私と貴方のカデンツァ   作:秋月玲

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エピソード 3

オーディションを問題なく、通過したマリア。その後もすぐにヒットチャートに名を連ねるようにまでなっていて、その存在は無視出来ないほどになっていた。

 

 

「わかっていますね? マリアは今が大事な時期です。余計な問題を起こさぬようお願いしますよ?」

 

 

教授からの連絡を終えて、俺もその気持ちは一緒だった。マリアをトップアーティストにするためにも、ここで変な問題を起こすわけにはいかない。

 

 

「マリア、わかっていると思うが、ここからが勝負だ」

 

 

「もちろんよ」

 

 

収録のあった楽屋で、俺の言葉にそっけなく返すだけだが、その目には覚悟と闘志を感じ取れた。

 

 

「君がマリア・カデンツァヴナ・イヴだね?」

 

 

そんな俺たちにとって問題となる存在が現れる。大手レコード会社の重役らしいその人物は、マリアの全身を舐めるように見つめている。

 

 

「君が望むなら、うちの所属になれるように手配しよう。すぐにその名を全米に知らせることが出来ると思うが?」

 

 

マリアの肩に手を置きながら話すその姿に嫌悪感が凄まじい。

 

 

「君の働きによってはもっといい条件もつけよう」

 

 

「有難い話だけど、断るわ。私は自分の力で這い上がってみたいのよ」

 

 

肩に置かれた手を振り払い告げるマリア。断られると思っていなかったのか、重役の顔は真っ赤になり、怒っているのがわかる。

 

 

「失礼しました。しかし、マリア本人が望んでいないのでこの辺で」

 

 

マリアを引き連れ、すぐに部屋を後にする。

 

 

「教授、報告が」

 

 

マリアをホテルの部屋まで送り、すぐに報告する。大手レコード会社から万が一妨害などがあれば、こちらの目論見はダメになる可能性が高いからだ。今後の動きを相談するためにも。

 

 

「それはいけない話です。妨害ももちろん考えられる。なにより、マリアを愛人にでもしようとしたことがダメですね。処分しましょうか?」

 

 

教授ではなく、ドクターが報告を聞いてくれてよかったと感じる。

 

 

「了解です。ただちに」

 

 

マリアを守るのは俺の役目だ。

 

 

「ちょっと信、聞いたかしら? 昨日の彼、惨殺されたらしいわよ」

 

 

翌日、あの人物が死亡したニュースが朝から流れていた。マリアも目にしたのだろう。俺を見かけるとすぐにその話題を振ってきた。

 

 

「沢山人物から恨みを買っていたようだし、仕方ないことかもしれない」

 

 

実際、彼と一夜を共にしてデビューすらさせてもらえずにいる女性も多いようだ。他にも関係を強要され、断って仕事を回してもらえなくなり引退や移籍した者も多い。誰に殺されても文句は言えないだろう。

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