銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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4.強化合宿二日目 上

「おはよう諸君。本日から本格的に強化合宿を始める」

 

 翌朝。日が出て間もない朝五時半ごろ、我々は宿(今さらだが、マタタビ荘という看板が立っていた)から少し離れた開けた場所に集合した。

 ほとんどの生徒がまだ眠そうに、しかし二人だけコスチュームをまとっている私とバクゴーを不審そうにちらちらと見ている中、イレイザーヘッドが口を開く。

 

「今合宿の目的は、全員の強化およびそれによる『仮免』の取得……つまり、具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように」

 

 ……仮免の取得だと? 雄英のカリキュラムでは、あれの取得時期は二年生の前期からだったはずだが。

 それをこのタイミング……なるほど、我々ヒーロー候補生に対して、自衛手段を確保させるためか。ヴィラン連合を中心とした犯罪者の活性化は、それだけ深刻に見られているのだな。

 

 ただ、本来よりも半年以上も早い取得となるわけだから、これは相当厳しいことをさせられそうだな。私はともかく、他のみなは大丈夫だろうか?

 

「というわけで……」

 

 と、私が考えている中で、イレイザーヘッドは懐からボールを取り出しながら目を私……を通り越し、バクゴー……も通り越して、アオヤマに向けた。

 

 うむ、賢明な判断だと思う。イレイザーヘッドが考えているデモンストレーションに、私とバクゴーは向かない。

 

「……青山、こいつを投げてみろ」

「体力テストのときのやつ?」

「そうだ。前回の……入学直後の記録は、107.5メートル。どんだけ伸びてるかな」

 

 イレイザーヘッドの言葉に、アオヤマは軽く頷いた。それからさらりと前髪をかきあげながらも優雅な、しかしどこかオーバーな所作で、何もない山のほうへ向き直る。

 

「おお! 成長具合か!」

「この三か月色々濃かったからな! 倍になってても驚かねぇぜ! やったれ青山!」

「もちろん、任せてよ☆」

 

 彼の背中に、アシドとセロが声を飛ばす。

 

 これにわざわざ顔を向けて応じる辺り、アオヤマはこういうときでもマイペースだ。

 だが、すぐに真剣な顔になる辺り、やはり彼もヒーロー科である。もちろん、手を抜くなどあろうはずもない。

 

 彼は少し上半身を逸らして身体を固定すると、へその辺り……彼の“個性”によってレーザーが放出される位置にボールを置いた。

 

「フゥー……Bon(さあ),On y va(行くよ)☆」

 

 直後である。得意げに吼えた彼の“個性”が発動され、光によって押し出されたボールが勢いよく空へと吹き飛んでいく。

 

 ずっとそうしていられたら、どこまでも飛んでいくのだろうが……しかし、彼の“個性”には反動があり、使いすぎると腹を下す。

 そのため一秒程度で照射は終わり、それに伴ってボールは一定の高さを頂点に落下を開始した。

 

 やがて森の中へボールは消えたが……すぐにイレイザーヘッドの手元から電子音が鳴る。あれでも問題なく計測できているようだ。

 

 イレイザーヘッドが、端末をこちらに見えるように掲げる。

 

「119.2メートル」

「!? オー……ララ……!?」

「あ、あれ……?」

「思ったより……」

 

 この結果に、周囲が騒めく。ほぼ全員、思っていたよりも低いと驚いている。

 アオヤマ自身もこの結果には満足していないようで、渋い顔をしつつ首を傾げていた。

 

 この様子に、イレイザーヘッドはどこか満足げに、しかし皮肉気に笑う。

 

「約三か月間、様々な経験を経て確かに君らは成長している。だが、それはあくまでも精神面や技術面……あとは多少の体力的な成長がメインで、“個性”()()()()は今見た通りでそこまで成長していない。だから――今日から君らの“個性”を伸ばす。死ぬほどキツイが……くれぐれも死なないように」

 

 そうして指を立てつつ、凄みのある笑みに表情を変えたイレイザーヘッドに、周囲からごくりと唾をのむ音が聞こえた気がした。

 

「……ただし爆豪、お前は入学直後と比較して明確に“個性”が伸びていると、体育祭と期末試験で確認できている。増栄の“個性”も、既に十分な水準にある。この二人は別個に一歩先のメニューを行う」

 

 最後にそう締めくくり、イレイザーヘッドは訓練の開始を宣言したのであった。

 

***

 

 別メニューと言われた私とバクゴーは、イレイザーヘッドとピクシーボブに連れられてマタタビ荘から離れた森の中へ踏み込んだ。

 ただ、森とは言っても奥まったところには入っていない。整備された範囲であり、辿り着いたところも開けた広場状になっていた。

 

「さて、お前らのメニューだが……お前らにはこれから、必殺技を最低一つ……可能なら二つ、編み出してもらう」

「必殺技ァ?」

 

 バクゴーのおうむ返しな問いに、イレイザーヘッドが頷く。

 

「必殺技……つまりは、自分の中にある型の到達点の一つ。これさえ使えれば、戦況を動かせるという確信を預けられる技。それが必殺技だ。つまり、別に必ずしも殺す必要はないが……まあ、慣例的にそう呼んでる」

 

 途中、必ずしも殺す必要はない、のところを強調しつつバクゴーを見据えるイレイザーヘッド。

 

 バクゴーは舌打ちをしているが、こればかりは日頃の行いだろう。

 

「今回他の連中がやってる“個性”伸ばし訓練は、この必殺技を編み出すためのものだ。だが、お前らは既にその域を超えている。他と同じことをさせるのは合理的じゃない」

 

 だが、褒め言葉にも聞こえるこの言葉に、バクゴーは自信満々に笑ってみせた。

 

 まあ、すぐに私の存在を思い返してにらんできたのだが。彼は本当、こういうところで表情豊かだ。

 

「っつーことで、必殺技を編み出してもらうわけだが……お前ら、既にいくつか必殺技は持ってるな?」

 

 と、この問いに私たちは同時に頷く。

 

 以前にも述べた通り、私は必殺技の字義が気に食わないのでそのような表現はしたくないのだが。

 それはそれとして、イレイザーヘッドが言う必殺技の定義に当てはまる技は、いくつか持っている。

 

「それらは今回カウントしない。既存の技に加えて一つ、もしくは二つ作ってもらう。ただ、既存の必殺技をより効果的なものに昇華するならこれに含めてもいい。以上が今回の合宿でのお前らのメニューだ。ものによってはコスチュームとの併用が前提になるものもあるだろうから、お前らだけはコスチュームを用意させたわけだな」

 

 イレイザーヘッドがこれを手渡してきたのは、昨夜のことであった。このためにわざわざ学校から持ち込んでいたらしい。

 他の面々が体操服でことに当たっていることを考えると、優遇されているようにも思えるが……理由はイレイザーヘッドが言った通りだ。これは確かに一歩先に踏み込んだ訓練だな。

 

「開発する、あるいはした技によっては、コスチュームの改良も視野に入れる必要が出てくるだろう。だがここにはパワーローダーが来ていないから、その点についてはすまんが対応できん。筆記具を渡しておくから、そういうのが出てきたらなんでもいい。思うところをまとめておけ。提出してもらう。夜のうちにブラドと共に精査して、パワーローダーに送っておく」

「……ッス」

「了解しました」

「それと、増栄はサポートアイテムに関する資格を取りたいと言っていたな。そのときパワーローダーにお前を紹介する予定になっている。コスチュームへの改良点がゼロであってもどのみち定時報告はあるから、九時前に事務室まで来ること」

「重ねて了解しました」

 

 このやり取りに、バクゴーが「マジかこいつ」と言いたげな顔を向けてきた。さすがの彼も、これについては心底驚いたらしい。

 まあ、彼の心境をわからないとは言うまい。言ってみれば、私がやろうとしていることはヒーロー科とサポート科の完全な二足の草鞋だ。いかに優秀なバクゴーであっても、ほぼ不可能だろう。

 

 だがこれについては、私にジェダイという前世があって、その記憶、知識を完全に受け継いでいるからできることだ。私の過去の努力があるからこそと言えるが、そもそも前世の記憶などというものは通常あり得ない。

 つまりこれは極めてイレギュラーなことであり、通常はあり得ない。バクゴーは気にしなくていいし、するべきでもない。

 

 それでも気にするのがバクゴーという人間なのだろうがな。この茨の道も、よくよく考えれば我が父上という前例があることだし。

 ……うん? それを考えると父上、本当に人生一度目なのだろうか?

 

 いやまあそれはともかく。

 

 さすがにサポート科を兼ねることは、バクゴーにとってさほど重要なことではないのだろう。悔しそうな気配はしているが、さりとて体育祭や期末試験のときのようなギラついた対抗心はなかった。

 対抗心自体は存在するから、やはり彼はブレない男だなぁとも思うがね。

 

「話を戻すぞ。そういうわけで訓練だが……頭で考えたところで試す相手がいなけりゃ意味はない。っつーことで、組手相手としてこんなものを用意した」

 

 パチリとイレイザーヘッドが指を鳴らす。

 

 と、それに応じる形で。木々の陰から人型の物体が姿を現した。

 

「へぇ……いいじゃねぇか……」

 

 それは、ドロイドだった。雄英の各所で用いられているロボットではない。父上が発明したことになっているものであり、世界規模の特許があり、各国の工場でライセンス生産されている、正真正銘のドロイドだ。

 

 だが特別見覚えがあるな。確か体育祭の前に、「こんな注文が来ているが対応できないから専用の設計とAIを作って欲しい」という話が、ドロイドのライセンス開発をしている企業の一つから来ていた。そのときに用意したものの一つではないだろうか。

 注文仕様書を見てもかなりの金額を積んで様々なオプションをつけたワンオフ品だなと思っていたが、なるほど。さすが雄英、と言ったところか。

 

「初メマシテ、生徒諸君。私ハ(ビー)8T(エイトティー)、様々ナ状況ニ応ジタ対戦相手役トシテ、コノタビ雄英ニ赴任シタノデアル。以後ヨロシク、デアル」

 

 バトルドロイド8型、タイプティーチング。つまり高度な戦闘技術と、それを教導する技術を併せ持つ機体として設計されたものである。装甲もかなり分厚くしてある。具体的には、バクゴーが爆破しても全力でなければ余裕をもって耐えられる……はずなくらいには強力である。

 

「こいつを相手に、交代で技を試すこと。それと場だが……」

「私が用意するよー!」

 

 イレイザーヘッドの目配せを受けて、今度は今まで黙っていたピクシーボブがしゃがんで地面に両手を置く。

 

 するとそこを起点に土が盛り上がり、フィールドが複数の小山が連なる起伏ある空間へと変化していった。土を操る“個性”……シンプルだが強力そうだな。

 

「っつーことだ。……ただ、俺もピクシーボブもお前らだけに構ってはいられない。定期的に様子を見には来るが、いないときはくれぐれも注意すること」

 

 この言葉に、私は手を挙げた。イレイザーヘッドの視線がこちらに向く。

 

「なんだ?」

()()相手でなければ効果を発揮しないものは、どうすればいいでしょうか?」

「……許可なく試すな。絶対にだ。いいな」

「わかりました」

「他に質問は? ……よし、では取りかかれ。俺たちは他の連中に指示を出してくる」

 

 ということで、イレイザーヘッドたちは開始を宣言すると同時に、この場から離れていった。

 ピクシーボブは「火の取り扱いには特に注意ね!」と言いながらである。

 

 遠ざかる彼らの背中を見送って、8Tに目を向ける。彼は「イツデモドーゾ、デアル」と言いながら、シャドーボクシングをして見せた。

 

 ふむ。新しい技、か。それについては、できることの多い“個性”を持つ身の上だ。わりと日常的に考えている。

 発想次第でいかようにもなる上に、フォースがそれを助けてくれるのだ。大体のものが形になるので、考える甲斐はある。なので、案だけならいくつもあるのだ。

 

 ひとまず、最近考えていたものはイレイザーヘッドに不在時の禁止を言い渡された。今は他のものを……その下地となるものを試すとしよう。

 

 バクゴーのほうは……私の手助けはいらんとばかりに、早くも何やら試すように手元を爆破させながら8Tに向かっていった。まあ、まずは8Tと戦ってみたいという欲求が勝ったようだが。

 

 何はともあれ、私も私のことに専念するとしよう。

 具体的には、今まであまりやらないでいた、()()()()()()()を試すことにする。

 




出番はもうないと思われた男、青山優雅。
書き始めた当初は想定していなかった出番が回ってくる。
いや原作通りのパフォーマンスを爆豪にやらせると、軽率にキロ超えかねない実力が既についちゃってるからなんですが。
理波の場合は、個性だけでなくフォースも伸びているので、個性テストの時点から個性そのものがどれくらい伸びたのかを判断しかねるからですね。
あ、青山のボール投げの記録はねつ造です。正確な数値がわかる方がいたら、教えてくださると幸い。

ちなみに、割烹にも書いたのですが、明日ワクチン接種受けてきます。
一回目なんで副反応はそこまでひどくないと思いますが、もし更新が途絶えたら副反応で倒れてるんだなと思っていただければ。
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