銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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お久しぶりです、お待たせしました。
エピソード6、「連合の逆襲」を開始いたします。
全20話+幕間1話(R18)、お楽しみいただければ幸いです。


EPISODE Ⅵ 連合の逆襲
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 それがどこかはわからない。周りの景色がまったくないのだ。……それか、もしくは見えていないのか。

 

 ともかく、見える、という言葉通りに認識できるものは彼女だけだった。

 闇のようなその場にあって、彼女の金髪はよく映えた。

 

 にんまりと笑う顔。瞳孔の開いた金色の瞳。三日月のように釣り上がった口。その口元から覗く鋭い歯。

 見慣れた彼女の顔。私が愛する人。トガ・ヒミコ。

 

 だがヒミコは、少し不安そうに周囲を見回している。私のことが見えていないのだろうか。

 私は彼女に向けて手を伸ばすが、まったく届かない。呼びかけるも、これすら届いていないのか反応は返ってこない。

 

 ならば近寄るまでだと駆け出すが、一向に彼我の距離は縮まらない。それどころか、彼女の身体が遠ざかっていく。

 

 気ばかりが焦る。どうなっているんだ。

 そうこうしているうちに、霧が立ち込め始めた。それが彼女の姿を隠していく。

 

 待て。待ってくれ。どこに行くんだ!

 

 全身にさらに力を込めて、霧の中へ飛び込む。視界を占拠するそれをただひたすらにかき分けて、前へ進む。

 その必死の努力が実を結んだのか。やがて霧の向こうに人影が見えた。彼女の気配がする。声が聞こえる。

 

 少し方向を変え、そちらへまっすぐ進む。

 そうしてやっと、彼女の姿が見えてきた。

 

 だがしかし、である。

 私は彼女の姿に、違和感を覚えた。

 

 何が違う? 何にそう感じた?

 

 強烈な違和だ。しかしその原因がわからない。不自然なまでに謎で満ちていて。

 彼女が笑っている。いつものように。

 

 かわいい。私の好きな顔。私が愛する人の顔。

 しかし、その顔自体に何か違和感が。

 

 ……ああ。

 

 そうだ、髪型。髪型が違う。

 いつもの、私と揃えた髪型ではなく。団子状に結った塊が二つ。それが違うのだ。いつの間に髪型を変えたのだろうか?

 

 だが、それだけではないような――。

 

 疑問を抱く私をよそに、彼女の顔にべたりと赤黒いものがかかる。音が感じられないことがいかにも不自然なほどの、大量の何かが、飛沫のように彼女に降り注いだ。

 その赤黒い闇が。どろりと溶けて、彼女を覆う。さながら繭のように、彼女の全身を覆い隠そうとする。

 

 その手には、鈍く光るナイフ。ライトセーバーではない。

 

 なぜ?

 

 彼女が笑う。どこか壊れた顔。

 

 違う。それは、その顔は、同じ……同じだけれど、でもそれは。

 

 ――そのとき、ふと気づく。

 

 彼女が手にしているナイフ。その刀身が、赤黒く汚れていて。

 

 ナイフに、赤。その組み合わせで想起できるものなど、一つしかない。

 

 であれば彼女に降り注いだものも、恐らくはそれで。

 

 違う。

 

 彼女は彼女だが、彼女ではない。私が愛する彼女ではない。

 同じだけれど、違う。これは、あるいはなるかもしれなかった彼女の姿なのでは。

 

 そう思ったとき。

 

 彼女の肩に、男の手が置かれた。馴れ馴れしい。

 

 誰だ。私ではない。私の前世でもない。前世の私はもっと筋肉がついていた。

 誰だ? お前は。

 

「ハハ」

 

 ぬるりと。

 

 彼女の身体を覆う闇が、形を変えた。半ばだけ変じたそれは、彼女の肩に置かれた手に繋がっていて。

 

「未来なんか要らないんだ」

 

 現れた男の顔には、大きな手が充てがわれていた。

 

***

 

「……ッ!!」

 

 目が覚めた。勢いよく身体が起き上がる。身体にかかっていた、夏用の薄い掛け布団がずれ落ちた。

 

「…………」

 

 息が上がっている。そんな己の呼吸音に、ああ、夢だったかと認識させられる。

 

 夢?

 ああ……そうだ、夢だ。間違いなく。

 

 しかし、これは。今見たこれは、

 

「……フォース、ヴィジョン……?」

 

 久しぶりに見た。最後に見たのは何年前だったか。USJ事件のときですら見なかったのに、なぜ今になって。

 

 しかしいずれにせよ、フォースが何かを私に伝えようとしているようだ。恐らくはよろしくないことが起こる、ということを。

 具体的なことはわからない。だが、確かに何かを伝えようとしている。

 

 しかしそれが何かを考えるよりも先に、私は傍らに顔を向ける。

 こちらを向いて、横になっているヒミコがいた。すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

 

 ほっとする。

 ここに、私の隣に、彼女がいる。今はそれで、それだけで。

 

 ぱたり、と背中からベッドに倒れ込む。暗い室内で、デジタル式の時計の表示がぼんやりと明るい。どうも中途半端な時間に目が覚めてしまったようだ。が、寝なおすには少々時間が足りない。

 

 だが何はともあれ。

 

 私はヒミコに向き合う形で体勢を変え、そのまま正面から抱きついた。

 夏特有の薄い寝巻き越しに、彼女の豊かな胸元が私の薄い身体にふわりと密着する。

 

 彼女の匂いが鼻をくすぐる。それを確かめるように、私は顔を、彼女の身体にこすりつけた。

 彼女の鼓動が聞こえる。緩やかな、規則的な音が私の耳朶を打つ。

 

「……ヒミコ……」

 

 彼女の名前を口にする。それだけで、落ち着くような気がした。満たされる気がした。

 

 そうして落ち着いた頭で、考える。

 あれはきっと、あり得ただろうヒミコの姿だ。私に出会うことがなかった彼女。ヴィランとなった彼女。

 

 今になってその姿を見た。そこに一体、どのような意味があるというのだろうか。

 

 何せ、もう今のヒミコがヴィランになることはないはずなのだ。どれほどのことがあろうとも、そこに疑う余地はない。

 

 ……いやまあ、卑劣な手段によって私を害された場合はその限りではないだろうが。逆に言えば、それ以外に可能性はないと思うのだ。

 

 そんな姿を、なぜ今になって?

 

 ヒントは……最初はあくまで私の知るヒミコだったというところか。一度彼女が離れ、見えなくなり、次に見えたときに姿が変わっていた。

 ということは……この先彼女が私から離れるということだろうか。そしてそこからヴィランに堕ちてしまうという暗示だろうか。

 彼女の傍らにシガラキ・トムラが現れたことを考えると、ヴィラン連合が関わってくることは間違いないように思うが……。

 

 あるいは、フォースのバランスが乱れるという兆しであろうか。それにしては、随分と特定の個人を明示してきていた。

 

 ……ダメだ、わからない。暗黒面の帳が未来を覆い隠している……というのとは少し、違う気がする。前世、ナブー問題に端を発する一連のシスの陰謀のときに感じていた「先の見えなさ」とは違うように思うのだ。

 

「……考えてもどうしようもない、か」

 

 未来のことは、わからないことが本来のあり方なのだ。少しばかり見えたヴィジョンに、あれやこれやと悩んでいても仕方があるまい。

 

 アナキンも言っていた。物事とは起こるべくして起こるものだと。

 だが、運命には逆らえないものではないとも言っていた。それに抗う勇気が作るものなのだと。

 

 ならば、私はそれにならおう。勇気をもって、前へ進もう。

 

 大丈夫。もしもヒミコに、恐ろしい何かが襲い掛かるのだとしても。もしもヒミコが、涙を流すようなことになろうとも。

 必ず私が何とかしてみせる。彼女を救けてみせる。

 

 あの日、私は彼女に言った。私の隣にいるといい、と。

 それはもちろん、彼女が完全な暗黒面に堕ちてしまうことを防ぐためだった。彼女が道に迷ったとき、私が少し先を歩いて導いてあげられるように。

 

 だが今となっては、別の意味も持つようになった。

 

 つまり、私は何があっても、彼女の隣にいるのだと。ずっと一緒にいるのだと、一人にはさせないと、そういう決意だ。

 

 それに、私は信じている。ヒミコが今さらヴィランへ身をやつすなど、あり得ないと。

 

 だから。

 だから、大丈夫だ。

 

 ヒミコ。

 

 私が、必ず君を守ってみせる。みせるとも――。

 

***

 

「雄英は一学期を終え、夏休みだ。だが、ヒーローを目指す諸君らに安息の日々は訪れない。この林間合宿で更なる高みへ――プルスウルトラを目指してもらう」

『はい!』

 

 マスター・イレイザーヘッドの極めて短い演説に、クラスメイトたちが声を揃えて応じる。

 

 そう、今日から我々雄英高校ヒーロー科一同は、林間合宿に入る。

 ただの物見遊山ではない。一週間という短い期間の中で、集中的に鍛える……のだと聞いている。具体的にどういうことをするかはわからないが、ともかくそういうわけだ。

 

 しかし、それだけでないことも事実。木椰区の事件の影響で撤回された当初の予定では、肝試しなど遊びの時間も含んだ日程になっていた。新しい予定でも、まったくないというわけではないだろう。

 

 そういうわけだからか、一部のメンバーはすっかりはしゃいでいる。具体的にはアシドとカミナリ。ああしてみると、彼らはまだまだ少年少女だなぁと思う。

 元気だなぁ。私は今朝方のヴィジョンのせいで少々寝不足だよ。

 

 ……ただ、二人に挟まれる形で、同じくはしゃいでいるように見えるウララカは内実が異なるのだろうな。

 

 あれはいつもの調子、いつもの距離感でミドリヤに話しかけたところ、女性への免疫が少ないミドリヤのリアクションを見て色々と意識してしまったからだろう。それをごまかすために道化を演じているのだ。顔が赤いのは気温にやられたわけではなく、そういうわけだ。

 

「……早く認めちゃえばいいのにー。私、お茶子ちゃんなら出久くんとお似合いだと思うけどなぁ」

「言ってやるな。私だって君とのことを受け入れるまで、かなり時間がかかったんだぞ。人間そういうものだろう」

 

 あくびを噛み殺しながら、ヒミコに言う。

 

 彼女の言い分にはおおむね賛成なのだが、どんなことにもその人なりの歩みというものがあるだろう。誰もがヒミコのように、自分の心に素直なわけではない。

 

 そのヒミコにしたって、恋愛ではない方面ではたまに臆病になるときがある。己の性癖がクラスメイトに受け入れられるだろうかと、いまだに前に踏み出せずにいる。

 方向性は違えど、感覚としてはそれと同じことだろうよ。人間の心は複雑怪奇で、私にはわからないことだらけだが、考察する材料があれば今の私にはそれなりに思い至れるのだ。

 

「……うー、それについてはなんにも言えないですけど……。でもでも、こっちの話するなら……コトちゃん、私のこと意識するまでは長かったけど、してからはわりと早かったよーな……」

「それは言ってくれるな……」

 

 が、思わぬ反撃に、反射的に顔を覆ってしまう私であった。今回は痛み分けということにしておこうじゃないか、うん。

 

 ……そんな私を見て、アナキンが鼻で笑っている気配がするな。どうやら元シスの暗黒卿は、ジェダイが人の心を語ることがおかしいらしい。

 

 と、そんなことをしている間に出発の時間である。駐車場にはバスが二台。つまり、A組B組がそれぞれのバスに乗り込むわけだな。同じ学校の同じヒーロー科なので、当たり前だが。

 

 しかしそのB組生徒の背中を見やりながら、彼らとの交流はほとんどないなぁとなんとなく思う私である。

 

 そして、モノマがやたらとこちらを意識していることは体育祭のときから察していたが、今回も彼は我々に並々ならぬ意識を向けているようだ。

 まあ、期末で赤点がなかったA組に対して、B組は当のモノマがその赤点らしいので、今は大人しいが。これでA組にも赤点がいたら、嬉々として絡んできたのだろうなぁ。きっと、それはそれは楽しそうに突っかかってきたのだろう。

 それを回避できただけでも、期末試験対策に協力したかいはあったかもしれない。私は気にしないが、クラスの面々は気にするものもいるだろうし。

 

 ただ私としては、せっかく学生を楽しもうと決めたのだ。他のクラスとも何かしら交流を持ちたいなと思うのだが……そもそも自由に使える時間が少ないからなぁ、ヒーロー科。

 

 合宿中はどうだろう。何かしら会話をする機会があるだろうか?

 そんなことを考えながら乗り込んだ、バスの車内。先の予定を話そうとするイレイザーヘッドをよそに、車内は大層賑わしい。

 

 みなよほど楽しみだったのだろうが……イレイザーヘッドの話は聞いておいたほうがいいと思うぞ。珍しく彼がちゃんと予定を話そうとしたのだから、特にだ。

 まあ、フォースで色々と見えてしまう私とヒミコは備えさせてもらうがね。

 

 とりあえず、ことが起こるのは一時間後だ。そこから訓練が始まる。

 ならばと、私はヒミコに身体を預けて眠ることにした。先にも述べたが、少々寝不足なのだ。

 普段なら短時間の睡眠でも十分になるよう、“個性”を使ってから寝るのだが……このあとには訓練が控えている。下手に消耗はしないほうがいいだろう。

 

 なので、自然に身を任せる。

 

 と。

 

 目を閉じて、身体を預けた私の手が何かに暖かく包まれた。ヒミコの手だ。応じる形で、私はその手を握り返す。

 

 そのおかげだろうか。眠りはすぐにやってきた。

 

 おやすみなさい。

 




今回のサブタイは、フォース的にも主観的にも自分が生まれた意味をよくわかっていなかった理波が、こう言い切るまで来たのだという意味を込めてのものです。
ボクの中で理波のテーマソングはこの曲なのです。なので、ずっとどこかで使いたいと思っていたんですよね。

なので、本文にも歌詞のアレンジが入っています。
まったく同じ文を使っているわけではないのですが、念のため楽曲コード載せておきますね。
名曲ですし、アニメも名作です。



ちなみに作者はこのアニメでショタ沼に叩き落されました。
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