銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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13.仮免二次試験

 やがて通過者が定員に達し、一次試験終了のアナウンスが流れた。

 

 その後は脱落者の撤収作業が済んだところで、改めてメラ氏のアナウンスが入る。

 

『えー……二次試験に通過した百人の皆さん。これご覧ください』

 

 彼の言葉が終わるか否かのところで、壁にかけられていたモニターが起動した。表示されたのは、先ほどまで一次試験が行われていた周辺のフィールドである。

 

「フィールドだ」

「なんだろね……」

 

 これに対して、ミドリヤとウララカがぽつりとこぼした、次の瞬間である。

 

 派手な破裂音と、それに見合う規模の爆発が各所から連鎖的に発生し、フィールドがどんどん崩壊し始めたではないか。

 誰もが何故と思う中も爆発はどんどん続き、ほどなくしてフィールドはあっという間に被災地もかくやな有様へと姿を変えた。

 

 ……ふむ、被災地、か。なるほどこれは……。

 

『次の試験でラストになります! 皆さんにはこれからこの被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

 ああ、やはりそういうことか。

 

「マジで救助演習かよ……!」

「さすが雄英、読みも鋭いってか……」

 

 このアナウンスに、周囲から視線が集まる。

 

 だがそれを柳に風と受け流し、メラ氏の説明に集中する。

 

「「パイスライダー……?」」

「現場に居合わせた人のことだよ。授業でやったでしょ」

「アンタらはまたもう……」

 

 ……集中する。

 

「む……人がいる?」

 

 ショージがつぶやく。決して大きな声ではなかったが、それは周辺に確かに響いた。

 

 彼の言う通り、画面の向こうでは崩れたフィールドの各所に大勢の人がいる。ただし、彼らに重篤な問題は見受けられない。気を失っているように見えるものも、血が出ているものも、すべてそういう偽装である。

 ……中には四肢がもげているようなものも見えたが、フォースで感じる限り見た目に反して内心は相当凪いでいるため、あれも偽装だろう。とんでもない徹底ぶりだ。

 

 つまり、彼らが要救助者ということだ。彼らを余すことなく救い出すことが、二次試験の内容なのだろう。

 

『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの要救助のプロ! 「Help Us Company」、略してHUC(フック)の皆さんです。皆さんには、これから傷病者に扮した彼らの救出を行ってもらいます』

 

 そしてその推測は、メラ氏のアナウンスによって間違いないことが明らかになった。

 

 その後に続いた説明によると、試験の内容は救出活動を随時採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格となるようだ。どうやら、おおむね事前の予測通りになりそうだな。

 

 なお、そんな説明が続く中でも、モニターの向こうではHUCのものたちが“個性”を駆使してとんでもないところへ入り込んでいく様子が見える。なるほど、要救助のプロとはよく言ったものである。世のヴィラン連中も、このように世のため人のために“個性”を使ってほしいものだ。

 

「……ねえデクくん……」

「うん……神野区を模してるのかな……」

 

 そんな中、モニターを食い入るように見ていたミドリヤとウララカが、神妙な顔をして言葉を交わしていた。

 ヒーローとしてではないにせよ、実際にあの場に二人には……いや、一般人としてあそこにいたからこそ、二人には思うところがあるようだ。

 

「――頑張ろう、麗日さん」

「うん!」

 

 そうして決意を新たにする二人を、やはりヒミコとハガクレが楽しそうに眺めていた。

 さてはまったく懲りていないな? まったく、どうしてくれたものか。

 

 だが試験開始まで十分とアナウンスされた。猶予としては決して長くない。下手に触れて士気に影響しても困る。話はあとに取っておくとしよう。

 

 ということで、私はこの十分という短い期間に、改めてこの場にいるものたちに協力を呼びかけるとともに、救助や傷の手当などの自信がないというものに対して簡単な助言をするなどして過ごすことにした。

 

 そして、そのときは訪れる。室内全体にけたたましいベルの音が鳴り響いた。

 

()()()()()()()()()が発生! 規模は〇〇市全域、建物倒壊により傷病者多数!』

 

 音と共に、アナウンスが流れる。

 さらに、これに合わせるようにして控室が展開していく。一次試験と同じ仕組みで造られた部屋だったらしい。

 

 だがテロ、か。どうやら今回の試験は、歴代の仮免許試験の中でもトップクラスの難易度に設定されているようだ。

 

『道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ! 到着するまでの救助活動はその場にいるヒーローたちが指揮を執り行う。一人でも多くの命を救い出すこと!』

 

 ――試験スタート!!

 

 私の思考をよそに合図が下され、百名が一斉に動き出……す前に、激しい爆発音がすぐ近くで響いた。実際に威力はないが爆発も起こっており、これには思わず全員が身構えながらそちらに目を向ける。

 

 爆発を起こしたのは、バクゴーだった。彼は上空に手を向けて、音メインの爆発を起こしたのである。

 

 彼は全員の注目が集まっていることをさっと見渡して確認すると、声を張り上げた。

 

「試験のシナリオは『ヴィランによるテロ』だ! 全員そっちの警戒も忘れんじゃねェぞ!!」

 

 この言葉に、多くのものがはっとした。

 

 そう、今回のシナリオはテロなのだ。目の前の惨状を引き起こしたものは、災害ではない。

 であれば、その原因と接触する可能性は極めて高く。ゆえに、歴代の仮免許試験の中でもトップクラスの難易度に設定されているようだ、という推測が成り立つのである。

 

 とはいえ、元々ここに残ったのは狭き門を潜り抜けてきたものたちだ。誰もがすぐに気を取り直して、それならそれでと言わんばかりに三人組、四人組をすぐさま構築し始めた。

 下手に発破をかける必要はないようで、何よりだ。だが恐らく、そういう人間をなるべく多く残すように一次試験は調整されていたのだろう。

 

「増栄ェ! ()()()()!」

 

 と、思っていたところでバクゴーに問いかけられた。

 その意図を理解した私は、なるほどと頷き行動する。ヒミコに視線で合図を送り、二手に分かれて周囲にフォースを飛ばした。

 

 索敵である。それなりに範囲が広いので、一人より二人のほうが早いし正確だ。

 

「こっちにはいないみたいですー」

「見つけた。あちらだ。今のところは、だが」

「十分だ」

 

 これを受けて、バクゴーが眼光鋭くにやりと笑う。

 

 好戦的な笑み。暗黒面に踏み込んだものにしかできない笑みだ。前世の私であれば、間髪を入れずやめろと言っただろう。なんなら抜剣までしていたかもしれない。

 しかし彼のそれは、暗黒面と言っても深みではない。二度と戻ってこれないような場所ではないのだ。何より、彼は闇に触れつつも、決して光明面からは逸脱していない。

 であれば、私はそれを咎めることはすまい。これぞ彼らしいと、はばかることなく言うとしよう。きっと彼は、それでいいのだと。

 

 そうしてバクゴーは、何も言うことなく私が示したほうへ……ヴィラン役と思われる大勢の人間が潜んでいるほうへと駆けていく。そんな彼を追いかけて、カミナリとキリシマが動き出す。

 

 なので、

 

「カミナリ! キリシマ!」

「ん!?」

「これを持っていけ! つい最近できたばかりの、リパルサーリフト式携行担架だ!」

 

 私はできたての担架を二人に投げ渡した。

 

 携行、という呼称がつく通り持ち運びが容易な代物であるそれは、一見すると腕輪である。なので、受け取った二人は困惑していた。ボタン一つで担架に変形するということを説明したら、一転して目を剥いて驚いていたが。

 

 実のところ、私にとってもこれは驚きの対象だったりする。日本の誰よりも先駆けて、最新の技術を使わせてくれたメリッサ・シールド女史には感謝してもしきれない。無論利用料はしっかり払ったが。

 

 ただ今回の試験の内容からして、治療が可能な私は担架を使う機会がほぼない。その手の“個性”の絶対数は足りていないのだから、最前線で救出に当たるより優先してやるべきことがあるのだ。

 

 しかし、せっかく試験に間に合わせたのだ。何より外から力が加わらない限りは揺れず、一定の高さを絶対的に確保する担架をここで使わない手はない。

 だからここは託すことにした。誰にするかは少し悩んだが、“個性”を人命救助に使いづらいキリシマとカミナリがこの場合は最善であろう。もちろん、二人の人品を今さら疑うはずもない。

 

「充電式だから、もしバッテリーが切れたら任せたぞカミナリ!」

「……なるほど! オーケー任せとけ!」

「そういうことならありがたく借りるぜ!」

「ああ。私たちはここで応急処置と治療に専念する!」

 

 だからそう言葉を交わして、二人を送り出した。

 

 一方彼ら以外のA組はというと、ひとまずここから最も近い都市エリアへ向かったようだ。そこから先で、さらに複数グループ分かれるつもりらしい。健闘を祈る。

 

 ちなみに、リパルサーリフト式携行担架はヒミコの分も造ったのだが、彼女はそれをハガクレに渡したらしい。確かに、バクゴーを含めても三人しかいないグループに担架は一つでいいだろう。いい判断である。

 

 さて担架を託した私たちだが、先に述べた通り治療のためこの場に残っている。ヒミコも同様だ。

 

 ただ、要救助者が来るまではわずかだが時間がある。なので、この場に残って救護所を設置しようとしたものたちと協力して場を整えていく。

 

 こういうとき、変身さえすれば複数の“個性”があるも同然のヒミコは実に強い。ウララカに変身して周辺の物体の重力をなくしたり、ものによってはアシドに変身して溶かしたり。

 何よりこういう状況だと、ヤオヨロズの“個性”が使えると本当に頼もしい。創るものについての知識がないと使いこなせないので、ヤオヨロズ本人ほど知識を持っていないヒミコでは創れるものは限られるが……包帯や消毒液などがあるだけでもだいぶ違うものだ。

 

 ちなみに、トリアージに関しては事前に他へ頼んでいたこともあって、私はやっていない。おかげでひたすら治療に専念できている。

 

 もちろん警戒は怠っていない。あちらへこちらへとせわしなく動き回りつつも、定期的に周辺にフォースを飛ばしていつなんどき襲ってくるものがいてもいいように備えている。

 まあ、どうやらヴィラン役は最初に控えている場所から動く気配がないのだが。それでも万が一ということはあるし、いつ来るかという問題もあるからな。

 

 さて、そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。多くの要救助者が運び込まれた。それをなした中にはもちろんクラスメイトの姿もあり、最前線がどうかはわからないものの、少なくとも救護所周辺で問題になりそうな行動をするものはいなかったから、大丈夫だと思う。みんな真面目に救助活動に専念していた。

 まあ、大人しく(?)人を抱えたバクゴーに鉢合わせたミドリヤは心底驚いていたし、私もそれなりに驚いたが。いつぞやのバスの中での会話をしっかり覚えていたらしい。

 

 それはさておき、フォースでの感知によれば、大体半分以上は救助できたか……と言った頃合い。

 

 遂にそれは現れた。

 

 フィールドを取り囲む壁の一部から、大爆発が起こる。揺れる地面に、吹き飛ぶ瓦礫、それに噴き上がる爆炎。随分と派手な登場である。

 

 そんな爆炎の中から、瓦礫を踏みしめて大柄な男が姿を見せた。

 

 人の四肢を持ちながら、その顔は人にあらず。

 肌の色は、一部を除いて黒い。トサカのような頭頂部は角ではなく、背びれ。

 海洋生物らしい無機質な瞳で周囲の受験者たちを順繰りににらみつけ、鋭い牙を露に笑みを向かべる男の名は、

 

「ギャングオルカ!?」

 

 ビルボートチャート、ナンバー10。神野事件においても活躍した、シャチの“個性”を持つヒーローだった。

 

 彼の後ろからは、揃いのコスチュームで顔も含めた全身を覆った人間が続々と登場する。数えるのも億劫になるほどの人数に加えて、全員が武器と思われる装置を手に着けている。さながら無名の戦闘員たちと言ったところか。

 

「ハッ、ようやく来やがったな……!」

 

 これを見て喜んだのは、恐らくここにいる百人の受験者の中では彼だけだろう。

 そう、彼……バクゴーは、ヴィラン役の登場を見るや否や、爆破を重ねて文字通り飛んでいったのである。その背中を、ミドリヤがわずかに遅れて追いかける。

 

 だが私は追いかけない。手伝うこともしない。

 

 見放しているのではない。彼らの実力を認めているからだ。彼らならば心配はいらないと、知っているからだ。

 だから、ヴィランを前にしても手は止めず、ひたすら治療に専念する。さすがに余波の可能性は否定できないので、簡単にだが守りを整えるように指示を出すが。

 

「さすが雄英の一位、冷静だなぁ……」

 

 そこに、そんなつぶやきが聞こえてきた。トリアージを任せていた一人で、傑物学園の女子生徒だった。

 

 そんなことはない。これでも決して余裕があるわけではない。アナキンとは違って本番には強くないんだ、私は。

 

 なので、動きながらその背中に応じる。

 

「私が冷静なのは、己の実力云々ではありませんよ。私は私のクラスメイトを信頼している。それだけです」

「……なるほど、そりゃそうだ」

 

 彼女はそう答えると、小さく笑った。彼女にも、信頼できる仲間はいるようで何よりである。

 

 そして、私の仲間も彼女の仲間も、みな信頼に応えた。試験が終了するまで、彼らは一度も救護所はもちろん、要救護者にもヴィラン役を近づけさせなかったのだから。

 

 特に、トドロキとヨアラシがやってきてからは圧巻だった。傑物学園の男子生徒の後押しもあったればこそではあるものの、ギャングオルカを完全に足止めしてみせたのだからお見事である。

 一時はどうなることかと思った両者の関係だが、相手の弱点を的確につく炎と風の合わせ技を即興でやれた辺り、案外戦闘の相性は悪くないようで何よりだ。

 

 またその間に、取り巻きの戦闘員もバクゴーとミドリヤを中心にした面々よってほぼ全滅。こちらもまたお見事だった。

 

 まあ、戦闘員に足止めされている間にギャングオルカとの戦いを譲る羽目になったバクゴーは、不満を全面に出して隠そうともしていなかったが。そこは今後の課題とすればいいだろう。

 

 なおそのバクゴーは、二次試験開始直後の警告に関してクラスメイトたちからからかい混じりの賞賛を受けて爆発していた。最初の頃に比べると、本当に様々な意味でみなバクゴーに慣れたものだ。

 

 ともあれこうして、私たちの仮免許試験はひとまずの区切りを迎えたのであった。

 




ということで仮免RTAでした(
なお当初の予定では、「ヤオモモにポラロイドカメラを創ってもらい」「理波に変身したトガちゃんと一緒に」「空に上がってフォースで要救助者の位置を特定しつつ」「現場の俯瞰写真を用意して」「そこに感知した要救助者の位置を書き込み」「ヤオモモにそれを複製してもらい」「全員に配る」という力技で超高速解決するはずでした。
今よりもRTAみの強い展開ですね。
でもそれだとあまりにもスタンドプレーがすぎるので、没。
この場合物語の展開としてあっけなさすぎるという意味ではなく、実際に命がかかっている救助現場ならともかく、試験という努力や研鑽の如何を問う場で、その余地や意義を奪うようなやり方はジェダイらしくない、という意味です。
ヤオモモの「創造」で複製するような創造が可能かどうかわからなかった、というのもありますけどね。

スターウォーズメイン、ヒロアカサブの長編閑話って読みたいです?

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