「私にこのオーディションを受けろと言うの?」
ナスターシャ教授が持ってきたのは、歌のオーディション。優勝すれば歌手デビュー出来るらしいが。
「ええ。マリアあなたには人気アーティストになってもらいます」
「どうしてそんなことしなくちゃいけないのよ?」
マリアの言うように、FISでの活動に必要とは思えない。
「我々にはスポンサーが必要です。それも大金を投資してくれるような」
「なるほど。それの近道としてマリアを利用するつもりか」
人気歌手が所属する組織。そこへ資金援助する者も現れるだろう。マリアが稼ぐ資金も換算されているのだろうが。
「そういうことです。そして月影、あなたにはマリアのマネージャーをお願いします。もちろんマリアの護衛も兼ねてです」
マリアをトップアーティストに。そしてその護衛を俺、月影
「理屈はわかった。マリアが納得するなら俺は問題ない」
「信がそう言うなら、私も受けるしかないじゃない。わかったわ、マム」
俺たちの返事を聞いて満足したのか、教授は立ち上がり部屋を後にしようとする。
「マリア、あまりこの部屋に出入りはよしなさい。あなた方の関係を疑う者も出ています。あなたはこの組織の顔だと言うことを忘れないように。そして月影、ドクターがあなたを呼んでいました」
そう告げるとそのまま部屋を後にした。
「私と信の関係ってなによ。昔から一緒にいる幼馴染のようなものじゃない」
「大人たちはそうは思わないってことさ。年頃の男と女だからな」
俺の言葉にも納得していないのか、ブツブツ文句を言うマリア。それでも俺がドクターに呼ばれているから、マリアは自分の部屋へと戻って行った。
ドクターウェル。それは俺の恩人でえる。セレナの事故のとき、俺は両手、両足を砕かれた。2度と使い物にならないほどに。それを奇跡的に治してくれたのがドクターだ。ドクターのおかげで俺はこうしてマリアの隣にいられる。ドクターには感謝しかない。
「ドクター。月影です」
ドクターの部屋を訪れるとすぐに迎え入れてもらえ、椅子に座らさせられる。
「待っていましたよ。実は君に頼みたい仕事がありましてね。彼、米国の貿易を担当する大臣なんですが、色々と規制が厳しくなりそうなんです。彼がこのまま大臣でいると僕の研究にも支障が出るんですよ。困りましたね」
「了解ドクター。コイツを排除すればいいのですね?」
そう言って俺はドクターから渡された写真を受け取る。ドクターの腕を持っても、俺の手足は完全に元通りとはいかなかった。そこで俺は人造人間として改造されたのだ。おかげで暗殺などは得意でこうして仕事を頼まれることも少なくない。