銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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昨日は更新できなくて申し訳ありませんでした。
面白い作品を見つけると、うっかり没頭してしまうのは本当悪い癖・・・。


7.一緒に歩こう

 オールマイトとミドリヤの秘密を共有する身となった(ヒミコには禁則事項とその理由だけを伝えた。真相を話してはいないが、わけは聞かず従ってくれた)私であったが、その後は特に目立ったことはなく、日常に戻った。技の開発のため、“個性”を伸ばすための訓練を行うために登校し、やるべきことをやって寮へ戻るという日常だ。

 その中で、クラスメイトたちに技についての意見を求められたり、アタロやソレスの型について教えを請われたり、サポートアイテムについて質問を受けたり、ハツメと開発会議をしたりしたが、おおむね目立った出来事はなかったと言っていいだろう。

 

 強いて言えば、元々使っていたアパートの片付けが済んで、S-14Oが寮に常駐できるようになったことと、訓練中に交代予定時間より早くやって来たB組とバクゴーが揉めた日があったくらいか。後者については、実質モノマ一人の所業だが。

 

 ……ああいや、もう一つあった。ヒミコとハガクレが、ウララカとミドリヤを恋仲にしようと目論んでいる。最近は二人であれこれと密談していることが増えた。おかげでヒミコを取られた気分である。実に面白くない。

 

 この件に伴い私とヒミコが恋仲であることがハガクレにバレたのだが、彼女は「なんとなく、そうなんじゃないかなって思ってた」とすんなり受け入れていた。その上で、他言はしないと約束してくれたのは喜んだほうがいいのだろう。さすがに肉体関係があるとはまだ気づかれていないようだし。

 

 ただ、「私のこともチウチウしてくれていいんだよ?」とヒミコにしなだれかかったときは、どうしてくれようかと思ったが。

 ちょうどそこに居合わせたミネタが「百合の間に挟まる女……!? そういうのもあるのか……!?」と、四門出遊において生まれて初めて四苦を目の当たりにしたブッダのごとき驚き方をしていたが、それはとりあえず無視した。

 

 それはさておき。

 

 他人の恋愛事情にお節介を焼こうとする二人から、相談される機会もあるのだが……これについてはそもそもウララカ本人が己の恋心を見て見ぬ振りをしているので、私ごときにどうにかできるはずがない。

 前世も含めればイレイザーヘッドよりも年上になる癖に、確かに育っていた己の恋心に気づくまで実に三か月以上かかった私だぞ。戦力外も甚だしい。

 

「こういうときジェダイはダメダメなのです」

「返す言葉もない」

 

 なので、いつかのやり取りを焼き直すことしかできない私である。さすがにジェダイどうこうは二人きりのときにしか言わないけれども。

 

「……というか、ジェダイって平和と正義の守護者なんでしょ? こういうお悩み相談みたいなのって、受けたりしなかったんです?」

「ジェダイは基本的に恋愛禁止だぞ。そもそもの話、人生で起こり得る困難や苦悩をすべて試練の一言で片づける人間に、人生相談をしたいと思うか?」

「人の心がわからないって言われるのも納得なのです」

 

 元ジェダイが言うのもなんだが、本当こういう人間的な悩みについては無力だったと思う。人として生きていく上で自然生じるもののいくつかをジェダイが不要とみなしていたことは事実だし、それを認知しようとする人間も多くなかった。

 今になって考えれば、それは見て見ぬふりだったのではと思えるのだがね。ジェダイの教えに近い要素も持つ宗教の指導者である父上を見ていると、余計に。

 

 いや、グランドマスター・ヨーダや、我がマスターだったヤドルのような高位のジェダイマスターならあるいは、とも思うが。

 

 まあそれはともかく。

 

「参考までに聞くんですけど、ますたぁはどうやってお付き合いまで持ってったんです?」

『こう言うのもなんだが、君とあまり変わらないぞ。人生を変えるほどの運命的な出会いだった、その後なるべく一緒にいて、アピールを続けた、それだけだ』

「何の参考にもならないのです……」

『聞いておいて随分な言い草だな。修行の量を増やされたいのか?』

「やー!」

 

 アナキンにも意見を求めたヒミコだったが、こちらも参考にはならなかったらしい。そんな感じで軽口を叩き合って終わった。

 

「……つまり、お茶子ちゃんはスタートラインにすら立ててないのですよ。話はそれからなのです!」

 

 で、最終的にはそういう結論に達する……ということを、ほぼ毎日のようにやっているヒミコである。

 お節介トガになる、と静かに決意していた通り随分とお節介なのだが、堂々巡りに陥っているので実のところ建設性はないに等しい。たぶん、ハガクレとの密談もそんな感じなのだろう。

 

 ……というか、だ。

 

「ふえっ?」

 

 私はもやもやとした気持ちを発散するかのように身を乗り出すと、ヒミコの頬を両側から手で挟み、私に視線を固定させる。

 

「こ、コトちゃん?」

 

 やや困惑した表情で首を傾げようとするヒミコだが、私はそれを許さない。

 視線を合わせたまま、私はさらに彼女に近づき至近距離でささやく。

 

「……デート中なんだぞ。今は、私だけを、見ていてくれたまえよ」

「……んんんんん! もう、コトちゃんってばカァイイんだからぁ! すき!!」

 

 そう、実は私たちは今、デート中である。せっかくの休日なので、行きつけの洋食屋に来ているのだ。

 雄英に通うようになって以来のなじみの店で、雄英から徒歩十分ほどの場所にある。以前住んでいたアパートの近くで、メニューがやけに豊富なのが特徴の店だ。

 

 つまり公共の場所である。密室だったら、きっと私は強引にヒミコの唇を奪っていただろう。

 

 くだらない嫉妬であることはわかっている。ハガクレの距離が近いことでヒミコとの接触が減っていて、鬱憤がたまっていたことも否定できない。それらをわかっていてわざとやったし、これからもやるだろう。

 

 ただ、己を抑えきれないのではない。ヒミコがこういうやり取りを好むからやるのだ。

 何せ彼女は、独占欲が強い。その対象である私が、同じように彼女を独り占めしたいと言っているも同然な挙動をすると、とても喜ぶのである。

 

 今、顔を赤らめながらキャーキャー身体をくねらせているのがまさにそれである。

 そして私は、そんな彼女のかわいい姿を見ることができて嬉しい。まあ、大声で好きと言われるのはさすがに気恥ずかしいのだが。

 

 ずっとそうしているわけにもいかないので、促して食事を再開する。と言っても、既にメインは終えており、今私たちの前に給されているものは食後のデザートなのだが。

 

「んふふ、はいコトちゃん、あーん」

「あーん」

 

 ヒミコが己のフォークですくい、私の口に運んだものはオペラ(チョコレートケーキの一種)の一部である。おいしい。

 お返しに、私もミルクモンブラン(モンブランの要素は見た目だけで栗要素はない)の一部をすくい、彼女の口元へ運ぶ。そうして、二人してくすりと微笑みあうのだ。

 

 ……本当のことを言えば、今日はショッピングに出かけたかった。そこで二人であれこれと見て回りながら、互いの誕生日プレゼントを買おうという話だった。

 去年の今頃は特に何かあったわけではなかったが、今年の誕生日は既に恋仲になっていた。だから一日中デートをしながらプレゼントを買って、贈り合おうと話していたのだが……神野事件のせいで計画は流れてしまったのである。

 

 そのまま二人で出かけるタイミングがつかめないまま今日に至ったのだが、ここでも神野事件が尾を引いている。

 具体的には、ヴィラン連合の標的になったヒミコを雄英から遠出させる許可が下りなかった。で、仕方なく――そう言うとこの店に失礼かもしれないが、最低でも月に一度は来ていたので新鮮さという意味ではどうしても薄れるのだ――近場のここにランチデートに来たというわけである。

 

 ちなみにヒミコ。先日はリボンを私の身体に巻きつけて、

 

「誕生日プレゼントはコトちゃんがいいなぁ」

 

 などと言って迫ってきた。当然のように、私は私を彼女に贈る羽目になったのだがそれはさておき。

 

 それはそれということで、今日のデートではお互いにこの店で一番好きな食べ物を奢る、ということで今年の誕生日プレゼントとした。おかげで今日の昼食は、最初から最後まで大満足であった。

 

「あとは、この料理を作れるようになれば完璧だねぇ」

 

 ケーキをほおばる私を眺めながら、両手を器のようにして顎を乗せた状態のヒミコはそう言うと、満面の笑みを浮かべた。

 

 だから私も、にこりと笑う。

 

「うん、楽しみにしているよ」

 

 ヒミコはこの店に来るたびに、料理のレパートリーを増やしているのだ。それはひとえに、私がおいしいと言った料理を家でも再現するべく努力しているからで……そうやって人のために努力をためらわない彼女が、私は大好きだ。そしてその感情が私に向けられていることが、何よりも嬉しい。

 

 そしてきっと遠くない将来、彼女のレパートリーに二種類のケーキも加わるのだろう。その日がとても楽しみである。

 

***

 

 で。

 

 それはまあ、いいのだ。

 ヒミコとの関係が、順調であることについては構わないのである。

 

 だが順調すぎるのも考え物で……ゆえに私はこの日、一つの覚悟を持って夜を迎えた。

 

「……これ以上はダメだ。早く何とかしないと、生活が破綻してしまう」

 

 これは寮生活七日目の朝……つまり今朝、ヒミコと全裸で朝日を迎えた連続回数を更新し、頭を抱えた私の発言である。

 言うまでもなく、正式に想いを伝えたその日から、ほぼ途切れることなく毎晩心身を重ねていることについてだ。

 

 自分でも驚くほど、この行為にハマりこんでいる自覚はある。前世であれほど精神的な修行に励み、性的な欲求や衝動などとうの昔に克服したと思っていた……何なら自分はその手の感覚が希薄なのだろうと思っていたのだが。

 何のことはない。ただ単に、そうしたいと思うほど心を預けられる相手に巡り合う機会がなかっただけなのだろう。

 むしろ好きな人と交わることは相当以上に気持ちいいと……精神的に満たされることの喜びを知ってしまった今となっては、もしや自分は性欲の強いほうなのではないかと思うことすらある。違う肉体に生まれ変わったことを差し引いてもだ。それくらい、最近の私はどうかしている。

 

 つまるところ、私は今色事に耽溺している状態なのだ。ヒミコの身体に溺れていると言い換えてもいい。

 私が率先して彼女を求めているわけではないが、彼女からの求めを拒んだことは一度もないし、一度ことが始まってしまえば止まらないのだから同じようなものだろう。

 

 しかし毎晩そんなことをしていれば、影響が出ないわけがない。初夜ほど長時間情事に及ぶことはないが、それなりに遅い時間までは続くのだから。

 

 そもそも夜は私にとって、知識を学んだり機械を造ったりする時間だ。その時間をすべてヒミコとの行為に割いてしまったら、できることもできない。

 

 だから今日、いつも通りのタイミングで……しかしデートの余韻を残してうきうきした様子のヒミコが私の部屋に来て、これまたいつも通りの時間帯に吸血しようとしてきたとき、私は心を鬼にして彼女を押しのけたのである。

 

「えっ……」

 

 なんで? と言いたげな、そしてとても悲しげな顔で、ヒミコは絶望に満ちた視線を向けて来た。

 

 その様子につい覚悟が揺らぐが、私は罪悪感で飾りつけられた煩悩を振り払ってヒミコの両肩に手を置く。そうしてその勢いのまま、彼女の唇を奪った。

 

 昨日までなら、このキスはなし崩し的に深いものへと変わっていった。だが今日はそれを抑え込み、私は後ろ髪を引かれながらも口を離した。

 と同時に、物欲しげな視線が私の顔に直撃する。

 

「ヒミコ……すまない、今日はこれで勘弁してほしい」

「なんで……? 私のこと、嫌いになっちゃった……?」

「そんなわけない! あるわけないだろう。そもそも、嫌いならキスなんてしない。ただ……」

 

 私は一度言葉を切り、横目に作業台を見る。

 

 そう、ここは工房である。ここでの作業中に吸血され、そのまま流されるままに身体を委ね、やがてベッドへ連れて行かれる、というのがほぼ毎晩の流れであった。

 

 だがそのせいで、先日から解体している失敗作がいまだに三分の一ほど残って鎮座している。作業が遅々として進んでいないことは、誰が見ても明らかだ。

 当初の予定では、今頃はとっくに別のものに取りかかれていたはずだった。なのにこれである。私がこれ以上はダメだと考えたのも、当然だと思わないか。

 

「……このままだと、作業が進まない。機械の開発だけじゃない、勉強も覚束なくなる。目指すものがあって、そのためにしなければならないことがたくさんある私にとって、それは困る。だから……」

「あ……っ」

 

 言いながらヒミコに視線を戻して、私は言葉に詰まった。ヒミコがうつむいて暗い顔をしていたのだ。内心で、やりすぎた自分を省みているらしい。

 

「……ごめんなさい……。コトちゃんの都合、なんにも考えてなかったのです……。私、ダメダメですね……」

 

 自覚が元々あったのかはわからない。わからないが、根が普通の少女であるヒミコは、自分がしでかしたことをちゃんと反省することができる子である。

 

 まあ、それと同時に残念に思っている彼女も併存しているので、人間の心はなんとも複雑だなと思うが……同じく私の中にも、残念に思っている自分が存在するので。

 

「……だから、その……そういうことは、せめて週に一回くらいで……なんとか収めてはもらえないかなと……そう、思うのだが。ええと、そう、休日の前、土曜日とかで……」

 

 しょんぼりする彼女の姿を前に、思わず一歩引き下がってしまった。言ってから、これぞまさに人の業だとすぐさま後悔した私である。

 

 だがそれも、顔を輝かせたヒミコを見たらどうでもよくなってしまった。彼女が何をしていても、かわいいと。好きだと思ってしまうのだから、どうしようもない。

 

 私は結局、どこまで行っても彼女には敵わないらしい。懐に飛び込んできた彼女を抱きしめながら、ある種の諦観を抱く私であった。

 

「……まあ、なんだな。私も君との行為自体は望むところというか。だから、君が止まらなかったのも無理はないというか……」

「でも……私がコトちゃんの気持ちを無視して毎日シてたのはホントだし……」

「されるがままだった私も悪い。だから……まあ……お互い様と言うか。今後は何かあったら、その都度二人で一緒に考えて、一緒に反省して……ちょうどいいところを一緒に探そう。詳しくはないが、伴侶というのはそういうものではないか?」

「……うん! えへへ、ありがとうコトちゃん。大好き!」

「うん、私もだ。大好きだよ、ヒミコ」

 

 そうして私たちは浅く、しかしはっきりと愛を込めたキスを交わしたのである。

 




一応腐ってもジェダイなので、ちゃんと煩悩を振り切れました。
今後は週一くらいで落ち着くでしょう。
まあ、なんだかんだでそのうちトガちゃんがYES/NO枕を持ち込んで、もう少し頻度高めで着地すると思う(無慈悲

この作品は徹頭徹尾ボクの性癖によって形作られています(その目は澄み切っていた
みんなも性癖に正直になろうぜ!

スターウォーズメイン、ヒロアカサブの長編閑話って読みたいです?

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