具体的に言うとダース・シディアスの本名に言及しているので、彼の正体が基本的に伏せられているEP1~3を見たことがない方はお気を付けください。
いやまあ、パンフとかでは普通にバラされてた(幼き日のひさな少年はパンフを投げた)んで大丈夫な気もしますが、一応念のため。
銀河の中心惑星、コルサント。その中枢がギャラクティックシティと呼ばれていたのはもはや昔の話だ。
元老院が有名無実化し、国号が銀河帝国へと変わった今、ここはインペリアルシティと呼ばれている。
ただ、名前は変われどその光景はさほど変わっていない。そもそも共和国の基盤を受け継いでいる帝国は、政府機関も大部分がそのままなのだから当然と言える。
その中で大きな変化と言えば、行き交う人々の中からエイリアン種が大きく減ったことが挙げられるだろう。
理由は簡単。帝国を手中に収める皇帝が、人間種をことさらに優遇しエイリアン種を差別する政策を採っているからだ。
このため、帝国が成立して数年が経った今では、中央省庁など各種機関の上層部は軒並み人間種が占めるようになっている。街を行く人々も同様だ。
そんな街並みを、コルサントで最も高い位置から臨む男が一人。
緩やかな黒いローブを身にまとった男は、一見すると老いさらばえた年寄りにしか見えないだろう。跳ね返された闇の力の直撃を受けたせいで醜く劣化したこともあって、実年齢よりも老けて見えるのだ。
それでも、老齢の域にある年齢と言っていいのだが……しかし、闇のフォースが完全に定着した不気味な黄金の瞳は、隠しようもないほど爛々と輝いていて。そこに宿された野望はもはや秘められることもなく、何よりも雄弁であった。
男の名は、シーヴ・パルパティーン。またの名を、ダース・シディアス。ジェダイを滅ぼし、銀河共和国を乗っ取るという長きに渡る悲願……復讐を成就させた、偉大なるシスの暗黒卿である。
「失礼いたします」
と、その背中に男の声が投げかけられた。機械に通され、特徴的な呼吸音を伴うくぐもった声である。
応じたシディアスがゆるりと振り返れば、そこには全身を暗黒の鎧と機械で覆った偉丈夫の姿。光を宿さない兜の疑似的な眼窩が、確かにシディアスの前にあった。
ダース・ヴェイダー。世に二人しか存在しない掟のシスにあって、その傍らを務める暗黒卿。シディアスのアプレンティスに当たる男。
そして銀河帝国の重鎮であり、皇帝ダース・シディアスの恐怖を体現する存在の一つである。
そのヴェイダーが、頭を垂れる。
「皇帝陛下、お呼びに従い参上いたしました」
「よくぞ来た」
鷹揚に応じたシディアスが、ゆるゆるとヴェイダーへと近寄り――そのまま横を通過する。
シディアスは振り返ることなく、供をせよ、とだけ告げて部屋の隅へと移動した。壁の一部にフォースを流し、動かせば、どこからどう見ても壁だった場所がぽっかりと開く。隠し扉である。
ヴェイダーにとってもその隠し扉は初めて見るものであったが、しかしこの程度のことではもはや驚愕には値しない。稀代の策謀家であり、様々な手段を駆使するシディアスがどこに何を隠していても、それは今さらのことでしかないのだ。
だからヴェイダーは無言でシディアスに続く。二人が入ったのは、小さなエレベーターであった。シディアスの操作に従って、箱は下へ下へと動き始める。
二人の間に会話はない。箱が動いている間、終始無言だった。
そうして二人がやってきたのは、闇のフォースが漂う暗い空間であった。決して狭い部屋ではないようだが、雑多に置かれているものが多いせいか広い印象を抱くものはいないだろう。
全体的に研究室と言った趣であるが、置かれている機材や調度品はフォースに親和性を持つものばかりである。古きシスの魔術に由来するものすらあるため、見る者が見れば宝の山でもあるだろう。
つまりここは、暗黒の工房なのだった。これにはさしものヴェイダーも、少々目を見張る。だがそれぞれがどういうものかを気にする暇はなく、彼は前を進むシディアスに従い続けた。
シディアスが足を止めたのは、そんな工房の奥。書斎と思しき部屋の中であった。古式ゆかしい紙媒体の書籍や書類が無造作に置かれた部屋の中で、シディアスが振り返る。その手には、いつの間にか正四面体の機械らしきものが置かれていた。
ヴェイダーはこれを見て、ホロクロン(フォースによって起動する記録装置)かと最初は思った。だが、ホロクロンと言うには随分と古めかしい。ホロクロンにはもう少し洗練された機械としての趣があるが、これは色のぼやけた樹脂で覆われており、全体的に武骨で時代がかっている。
そんな代物が、厳かにヴェイダーへ差し出された。
「これをそなたに与えよう」
「……これは?」
「ウェイファインダー(まだ航法テクノロジーが拙かった時代、宇宙の辺境を開拓する際の道しるべとして広く使用された道具)だ。シスによる、シスのためのな……」
受け取りながらも聞き返せば、意外にもシディアスは素直に答えた。
「ということは、未知領域のものですか」
「いかにも。……知っての通り、シスは一つの時代、師弟二人のみの存在。これはその師弟だけが持つことを許されるものだ。つまり持ち主を、正統なるシスであることを証明するものでもある」
免許皆伝を示すものではないと補足を付け加えつつ、シディアスは懐から正四面体の機械を取り出した。ヴェイダーに手渡されたものと、同じものであった。
「……そしてこれなるが示す先は、惑星エクセゴル。我らシスの、聖域と呼ぶべき星だ」
「……初めて聞く名です」
「であろうな。歴代のシスが秘匿を徹底してきた上に、通常の航路では絶対に辿り着けない場所にあるのだから。しかしだからこそ聖域足りうる」
「然りでありましょう」
「我が弟子ヴェイダーよ。正統なるシスに連なるものよ。いずれ時機を見て、エクセゴルに参拝する。そのときは同道せよ」
「仰せのままに」
再度頭を垂れるヴェイダー。これに頷くシディアス。
しかし直後、シディアスの顔がかすかに動いた。
「……陛下?」
その変化を、ヴェイダーも敏感に感じ取った。怪訝そうに声をかける。
だがシディアスはこれに応えず――ぐりん、と。
「
掌が向けられた。そこには強大なフォースが渦巻いていて。
すぐさま破壊の権化たる青白いいかづちが、
***
「――ああぁぁっっ!!」
全身に強烈な痛みが走った……ように感じられて。
私は思わず声を上げながら、飛び起きた。
「は……っ、は……っ! はぁ……! ……な、にが、起きて……」
あの瞬間、全身を襲った痛みは余韻すらもなく。
しかし荒れた呼吸と、じっとりと全身からにじむ脂汗が、決してただの夢ではなかったことを物語っていた。
あれは、あの人物は、間違いなくシスの暗黒卿ダース・シディアス。銀河共和国の平穏を破壊し、ジェダイ諸共滅ぼした張本人。
あんな、あんなにも恐ろしいフォースの持ち主だったとは。私が対峙したアナキンですら、あれほどのおぞましさは感じなかったというのに。あれがシスの頂点だというのか。
アナキンは、ルークは、あんな恐ろしい人物相手によくぞ勝てたものだ。立ち向かえと言われればもちろんやるが、しかし正面から向かって勝てるとはとても思えない。
「おい! おい、しっかりしろ、大丈夫か!?」
目が覚めてもまだおののく私の隣から、声が飛んでくる。
心配の色を隠さないそれに応じるように目を向ければ、そこにはやはり心配そうな顔をする
「大丈夫か? 一体何を見たんだ、
その私が言う。
ヒミコ? いや、私は――――。
――――そこまで考えて、
同時に変身を解いて、迷うことなくコトちゃんにすがりつく。
「……ふええぇぇぇぇ、怖かったよぉコトちゃぁん……!」
本当に、本当に怖かった。本家本元のフォースライトニングが、あんなに怖いなんて思ってなかったのです。あれに比べたら私が歯の人にやったやつなんて、赤ちゃんみたいなものじゃないです?
あんまりにも怖すぎて、涙がにじんじゃう。でもあんまりそんなトコは見せたくなくって、首筋に顔をうずめます。
ああ、コトちゃんのにおいがする。急なことで心配して焦ってくれたのか、ちょっと汗ばんでる。その中に、かぐわしい女の子のにおいがします。私の大好きな人のにおい。
安心します……世界で一番、ここがほっとするのです……。
「大丈夫だ。私はここにいるよ。大丈夫……」
ぎゅってする私の身体を、コトちゃんもぎゅってしてくれる。背中を、とんとんと優しく叩いてくれる。
そうしてしばらくすると、私も落ち着いてきました。ぽんとコトちゃんの手に触れて、少しだけ力を緩めてもらって上半身を起こします。
「……何があった?」
「……いつもの夢、なのです。いつもの夢……だったはず、なんですけど」
聞かれたままに、全部話します。遠い昔、遥か彼方の銀河系の夢を見るときは、いつも鮮明に覚えてるから苦労はしないのです。
でもあんなに怖かった夢なので、ちょっとだけ憂鬱。でもでも、フォースが見せてるなら意味がないはずはないと思うので、ちゃんと話します。そもそも、コトちゃんに隠し事なんてしたくないですし。
「どういうことだ……? 一体君の身に何が起こっているんだ……!」
「ですよねぇ……」
ただ、フォースに詳しいコトちゃんでもこの夢のことはよくわかんないので、どうしようもないんですよね。もどかしいのです。
本当、なんなんでしょこの夢。最近は頻度も上がってきてるし、面白くないのです。
どうせしっかり覚えてられる夢を見るなら、もっともっと楽しい夢がいいのに。具体的には、コトちゃんと一緒の夢がいいのです。
なんてことを思いながら、改めてコトちゃんに身体を預けます。コトちゃんは、優しく受け止めてくれました。すき。
透き通るような青い瞳がまっすぐ、気遣うように私を見てるのです。ほっそりしたちっちゃい手が、そっと私の頭をなでてくれました。その手つきがまた優しくて、あったかくて……気持ちよくて。身体も心もぽかぽかするのです。
ああ、好き。大好き。口元がにんまりするのがわかりました。
同時にかぷってしてチウチウしたくなりますが、さすがにこれは我慢します。今からまた
「……とりあえず、寝なおそうか。難しい話は明日、起きてからアナキンを交えてするとしよう」
「うん」
そのまま、そっと……まるでエスコートするみたく、ベッドに横にされました。
もちろんコトちゃんも一緒。横になった視界が、コトちゃんのカァイイ顔でいっぱいになります。
そんなコトちゃんが、ずいって迫ってきました。二人の距離がゼロになって、それで。
ちゅ、って。口元で小さく音が鳴りました。それだけで幸せって気持ちで一杯になれる私は、もしかしてチョロい女の子です?
「おやすみ、ヒミコ」
「うん。おやすみ、コトちゃん」
でも、そんなことはどうだっていいんです。
だって、この日はもう、遠い昔の夢は見なかったんですから。
フォース君「今回ばかりは濡れ衣だから・・・(震え声」
シディアスならこれくらいしそうだよなっていう・・・こう・・・EP1~9全編でラスボスやってたシスへの熱い信頼がある。
いや、彼がこういう行動を取ったのにもちゃんと設定は用意してあるんで、今までの夢が悪夢になっただけなんてことはないんですけどね。
もちろん、以前後書きに書いた通り彼がストーリーに関わってくることはないです。
少しお漏らししてしまうと、フォースくんは濡れ衣だけどフォースそのものはガッツリ関わってる。
詳しくはA組B組対抗戦編でやる予定なのでそれまでは明かせませんが、スターウォーズにお詳しい方は考察してみてください。
まあ仮に正解されたとしても、立場上言うわけにはいかないんですけども。
なお今回出てきたシス・ウェイファインダーは原作EP9に登場する道具で、まあ名前の通りシスが自分たちのために作ったウェイファインダーですね。
でもそのシス・ウェイファインダーが正統なシスであると示すものだ、というのは本作の独自設定なのでご了承を。
EP9でシディアスとヴェイダーがそれぞれ持っていたらしいといきなり出てきたので、どうして二人が持っていたのかを考えた結果です。
と、そんな感じで改めましてEP8「ヴィランの覚醒」はこれにておしまいです。
二十日間お付き合いいただきありがとうございます。
またここから書き溜め期間をいただきまして、書き上がり次第投稿していくことになります。
次の章が書き上がるまで、しばらくお待ちくださいませ。