銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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11.次に備える

『っしゃああああ!!』

「スゲェ! こんなんスゲェよ!」

「こんな短時間で雄英全員、一次通っちゃったあ!」

 

 合格者向けの控室への移動中、クラスの中でも普段から賑やかな面々が盛り上がっていた。そうでないものも、穏やかな表情で見守っているので気持ちとしては同じなのだろう。

 とはいえ、試験はまだ半ば。油断は禁物である。

 

 ……ということでやってきた控室には、先客が一人いた。アナウンスで私たちより先に一人通過者がいたと言っていたから、その人物ということになる。

 

 そしてその我々に先んじた通過者は、士傑のヨアラシであった。

 しかし我々に先着したとはいえ、さほど差はなかったのだろう。彼は私たちが控室に入ったとき、入り口にかなり近いところできょろきょろとしていた。そして私たちに気づくや否や、嬉しそうな顔でずかずかと近づいてくる。

 

「雄英の皆さん! 全員一斉に通過スか!? スゲェッス! さすがッス!!」

「待ってくれ。称賛してくれるのはありがたいが、ここで話し込んでは後続の方たちの迷惑になってしまう。もう少し奥へ行こう!」

「確かに!!」

 

 彼の勢いに、先頭付近にいた数人はたじたじである。イイダが間を取りなしに入ったので、さほど混乱はなかったが。

 

 そうしてみなが身体からターゲットを外したあとは、熱血を絵に描いたような勢いで話し続けるヨアラシに対して、似たような、しかしまっすぐな態度で応じ続けるイイダという構図で妙に盛り上がりを見せた。

 

「さすが委員長っつーか、さすが飯田っつーか」

 

 二人の様子を尻目にカミナリがどこか精神的な疲れが垣間見えるような言葉を漏らしたが、言いたいことはなんとなくわかる。相手の勢いに被せ続けてどんどんボルテージを上げていく応対は、このクラスではイイダくらいしかできないだろう。あまりにも怒涛が過ぎる。

 

 最初は僅差で一次試験通過一番手をかっさわれたことにバクゴーが怒っていたのだが、このノーガードの殴り合いのようなやり取りに気を削がれたのか、これ見よがしに舌打ちしつつこちらにやってきたのだ。どれほどの激しさかは推して知るべしである。

 

「それにしても、どんな“個性”なんだろう……やっぱりすごいんだろうな……相澤先生の話が本当なら少なくとも入試のときには轟くんより上手だったわけだしそんな人が士傑で伸びないはずがないしだからこそ一番に通過したんだろうし……」

「緑谷ちゃん、今日も絶好調ね」

 

 少し離れた場所からヨアラシを眺めつつ、ぶつぶつと独り言を続けるミドリヤ。

 

 に、一言入れるツユちゃん。に、和む我々である。

 

「緑谷さんの分析はさておき、実際お強いのでしょうね」

「そうだな。俺たちは協力したからこそというところがあるが、あの男は一人で突破したのだからな」

「……一匹狼か。はたまた単に連携が難しい“個性”か……」

「見た感じ、まだ余力も十分ありそうだよね。二次試験もあっさりクリアしそう」

 

 ヤオヨロズの言葉に応じたショージ、彼に続いたトコヤミ、オジロだったが、私は「いや」と首を振った。

 そうして集中した視線に、返してもらったローブを羽織りつつ応じる。

 

「どうだろうな。次の試験は危ういと思うぞ」

「どういうこと増栄さん?」

 

 これに真っ先に反応したのは、やはりと言うべきかミドリヤである。彼の横をちゃっかり確保しているウララカと、二人で揃って首を傾げている。

 その様子に、確かにお似合いだなぁと思いつつも、私は予測を述べる。

 

「試験前に顔を合わせたときからそうだったが……彼は必要以上にトドロキを避けようとしている。それを意識しないようにはしているようだが、意識しないように意識しているせいで逆効果になっている」

「心の中に、ほの暗~い闇が見えますよねぇ。轟くんとなんかあったんでしょーか?」

 

 備え付けの軽食と飲み物をみなに配っていたヒミコも、私に続いて言う。それに対するみなの反応はあまり芳しくなかったが。

 

「……ってことらしいけど、轟なんか心当たりある?」

「……いや……正直記憶にねぇ。推薦なら入試んときに会ってるはずだが……」

 

 アシドの問いに、トドロキはヨアラシに視線を向けつつ答える。普段からあまり表情を変えないトドロキにしては、困惑した様子がよくわかる顔だった。

 

 が、そこで視線の先にいるヨアラシが、一瞬鋭い視線を向けてきた。向かう先は明らかにトドロキで、その眼光は間違いなく何か確執があるもののそれである。直前まで半信半疑だった他の面々も、この様子には納得せざるを得なかった。

 

「これは……」

「おいおい轟おいおいマジか」

「……え、あれ絶対何かあるやつじゃん」

「だよね? 轟くん、ホントに心当たりないの?」

「……すまん、まったく……」

「あんな騒がしい人、一回会ったらそうそう忘れんと思うけどなぁ……」

「悪ィ……」

 

 ウララカはこういうとき、相変わらず率直な物言いをするなぁ。トドロキが妙にしゅんとしてしまった。

 

「……そうか、二次試験に残るのはたった百人だ。どんな試験になるかはわからないけど、それだけの人数で協力しようと思ったら顔を合わせない確率のほうが低いわけで……そういう試験が来ると思ってるから、増栄さんは危ういって言ったんだね」

「うむ。今のヨアラシが、トドロキと協力することは難しいだろう。逆もまた然りだ」

「ハッ、甘いこと抜かしてんじゃねぇ」

「かかかかっちゃん!?」

 

 と、ここでバクゴーが会話に入ってきた。思っても見なかった人物の参戦に、ミドリヤはもちろん他のメンバーも少し目を丸くする。

 

「おい半分野郎、足は引っ張んじゃねェぞ」

「善処する……が、それは試験内容とヤツの出方次第だろ」

「死ぬ気でなんとかしやがれ!」

「爆豪ちゃん……少しは協力的になったと思ったのだけど」

「頼もしくはあるんだけどね……」

 

 仕方なさそうにケロケロ鳴くツユちゃんに、オジロが苦笑しつつもバクゴーの顰蹙を買わないように小声で応じた。

 まあしっかり聞こえていたようで、バクゴーは派手に舌打ちをしながらにらんでいたが。

 

 しかしすぐにその視線を戻すと、

 

「――次は救助か避難だ」

 

 静かにそう言った。

 それは私の予測と同じであったが、しかしそれだけでは足りないだろうと補足と入れようとして……それよりも早くカミナリが吼えた。

 

「だから! 説明足りんのよお前はいつも!」

 

 彼にならう形で、ほぼ全員がうんうんと頷く。バクゴーは再度の舌打ちでこれに応じた。

 

 だが今回は時間に余裕があるからか、激することなく――渋々ではあったが――説明を始めた。

 

「授業でやったろーが。ヒーローの基本三項」

「なんだっけ」

「救助、避難、撃退の三つですわね」

「ちょ、上鳴アンタ……やったじゃん」

「うっ、ど、ド忘れだよド忘れ!」

「基本であるがゆえに、絶対に疎かにするな。相澤先生はそう言っていたな」

 

 ジローに突っかかるカミナリをよそに、トコヤミが言う。

 これに対して、バクゴーが「それだ」と応じた。

 

()()なんだよ。ヒーローの。できねェやつはなれねぇんだよ」

「ああ……! わかったよかっちゃん! 一次試験が『撃退』系だったから、次は『救助』系か『避難』系のどっちかってことだね!?」

「チィッ!」

「えええ理不尽!」

 

 バクゴーとミドリヤは仲がいいんだか悪いんだか。

 いやまあ、悪いのだろうが……入学直後の両者を知っているから、だいぶ良くなったように見えるのだ。まだどちらも互いに対して含むものがあるようだが……うーむ。その辺りが解決さえすれば、案外いいコンビになれると思うのだが。

 

「ちょい待ち。もっかい撃退ってことはねーのか?」

 

 まあそれはさておき、セロが指摘する。

 

 バクゴーがこれに応じた。相変わらず態度はよろしくないが、これでも進歩と言えるか。

 

「受験生同士の潰し合いはもうやったろーが。もっかい撃退系が来るにしても、似たような内容にするか? ア?」

「ああ……やるにしても協力してヴィラン役退治とかのほうがあり得そうだな。でも、三項全部まとめてってこともあり得るんじゃ?」

「複数の項目の是非が問われる試験は、基本的に本免許試験からだ」

「そうなのか?」

「雄英の本免許試験対策の授業が、そういう内容だからな。まあ『基本的に』と言ったように、仮免許試験で求められることもないわけではない。調べた限りでは、オールマイトの活動が抑えられた六年前の試験がそれで、相当厳しい内容だった」

 

 とここで、オールマイトが力を大きく落としたきっかけにかかわるだろう情報に、ミドリヤだけが痛ましそうに眉をひそめた。もちろん、その件に言及するわけにはいかないので、見なかったことにする。

 

 代わりに、彼以外のなるほどと頷く面々に視線を順繰りに向けながら話を戻す。

 

「ただ複合的な内容だったとしたら、それこそ協力は最低限の前提になる。ヒーローは助け合いだからな。ゆえに次の試験は、協力が前提としたものとほぼ確信できるわけだ」

「……つーことだ。わかったか半分野郎、善処するとか半端なこと抜かしてんじゃねーぞ! 殺す気でやれ!」

「殺したらダメだろ」

「気概の話だわバァカ!」

 

 たとえ話でも殺すのはどうかと思う。

 それは日頃からバクゴーに接していて彼に慣れているこの場全員の総意で、大半が苦笑していた。

 

「あの調子で救護対象者に怒鳴ったりしなきゃいいけど」

「それな」

 

 ジローとカミナリの会話はまさにそれで、本当下手なことをしなければいいのだがな。

 

「まー爆豪はともかく……どっちになってもいいようにおさらっとく?」

「ええ、そうしましょう」

 

 一方、アシドとヤオヨロズは建設的な話をしている。せっかくの空き時間だ、有効活用はしたいな。

 

 まあ、私は栄養補給も並行したいところなのだが……。

 

「……コトちゃん、それおいしい?」

「あまり」

 

 ヒミコの料理の味に慣れ切ってしまった私にとって、設置されていた軽食にはどうにも気が乗らないのであった。

 

***

 

 次第次第に通過者が現れ、控室に人が増えていく。

 

 しかし、その速度は思ったよりも緩やかだ。山岳エリアに身動きが取れない受験者を必要以上に出してしまったので、そこから一気に通過者が出るだろうと思っていたのだが……どうやらそれを巡って盛大な足の引っ張り合いが起きたらしい。

 そこで協力という選択が取れなかった者たちは、今回の試験の落とし穴にはまってしまったのだろうな。シスの暗黒卿辺りが聞いたら笑うにも値しないとでも言いそうだ。

 

 まあそれはともかく。一次を通過したものと無関係のままでは少々まずかろう。

 

 というわけで、彼らとは次の試験で恐らく協調しなければならないだろう、という予測の下、交流を図ることにした。予測を伝え、もしそうなった場合は協力をしようと話しかけるのだ。

 ついでに雑談も少々。これを手分けして行う。

 

 さすがにまだ“個性”や技の詳細を教えるわけにはいかないが、私個人のものであれば多少は構わない。こういうときは、提案したものから差し出すものである。

 

 この辺りは、昔取った杵柄だ。あまりこの手の任務をした回数は多くないが、経験があるだけでも違うものである。

 

 あとは、まあ……不本意ではあるが、私のこの外見は他人に威圧感を与えない。それに人の庇護欲を刺激するらしく、通過者で私の話を聞かないものは一人もいなかった。前世の身体ではこうはいかなかっただろう。

 

「アヴタスくんもカァイイ人だったと思いますけどねぇ」

「それは君だけだと思うが」

 

 と、そんな会話もあったが……それはともかく、である。

 

 予想以上に人の集まりが悪く、現時点で控室にいるものには全員に話を済ませたので、待機状態の私はその間に念のため動いておこうと思ったのだが……。

 

「なあ、お前……夜嵐っつったか」

 

 私が動くまでもなく、他の女性陣にせっつかれたトドロキが、自ら行動に移していた。

 

 なので私は、二人の様子を少し離れたところから見守ることにしたのであった。

 




試験はさらっと、と言いつつ待ち時間に二話使う所業。
いやその、最初は一話で済ますつもりだったんですけど、書いてる途中にヒミコト二人にこれは二話かけるべきだと言われたので。
なお両者の言い分は同じでも、その理由は違う模様。
キャラが勝手に動こうとするときはキャラに全部任せるスタンスでいるので、こういう流れになりました。

スターウォーズメイン、ヒロアカサブの長編閑話って読みたいです?

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