銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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3.最も新しいフォースユーザー

 戦いは、アマジキやハドーが懸念したようには進まなかった。確かにじわじわとA組の面々は脱落していったが、あっという間に全滅とまでは行かなかったのである。

 

 理由はいくつかあるが、バクゴーとミドリヤが互いに互いをうまく使いながら、ほぼ常にトーガタに“個性”の発動を強い続けて行動を制限していたことが特に大きい。

 

 トーガタの“個性”は自ら「調整が難しい」と言った通り、迂闊に使ってもうまく機能しない。一つの行動をするにも、いくつかの工程を踏まなければならないのである。

 だからこそ、彼に対しては同時に攻撃を仕掛けるより、わずかに時間差を置いた攻撃を連続したほうが効果が高い。身体の離れたところ……たとえば手と足を別々に狙うなどできればなおよい。それを何度も何度も繰り返していけば、いかに高い制御技術があるトーガタでも“個性”の発動にミスが出てくる。

 

 あとは有効打足りえないが、足元を固めてしまうのも手だ。“個性”柄それは透過されるわけだが、やり方次第では無理矢理彼に状況をリセットさせることができる。戦いを仕切り直したいときに使える手だ。

 

 バクゴーはこの辺りのことを、かなり早い段階で悟ったらしい。やや遅れてミドリヤも。だからこそ、彼らは「互いをうまく使」っているのだ。協力しているように見えるが、決して協調第一で動いているわけではない。

 

 二人の戦い方は、協調しないまま戦う様子には、違和感がない。元々仲が良好だったわけではないからだろうが、これがトーガタの予測を乱すことにも繋がっている。何が有用かわからないものだ。

 

 まあ、バクゴーとしては「トーガタが“個性”を発動するよりも早く攻撃を当てる」という正攻法でどうにかしたいようだが。なかなかそれをさせてくれないから、少しずつフラストレーションがたまっているように見受けられるな。

 

 とはいえ、トーガタはそれでもなお強い。私との戦闘経験があるからかA組全員がしっかり考えて動けているのだが、粘って攻撃を受けないように立ち回ることに精一杯で、トーガタに攻撃を通すことはできないままだ。それも完全ではないので、少しずつ人数が減っていく。

 

「お前らは行かないのか?」

 

 そんな戦いを眺めていると、ふとイレイザーヘッドから声をかけられた。

 

「私は別に、ナンバーワンには興味がないのでー」

「私はトーガタとの手合わせは経験していますから、ここは譲るべきでしょう。そもそも私たちの場合、フォースがトーガタの“個性”を貫通しますから。私たちまで参戦した場合、彼が伝えようとしていることがうまく伝わらない可能性が高いと踏みました」

「……ああ。そういやそうだったな」

 

 フォースはこの宇宙のあまねくすべてと繋がる力だ。この力は、「透過」されることを許さない。それを引き出せる私たちは、彼と比較的正面から殴り合うことができるのだ。

 さらに言うなら、私は前期にトーガタと“個性”ありで手合わせをしている。機会は一日のうちわずかな時間だけだったが、回数はかなり重ねた。お互いに手の内をそこそこ晒しているので、ここに割って入ろうとすると私と彼の戦いだけで終始してしまいかねない。

 

 以上の理由から、私たちの参戦は今回の趣旨に反すると考える。

 

 イレイザーヘッドもそこは理解できたようで、それ以上は何も言わなかった。

 

「ぐぅ……ッ!?」

 

 と、ここでトドロキが脱落だ。これで残るはバクゴーとミドリヤの二人だけ。いつものように吼えながら前へ出るバクゴーと、倒れたトドロキを気遣うミドリヤ。

 こういうところでも対照的な二人だが、今この瞬間だけを見るのであれば、バクゴーのほうが正しい。強大な敵を目の前にして、よそ見をする余裕があるのかという話だ。

 

 案の定、ミドリヤがスキを突かれて攻撃を受ける。急所は外して、脱落は免れたようだが……手痛いダメージを受けたことは間違いない。

 

 そしてそこに、ミドリヤごと爆破しようと突っ込んでくるバクゴー。これまた彼らしいと言えばらしいのだが、そういう攻撃はせめて巻き込まれる側が相手を拘束しているときにやるべきではないだろうか。

 

 トーガタも同じようなことを思ったのだろう。“個性”で攻撃を透過しつつ、反撃を――

 

「負けねええぇぇぇぇ!!」

「ぐッ!?」

 

 ――しきれず、爆破を受けた。

 

「おおッ、さすが爆豪!」

「やっと一発いいの入った!」

「畳みかけたれ爆豪ー!」

 

 これを見て、いまだグロッキーだった脱落組が歓声を上げる。彼らと同時に、アマジキやハドー、イレイザーヘッドも目を見張る。

 

 私も同様だ。だが、私は彼らとはまったく異なる理由でそうしていた。

 

 急所ではなくともトーガタに、バクゴーの攻撃が入った。そこは別に驚かない。バクゴーほどのセンスがあれば、この戦闘中に一、二度はできるだろうと思っていた。

 だから私が驚いたのは、そこではなく。

 

「ヒミコ! 今、今の! 感じたか!?」

「はい、しっかりー」

「やはり! ……そうか、そうか……! 遂に、遂に()()()()か、バクゴー!」

 

 思わず両手を拳にして、声を上げる。

 そんな私の姿が珍しいのか、全員の視線がこちらに向くが……今はそれを気にしている場合ではない。

 

 私が見ている先で、バクゴーが正面からトーガタと殴り合っている。必殺を期した攻撃は、しかし互いの適切なガードやパリィによってさしたるダメージにはならず、どちらも一歩も引かない。

 普通であれば、あり得ない光景だ。雄英のトップに立つ男と、一年生が対等に渡り合うなどあり得ない。

 

 だがそこに、そこにフォースがあるならば――フォースの馴染んだ「爆破」が「透過」を貫通したとしても、それは何もおかしなことではない。

 

「……まさか、君()使えるとはね! これはさすがに、ちょっと想定外なんだよね!」

「ハッ! なんの話だよ先パァイ!!」

 

 フォースを宿した爆発がトーガタを襲う。今までと違い、トーガタの「透過」を無視する爆発だ。それを目の前にして、トーガタはしかし慌てていなかった。

 

「けれど! 実はそういうの初見じゃないんだよね! 必殺! ファントム・メナス!」

 

 彼は“個性”を発動させるや否や、周辺に屹立しているトドロキ産の氷に飛び込んでいく。かと思えば次の瞬間、彼は文字通り目にもとまらぬ速さでバクゴーに向けて飛び出した。

 

 トーガタの“個性”はほぼあらゆるものを透過するが、物質に透過している状態で“個性”を解除すると、物質のない場所へ弾き出される。その際の速度は凄まじいものがあり、弾き出される瞬間の身体の向きを調節すれば向かう先をコントロールできる。彼が最初から見せていたワープのような瞬間移動は、そういう原理でなされている。

 

 では、その弾き出される方向を、敵に向けたらどうなるか?

 

 答えは簡単だ。人間の普通の目では絶対に視認できない速度で放たれるタックルになる。

 さらに拳を振るうという動作を組み合わせれば、瞬間移動は多くのものを粉砕する必殺の一撃へ早変わりだ。

 

 これを、周囲の壁や障害物を利用することで前後左右、場所によっては上下をも含めた全方位からの超速連続攻撃とする。それこそトーガタの、いや、ヒーロー「ルミリオン」の必殺技、ファントム・メナスだ。まさに、見えざる脅威である。

 

「が……ッ、は……ッ!?」

 

 この攻撃は、さすがのバクゴーも初見で、しかも至近距離でされては防ぎきれなかった。

 一発目は辛うじてかわし二、三発目まではなんとか防御できていたので、十分すぎる成果ではあるのだが。それでも繰り返されると凌ぎきれず、やがて強烈な一撃を鳩尾含め複数の急所に受けてしまった。

 まあ、フォースでブラスターを避けるのも少し慣れがいるし、これは仕方あるまい。

 

「かっちゃん!」

「POWERRRRR!!」

「うぐぅッ!?」

 

 そして直後にミドリヤも殴りつけられ、くずおれる。

 

 こうして、突発的に行われたA組VSルミリオンという戦いは、ルミリオンの勝利で一応の終結を迎えたのであった。

 

***

 

 その後、改めてトーガタから説明がなされた。

 

 自身の“個性”がとても制御が難しい代物で、入学してからしばらくは底辺の成績であったこと。

 インターンに参加し、プロヒーローに直接指導してもらいつつ、多くの経験を積んだこと。

 その経験を力に変えてトップをつかんだこと。

 言葉ではなく、直接その経験を伝えるために手合わせをしたこと。

 

 そして……インターンではプロとして扱われること。

 ゆえに、ときには人の死にも立ち会うことがあること。

 

 そういったことを話しつつ、現場で得られる経験の多さ大きさから、どれほど怖くてもインターンはやるべきだという話であった。

 

「いやしかし、思ってた以上にみんな強くて少し驚いたよね! 今年の一年生は有望だ!」

「けど攻撃当てられたの、爆豪だけでしたし……」

「それな」

「いやいや、俺だって一応は本免許持ってるんだよね! 一斉に相手したとはいえ、まさかここまで粘られるなんて思ってもみなかった! 一年の頃の俺と比べたら、みんな十分すぎるくらい強いぜ!」

 

 朗らかに言うトーガタに対して、キリシマとカミナリが決して明るいとは言えない顔で言う。

 トーガタは間髪入れずにフォローを入れるが、それで安心できるほどA組の面々は呑気ではない。

 

「攻撃をなんとかしのげたのも、ぶっちゃけ増栄ちゃんとの訓練で先回りしまくってくる相手に慣れてただけだしぃー」

 

 アシドの言葉に、多くの人間がうんうんと頷いた。

 

 その中から、ハガクレがふと思いついたようにこちらを見る。

 

「ていうかその()()()()()と、それにひみちゃんはなんで手合わせに参加しなかったの? もったいない」

 

 彼女以外の視線も向いたので、先ほどイレイザーヘッドにした説明をもう一度する。

 

「そしてトーガタとは、既にそれなりに手合わせをしているからな。君たちに機会を譲るべきだと判断した」

 

 まあそう締めくくったら、全員から羨ましがられたわけだが。

 ここでただ驚くで終わらず羨望にすぐ行きつくのだから、我がクラスの面々は本当に頼もしい。ああ、彼らが全員フォースユーザーであったらなぁ。

 

 だがそう、フォースユーザーと言えばだ。

 

「バクゴー!」

「あ゛?」

 

 インターンについての話が終わり、授業としての時間も終わったタイミング。

 私はいの一番にバクゴーに駆け寄った。

 

「遂に目覚めたな! おめでとう!」

「……あれはやっぱりそういうことか」

 

 私の言葉に、バクゴーは納得した様子を見せた。どうやら、彼の中でもある程度推測はできていたらしい。

 そして私に声をかけられたことで確信を得た彼は、獰猛な笑みを見せた。

 

「増栄。俺に()()()()()()()()

「もちろん、そのつもりだとも!」

 

 彼の笑みに応じる形で、私も笑う。

 

「ただ、私にも予定というものはある。常に君に付き添えるわけではない」

「んなこたわかっとるわ。俺だって暇じゃ……」

「そういうわけなので、適任者に一任する」

「はあ?」

 

 私の言葉に、眉をひそめるバクゴー。

 

 そんな彼の目の前に……私の隣に並ぶ形で、アナキンが現れた。

 

「……はあ!?」

 




前章の後書きに対するリアクションからして、察してる方は多かったですね。その通りです。
というわけで、みんな未来予知を突破するために戦闘中に考える癖が染みついてるので、なんだかんだでA組全員原作より粘りました。
ただ突破できるかどうかはまた別問題。ルミリオンは強かった。

ちなみにこちらもお察しいただけるかと思いますが、わりと目を懸けていた子がフォースに目覚めたので、理波はかつてないほどテンション爆上がりしてます。ウッキウキコトちゃんです。
ガチで満面の笑みを向けたので、状況からして仕方ないとは思いつつも、むすくれている子が後ろにいます。
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