薄暗い場所に少女が立っている。白銀の鎧のようなものを身につけて。
「どうしてあなたがやらなくちゃいけないのよ。セレナ」
その少女、セレナに投げかけるように話すもう1人の少女。
「大丈夫だよ。マリア姉さんがいてくれる。みんなを守るためだもの」
マリアにそう伝えて奥へと進むセレナ。奥では怪物とも怪獣とも言えそうな生物が暴れていた。
《Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl》
歌と同時に辺りを暴風が包む。
「ネフィリムの暴走が止まったぞ」
俺の側にいる連中がそう言って叫んでいるのが目に入る。しかし、俺は壁や天井が崩れていくのが目に入り、飛び出していた。
「セレナ! マリア!」
2人がいる場所まで来た頃には、瓦礫で辺りを見渡すのも難しくなっていた。
「いた!」
ようやく2人を見つけたときだ。セレナの姿を見て俺は一瞬動きが止まる。目や口、耳からも血を流すその姿に。
「セレナー!!!」
マリアの叫び声で我に帰る。セレナに大きな瓦礫が落ちてきていた。
「マリア!」
俺は咄嗟にマリアを庇うように被い被さる。セレナが押し潰される音が聞こえた気がした。同時に俺の足を砕く音も。
「嫌ー!!!」
「またあの夢を見ていたの?」
目を覚ますと、自分の部屋でベッドで寝ていたらしい。
「うなされていたわよ」
そう言って俺の手を握りしめているのは、夢で見ていた少女。いや、もう少女というより立派な女性と成長したマリア。淡いピンクの髪を揺らしながらこちらを見つめている。
「すまない。もう大丈夫だ」
俺の言葉を聞いて手を離すマリア。
「しかし、毎度勝手に部屋に入ってくるのはやめてもらいたいな」
「鍵をかけない貴方が悪いんじゃない。それに通路まで聞こえるほどうなされていたらほっとけないわ」
俺の部屋に備えつけてある冷蔵庫から水のペットボトルを2本取り出すと、片方を俺に手渡しベッドに腰かけるマリア。
「あれからもう6年よ。セレナのことは貴方のせいじゃない。そんなに自分を責めないで」
マリアの言葉になんて返したらいいかわからない。あのとき、俺がマリアとセレナ、2人を救えたなら。そう思ってしまうのだ。
その時、部屋をノックする音が聞こえる。
「起きていましたね。マリア、やはりまたここに来ていたのですね」
入ってきたのは、この施設長のような存在。ナスターシャ教授だ。
「ちょうどいいでしょう。あなた方2人に新たな任務を与えます」