銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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7.強化合宿三日目

 合宿三日目。

 ……と、言ってもやることは昨日と変わらない。私とバクゴーは技の開発に、他のメンバーは”個性”伸ばし訓練である。

 

 バクゴーは昨日のうちに何かつかんだのか、それとも単に戦いたいのか。ともあれ彼は激しくB-8Tとやり合っていた。

 

 対して私は、食事をしながらマイナス増幅の練習である。まあ、ありていに言ってしまうと“個性”伸ばし訓練であり、やっていること自体はヤオヨロズと同じなのだが。

 しかし私も同じことを延々と繰り返していると多少集中が落ちてくるので、たまにB-8Tと身体を動かす。自分で設計したドロイドに言うのもなんだが、実にいい相手だ。

 

 そうしていれば、わずかにだが昨日より効果が増しているように感じられる。

 昨日は残り食料の都合でやらなかったが、今日は一度マイナス増幅に関する能力を増幅した上で試してみたところ、わずかとはいえはっきりとした成果が得られた。訓練のやり方や方向性は間違っていないということだろう。あとは反復あるのみである。

 

 ……とまあ、そういうわけなので劇的な変化は特になく。それは私以外のほとんどもそうで、あっという間に夕方となった。

 本日の夕食の主菜は肉じゃがである。何やら昨夜、男子たちが使う肉を牛か豚かで決めるべくA組B組対抗戦をしていたようだが、私としてはどちらでも構わない。どちらも美味だからな。

 

 なお、私は調理班から戦力外通告を受けたので、火起こしのほうへ移った。サバイバル経験や知識は一応持っているので、こちらならまだ多少動ける。

 

「オールマイトに何か用でもあったのか?」

 

 そんな中。同じく火起こしを担当していたミドリヤに、トドロキが声をかけてきた。

 

 どういうことかと思って私もミドリヤに目を向けてみれば、多くの人間が一度はヒーローに憧れる今の世にあって、なぜコータがあそこまで頑なにヒーローを忌避しているのかを考えていたらしい。

 聞けば昨夜、食卓で姿を見かけなかったことから食事を持って彼を探したのだという。そこで出会い頭のとき同様、かなり激しく拒絶されたとのこと。

 

 これになるほどと頷くトドロキと私である。

 

「僕の周りは昔から、ヒーローになりたいって人ばっかりだったからどうしてもわからなくて……。でも、うまく言えないけど、なんだか洸汰くん、無理してるようにも見えて……」

「……子供にも、事情ってもんがあるんだろ。たぶんデリケートな話だろうし、あんまズケズケと首突っ込むのもアレだぞ」

「同感だ。……私は初日、彼の事情が見えてしまったが……かなりセンシティブだ。下手にその件を口にするのはやめたほうがいいだろう」

 

 そう、非常にセンシティブな事情だ。

 二年前、三歳のときにヒーローの両親をヴィランに殺されている、など。下手に触れるべきではない。

 

 かつてのジェダイなら、そんなことはお構いなしに踏み込むだろう。責務を全うして殉職した両親を褒めたたえ、それを見習うように言うのだろうな。これもまた試練であると。本当に、良かれと思って。

 

 だが、それは当時わずか三歳だった子供には理解しがたい話であろう。五歳の今も変わらないだろう。

 両親が死んだことを褒め、その死を嘆くなと言われ、あまつさえお前も死んだ両親のようになれと言われるようでは、反発の一つや二つするものだ。

 

 ……と、思う。その辺りの心理を、私はすべて理解できているわけではない。

 だが、ジェダイが一般人から「ジェダイは人の心がわからない」と揶揄されることがあったことは知っているのだ。

 だからこそ、今回のような状況ではジェダイの発想でものを言わないほうがいいだろう、と今の私は考えている。

 

 思えば、アナキンのパダワンだったアソーカ・タノ冤罪事件も、この点を考慮できていればもう少し穏当な結果になっていたはずだ。

 当時珍しく任務でコルサントを離れていた私があの場にいればあるいは、と思うのは思い上がりというものだろう。私がいてもいなくても、結果は変わらなかったと思う。

 だからこそ、人間心理への理解の欠如は、ジェダイが明確に反省しなければならない点だ。新しくこの星にジェダイを興すに当たっては、特に気をつけなければならないだろう。

 

「……見えちゃうんだ……」

「お前、マジでなんでもありだよな」

「私も見たくて見ているわけではないぞ。もちろん見ようと思って見ることもあるが、普段は不可抗力のほうが多い。強い感情に根差していると、見えやすくて困るんだよ。特にそれが深い怒りや憎しみの類だと、中てられるからなおさらな」

「それは……ちょっと難儀だね……」

「確かに。便利なのも善し悪しだな」

 

 “個性”のみならずフォースの力も伸ばしているから、前世と比べると私は格段にフォースに敏感になっているように思う。そのせいもあるだろう。

 

 アナキンも、なまじ見えてしまうからこそ道を踏み外したのかもしれないと言っていた。フォースは強ければ強いほどいい、というわけではないのだ。

 つくづく、父上の宗教が言う「何事もほどほどが一番(意訳)」という教えは真理だなと思う。

 

 最近は、これ以上ミディ=クロリアンの量は増やさないほうがいいだろうと思っている。場合によっては、少しマイナス増幅をかけて減らすことも考慮しておいたほうがいいかもしれない。

 

***

 

 とまあそんなこともあったが。

 

 食事が終わり、片付けも終われば本日はレクリエーションが待っている。

 今回はA組B組対抗の肝試し。つまり、脅かし合いである。

 

 クラスメイトと二人一組を作り、森の中に定められたルートに沿って進む。この道の中間地点に名前を書いた札があり、それを持って戻ってくるという流れだ。

 

 チームは三分おきに出発。ルートを順当に歩けば、およそ十五分で戻ってくる計算らしい。

 この間に、別クラスの生徒たちが“個性”を用いた様々なやり方で脅かしてくる。ただし、直に接触することは禁止。そういう趣旨である。

 

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」

 

 プッシーキャッツの面々が、ルール説明をそう締めくくった。ジローがこれに対して心底嫌そうにしていたのが印象的であった。

 

 まあ失禁はともかく、つまりいかに相手を驚かせるかであるのだが……イイダが言う通り、これは“個性”の使い方の幅を広げるため、思考力を養う訓練でもあるのだろう。考えたものである。

 

 ただB組には申し訳ないのだが、この肝試しはほとんど勝負にならない。

 

 なぜならフォースユーザー……私とヒミコは、周囲の感情の変化や害意に対して極めて敏感であり、驚かせるという明確な害意を持って行われる肝試しでは、相手の意図がほぼすべて読めてしまうのである。以前ヒミコとデートで遊園地に行ったとき、お化け屋敷で大層興ざめしたが……あれと同じ状況になるわけだ。

 つまり、B組はどうあがいても二人分は絶対に驚かせることができないのである。単純にやり方が悪くて非フォースユーザーの面々すら驚かせられない可能性もあると考えれば、勝負として成立するかどうか非常に怪しいと言わざるを得ない。

 

 なので、私とヒミコは凪いだ心境で組み合わせ決めのくじ引きを眺めていた。まあヒミコはアシドやハガクレと言った賑やかな面々に乗せられる形で、どうにかこうにか元気を出していたが。

 

 で。

 

 その組み合わせだが、私はトドロキと共に九番手ということになった。どうせならヒミコと一緒がよかったが、抽選だからな。もちろん、操作などするはずもない。

 

 ちなみにヒミコはミネタと共に二番手になっていた。

 そしてそのミネタは、「頼む増栄変わってくれ、オイラ百合の間に挟まる男にはなりたくねぇんだ! お前らも一緒のほうがいいだろ!?」とブッダの入滅を受け入れられない弟子のような悲壮な顔で五体投地しながら拝み倒し、私を心底困らせてくれた。毎度ながらよくわからない男だ。

 

 これにはクラスの全員……のみならず、ここに居合わせていた教師陣やプッシーキャッツも引いていた。

 

「……相手がいいって言うならメンバーの交換も認めるけど、どうするにゃん?」

 

 ラグドールの問いに、私は苦笑しながら首を横に振った。

 

「抽選の結果に文句は言いませんよ」

「増栄ェェ!?」

「君は……ヒミコの何が不満なんだ?」

 

 返答次第では私も怒るぞ。

 

「アッハイ……すいませんッした……」

「私もだいじょぶですよぉ。峰田くん、一緒にいても害ないですし」

 

 一方、ヒミコの意見はこれである。この言葉に、全員が一斉に首を傾げたのは言うまでもないだろう。

 彼女はどうも、ミネタの意図がよくわかるらしいのだが……なんというか、なんだかその意図はわかってはいけないような気がしてならない。

 

「一緒にがんばろうねぇ、峰田くぅん……」

「ヒェッ……りょ、了解であります……」

 

 そのミネタは、最後にはヒミコ渾身のダークサイド顔によって沈黙させられていた。

 

 うん……あの脅し方をされたら大体の人間は引き下がるだろう。何気なく、ダークサイドも使いようだなと思った。要は包丁のようなものかと。こんなことで思いたくはなかったが。

 

 まあ何はともあれ、そうして始まった肝試しだが……非フォースユーザーにはそれなりに効いているのだろう。先に入っていった面々の悲鳴が聞こえる。

 

 特に、最初に入っていったウララカとハガクレコンビの悲鳴がすごい。ただ前者は本気の悲鳴だが、後者はどこか楽しんでいる節が見受けられるので、二人の間に若干感情の齟齬はあるだろうが。

 彼女たちの悲鳴が聞こえるたびに、アシドやカミナリと言った賑やかな面々が楽しそうにしている。

 

 ともかく進行自体は順調で、五組目のジローとトコヤミが森の中へと入っていくところを見送った。

 

 ……その、直後のことである。

 

「……!」

 

 フォースが前触れなく、強い悪意を知らせてきた。

 すぐさまフォースを飛ばし、周辺の状況を探る。すると、直前まで何もなかったであろうところに十一人の人間の気配。

 

 ……うち二つは人の形をしてはいるが、生物としての気配がない。これは……脳無だな。

 しかも片方は、覚えがある気配だ。クロギリ。

 

 つまり、これは……。

 

「……マスター・イレイザーヘッド。今すぐ肝試しを中止してください」

「どうした」

「お、さすがにこういうのは苦手か?」

 

 私の提言にクラスメイトたちが目を丸くする。セロがどこかからかうような口ぶりで言ってきた。

 だが、そんな悠長に言っている場合ではない。

 

「ヴィラン連合が森の中に()()しました」

 

 この言葉に、全体に緊張が走った。

 

 だがイレイザーヘッドはさすがの合理主義とでも言うべきか。それとも単に私とのやり取りに慣れているのか。

 にらみつけるように横目を向けると、端的に問うてきた。 

 

「数は?」

「十一人。うち一体が脳無です。さらにクロギリも……あ。今クロギリが消えました。一旦退避したようです」

「……死柄木は?」

「トムラのほうはいません。ですが、カサネのほうはいます」

 

 この回答に、イレイザーヘッドは露骨に顔をしかめた。

 

「脳無までいるとなると、人手が足らねぇな……仕方ない」

 

 そして目を閉じ、深呼吸をすること一度。ただ一度、本当に一瞬に近い間。

 

「……マンダレイ、森の中にいるやつらに通達を。ヴィランの襲来を伝えるとともに、イレイザーヘッドの名において戦闘を許可する、と」

 

 それだけの間に、彼は覚悟を固めていた。あとで処分を受けるのは自分だけでいい、と。

 

***

 

 ぱしり、と襲の身体から赤い光が漏れ出る。“個性”、「憤怒」。彼女が抱いた怒りを、力に変換する力。

 

 それが発動したということは、今この瞬間彼女が怒りを覚えたということに他ならない。

 

「……襲ちゃん? いくらなんでも気が早いんじゃないのォ?」

 

 そんな彼女を見とがめたのは、女性口調の巨漢。

 

「……いや。こいつはなんにでもキレるイカレ女だが、さすがに今は何もなさすぎる。何があった?」

 

 彼――彼女?――を制したのは、焼けただれた肌を随所に露出させる黒髪の男。

 

「今、ボクたちのコトがバレたんだよ……ッ」

 

 だがそんな男も、襲の回答には目を見張った。他のものも同様だ。

 

「は……?」

「遅くね!? もうかよ!?」

「あらまぁ、本当にあったのね超能力。大したもんだわぁ」

「早すぎる……ホンット腹立つなぁ……! なんなんだよ、あのチビ……ッ!」

 

 ぎり、と歯噛みする襲。

 

 が。

 

「バカだなお前はよォ。どうせバレるだろうって話だっただろ? じゃあ予定通りだ! なあ! 気づかれたんたならどうせ向こうもやる気だろ? 派手に殺ってやろうじゃねぇかよ!」

 

 その背中をばしりと叩く、仮面を着けた巨漢。彼はそのまま、ずいと前へ出る。

 

 対して襲は動かず、その背中をじとりとねめつけた。

 

「そんなことはわかってんの! だからボクが怒ってるのはそこじゃないってんだよ、この筋肉ダルマ!」

 

 それからはあ、とため息をつく。赤い光の勢いは先ほどより増していて、しかし確かに身体の中に組み込まれようとしていた。

 

「……で? どうすんのさ、サブリーダー?」

 

 彼女に、ガスマスクを着けた少年が問う。

 

「……腹立つ。腹立つけど、弔の予定通りだよ。ボクがあのチビを殺る。コンプレスは手筈通りに。あとはみんなで派手に殺っちゃえ。そんだけ」

 

 答えながら、襲の顔が歪む。殺意に満ちた笑みだった。その瞳が一瞬、赤い縁取りを持った金色に輝く。

 

 そんな彼女の身体を支える両の足は。黒く短いスパッツから伸びる太ももには。

 

 ――ライトセーバーによる傷は、()()()()()()

 




シリアスさんがエントリーしました。
ということで、ここから最後までずっとシリアスさんのターンです。

なお肝試しのメンバーと順番は、原作から結構変わってます。
ぶっちゃけてしまうと今後の展開のために変えたのですが、あれやこれやと整合性を取ろうと考えた結果、このメンバーと順番決めで一週間くらい取られたのはここだけの話。

(9/27追記)
色んな方が誤字として指摘してくださるのですが、「遅くね!? もうかよ!?」は誤字ではありません。お気持ちは大変ありがたいですし、普段から誤字脱字報告には助けられているのですけれども。
というのも、このセリフは原作から登場しているヴィラン、トゥワイスを企図して書いたセリフなのでこれが正しいです。
トゥワイスは二重人格的なキャラであり、事象に対して反対のことを口走り、二の句でさらに反対のことを言う、という造形のキャラです。二の句は言わないこともあるし、彼の成長に伴って最終的には落ち着いていきますけども。
一番わかりやすい原作のセリフは、轟の氷を食らって「熱っつ!」と言ってるところですかね。
そういうキャラなので、今後も連合が出ている場面ではそういう矛盾したセリフが出てくる予定ですが、そういうのは全部トゥワイスのセリフであり、見かけたら「ああまたややこしいやつがらややこしいこと言ってんな」という感じに考えていただきたく。
いや、ボクだって書きづらいので普通にリアクションさせたいんですけどね!w
でも原作の設定が「そう」なので、仕方ないんですよ。トゥワイスのこの喋り方は、彼というキャラの人格の根幹に関わっているので外すわけにはいかないんですよ。
詳しくは原作を読もう! 具体的には22巻辺りから始まるヴィランアカデミア編とか!
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