銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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4.マスター・スカイウォーカーの条件

 私の隣に現れたアナキンを見て、バクゴーが目を丸くして硬直する。彼がこぼした「はあ?」という一語は、まごうことなき彼の本音であろう。

 

 だがそういう反応をするということは、彼にはフォーススピリットであるアナキンがはっきりと見えているということに他ならない。それはフォースに目覚めているということだ。

 

 実際、バクゴーとヒミコ以外の人間は誰も気づいておらず、何か起きているのかと怪訝そうにしている。一応、アナキンのことは夏以来女性陣だけでなく男性陣にもちらと話しているので、大半は察しているようだが。あとそれはそれとして、ジローは顔色が悪い。

 

 しかし目の前の事実に意識を奪われている私は、周りをよそに一層笑みを深めた。

 

「紹介しよう、バクゴー。彼は私の古い盟友にして、今の師でもある男だ」

『アナキン・スカイウォーカーだ。見ての通りの幽霊さ』

「んな……」

 

 あのバクゴーが仰天している姿に、アナキンは何を思ったのか楽しそうにしている。確かに通常見られるものではないのだが。まったく、いたずらな気質は相変わらずだ。

 

 とはいえ、バクゴーはすぐに気を取り直して色々と考え始めているのだが。最初に思いつくのが「どういう“個性”なのか?」という辺り、この星の現代人である。

 実際にはその思考は完全に的外れなのだが、今の地球における一般的な知識では絶対に辿り着けないものがアナキンの正体なので、無理はない。

 

 そして納得いく答えには辿り着けなかったであろうバクゴーではあるが、重要なことはそこではない。彼自身もそれにはすぐ思い至ったようで、改めてアナキンに向き直った。

 

「……幽霊でもなんでもいい。俺はそれも使って上に行くだけだ」

 

 まあ、そう言った彼とアナキンでは、十センチ以上の身長差があるので見上げる形ではあるのだが。

 

 対してアナキンは、バクゴーの不遜とも言える態度を見て小さく鼻で笑う。

 もちろんバクゴーはこれに反発を抱き、ぎろりとにらみつけたのだが……まあ、ジェダイでは英雄と呼ばれ、シスでは最強クラスの暗黒卿であり、史上最強の暗黒卿の側近でもあったアナキンである。一学生のにらみが効くはずはない。

 

 案の定、アナキンは聞き分けの悪い子供を見るような表情を浮かべた。彼にしてみれば、文字通り児戯なのだろうな。

 

『ああ、悪いね。どうも僕の弟子になる人間は癖が強いやつばかりで、困ったものだと思ったのさ』

「それを君が言うのか……」

 

 ジェダイの師弟は、基本的に評議会で選ばれるものである。その基準は様々だが、両者の性格的な相性も判断には含まれているはずなのだ。

 そして、性格的な相性の良さは性格の相似性と無関係ではないというのが一般論であろう。

 

 そもそもの話、アナキンは型破りで有名だったマスターの門下だ。私はアナキンに、「類は友を呼ぶ」というこの国のことわざを無性に贈りたくなった。もちろん衝動に任せて口にはしないけれども。

 

『その言葉、そっくりそのまま君に返すぜ?』

 

 そう思っていたら、私に飛び火した。思わず顔をしかめる。

 

「そんなはずはない。私ほど癖のない人間もそうそういないだろうに」

『それこそそんなはずはないってもんだ!』

 

 ところが私の抗弁に、アナキンは爆笑した。解せぬ。

 いや、最近の私がジェダイの教えから逸脱した行動をしがちであることは否定しないが。それでもアナキンや、その弟子であったアソーカ・タノ、あるいは師のマスター・ケノービ、マスター・クワイ=ガンに比べれば私などかわいいものではないか。

 

「属性のごった煮みてぇなやつが何ほざいとんだお前……」

「そんな馬鹿な!?」

 

 バクゴーすらそんな認識なのか!?

 

『さて、難題に明快で愉快な結論が出たところで話を戻そう。バクゴー、君にフォースを教えること自体は別に構わない。ただ、いくつか条件がある』

 

 愕然とする私をよそに、いきなり真顔になるアナキン。応じてバクゴーも顔を引き締め向き直ったため、私は一人取り残されるような形になった。

 

 そんな私を、今まで黙って成り行きを見守っていたヒミコが企みがあるような笑顔で抱き上げる。いわゆる抱っこの形になった私は、頭をなでられるまま全身を委ねつつ、明後日のほうに目を向けた。

 

 ……こらアシド、写真に撮るんじゃない。

 

「いや、かわいすぎてつい」

「ついじゃないが。ハガクレ、君もだぞ」

「ごめんこれはちょっと我慢できない」

 

 結局、二人とも手はとめてくれなかった。いつもはとめてくれるヤオヨロズやツユちゃんですら生暖かい目で見守るばかりなので、仕方なく私は遠い目で視界を別のほうへ向け。

 

 そしてその先で、五体投地の体勢で本気でこちらを拝むミネタを見てしまい、私の目は死んだ。

 教室の床で何をしているんだ、ミネタは。もはやクラス全体がないものとして扱っているが、それでいいのか。

 

「条件だァ?」

『ああ。なに、ヒーロー志望の君ならこなせるだろう条件しか出さないさ』

 

 関係のないところで混乱する私をよそに、アナキンとバクゴーの会話は進んでいく。

 

 アナキンが提示した条件は「悪事に使用しない」とか「生兵法で調子に乗らない」といったもので、確かにヒーロー志望なら問題ないものばかりであった。

 フォースに関してアナキンの指示は絶対であるという条件も提示されたが、これも妥当であろう。それだけフォースは扱いを間違えると大変なことになるものであり、このことは間近で私を見ているバクゴーには納得できるものだろう。実際、彼は特に何も言い返さずに是と応じていた。

 

 ただ、そんな彼でも受け入れられない条件があった。最後に提示されたその条件とは、

 

『最後に……バクゴー。ミドリヤに謝罪して和解するんだ。上辺だけじゃなく、根本的にしっかりとな』

「んなっ!?」

 

 というものであった。これにはバクゴーも気色ばみ、ふざけんなと声を荒らげた。

 

 私はと言えば、アナキンが出した条件の意図がわからず、首を傾げるばかりである。もちろん、アナキンが見えず声も聞こえていないクラスメイトたちは、突然のことに随分と驚いている。

 

『なんだ、できないのか? 仕方ないな……一言謝るだけで済むだろうに、難儀なやつだ』

 

 これに対するアナキンの答えは、だいぶ辛辣なものだった。彼にしては相当手厳しい。

 

 そもそも、謝るとはどういうことなのだろう。

 いや、確かにバクゴーは日頃からミドリヤに対してやけに当たりが激しいが、見ている範囲では何か大きな衝突があるようには見えないのだが。

 

 しかしアナキンがそう言うということは、実際に何かあったのだろう。それも、非常によろしくない何かが。

 

「誰もできねぇなんて言ってねぇだろが!」

『口に出さなくとも、心がそう言っているさ。先に言っておくが、僕は生前フォースの申し子なんて呼ばれていてね。それくらいフォースが得意なのさ。僕の前で、目覚めたばかりの君が隠し事なんて夢にも思わないことだ』

「ぐぬ……ッ!」

『ま、自殺をそそのかすほど嫌っていたんだもんな。できなくても無理はないか』

「な……ッ!?」

「なんだと?」

 

 それは聞き捨てならないぞ。もちろん、かなり踏み込んだ話になるだろうから、ここで掘り返そうとは思わないが。

 私だけでなく、ヒミコも揃って顔をしかめたのは、人として当たり前の反応として許されるだろう。本当、何をしていたんだバクゴー。

 

『とはいえ、別に僕も鬼じゃない。段階くらいは踏ませてやるとしよう。そうだな……一度、腹を割って本心で話し合うんだ。最低でもそれができないうちは、僕から何かを教えることはないと思え』

 

 ぴしゃりと断言したアナキンは、次いで私たちに目を向ける。

 

『コトハ、トガ。君たちもだ。バクゴーがこの条件を達成するまでは、彼に何を言われてもフォースに関して教えることを禁じる』

 

 そしてそう言い切ったアナキンの目には、ジェダイらしい正義感が見えた。

 一度シスに堕ちたアナキンだが、本をただせば卑怯なことや悪辣なやり方を嫌う正義漢だった。だからこそ、彼はジェダイとして英雄と呼ばれていたのだ。

 

 そんな彼の怒りに触れるような何かを、バクゴーはかつてミドリヤにやっていたのだろうな。

 あのアナキンがここまで言うのだ。であれば私たちに否やはない。友人としてではなく、弟子として返すとしよう。

 

「畏まりました、マスター」

「はぁいわかりました、ますたぁ」

「……チィッ……!」

 

 アナキンに頷いた私たちに、バクゴーは大きな舌打ちをする。

 それからミドリヤを一度ぎろりとにらむと、荷物を荒々しくひっつかんで大股で教室を出て行ってしまう。

 

『僕は幽霊だ、どこにもいないがどこにでもいる。用があれば呼ぶんだぞ』

 

 彼の背中にそう投げかけるアナキンの声がやけに軽いのが、妙に印象的だった。

 

 そしてアナキンが消えるのを確認して、私はため息を一つつく。やれやれ、どうなることやら。

 

 が、私のこの仕草を見て、色々と終わったと判断したのか周りから声がかかった。

 

「見えない何かと会話されていたようでしたけれど、もしかしてお相手はスカイウォーカーさんですの?」

「その通りだ」

「ああ、なるほど。……かっちゃん、随分機嫌悪くしてたけど、一体どんな話を……?」

「バクゴーがフォースに目覚めたから、その手ほどきをするように頼んだのだ。そのための条件が、彼に折り合わなかったんだよ」

「なるほど、すんごい爆豪くんっぽい話や」

「いや待て待て! 爆豪のやつ、これ以上強くなんのか!?」

「むう……これ以上離されるのはさすがに口惜しいぞ……」

「まったくだよ! 私たちだって覚えたい!」

 

 声を荒らげたカミナリ、盛大に顔をしかめて腕を組むトコヤミに応じたハガクレが、ぷんすかしながら腕を振るう。

 

 だが、こればかりはどうにかなるものではない。私を抱き上げたまま、ヒミコが彼女を受け止めるのを見ながら、私はわずかだが憮然としつつ首を振った。

 

「フォースは先天性の能力だから、残念ながら……。それに仮に才能があったとしても、一般的には相当の鍛錬を積んでいかなければ目覚めるには至らないものであるからして」

「むきー! 私もひゅってしてばーんってやりたい!」

ふぉふぇんふぇへ(ごめんねぇ)ふぉふぉふひゃん(透ちゃん)

 

 納得しきれない様子のハガクレが、ヒミコの頬を両手でむにむにする。

 ずるい。私もやりたい。

 

 いやそうではなく。

 

 確かに、善人であるA組の面々にであれば、フォースを教えることに否やはない。彼らならまっとうに使ってくれることは間違いないし、世のため人のために使える手段は多いに越したことはないし。

 

 そして実のところ、私の“個性”があればできないことはないのだが……フォースのバランスを崩すことになり得るので、下手にすると大変なことが起こりかねないのだよな。

 まあ、ミディ=クロリアンそのものの数を増幅するのではなく、ミディ=クロリアンの能力を増幅する形でやるならなんとかなるのではないかとも思うが……それにしてもミディ=クロリアンの絶対数が少ない場合、フォースセンシティブの水準に届かないだろうし。

 

 うーむ、一度ミディ=クロリアンの検査機を造ってみるかな? 数値がはっきりすれば、あるいは覚醒できるものも輩出できるかもしれない。

 

 私はそう思いながら、負けじとヒミコの頬をむにむにと揉む。乳房に勝るとも劣らない素晴らしい感触だった。また一つ、ジェダイに不要な知識が増えてしまったな。

 

 当のヒミコはそのまま右から私、左からハガクレにもてあそばれる形になったのだが、どこか楽しそうに目を細めている。カァイイ。

 

 なお、ミネタはここまでずっと私たちを拝んでいた。ぜひとも見なかったことにしたい。

 




かっちゃんのいじめ問題は控えめに言って大問題で、そこが改善されないまま物語が進行することに対してずっと否定的な声があったのは、堀越先生も把握してたみたいですね。
原作でそれが一応の着地を見るのは33巻とめちゃくちゃ遅いわけですが、本作ではアナキンが黙っていませんでした。
というわけで、かっちゃんのフォース正式習得はもうちょっとお預け。

【おまけ】
「バクゴー、君もジェダイにならないか?」
「ならねェ」
「だよなぁ……(´・ω・`)」
「よしよし」
「残念だなぁ……(´・ω・`)」(ダキツキー
「……♡」
満面の笑みを自分以外に見せた件については、これで帳消しにしてくれました。
なお昂ってしまったので結局チウチウは激しかった模様。
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