断していた女王は、驚きながらもギリギリ回避する。さすがは何度もゲームで活躍しただけのことはある。しかし、完全に回避することはできなかったらしく、その左腕は氷に包まれていた。
「くっ、よくも!」
「油断してるあんたが悪い!」
両手を振るい氷槍を作り、何発も打ち出す。それに合わせて姫島先輩の雷が女王に襲い掛かる。雷を放ちながら俺に近づいてきた姫島先輩が耳打ちする。
「神代君、ここは私に任せてください」
「いいんですか?」
「ええ、同じ女王ですから」
「私も残るよ」
サリエルはすでに両腕と脚をアラガミ化させて、周囲には光球を浮かべた臨戦態勢だった。原作では姫島先輩は負けてしまった、だがサリエルがいれば、あるいは…
「わかりました。頼みます、サリエルも頼む!」
「ええ、頼まれますわ」
「りょーかい、任せといて!」
敵の女王は二人に任せて俺たちは他のやつらを倒すとしよう。3人と一緒に走り出す。途中で見えた小猫ちゃんの顔が落ち込んでいたので
「気にしないで、小猫ちゃん」
「でも、私のせいで、先輩が…」
「全然効いてないから大丈夫だよ」
「でも!」
「ならさ、これ終わったら、どこかの店でケーキ驕ってくれる?」
「…わかりました、約束ですよ?」
小猫ちゃんに笑顔で返し周囲の索敵を開始する。さっさと終わらせて小猫ちゃんとケーキ食いに行ってやる!
長くなりそうだったのでサブタイトルは違いますけど前篇後篇に分けました。
サブタイトルの荒城の女王はGE2のプリティヴィ・マータの登場ミッション名です。
感想お待ちしております。