「貴方の要望通り、そちらに調と切歌を合流させます。万が一の時にはこの2人に対処させてください。しかし、あくまでも本来の目的は」
「ライブで高まるフォニックゲインを利用し、マリアにガングニールを呼び起こせること。わかっていますよ」
明日、行われるマリアの初となる単独ライブ。その最終打ち合わせとして、教授から連絡が入っている。
「それならよいのです。彼女にも頼みノイズが現れるように手配済みです。失敗は許されませんよ?」
フィーネとか言ったか。よくFISにも顔を出し、ドクターにシンフォギアの技術を提供したとも言われる人物。そんな彼女が持つ完全聖遺物『ソロモンの杖』でノイズを操り、会場に出現させるようだ。そう、初の単独ライブがノイズによって悲劇へとなれば、マリアへの同情も集まるだろうと計算されて。
「マリアがガングニールを纏えれば、他はどうなってもいいってことか。このことはマリアには言えないな」
教授との通話を終え、1人呟く。教授のやり方に反対するわけではないが、真実を知ればマリアは反対するだろうし、傷つくだろうと。
「あら? こんなところにいたのね。マムからはなんて?」
ライブ会場を視察していたマリアが、舞台裏へと戻り俺を見つけたからか話しかけてくる。
「月読と暁がこちらに合流するらしい。到着は明日だろうから迎えに行かなくてはな」
「調と切歌が? あの子たちになにをさせようって言うのよ?」
怒った顔で俺に詰め寄るマリア。
「ライブでは高いフォニックゲインが観測される。それに釣られてノイズが現れる現象は世界各地で報告されている。あの2人が来るのは万が一の場合を想定してだよ」
「そう。そんなことにならなければいいのだけど」
マリアにはなにも伝えていない。ライブのことだけを考えてもらいたいから。
「それに、マリアの初単独ライブなんだ。あの2人にも近くで聞かせてやりたいからな」
「信があの2人を呼んだの?」
マリアの頭に手を置いて、そうだと肯定する。
「あの2人には特等席を用意してもらっている」
「そう。それならいつも以上に頑張らないといけないわね。あの2人に無様な姿なんて見せられないもの」
さっきまでと変わって笑顔になるマリア。そうこれでいい。汚れ仕事は俺が全て引き受けよう。この笑顔を汚させないためにも。俺はどれだけ汚れても構わないから。
例えそれで隣に立たなくなってしまったとしても。マリアがこれからも笑顔でいられるなら。