ビッグ3も巻き込んだヒーローインターンの説明会が終わり、翌日。
「一年生のヒーローインターンですが、昨日協議した結果……校長をはじめとした『やめとけ』という意見がわずかに多数派となりました」
朝のホームルームの時間、本日の連絡事項をすべて伝え終わったあとに、イレイザーヘッドはそう言った。
すると、当然のようにクラスのそこかしこからブーイングが上がる。
「えー!? あんな説明会までして!?」
「でも全寮制になった経緯から考えたらそうなるか……」
「クソが!!」
「が、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見も過半近くあり、方針として『インターン受け入れの実績が多い、もしくはビルボードチャート上位の事務所に限り一年生の実施を許可する』という結論に至りました」
しかしイレイザーヘッドがそう付け加えると、クラス内の雰囲気は一転して熱を帯びた。
「……範囲狭ない?」
「セルキーさん連絡してみようかしら」
「ッシャオラァ!!」
……バクゴーは百面相をしているが、アナキンが出した条件をクリアする目処は立っているのだろうか? インターンに行くよりは先にフォースをある程度修めたほうがいいと思うが。まあその辺りは彼が判断することではあるけれども。
とりあえず彼のことはさておくとして。
「その『実施を許可された事務所』を、こちらでピックアップしておいた。もしもヒーローインターンに行きたい場合は、放課後職員室まで来ること」
そうして配られた書類は、体育祭のときに配られたスカウトの一覧と違い明らかに薄かった。一番指名が多かった私ですら、用紙は二枚しかない。随分と厳しい基準を立てたようだ。
というか、スカウトがなかったもの用の職場体験先など、このピックアップに残っているところは皆無のようだ。
とはいえ、これだけ少ないのであれば選定の手間は省ける。資格試験が終わったあともインゲニウムの復帰が遅れる可能性はあるし、そもそも彼がインターン受け入れをできるかどうかもわからないので、調べるだけはしておくとしよう。
やるのは主にI-2Oだが。この程度であれば、彼の手にかかれば一時間もかからないだろう。
やはり最初にドロイド開発に手を付けたのは間違っていなかった。こういうとき、使える手が多いのはいいことだ。
そして放課後。バクゴーを筆頭に、クラスの三分の一ほどがまっすぐ職員室へ向かった。どこに行くかはわからないが、みなやる気は十分ということだろう。
すぐに行かなかったものも、やる気はある。ただ、我々は現段階では必修科目の履修が済んでいない一年生だ。普通にしているだけでは学業との両立が難しい。単純に実力不足ではないかと思っているものもいる。この辺りは人それぞれというやつだな。
「誰もが上手くいくといいな」
「ですねぇー」
その中でも、特殊な事情でインターンへの参加を控える予定の私は、やや他人事のように彼らを見送ったのであった。
***
さてインターンはそんな調子で、私たちは少し距離を置いているわけだが。
それとは別に、入学式のときに見たフォースヴィジョンのことは忘れていない。念のため、I-2Oには日本全体(移動手段が限られるため、国外は今回は泣く泣く除外)の情報を収集・精査するように指示を出してある。
出してあるのだが……。
「……I-2O、これはなんだ?」
「I・あいらんどノでーたダケド?」
「それは見ればわかる。なぜそんなものがここにあるのか、と言っているんだ」
「ンナノ決マッテンダロォ、アノ事件ノトキニ丸ゴトイタダイテキタカラダゼェ」
そう。I-2Oと来たら、事件のときに中枢に接続したことをいいことに、I・アイランドのデータを引き抜いてきてしまっていたのだ。
ただのデータではない。全データ、だ。I・アイランドの設計図や見取り図は当然のように含まれているし、警備関係のシステムもある。島を動かす動力やシステムだって丸ごとここにあるし、詳細出資者はどこの誰か、どこのテナントにどこの企業が入っているか、居住区にどこの誰が住んでいるかまで……文字通りの、全データなのだ。
「時間ハカカッタガ、ソレデモココマデ見ヤスク綺麗ニ整理シタンダ。俺様ニモット感謝シテクレテイインダゼ、ますたー?」
そんなものが簡単に検索ができるように整理された上に、私が特に興味を持つだろう部分をピックアップしてまとめて出してきたのだからたまらない。
「違うI-2O……そういうことじゃないんだ……」
思わず頭を抱える私をよそに、I-2Oは得意げだ。
「ますたーハソノウチ、じぇだいヲ作ルンダロ? ナラドコノ国ニモ属サナイ、海ヲ移動可能ナ基地ナンテ、拠点ニハ最適ジャネーカ。ソノ候補選ビヲ手伝ッテヤッタッテノニ、何ガ不満ナンダ?」
それどころか、などとのたまう始末である。
「大体、ますたーダッテコナイダヤッテタジャネーカ」
「うぐ」
挙句の果てにこれである。
データの不正取得について言及されてしまったら、私はこれ以上何も言えない。うなりながらも、渋々認めるしかなくなってしまう。I-2Oは勝ち誇ったかのように笑った。
造られてから半年も経っていないAIとは、とても思えない挙動である。全力で造り上げた結果ではあるのだが、こういうのを見るとやりすぎたかと思ってしまうなぁ……。
「……任せていたことはできているんだろうな」
「ッタリメェヨ! 俺様ニカカリャコノクライ、でーた整理ノ息抜キミテーナモンダカラナ!」
仕方ないので一旦問題は棚に上げ、話題を強引に本題へ持っていく。
I-2Oはこれに対して、打てば響くとでもいった様子で即座にデータを見せてきた。
表示されたのは、雄英から電車で一時間ほどのところに位置する自治体に置かれた警察署に関するもの。具体的には、他地域の警察署と情報を共有するやり取りである。
……これも違法な手段で入手された情報だな。インターネットをただ漁るだけでは絶対に手に入らない。確かに禁止する命令は出していないが……そんな法の穴を突くようなやり方はしないでほしい。まったくもう、本当にこのドロイドは……。
だが、その中身はそうも言っていられないものだった。
「……ヴィラン連合と指定ヴィラン団体、『死穢八斎會』が接触した可能性あり……?」
どうやらどこかの廃工場で、両団体が接触した可能性があるとのことだった。廃工場では争ったような形跡があったものの、それが本当に争いなのか、あるいは工作なのかはまだわからないようだが。
とはいえ、場所については問題ではないだろう。オールフォーワンを失ったヴィラン連合が、あれから一か月も経っていないのに動き出したかもしれないという点が問題なのだ。
どういう意図があって、指定ヴィラン団体と接触したか。そして数ある組織の中から、どうして死穢八斎會とやらと接触することを選んだのか。そして両者の関係性がどれほどの状態なのか。まず明らかにしたいのはその三点だが……廃工場の件が発覚したのは本当にこの二十四時間以内のことらしく、詳細はまだ一切わかっていない。
もちろん、あのフォースヴィジョンが示していたものが、ヴィラン連合とはまったく関わりがない可能性もあるが……何かをやらかす可能性が最も高い組織であることには代わりない。まずはここからだろう。
とりあえず、死穢八斎會に関する情報は調べておくとするか……と、思いながらデータを順繰りに眺めていた私は、締めくくりの文字に思わず手を止めることになる。
「……サー・ナイトアイ事務所に捜査協力を要請……」
ここでその名前を見ることになるとは思わなかった。
確か、トーガタ……ルミリオンがインターンをしている場所だったはず。
そして、体育祭後私にスカウトを出してきたところでもあり……学校側が出した「インターン受け入れの実績が多い、もしくはビルボードチャート上位の事務所」の条件も満たしているところでもある。
つまり、行こうと思えば私はここにインターンに行ける。いやはや、世間は狭いものだな。
まあ、繰り返しになるが、私はサポートアイテム関係の資格試験を控えているので、インターンはまだ行かないつもりなのだが。
しかしそれでも、何かしら手を打っておいてもいいだろう。やれることはすべてやっておくべきだ。
「……I-2O、この死穢八斎會という指定ヴィラン団体について、調べておいてくれ」
「
「それと、
そして私は――彼のやり口を、最低限容認することにした。
違法だ。はっきり言って、違法である。だが、有用であることは間違いないのだ。彼が集める情報があれば、犯罪に対して先手を打てるのだから。
そう思ったとき、私の脳裏に浮かんだのはあのマスター・クワイ=ガンだった。
同時に私は理解できてしまった。彼がジェダイでありながら、何度も何度も秩序に反する手段を取っていた真意を。
そう、彼は共和国の自由と正義のため、誰かを助けるためなら、己の手が汚れることを気にしない人だったのだろう。自分がどうなってでも、世のため人のためになるならば構わないと……そういう人だったのだ、きっと。
思えばマスター・ケノービも、アナキンも、そしてアソーカ・タノも。マスター・クワイ=ガンに連なる人々はみな、そういう気質の人だった。
より地球人らしく言うなら、考えるより先に身体が動くヒーロー気質の人。そういうことなのだろう。
とはいえ違法であることには変わりがないため、そこで己を律さなくなってしまうと、ドゥークー伯爵のように完全に道を踏み外すことになるのだろうな。
まあ、彼の場合はシスにささやかれたということもあるのだろうが……そのドゥークー伯爵こそマスター・クワイ=ガンのマスターなので、なんというか、血の繋がりはないはずなのに、確かな繋がりを感じてならない。
ともあれそう考えて、限定つきとはいえ許可を出したのだが。
「エッ」
「……『えっ』とはなんだ。まさかI-2O……他にも無断で手を出していると?」
「……エー、アー、ソノ……マアナンダ……公安ノ監視トカ……」
などと答えるI-2Oの歯切れはよろしくない。カメラアイが、あちらへこちらへと泳いでいる。
何かを隠していることは明白だ。
「それだけではないな? 白状するんだ」
「ウグゥ……マダ途中ナノニ……」
余計なことをしてしまった、とでも言いたげなI-2Oは、それでも渋々白状した。
「……銀鍵騎士団ニツイテ、調ベテタンダヨ……。ソノ関係デ、警察庁ノでーたべーすニモ色々ト……」
「あー……」
が、出てきたものの内容が内容だけに、またしても私は何も言えなくなってしまう。
かつてこの星で、独自のやり方でフォースに迫った組織。その情報は、確かに私にとってはそれなり以上の価値を持つ。
滅んだ経緯や、関係者から聞いた範囲から考えるに、あくまでそれなりにしかならないとは思うのだが……それでも、欲しくないと言ったら嘘になってしまうだろう。それくらいには、意味があるのだ。
「……仕方ない。それについてはそのまま進めて構わない」
「ソウコナクッチャナァ!」
「だがそれについても、承認なしで手を広げるのはなしだ」
「ハイヨ、仕方ネーナァ」
「返事は?」
「
やたら勢いよく答えるI-2Oに、私は小さくため息をつく。
これで特に何も出てこないとなると、私の精神衛生的によろしくない。手を付けたからには、何かしらの成果があってほしいものだ……。
***
ちなみに。
「拠点を作るなら、私たちの愛の巣もほしいですねぇ。誰にも邪魔されない、私たちだけの……んふふふふ、そこで一日中、ずぅーっと愛し合うのです」
「……そんな都合のいい場所になり得るところなど、地球上には存在しないと思うが」
「えぇー? むぅ……あっ、じゃあ宇宙! 宇宙にしましょう! お月さまとかどうですか? これならきっと誰にも邪魔されないのです! キレーな地球を見ながらイチャイチャしたいです!」
「確かに共和国の技術を再現できれば可能だが……」
名案だと言わんばかりに笑顔で胸を張るヒミコである。随分と突拍子のない話に聞こえるかもしれないが、言った通りやろうと思えばやれる。
そして確かに、地球外であれば誰にも邪魔されることはないだろう。何せこの星には、いまだ惑星外に進出する手段がないのだから。
なので完全に拒否するにも少しばつが悪く、ひとまずいずれ用意する新たなジェダイの拠点は、人工島か月面かの二択ということになった。
どちらにしても一年二年でどうにかなるものではないので、まだだいぶ先の話だが。
とりあえず、地球と月を往復するに足るスターシップのためにも、次は核融合炉を造るべきだろうかと思った私なのであった。
O・Kさん「マスターはそこまで考えていなかったと思う」
A・Sくん「なんてこと言うんですマスター」
少しずつ、セイバーの色のように闇に近づきつつある幼女です。
まあ元が光に寄りすぎていたので、まだ闇に踏み込んだとは言いがたい微妙なラインですが。
あ、せっかくだからアンケートしてみましょうかね。
将来の二人の愛の巣もといジェダイの基地はどこがベスト?
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目指せI・アイランド、移動可能な人工島
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目指せ脱地球、しがらみから離れて月面基地
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目指せ銀河帝国、上記二つを両立デススター