『ヒョポポポポ!この地獄星人 ヒッポリト星人と偉大なるヤプール様が貴様を死へ誘ってやる!』
『エースの弟子、ウルトラマンヴィクロス!!今日が貴様の命日だぁ!!!!』
「うるさいです。静かに話せないのですか?」
耳を塞ぎながら話す。毒に身体を完全に侵食されるまで時間の問題があり、さらにはカラータイマーがある時間も問題だが、覚悟を決めて両手に刀を握りしめる。
『ヒョオウ!』
ヒッポリト星人は口から焔を放った。
「
一瞬にして刀を真下に下ろして斬り、ヒッポリト星人を蹴り倒す。
『ヒョォ!?』
大きく吹き飛び、しかしその直後ヴィクロスの腹に棘が刺さる。
「ガハァ…!」
思わず地面に膝をついてしまい、腹を抑えた。毒で身体中が麻痺寸前なため下手に攻撃を喰らえば死ぬ寸前だった。
ヒッポリト星人は笑いながら、無数の攻撃を放つ。
激痛に耐えながらなんとか攻撃を刀を振り回して跳ね返した。
「ッぐ…!ガハァ…!はぁ…はぁ…はぁ…(リュードさんの毒…時間差で攻撃してきますね…凄い効果だ…)」
ヒッポリト星人は、ある合図を送った。上空三万フィートで、それが待機している。
ヴィクロスはそのことに気づかずひたすらヒッポリト星人に攻撃を続けた。
刃の色はまだ変えなかった。
瞬間、それは落ちてきた。
「ッ…な、ん…だ!?」
足を止めて下がるも、間に合わず。
─────ヒッポリトカプセル、投下。
「しまった…ッ!!」
勢いよく叩き割ろうとするが、一向に割れない。
『ウルトラマンを援護する!』
そんな声が、聞こえた気がした。
次の瞬間、ヒッポリトカプセルに青白いビームが当たった!
─────ファイラーだ。
「ッ……!?」
カプセルが破壊され、ヴィクロスは困惑しながらも脱出した。
『お前の敵はこっちにもいるぞ!』
テレイグジスタンスが、二機。
片方は拳、そしてもう片方は──────大鎌。
『殺してやらぁああ!!』
テレイグジスタンスロボット ブラスト────────そしてその同型、ラッシングである!
「アレは……ッ」
「隊長!ヒッポリトの背中打ってください!!私に隙を作らせてください!!」
ブラストがヒッポリトの周りを飛び回る。
「(ファイラー、ブラストが……隊長、キャスさん、無ツ木さん…どうして!?)」
ヴィクロスは困惑しながらその場に立ちすくんでしまっていた。
『機動性が高まっているのか……すげえな、一号機!』
ラッシングはその大鎌を振り回し、ヒッポリト星人の背中を切り裂く。
「ヴィクロス!ボサッと立ってないで戦いなぁ!無ツ木副隊長も瀕死状態で参戦したんだから!!そして…この隙に!私たちがちゃんと援護するから!」
キャスがヒッポリトにハイスピードで近づき、鬼の力を眠っているからか、腕一つでヒッポリトが手にしていた慎太郎、肇、シュン、そして紗和のブロンズ像をひったくる。
「!?(え?!無ツ木さんしばらく顔見ないと思ったら瀕死状態なんですか!?)」
「(な、何が…一体どうなっているのですか?)」
「たいちょー!4人の救出成功しました!2人でヴィクロスの援護を頼みます!」
ブラストをまだ無事のビルの屋上に着陸させ、4人を慌てて地面に置いた。
「(鬼の力を使えばコントロールが出来ない時がある…だけど……やるしかない!)」
髪色が白く変わり、ツノと牙が生え、爪が鋭く伸びる。
鬼化したキャスは勢いよく4人を燃やす。
「
その瞬間、四人の瞳が赤くキランッと光る。
「ひゃぁああっはぁ!!」
「ふぅ……」
「I'LL NEVER FORGIVE THAT CUNT!!!!!!!」
「同じ体勢はキツかったなぁ〜…さてさて、ショーを始めようか」
血のように赤く染まる4人の瞳が輝き、そして今、四つの光に包まれた。
「ッ…!はぁっ!」
ヴィクロスはヒッポリトとの戦いで苦戦していた。
それもそのはず、実質1対2という数の暴力に押されていた。
ヒッポリトを優先すればその背後からヤプールが攻撃してくるのだ。
「お前もここで終わりだ、ウルトラマン!」
そうして、ヤプールがディメンジョンビームを放とうとした。次の瞬間!
「show time!!」
その声と共にヤプールに流星のような光線が直撃した。
「ッ…!?あ…!」
ヴィクロスは背後を振り返ると、喜びの笑みを浮かべた。
「君が戦うのはこっちじゃなくてあっちでしょーーーッ!!!」
見覚えのある青い身体が一瞬で、ヒッポリト星人の目の前にやってきて顔面を蹴り飛ばした。
「ヤプールと戦いな。ウルトラマンヴィクロス。ボクらはアイツ、倒すから」
笑いながらU40出身のウーマンは言う。ウルトラウーマンラピスはヴィクロスの背中を叩いてヒッポリト星人に向かって走った。そしてヒッポリト星人を投げ飛ばした先には、殺意増し増しのウルトラ戦士3人がいた。
「アバドン!ヴェラム!ビータ!こっちはヒッポリト星人戦、開始だよ!!!」
『ヒョポポポ!雑魚が徒党ヲッ!?』
ジャラリ、ギュウウアッ。
ヒッポリト星人の頸に鎖が巻き付く。
片方を持ったビータが走り出し、もう片方を持ったアバドンがアバドストライカーに乗って疾走す。
勢いよく頸が絞め上がり、ヒッポリト星人はとんとんと首元を抑えた。
噛んで手袋を取り、いつでも水銀中毒にする準備を迎えるラピス。笑みはまるでターゲットを狙う
「ボクらの恨みは怖いよ?」
ざくり、何かを突き刺すや否や。
鎖がそこに固定され、音速で二人のウルトラマンが戻る。
「お〜…エグいエグい」
笑顔が怖いラピス。いや、ラピスだけじゃない。アバドンとビータも鳥肌が立つくらい怖い笑顔を浮かべていた。最早、悪魔そのもの。
そしてヴェラムは、
「イマージュ……フルメンバー……!!」
─────背後霊、増殖。
異常で怖くに見えてもなお、気にしない。これがこの4人の戦い方だから。
アバドンは虚空からメリケンサックを取り出し拳に填める。
次いでビータはどこかからか薬物を取り出し服用。分身したところで、分身体にトランペットを持たせ本体は釘バットを持った。
無慈悲に溢れに溢れ出す硫化水銀はラピスの周りを舞ながら周りを汚染させる。
そしてラピスは指を鳴らし、虐殺を合図を送る。
「it's show Time…♪」
ラピスが素早く駆け出し、ヒッポリト星人の目の前にやってきた瞬間、一瞬にして身体全体を硫化水銀まみれにさせた。いわゆる、水銀中毒にさせたのだ。その影響により、ヒッポリト星人は全身麻痺、言語障害を起こし始め、最早戦う手段を失った。
「アバドン!ヴェラム!ビータ!殺せ!!」
そう叫んだ瞬間、瞬時にその場を離れた。
『くぁwせdrftgyふじこlp』
「シャアオラ!」
ヴェラムが十四年式拳銃で撃ち、そして膝を折る。
「GO TO HELL, MOTHER FXXKER!!」
ビータが両腕を折り、そしてガレリオンショットで身体を撃ち抜く。
「──────死ねよ」
最期に、アバドンが首の骨を折って、そんでもって。
「あわせろ、合体光線だ」
──────四人の無慈悲なるトドメにより、ヒッポリト星人の生命活動はあっけなく終わったのだった……。
「Shaw finish…♪」
「ラピス!伏せて伏せて!!」
「え?うぉ!?」
ルリに言われた伏せて飛んできたのは…カラータイマーが鳴って今にも死にそうなヴィクロスだった。
ここからだった。大人数で戦ってもなお、未だにピンピンと戦い、無ツ木を襲い、ルリにダメージを与え続けた。
一体倒すだけでも絶体絶命という状況は……勝確定のサインでもある。
「このヤプール…クッソ強い!!」
ルリが1人でヤプールを接戦するも、押されてしまっていた。鬼の力をなんとかコントロールしているが、1人相手だとキツい状態だった。
『降参か?打つ手なしか?フハハハハハハ!!』
蹴りが飛ぶ。
「ガフッ!?」
ルリはそのまま吹き飛び、ビルに激突する。
「人の親友に手を出さないでくれない?」
ラピスが背後をとり、蹴り飛ばす。
『……ふぅむ?』
「ッ……ビクともしない…か。これなら…!?」
首元を掴むと同時にアバトンに向かって投げ飛ばした。
「よっと」
『ぬおっ!?』
アバドンは拳を突き出し、ヤプールに刺す。
「ッ……まだ生命反応を感じる…」
ラピスが小声で呟く。
「むしろこいつァ不滅だよ……!」
「こんな大人数で戦ってなお、まだコイツは立つってことだね…」
「隊長と無ツ木は生身で戦っているから注意して…」
全員が巨大ヤプールを囲め、攻撃の様子を見る。
その中で、無ツ木は何かを悟る。
「……おい、まだ本命が残ってやがんぜ?」
「本命…?」
「あ…そうだったね」
崩れて落ちたビルの向こうから、なにかが来る。
「バーチカルギロチン!」
一直線にヤプールに向かってギロチンが放たれた。
放ったのはもちろん、ヴィクロスだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……ガフッ!」
だが、ヴィクロスの様子がおかしかった。足取りがおかしく、身体の色が明らかに違った。その様子を見てヤプールはすぐに分かり、高笑いが周りに響く。
『そうかそうか!!奴の猛毒が今更効きおったか!!』
「ガフッ…ガフッ……そうですよ…盛られた時点でずっと効いてますよ。この身体全体が毒で犯されて…お前を倒したら僕は死ぬかもしれません。ですが……お前だけは倒します!!ヤプール!!僕の実の父親を殺した殺人鬼が!!!!!」
その言葉を聞いて、全員が驚愕した。
「……親の仇ねぇ」
『親の仇ィ?何人殺したかわからんからなぁー……どうだってよい!!仲良く死ねぃ!!』
ヤプールはディメンションビームを放つ。
「土…土石流」
刀を真横に振り回した瞬間、まるで本当に土石流が流れてきたかのようにディメンションビームから守られた。
「ッ……ガハァ!!」
だが1つの力を使おうとするだけで毒の進行はさらに速くなり、死が目の前に見えているのだった。
『やはり貴様はここで終わる。さらばだ』
ヤプールが足を振り上げる、その瞬間。
「足元が留守やぞ」
躍り出るはウルトラマンアバドン、ヤプールを投げ飛ばし奪うぜ主役。
「アバドンさん…」
「ヴィクロス…今は自分のことを優先していいからね」
ラピスがヴィクロスの前に立ってヤプールの頭上に渾身の踵落としを放つ。
「鬼火!!」
ヤプールを燃やすように鬼火がヤプールの身体を炎上させた。
ヤプールへの攻撃はこれだけではない。
「イマァアアアアジュ!!」
ヴェラムのイマージュがリンチに入る。
「セイヤッ」
さらにビータの蹴り技がヤプールの腹を抉った。
「隊長!副隊長もヴィクロスに援護お願いします!!」
ルリが空を見上げながら人間にも言葉が分かるように叫ぶ。
『全機、ウルトラマンを援護せよ!』
機銃掃射、メーサー砲、そして巨大ロボットの進撃。
ヤプールの体に傷が着く。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
呼吸を荒くしながらもヴィクロスは膝をつきながら立ち上がる。
「……ッ…このヤプールは…生命力が以前より強くなって、いま、す…!」
強く刀を握りしめて、痛みに耐えながらも一歩ずつ進む。
「……何度も復活してる影響かな?」
ラピスがそう呟く。
「やっぱこいつ、だいぶ復活の影響で知能落ちてるな」
「知能が落ちているならただの負け犬だね」
牙を見せるようにルリを笑いながらそう言う。
無論、全員が同じ考えだった。
「はぁ…はぁ…はぁ……ヤプール……1つの誤算をお伝えしておきましょう」
ヴィクロスは片手を刀から離し、指を指した。
『なんだぁ!!!』
「お前は…ウルトラ大戦争のことを覚えていますよね?」
呼吸が荒く、足の歩む動きもおぼつかないが、ヴィクロスの雰囲気は少しずつ変わっているのが分かる。
「お前はウルトラ大戦争の時…無数の超獣を作り、そしてウルトラ族と戦わせた。
だがお前はとあるウルトラマンに見つかり、攻撃され続けた。普通ではあり得ない…刀を持つウルトラ戦士、いや…ウルトラ
ヴィクロスが指を指し続けたところには、確かに隠していたかのように少しずつ浮かんでいる大きな傷があった。
「その傷が……お前の誤算です。ヤプール…」
『……なんだとぉ!?戯言を抜かすなぁ!!』
「その傷が…見えてないのですか?見えてないのなら…良いです。父上が、僕を導いてくれている証拠です」
刀を片手で強く握りしめた瞬間、刃が虹色に輝きだした。
「先輩方……時間稼ぎありがとうございます…これで、これでようやく……使える。この最後の奥義で…終わらせます」
その言葉を聞いて、全員が一歩ずつ後ろに下がった。
そして超獣のヤプールなら普通は恐怖を知らないはずだった。だがヴィクロスが目の前に眼中した瞬間、身体中に恐怖という名の寒気が通った。ヤプールがいる目の前のヴィクロスが…かつてウルトラ大戦争で無慈悲に傷つけ瀕死にさせた化け物という名の、ウルトラ剣士がいるのだ。
『逃げねば』
ヤプールはそう悟り、消えようとしたがもう遅い。
「ザマを見ろ、マイナスエネルギーというアキレス腱を切ってやったよ」
ヤプールはもはや、動けない。
「日、月、火、水、木、金、土が全て揃いし時、この奥義は完成をする。父上…そうですよね……これで、これでようやく…終わらせることが出来ます。ヤプール…今日で本当にお前の最後の日です。罪を償って…消えてください」
刀を頭上に限界まで握りしめながら空高く刃を上げる。その瞬間、刃がまるで青空を虹が彩るように輝きだす。
「これが我が一族の奥義!!!虹色の終焉!!!!」
一瞬にしてヤプールの四肢と胴体、そして首を斬り落とし、トドメとして顔を貫いた。
『ふ、ふふふ……ヤプール死すとも、超獣死なず!やがて蘇り貴様を────』
ヤプールの魂は身体から抜け出てヴィクロスに襲いかかり、
「あ、エビみてぇな味してんなこいつ」
───アバドンに食われた。
「食べるんかーい」
ラピスの渾身のツッコミが入る。
「でも、終わったんだからもう良いじゃん。アバドンおじさんは何にも影響ないよね?」
ルリが元に戻った状態でラピスの横から顔を出してそう言った。
しかし、周りはヤプールを倒せたことに喜んでいるものの、ヴィクロスの様子がおかしかった。
ビータがヴィクロスに声をかけようと肩を触ろうとした瞬間、一瞬にして光粒子となった。
「なっ!?」
「ヴィクロス…!?まさか、毒で…!」
「いや、違う……足元注意!下だ!」
ラピスが地面に指を指したところには、顔色が真っ青になり、身体の色が変色しているヴィクロスの人間体、羅衣が倒れていた。
全員が慌てて人間体に戻り、常田と無ツ木は慌てて機関を着陸させ、羅衣に駆け寄る。
「ヤバイ…毒の進行が進み過ぎて心臓が微かしか動いてない…!」
「やべえ事になったぞ……」
「毒に身体中を侵食させたまま戦ったんだ…これ以上侵食したら、解毒剤や光エネルギーも使えない……」
全員が、羅衣の死を覚悟をした。だが、死なせたくない気持ちが溢れ続ける。
あのヤプールを倒した本人に奇跡が起これば、と全員は思う。
その時、全員の背後から近づく足音がゆっくりと聞こえた。全員が振り返ると、見知らぬ男の人が光り輝いて近づいていた。
「……おや。大丈夫ではなさそうだね」
「ッ…誰?!」
鬼の力に耐えながら、キャスが牙を向ける。だがそれは紗和が止める。
「……来ていたのですね。エースさん」
紗和は微笑みながらそう言う。そして何故か慎太郎の腹に肘を当てる。
「私は北斗星司……彼を回収させてもらおう」
「ご名答。羅衣、いや…ヴィクロスをお願いします」
紗和が細い身体とは裏腹に羅衣を抱き上げ、星司に託す。
「あ、な、なら!基地で!基地で羅衣を見ようよ!隊長!無ツ木!それでいいよね!?」
キャスが紗和の後ろから焦り口調で話す。とはいえ、口調が焦りなのは分かる。全員が傷まみれで疲労困憊が凄かったのだ。
「……ヒカリから薬を預かってある。これで解毒さえすればいい」
全員がほっとした顔になり、身体中に感じる疲労になんとか耐えた。
SDT基地に全員が戻り、羅衣が星司に担がれながら保健室に眠らされていた。心電図モニターにはまだ微かに心臓が動いているのが分かる。
「……よし」
星司は薬を打ち込んだ。
羅生に薬液が注入される。
……羅衣の心拍数が少しずつ上がり、強くなっていく。
そして———ヤプールを倒したウルトラ戦士が目を覚ます。
「…………………みな、さ、ん……?」
「羅衣…!」
羅衣が少しずつ瞼を上げ、周りを見渡した。周りには傷だらけでも側にいる仲間達と、見覚えのないのに既視感がある光り輝く男の人が側にいた。
「?…………………師匠…?」
「よくやってくれた。私の思った以上に、強くなっていたようだ……」
「師匠…?………僕は、一人前になれましたか?」
「ああ。……お前は、もう私の教えはいらないだろう」
「……師匠…ッ」
涙を流しながら笑顔を見せる。
「………頑張ったね」
優しく頭を撫でたのは紗和だった。他の仲間たちも羅衣が起きたことを喜び、一人前になったことを讃えてくれた。
「……私は報告に戻る。その絆、大事にしろよ」
北斗は静かに消えた。
「師匠……ありがとう、ございます」
ヤプールの闘いから数週間後、ウルトラ族身体というのは万能であり、重傷だった身体があっという間に治り、羅衣は慎太郎に誘われて何故か焼肉をすることに。
「……あの時聞き忘れていましたが何故に唐突焼肉?隊長と無ツ木さんもいるし…」
「叔父さんが来いって脅すから良いじゃん」
キャスが慎太郎に指を指しながらそう言う。キャスにとっては慎太郎は見た目が20代に見えても『叔父さん』のようだ。
「誰がおじさんだ、誰が」
「14万3024歳だから仕方ないよ慎太郎」
紗和がバカにするような笑みでそう言う。
「14万いってるならもうおじさんだよね?」
キャスも悪気なくそう言う。
「テメェらの首肉食わせろ」
慎太郎の目が死んだ。
「なら私は叔父さんのお肉食べたい」
「シュンの肉なら食べたことあるじゃん」
「うっ…」
キャスは基地の病室で寝てる間に一定期間鬼化してしまい、寝てたシュンの左腕を食べてしまったらしい。どうやらまだ完璧に鬼の力は制御出来てなかったようだ。
「人の腕食いやがってさ」
「あ、でも…美味しかったよ叔父さん」
「誰も味なんて聞いてないよ。そしてシュン叔父さん…」
紗和は笑いを耐えた。
物騒な話をしているが、羅衣はその状況が何故か微笑ましく見え、笑顔を絶やさなかった。
「そういえばおじさん達が持ってきた肉って美味しいの!?」
キャスはこれでも悪気はない。ただ単に純粋なだけである。そして紗和はキャスの後ろでついに耐えきれず爆笑していた。
「殺されたいかお前」
無慈悲な一撃である。
紗和はその後ろで爆笑を続けていた。
「え……なんか、ごめんなさい」
キャスは殺気に気付いて誤った。
「……こんな平和がずっと続けばいいのに…」
羅衣は小声でそう呟く。
それから焼肉に誘われたメンバーは食えや飲めやの大騒ぎのヤプールに勝利した宴をするのだった。
それから早くも数ヶ月後が経ち、ヴィクロスは長期休暇の届を提出し、光の国に一時帰還した。
光の国に着いた直後、エースやあの4人の戦士には合わず、駆け足でとある場所へ向かう。
────ウルトラキーであった。
墓守のゴライアンに一つ二つ挨拶を交し、ウルトラキーの前にいる。
「……これが…ウルトラキー…教科書とかで見るより実物の方がなんとも神々しく…美しい。まさに絵にしたい…」
1人で独り言を呟くと、とあるウルトラ戦士と目が合う。記憶には無いはずが、何故か見覚えがあった。そしてそのウルトラ戦士もヴィクロスが腰に刺す刀を見て凝視していた。
『……その刀は』
ウルトラ戦士は口を開く。
「………貴方が…かつて、父上と…」
そしてウルトラ戦士はかつての相棒と瓜二つの存在に気づく。
『……あいつのセガレね。』
「やはり、貴方が…父上と…!」
ヴィクロスは嬉しそうに笑みを浮かべて両手を握る。
「ずっと貴方にお会いしたかったんです!父上とコンビを組んでウルトラ大戦争で一緒に戦っていたと…!」
『……あいつは、勇敢だったよ』
「そうでしたか…あの、名前を聞いてもよろしいでしょうか?僕はウルトラマンヴィクロス。この光の国で唯一のウルトラ剣士です」
『……ウルトラマンヘリオス。剣士には色々あれど、妖刀を差したウルトラマンなんか……あいつとお前以外、いないだろうな。』
「……そうですね。普通は自分の身体で闘うのがウルトラマンですからね。ヘリオスさんは……その……父上と一緒に戦って、どう思い…亡くなった時はどう思いました?」
ヴィクロスは苦笑を浮かべながらも話す。実父との話がどうしても気になるようだ。
『……アイツには、未来を託せると思った。それだけさ』
「……そうですか。でも…エース師匠から剣士の伝説を聞きました。そして、剣士の相棒だったウルトラ戦士はかつて…あのベリアルのように《力を求めた》…と」
『ははは、身の丈にも合わず妖刀を求めちまってよ……』
「それで…どうしたのですか?」
『……そんでもって、失敗した。命からがら来たところが丁度プラズマスパークタワーでな……過剰な力で死んだよ。……力ってのはこうなる』
深く息を呑む。言葉が出なかったからだ。どんな言葉をかけ、どんな気持ちなのかは問いかけるのが難しかったからだ。それでもなお、毒に身体全体を盛られて死ぬ寸前の時だった。闇の中で父親がヘリオスに伝言を頼まれたのだ。
「……あ、あの…信じてもらえるかはわからないのですが…父上から伝言が…『俺のせいで、すまない…だが、お前とは永遠の相棒だ』……と」
その言葉を最後に、ヴィクロスの背後に幻覚かもしれないが、かつての相棒…ヴィクロスの父親である
『……はっ、
「……パーマー?」
ヴィクロスは困惑しながら後ろを静かに振り返る。だが背後にはもう、誰もいなかった。
『パーマーってのはあいつの昔の名前さ。改名したんだろーよ、俺の死後にな』
ヴィクロスの瞳に映るヘリオスが不思議と嬉しそうに思えたのか、ヴィクロスは静かに笑みを浮かべて、愛用のスケッチブックにヘリオスのことを描き始めた。
そこには、
ヴィクロスは目の下に涙が溢れ始めたが、幸せそうな光景をスケッチブックに描き続けた。鉛筆の動かす音が周りに響く。
その音はヴィクロスとって…平和で、自分の好きな時間だった。
刃が、鞘の中で、静かに、虹色に光り輝いた。
ここまで最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回でヴィクロスは最終回です。ヴィクロスはこれからもあなた達の見えないところで活躍しています。ウルトラ族の中で唯一のウルトラ《剣士》として…
ウルトラウーマンラピスもよろしくお願いします。(※本当のメインはラピスです)