ハイスクールD×D 転生者はアラガミ   作:オラクリオン

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第二十一話 世界を蝕む者

「先輩!」

「うわっと!?」

 

小猫ちゃんがこちらに向けて走って抱き着く、というより飛びついてくる。何とか受け止めて、転ぶことは回避した。

 

「よかった…よかったです…!」

「心配かけてごめんね…もう、大丈夫だから」

 

俺の腕の中で泣きながら、俺がいることを確かめるかのように強く抱きしめてくる小猫ちゃん。俺はそんな彼女の頭を撫でながら、優しく声をかける。しかし俺はこんなにまったりしている暇がないことに気が付く。

 

「そうだ! コカビエルは!?」

「「「………」」」

「あ、アレ?」

 

俺がコカビエルのことを話題に出した途端、みんなが苦笑いになってしまう。そういえばどうしてコカビエルは攻撃してこないんだろう? こんな感動の場面で待ってるような奴じゃないと思ったんだが…サリエルが苦笑いのまま指をさす。その方向を向くとそこには、クレーターの様に抉れた地面に横たわっているところどころ焦げているボロボロのコカビエルがいた。

 

「アラトが暴走してる時に近づいちゃってねー。アラトの左手の炎を纏った状態で叩きつけられちゃったんだよー」

「え…? じゃ何? 俺の知らないうちに倒しちゃってたの!?」

「あははー、そういうことだねー」

 

なんということだ。俺が知らないうちに俺が倒していたなんて。絶句している俺を見てみんなはさらに苦笑いになる。これにて一件落着、になると思ったその瞬間

 

「うっ!?」

「シエル!?」

 

突然、シエルが胸を押さえながら膝から崩れてしまう。その顔色は青白く、とてもではないが大丈夫な状況ではなかった。

 

「これは…!?」

「アラト…」

「ああ、分かってる」

「こいつは、マズイねぇ…」

「アラト、シエルはどうしてしまったの?」

「おそらくですが―――!?」

 

説明しようと思うと唐突に背後から嫌な感じがする。振り向けばそこには浮き上がったコカビエルの姿があった。ただし、その胸には、木場が折った筈のエクスカリバーが無傷(・・)で背中から貫通するように刺さっていた。

 

「エクスカリバー!? どうして…!?」

「アァアガ、ガァァァアアア!!!」

 

突如コカビエルから悲鳴のような、雄叫びのような大きな声が発せられる。すると黒いオラクルが大量に渦巻きコカビエルの姿を覆い隠す。そしてオラクルの暴風が収まるとそこにいたのは、黒い冠に走る血の如く赤い罅のような模様、同じように罅のような模様が入った漆黒のマントをたなびかせ、その後ろには六本の黒い剣が浮遊している。そして胸は虚無のごとく広がる空洞、その空洞に浮かぶ深紅のコア。人の顔に当たる部分にはエクスカリバーに貫かれた、虚ろで焦点の合っていない眼のコカビエルの上半身が生えている。まるで王の如き姿、それは色と全身に罅のような亀裂が入っていること以外はほとんどが『世界を拓く者』と瓜二つだった。

 

「おいおい、嘘だろ…!?」

「あれは…さすがにねー」

「ラスボスクラスがいきなりとは…」

 

世界を拓く者?は右腕を空に掲げる。すると何もなかったはずの右腕に『マインドべイン』のような剣が握られる。しかし、右腕を下すとピタリと止まり、何もしてこない。その不自然な行動に疑問を抱きつつも、好機と見て説明を再開する。

 

「おそらくですが、シエルの中にある荒ぶる神の聖剣(エクスカリバー・レイジ)の細胞が暴走しているんだと思います。シエルは荒ぶる神の聖剣に適合するために聖剣の細胞を移植された、といっていました。そしてその大元の聖剣が折れたことで細胞そのものが暴走、シエルにもその影響が出ているんだと思います。助けるには大元、つまりあいつを倒す必要があります」

「…急いだ方が良いよ。暴走してるせいでシエルの細胞がアラガミに喰べられちゃうよ。そしたら、ほんとのアラガミになっちゃう。多分、あと十分もない」

「十分…崩壊魔法陣もいつの間にか復活してるし、多分向こうもあと十分、ってとこか…」

 

悠長に構えている時間はない。出し惜しみをしていられる強さの敵でもないだろう。最初から全力で挑まなければ、殺される。

 

「行こう、(みんな)

 

俺を中心にオラクルの波動が周囲に広がる。すると虹色に光る球体が五つ、出現する。球体はその形状を変えていき、それぞれ全く異なる姿を取る。

 

「見せてやるよ。『ゼロオラクル細胞』の力を」

 

光が弾けるとそこには、『ルフス・カリギュラ』『マルドゥーク』『ボルグ・カムラン』『ヴァジュラ』そして『キュウビ』の姿があった。このメンバーからも俺の本気がわかってもらえると思う。原作後半のパワーインフレ? 未来より今のこの状況打破しなきゃマズイ。

 

「みんな、力を貸してもらってもいいか?」

「もちろんです。先輩のためなら…!」

「俺も手伝うぜ! 倍加能力があればサポートぐらいはできるはずだ!」

「おーけーだよ。ボコボコにしちゃって!」

「頼むぜ、ご主人!」

「…ありがとう」

 

俺は自らをハンニバルの感応種『スパルタカス』へと変身させる。黄金色に輝くうろこが全身を覆い、顔は巨大な角を生やした骸骨のような仮面になる。両腕はハンニバルより頑強に変化する。そしてスパルタカスの感応能力『吸収強化』を使用する。俺は前世ではこいつを、他人の力を『奪って』戦う卑怯者だと思っていた。だけど、今は違う考え方になっている。『奪う』んじゃない、みんなの力を『背負って』いるんだ。アラガミではないが、ゼロオラクル細胞により感応能力を変質させみんなの力を吸収する。すると背中から四対八枚の雷の羽が生える。すると、俺の横にイッセーが並び立つ。

 

「かなり持ってかれるな…けど、ドライグ!」

『おう!』

<Welsh Dragon Balance Braker!>

 

イッセーは禁手(バランス・ブレイク)赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を発動する。イッセーは最近の特訓で30秒も鎧を維持できるようになっていた。

 

「時間がないから先に仕掛けてるぜ!」

「頼む!」

 

イッセーは一気に世界を拓く者?に近づき拳をお見舞いする。しかしそれは浮遊している剣たちに防がれてしまう。イッセーを弾き飛ばすと、六本の剣が回転し中心に強力なエネルギーが集積する。それがイッセーに向け放たれるが、間に入ったボルグ・カムランにより阻まれる。左右から近づいていたルフスとマルドゥークがそれぞれブレスと火球を放つ。しかしマインドべイン?による回転斬りで防がれてしまう。世界を拓く者?は目の前で回転させていた剣を頭上へと移動させ、そこからエネルギー弾を放ってくる。

 

「オラァ!」

「ハァッ!」

 

俺とイッセーはエネルギー弾を殴ることで破壊し、他のアラガミもそれぞれ攻撃を当て無効化している。今、ふと思いついたこいつの名前、こいつは世界を拓くのではなく、蝕もうとしている。故に『世界を蝕む者』、剣は『イローゾンべイン』。うん、ぴったりだ。世界を蝕む者は剣を振るい近づいてくるアラガミ達を切り裂こうとするが、ルフスのブレードやカムランの盾に防がれ、思うように攻撃ができていない様子だった。すると不意に、意識の無いようすだったコカビエルの口が動く。

 

「神はすデに死ンでイルといウノニ愚かナ奴ラだ…」

「は?」

「なっ!?」

「聖と魔ガ混ジルという異常が起きルノハなゼだ。ソれこそ、神が死ンデいルといウ確タる証拠ダ」

 

これはコカビエル自身が喋っているわけではない。彼の体をオラクル細胞が乗っ取っているため、彼の口を使い喋っているに過ぎない。この発言の目的はおそらく、こちらの士気の低下。現にゼノヴィアとアーシアさんは次々と吐き出される言葉を聞いて戦意を喪失してしまっている。だが、

 

「だから、どうしたァ!」

「!?」

 

イッセーはコカビエルの口から放たれた言葉を気にも留めず、再び殴りかかる。しゃべることに集中していた世界を蝕む者はイッセーの魔力を帯びた一撃をもろに喰らってしまう。それもコアの部分に。いくらアラガミといえど、弱点であるコアに、魔力を帯びた攻撃を喰らえばそれなりのダメージが入るだろう。

 

「チャンス…!」

 

アラガミ達に指揮をだし、一気に弱点であるコアに集中攻撃をかける。マルドゥークとヴァジュラの火炎と電撃は守りに回ろうとしていた六本の剣を破壊する。キュウビの尾から放たれたホーミング弾が当たり怯んだところへ、カムランの槍とルフスのブレードが突き刺さり、切り刻む。そして留めと言わんばかりに大技を放つ。

 

戦鬼雷撃槍(ライトニング・グラディウス)!」

 

右腕に溜められた電撃は、振り抜かれた拳と共に槍のごとく放たれる。雷槍はコアの中心を穿ち破壊する。しかし、死に際に右腕に持っていたイローゾンべインがイッセーの体を貫く。

 

「ガッ!?」

「イッセー!」

 

人間の姿に戻ると侵食モードでコカビエルとエクスカリバーを喰らう。この時エクスカリバーのコアのみを残し捕食すると、すぐさまイッセーの元に向かう。イローゾンべイン自体はすでに黒い霧となり霧散していたが、傷があまりにも深すぎた。

 

「イッセーさん!」

 

近付いてきたアーシアさんが必死に治療しようとするが、傷は一向に治らない。深すぎる傷とオラクル細胞、そしてエクスカリバーのせいで傷は治る気配すらない。こうなれば…

 

「部長、今から賭けをします…」

「賭け…?」

「俺のゼロオラクル細胞をイッセーに移植します」

「「「!?」」」

「もしかしたら、イッセーは細胞に適合できず、死んでしまうかもしれません。けど、今はこれしか…!」

「アラト、信じてあげなよ。アラトの親友は、こんなところで終わらない、って」

「…ああ」

 

イッセーの傷口に手を当て、侵食モードの指を差し込む。そこから俺の血液をイッセーへと流し込む。するとビクンとイッセーの体が跳ねる。

 

「ウグ、ァァァアアア!」

「耐えてくれ、イッセー…!」

 

十分な量を流し込むと、イッセーはしばらくもがき苦しんでいたが、すぐに落ち着き正常に息をし始める。傷口も段々と修復されていた。

 

「よかった…」

「今代の赤龍帝はずいぶん面白い仲間を持っているね」

 

不意に後ろから聞こえてきた声。その声は機械のようなフィルタを通されており、男か女か判断できなかった。しかし圧倒的な存在感を持っており、その声の主は翼の生えた純白の鎧に身を包み、浮遊しながらこちらを見つめていた。

 

「お前は…」

「白龍皇、と言えば分かるかな?」

「やっぱりかよ…」

「コカビエルの回収を命じられていたんだけどね。回収する対象がいないんじゃ仕方ない。今日はこれで失礼させてもらうよ」

 

そういって白龍皇は飛び立とうとするが、不意にイッセーの籠手から声が響く。

 

『無視か、白いの』

『起きていたか、赤いの。今代の赤龍帝も捨てたものでは無いのかもしれんな』

『いずれ、戦う時に分かる事だ』

『…そうだな、それが我らの定めなのだから』

 

同じように、向こうからも声が聞こえてくる。『赤龍帝』ドライグに『白龍皇』アルビオン、伝説の二天龍の会話か…

 

『にしては今回は敵意が薄いな?』

『それは貴様も同じだろう?どうやらお互い、戦い以外に興味の対象が出来た様だな』

『そうだな。いずれ戦う事は分かっている。少しくらい寄り道してもかまわんだろう』

『違いない』

「もういいみたいだね。赤龍帝君に伝えておいてくれ。もっと強くなれ、って」

 

そういって白龍皇は飛び去って行った。ハッ、と気づきイッセーとシエルの様子を見ると、二人ともずいぶん安定したみたいだった。無事に起きてくれるといいんだが…

 

 

 




あと一話で三章も完結です。今回でアラトの出した『ゼロオラクル細胞』とかイッセーへの細胞の移植とかは次回詳しく説明したいと思います。

それでは感想等お待ちしております。
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