銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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12.繋ぐ

 私が見た限り、トドロキに声をかけられたヨアラシは振り返りつつもその顔を硬くしていた。やはり彼はトドロキに対して隔意がある。

 問題は、トドロキにその自覚がいまいちないことだが……そこも含めて彼は踏み込もうとしているので、彼もバクゴー同様入学して以降成長しているのだと思う。

 

 ただ、それだけで済まないのが人間関係であり、社会的動物である人間の難しいところである。

 

「休憩中に悪ィな。なるべく早く済ませる。……俺、お前になんかしたか?」

 

 実に簡潔、かつまっすぐな物言いは、トドロキらしいと言えるだろう。それが吉と出るか凶と出るかは私にもわからないが。こういうものは、やってみなければどうにもならないのだから。

 

 見ている限りだと、ヨアラシは目を鋭くしたものの、それはトドロキの言い方が気に障ったわけではないようだ。

 そして無視するという選択肢はないのだろう。小さくため息をつくと、覚悟を決めた顔で口を開いた。

 

「……逆ッスよ」

 

 これに応じたヨアラシの心の中で、闇が広がる。それは嫌悪の色をしていた。

 

「俺はあんた()が嫌いだ。あのときよりいくらか雰囲気変わったみたいスけど、あんたの目はエンデヴァーと同じッス」

「……親父の……目……?」

 

 その嫌悪が剣となって、トドロキを刺す。特に彼にとっては、父親の話は禁句に近い。体育祭以降、一皮むけたが……それでも今なお思うところがあることに変わりはない。過去は変えられないのだから。

 

「そうス。……ヒーローってのは俺にとっては熱さだ。熱い心が人に希望とか感動を与える! 伝える! ……だからショックだった。エンデヴァーの目からはただただ冷たい怒りしか伝わってこなかったんだから!」

 

 だが、ヨアラシの言い分は多少なりとも理解できるものだった。確かに、エンデヴァーは冷たい印象を与えることが多い。彼とトドロキの関係を聞いてしまった身としては、それはより強く感じられたものだ。

 

 トドロキも意味を理解したのだろう。顔はしかめたが、納得した様子を見せた。

 

「……だから入試であんたを見て、あんたが誰かすぐにわかった。何せあんたはまったく同じ目をしてた!」

 

 しかし続けられた言葉には、より派手に顔をしかめた。

 やはりエンデヴァーを完全には赦せていないのだろう。そんな人物と同列視されるのは、トドロキにとってどうしても忌避感があるのだろうな。

 

 風が吹く。

 屋内で? あり得ない。

 あり得ない……が、それが“個性”となれば、あり得る。

 

 ヨアラシから、風が吹いていた。すぐに収まったが……しかし、感情の動きと共に風が漏れたということは、それだけ彼のエンデヴァーに対する嫌悪の強さがうかがえる。

 

「同じだと……? ふざけんなよ、俺はあいつじゃねぇ」

「同じッスよ。同じ、はるか先を憎むような目だ! 目の前の人を見ない、そういう冷たい目だった!」

「……!」

 

 が、ヨアラシの断言に、トドロキは絶句した。心当たりがあったのだろう。それは目の前のヨアラシのみならず、その身体から一瞬漏れた風に対しても。

 

 トドロキがゆるりと目を見開き、数回口をはくはくと動かす。

 

 彼の内心に、一人の少年が浮かんでいる。丸刈りの頭の、目つきが鋭い……ジャージの少年。格好はまったく違うが、顔に変化はない。間違いなく、それはヨアラシであった。

 今と変わらず、賑やかで騒がしいヨアラシの姿。それを今の今まで忘れていたのだから、まさに当時のトドロキは見ていなかったのだろうな。

 

 それをトドロキも自覚したのだろう。彼の内心で、大量の言葉が湧き出ては沈み、吹き荒れている。

 

「だから俺は、あんたら親子のヒーローだけはどーにも認められないんスよ。以上!」

 

 言いたいことは言い切ったのか、ヨアラシはトドロキに背を向けた。そのまま彼から離れようとしたが……。

 

「あ……あの!」

 

 そこに、ミドリヤが回り込んだ。

 

 彼の姿を見て、ヨアラシとトドロキはもちろん、遠巻きに眺めていた私たちA組の面々も驚いた。ミドリヤが二人の会話を気にしていたのはみな気づいていたが、普段わりと大人しい彼が割り込むとは思っていなかったのだ。

 

 ただ考えてみれば、ミドリヤはトドロキの家庭環境を本人から教えられていたな。事情を知っている彼にしてみれば、何かを言わずにはいられなかったのだろう。

 

「おお、確か緑谷サン! 体育祭見てたッス! 超熱かったッス!」

「え、あ、ど、どうも! ……じゃなくて、えっと」

 

 割って入ったはいいが、ヨアラシの勢いに押されるミドリヤ。実に彼らしい光景である。

 

 しかし、ここで終わらないのがミドリヤという人間だ。だからこそ、オールマイトは彼を後継者に選んだのだろう。

 

「その……さっきの話、聞いてました。ごめん。でも、だからこそ言わせて欲しくて……!」

 

 ほら。いざというときは、前に出ることができるのだ、彼は。

 

 そして彼は、再び表情を硬くしたヨアラシが何か言う前に、言葉を続けた。

 

「その、夜嵐くんの言いたいこともわかるんだ。入学直後の轟くんは、確かにちょっと怖くて、近寄り難いところがあったし……僕自身、体育祭までは接点がなかったから……」

 

 そうして語り始めれば、彼はとまらなかった。普段、蘊蓄や考察の際に発揮される早口が、しかししっかり聞ける程度に抑えて発揮されている。これにはヨアラシも口を挟まず、それどころか押されているようにすら見える。

 直々に「近寄り難かった」と言われたトドロキが、バツが悪そうにしているが。

 

「……でも、今の轟くんは違うよ。今までのこと見直して、変えていこうとしてる。それを間近で見て、わかってるから、僕たちA組は一緒に訓練だってしてるし、さっきの試験だってみんなで協力して突破できたんだ。僕たちにとって、彼はそれだけ頼りになる友達で……大切な仲間なんだ。

 ……だから、すぐに仲直りしろなんて言わない、言えないけど……でも、せめて()()もらえないかな。他でもない今の轟くんを……ヒーロー『ショート』を。どうか、()()()()()()()()()()()()!」

 

 そう一気に言い切ると、ミドリヤは深々と頭を下げた。いっそ潔いまでの低頭である。

 

 これに慌てたのは、ヨアラシだ。……いや、これは慌てているのではなく、愕然としているのか。己のしたことに対して。ミドリヤの言葉は、それだけ響いたのだろう。

 

 一方、トドロキも似たようなものだ。こちらも慌てているというよりは、照れているのかな。顔には出ていないが、態度がそういう感じだ。

 

 しかしどれだけ二人が慌てようと、ミドリヤは頭を上げない。答えを聞くまではこのままだと言わんばかりである。こういうところで妙に頑固なのも、彼の気質と言うべきか。

 

 そしてこうなったとき、折れるのは得てして相手側であり。今回も、ヨアラシのほうが先に折れた。納得はしていないものの、己を省みる必要性は認めたのだろう。

 

「……わかったッス。確かに……俺のほうも頭が硬くなってたみたいだし、もう少し頑張ってみまッス」

「ありがとう、夜嵐くん!」

「いや! 礼を言うのは俺のほうッス!」

 

 そうしてヨアラシは改めてトドロキに向き直ると、まだ困惑しているトドロキに対して頭を下げた。勢いが余って頭を床にぶつけるほどだった。

 

「ごめん!!」

 

 その姿に、トドロキの困惑は加速する。

 

「自分が嫌いなものになってた!! 試験のときとは雰囲気が少し変わったってわかってたくせに!! 今のあんたを見ようとしてなかった!! 本当にごめん!!」

 

 そして繰り出される大声の謝罪に、途中からとはいえ先程まで堂々としていたミドリヤが途端におろおろし始める。これがなければもっといい男なのだろうが、それはさておき。

 

 ここでようやく立ち直ったトドロキが、その場に片膝をついてヨアラシに手を差し伸べた。

 

「いや……俺のほうこそ悪かった。あの頃……入試の頃は、お前の言う通りのヤツだったから……元々は俺がまいた種だ」

「……それと重ねてごめん!!」

「んん?」

「正直、まだあんたのことは好きになれん!! だからごめん!! でも努力はするから!!」

 

 このあまりにもまっすぐな言葉に、トドロキがふはりと笑う。自然体な笑みだった。

 

「なんだそりゃ。……まァ、でも、気持ちはわからなくもない。俺もまだ、お前のことは好きになれそうにねぇ」

「……お互い様だ!!」

「おう。……それより、そろそろ顔上げてくれ。話しづれぇ」

「ウッス!!」

 

 そうして、二人は改めて正面から向き合うと。

 

「轟焦凍だ。ヒーロー名は『ショート』。よろしく頼む」

「夜嵐イナサ! ヒーロー名は『レップウ』!! よろしくッス!!」

 

 握手を交わすことはなかったが、視線を交わして頷き合った。

 

 その後、二人はミドリヤに向き合ってそれぞれ礼を口にする。

 これに対したミドリヤは、さらにおろおろしてしまうのだが……彼の中ではそこまで大それたことをした自覚がないのだろうなぁ。謙虚なことである。

 

 一方、そんな様子を眺めていた我々女性陣は、感心することしきりだ。私としても、ジェダイの見本のような仲立ちであったので感心せざるを得なかった。

 

「緑谷やるじゃん!」

「ええ、お見事ですわ」

「ケロ。緑谷ちゃんはやるときはやる子よね」

 

 アシドたちの言葉に頷く面々にならうように、私もうんうんと頷く。

 

 が、その中で一人違う反応をするものが一人。

 誰かと言えば、もちろんウララカだ。彼女は少し惚けた様子で、ミドリヤにまっすぐ視線を向け続けている。

 

 そこにどういう心の動きがあったかは、今の私にはよくわかる。相手の何気ない発言や挙動に、改めて惚れ直しているのだろう。なるほど、外からはこう見えるのだなぁ。

 

 などと思っているのは私だけだろうが、しかし心の動きに気づいたのは私に限った話ではなく。

 

 当たり前のように、ヒミコとハガクレがウララカに絡みに行った。

 

「出久くん、かっこいいねぇお茶子ちゃん。かっこいいねぇ」

「なるほどなー、お茶子ちゃんはあーいうところがイイんだねぇ」

 

 わざわざ小声で、しかし両脇から挟む形で行ったので、完全に愉快犯である。

 

「んひぃ!? ちゃ……! う、ことも、なくはないん、やけど、あの、えと、うぅー……!」

 

 真っ赤になってしまったウララカに、二人がにまにまと笑う。まったく、タチが悪い。

 

「二人ともやめておけ。そう人の心を弄ぶものではないぞ」

「「はぁーい」」

 

 ため息混じりに私が二人を引き離せば、揃った返事が来る。

 どうやら反省はしていないようだ。ここまで来ると、もはや確信犯ではないだろうか。

 

 仕方ないので、私は改めてウララカに二人から距離を取らせる。

 

「……ウララカ、こういう輩は無視しよう。根っから善良な君にはなかなか難しいとは思うが……」

「そんなぁ!?」

 

 瞬間、ウララカが反応するよりも早く、ヒミコが絶望に満ちた声を上げた。

 これにはハガクレがぎょっとし、ウララカなどは何もそこまでしなくとも、と言いたげに私に視線を向けてくる。

 

「……いや、私がヒミコを無視するという話はしていないつもりだが。そんな恐ろしいこと、するはずがないじゃないか」

「……ですよね!? あーびっくりした……死んじゃうかと思いました……」

 

 大げさな仕草で胸をなでおろしつつ、大げさなことを言うヒミコ。ニュアンスでわかれとは言わないが、フォースでおおむねのところはわかるだろうに。

 いやまあ、そういう少し前のめりなところも今の私には決して短所には見えないあたり、だいぶ彼女にのめりこんでいるなとも思うわけだが。

 

 それはそれとして、「()()()()()()()()()」とテレパシーで伝えれば、あっという間に機嫌を直してくっついてくるのだから彼女も現金なものである。

 

「こっちはこっちで、お互いベタ惚れなんだねぇ」

 

 まあ、そんなことをしていたら、ハガクレの標的がすり替わるのも無理はないかもしれないが。

 

 しかし甘い。その程度で私たちを照れさせようなどとは、甘すぎる。

 

「そうだが」「そうですよぉ」

 

 法的なあれこれはともかくとして、二人の心境としては、この関係に後ろめたいところなど微塵もない。私も彼女も、互いを好いているのかと問われれば是と答えることに躊躇などないのである。

 

 ゆえに同時に即答して、私たちは手を絡める。

 この切り返しは想定していなかったらしく、ハガクレは「ひゃあ」と声を漏らしながら顔を赤くした。

 

 ……まあその、同じく至近距離で私たちを見たウララカが、羨ましそうな顔をしつつも先ほどより赤面していたのは、とばっちりだったろうが。

 




20人の通過がバラバラかつギリギリだった原作と違って、本作では同時かつほぼ最初だったことで休憩時間に余裕がありまくってるため、轟と夜嵐の確執はスピード解決。
原作でも轟は疑問を解決しようと直接声をかけに行ったので、時間的な余裕があればある程度は話が進むだろうし、そこを目撃したデクくんがお節介焼かないはずがないだろう、ということで。

そしてそんなデクくんを見たお茶子ちゃんが反応しないはずがないよね!
本作だとこの時点でしまっとかない方向で心に折り合いついてるから、惚れ直すでしょうよ!

でもってそれを見たお節介二人組がからかわないはずもなく。
さらに言えば堅物の理波がそれを咎めないはずもなく。

というような感じで、物語の展開が一つの思い付きを基点にして一気に思いつくような一連の流れを、我々書き手は「キャラが勝手に動いた」と称します。
今回の展開の中で書き手のボクが意図して放り込んだのは、「そこでもう少しだけ前のめりになってもろて」くらいです。
そうすることで堂々と二人の前でイチャつくバカップルができるので、休憩時間で2話分の文量を使う必要があったんですね(どこぞの構文

スターウォーズメイン、ヒロアカサブの長編閑話って読みたいです?

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