銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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9.開催・文化祭

 昨夜の段階ではあくまでただの戯言だったはずの「遅刻するなよ」が、まさか現実になりかけるとは思っていなかった。

 しかも、原因は恐らくシガラキ・カサネとなれば私もさすがに少し焦ったものである。

 

 彼女がこの近辺にいた時間帯、確かに私たちは大きなフォースの気配を感じていた。だが、感じた範囲ではかなり光明面に近い色をしていたので、思わず自らの感覚を疑ったのだ。

 諸々を察して出撃しようとしたときには既に彼女の気配はこの近辺から消えていたので、何があったのかはわからないままである。これについては、文化祭が終わったあとにミドリヤに聞いてみるしかないだろう。

 

 まあ、それはいいのだ。もう終わったことである。

 それだけのことはあっても、ミドリヤはギリギリ間に合った。衣装などもすべて整えた上で、一応は間に合ったのだから、今はこれ以上語る必要はないだろう。

 彼は間に合い、私たちの出し物は大成功のままに幕を閉じたのだ。事情だってみなわかっているのだから、文句を言うものなどいないはずだ。

 

 そう、大成功である。会場は大いに盛り上がった。

 ゆえに改めて思いなおしたのだ。音楽というものが、どれほど素晴らしいのかということを。

 

 イレイザーヘッドが言ったように。イイダたちが懸念したように。私たちの存在そのものに隔意があるものだって、それなり以上にいたはずなのに。

 それらの壁を取り払って、姿かたちも、“個性”も異なるものたちの心が、一つになった。規模は関係ない。それは間違いなく偉大な成果だ。

 

 フォースでも感じたから、間違いない。あのとき、あの場にいた人間で、心を震わされなかったものは一人としていなかった。反感を持って会場に来ていたものたちであっても、例外はなく魂を揺さぶられて喝采を挙げた。

 

 だからあの瞬間は。舞台の上にいた私たちも、観客席にいたものたちも。一人とて向きをたがえることなく、同じ感情のもと楽しさを共有したのである。

 

 あのとき私の身体が熱を帯びたのは、運動だけが理由ではない。音楽によってどんどん昂っていく人々の心が、それに共鳴した私の心が、そうさせたのだ。

 高揚する心の衝動に身を任せたあの瞬間、きっと私は他の誰とも変わらない、ただの学生で、ただの少女だった。そのわずかな時間の体験を、心地よいと心の底から思った。

 

 ああ、実に遠くまで来たものだ。ジェダイだった前世を持つ私が、随分と変わったものだ。

 

 けれど、それでいいのだという確信もあった。

 フォースは黙したまま、何も語ってはくれないけれど。それでいいのだと、私は信じている。

 

 父上が奉じる仏の教えにいわく、この世界に常なるものは存在しない。なるほど、けだし名言である。

 

 であればこそ、私のありようが素晴らしい友人たちの影響で変わることなど、何もおかしくないだろう。その変化が、悪いものであるはずがないだろう。

 

 そして、この昂った感情の赴くままに一つ決めたことがある。

 

 もう少しだけ。少しでいい。歌をまともに歌えるようになろう。そう心に決めた。

 ジローほどに、とまでは言わないけれど。この友人たちと一緒に歌えるなら、それはとても楽しいことだと思うから。

 その場で私だけが見ているだけなんて、絶対に寂しいだろうと思うから。

 

***

 

 演出の兼ね合いで、体育館の中を大量の氷などで埋め尽くしてしまったので、私たちはしばらく片付けに追われることになった。

 B組の劇が見ものだとアナキンが言っていたので、気になっていたのだが……結局劇が終わるまでに片づけは終わらなかった。少し残念ではあるが、仕方あるまい。

 

 その片付けの最中、エリを連れたナイトアイとトーガタが顔を出した。どうやらエリも楽しんでくれたようで、いつになく上機嫌で、笑顔を振りまきながら必死に身振り手振りと共に言葉を引っ張り出して、感想を述べてくれた姿はとてもかわいらしいものであった。

 ミドリヤたちはこのあと、エリたちに合流して一緒に文化祭を見て回るらしい。エリを気にしていたツユちゃんも同行を願い出ていた。

 

 これ以外に特筆すべき点と言えば、恐らくは私たちに反感を抱いていたであろうものたちが謝ってきたことだろうか。私はもちろん、ほとんどのものがわざわざ言いに来なくともと思ったが、そこはプライドの問題なのだろうな。

 

 まあ、これに対してバクゴーが勝ち誇った顔で、実際に「勝った」と思っていたのはいつも通りと言うかなんというか。

 

「早く氷全部! 片付け!! 済ませようや!!」

「あ、ワリ! 峰田さっきからカリカリだな」

 

 対して、一人で阿修羅もかくやな顔をしていたのはミネタである。

 

「早くしねぇと!! ミスコンいい席取られるぞ!!」

 

 こちらも、いつも通りだ。

 だが彼については、最近女性に対して貪欲な姿を見る機会が減っていたこともあってか、いっそ安心すら覚える。

 

 で、せっかくだからとミスコンはクラス全員で見に行くことになった。もちろんバクゴーはまったく興味なさそうにしていたのだが、キリシマたちに捕まっていた。彼も随分丸くなったなぁと思う一幕である。

 

 なおミスコン……学校で一番の美女を決めるコンテスト。こちら女性であれば自薦他薦問わず誰でもエントリーできるのだが、A組は全員不参加である。

 

 というのも、私たちがミスコンの存在を知ったのは参加の締め切りが過ぎてからだったのだ。イレイザーヘッドは、意図して存在を明かさなかったのである。

 彼の場合、私たちを案じてなのか個人的な好悪によるものなのか、一見するとわからないが。

 

 彼の語ったところによると、出し物を決めるだけでも散々時間を浪費した私たちが、ミスコンまでやるような余裕があるのか、とのことである。

 

 実際B組からは一名コンテストに参加していたのだが、これによって出し物に多少影響が出ていたらしいので、イレイザーヘッドの判断は正しいだろう。

 全員一丸になっての出し物であった私たちのそれは、一人欠けるだけでも他のメンバーへの負担がかなり増える。言い方は厳しいが、そこを心配してくれたのだと思う。たぶん。

 

 ただ、事前に知らされていたとしてもA組から誰かが立候補していたかというと、微妙なところだとも思う。A組の女性陣はみな美形だが、そこを誇るタイプのものはいないからだ。先にも述べた通り他薦もありなので、そこから誰かが持ち上げられる可能性はあるだろうが。

 

 だとしても私やヒミコは、まず参加しなかったと思う。何せ私たちは互いに互いが世界で一番の女だと認識しているので、判断基準が少々ズレているのである。

 そして互いに互いが世界で一番の女だと認識しているからこそ、別の誰かが一位に選ばれたときの精神的負荷は大きいと予想できる。さらに言えば、そうなる可能性はそれなりにあるので……。

 いやまあ、私の場合そもそも身体の年齢が低すぎるので、いずれにしても論外だとは思うが。

 

 ちなみにミスコンの存在を知った日、アシドの提案により、A組の中で選ぶなら誰が一番か? という議題で女性陣で少し盛り上がったことがある。

 

「ねぇねぇ、A組でミス決めるなら誰だと思う!?」

「また急だな。そりゃヤオモモでしょ」

『わかる』

「え!? そ、そうでしょうか!? こ、光栄ですが、その、なんとも気恥ずかしいですね……」

「んー、私は透ちゃんだと思うんですよねぇ」

「へ!? わ、私!?」

「ああ、私もそう思う」

「ことちゃんまで!?」

 

 最初に口火を切ったジローに続いて多くのものがヤオヨロズを推す中、ヒミコと私だけはハガクレで一致していた。

 

 これには他のものも興味津々で、ハガクレに視線を集中させる。普段あまり注目を浴びる機会のないハガクレは、これに大層照れていた。

 

「正確に見て取れるわけではないのだが、フォースによる位置の感知方法はエコーロケーションに近い仕組みでやるのが一番簡単でな。これを至近距離で精密にやると、大雑把にだが顔の造形もわかるんだ」

「はい。なので透ちゃん見えないですけど、見た感じ一番カァイイなーって。ちょっとクセのあるふわふわな髪もカァイイですよねぇ。誰からも見えないのにお肌も爪も髪も、ちゃぁんとお手入れ欠かしてないところとか、トガ的にはとってもポイント高いです」

「ふえぇ」

 

 満面の笑みでヒミコに頭を撫でられたハガクレは、見えずとも誰にでもわかるくらい、明らかに動揺して赤面していた。誰にも言わないでいた、誰からも気づいてもらえなかった自身のこだわりに気づいてくれたことが、心底嬉しかったらしい。

 まあ、気恥ずかしさをごまかすためか、ヒミコの胸元に顔をうずめたことに関しては思うところがあるが……状況が状況だけに、これは仕方ないだろう。気にしないことにした。

 

 なお、それを見たミネタが「やはり百合の間に挟まる女なのか……!? いやでも、これは自分から挟みに行ったわけで……くっ、どっちだ……!? ダメだッ未熟なオイラにはわからねぇ……!!」と、滝行中の修験者よろしく険しい顔で合掌しながら叫んでいたが、こちらは誰からも気にされていなかった。

 

 ……話を今に戻そう。

 

「ミスコンも終わったし、次どこ行くよ?」

「C組の心霊迷宮ヤバそー。行かねぇ!?」

「行くー!」

「ヤダ。ウチヤダ」

「アスレチックあるんだ? 勝負しようぜ!」

「くれえぷ!」

「うむ、ではここからはそれぞれ別行動だな!」

 

 ミスコンも終わったところで、意見がバラバラな様子を見たイイダに私も頷く。

 

 そのイイダは、トドロキやトコヤミたちと行動するようだ。そこにショージと、意外なことにアオヤマも同行した。以前までのアオヤマなら、単独で行動しそうな状況だが……彼も心境に変化があったのだろうな。

 

 それとカミナリの意見に同意したアシドの二人には、ミネタとハガクレがついていった。男二人がクラスでも女性に対して人一倍貪欲な二人なだけに、アシドとハガクレが少し心配だ。

 

 一方、アスレチックを挙げたキリシマにはセロやオジロが合流。その中には、これまたいつものようにキリシマに引っ張られてバクゴーもいた。

 

 心霊迷宮なるものを断固拒否したジローは、ヤオヨロズと行動するらしい。これを見たミネタが「まさかこっちにまで百合の波紋が……? いやこっちはさすがにないか……? だが待てよ……ありかなしかで言えばありよりのあり……」と、何やら読経をやたらめったら短時間で終わらせようとする僧侶のようにブツブツしていたので、ツユちゃんがいつものように舌で一発喝を入れていた。

 

 ウララカは、ミドリヤやツユちゃんと共にエリたちに合流するようだな。彼女もエリに対してはやはり思うところがあるのだろう。

 

 それぞれが別々に行動し始める様子を眺めていた私たちは、さてどうするかだが……これについては、最初から決めていた。言葉にして確認したわけではないが、お互いにそうするものだと確信していたのである。

 

「じゃあコトちゃん。私たちも」

「うん、行こう」

 

 手を絡めて、身体を寄せ合って、人混みの中に溶け込んでいく。

 

 そう、デートだ。こんな大きなお祭りである。しないほうがおかしい。そうだろう?

 

「……?」

「ヒミコ?」

 

 その直前である。

 何かに気づいたように、ヒミコが一度だけ後ろに振り返った。彼女に続くように私も振り返ったが……身長の関係で何があったのかはよくわからない。

 

 ただ、なんとなくだが別行動を取ったはずのクラスメイトから、視線を向けられていたようには感じられた。

 あれは、もしかしなくても――

 

「――……んーん。なんでもないのです。ほら、行こ?」

 

 ヒミコも、それは感じ取っているはずだ。だが、彼女は……一瞬申し訳なさそうな顔をしたものの、すぐにいつもの表情に戻ってこちらに向き直った。

 

「ん……まあ、君がそれでいいなら私からは何も言うまい。では、どこに行こうか」

「お腹すきました! まずは何か食べましょう!」

「いいな。せっかくだから、今日は食べ物類はすべてを制覇したいところだ」

「あはは、コトちゃんは食いしんぼさんですねぇ」

「なんとでも言ってくれ。それでも私は食べるからな」

 

 そうしてそんなことを言い合いながら。

 私たちは、和やかに文化祭を楽しみ始めたのであった。

 




バンドシーンは原作とほとんど変わらないのでカットです。申し訳ない。
一応、練習シーンでも言及されていたように、スポットライトを動かすのは口田くんに代わってヒミコト二人でやってるんですけど、逆に言えば違いはそれくらいなんで・・・。
ああ、あとは峰田のハーレムパートにヒミコト二人は参加してません。お察しの通り、本作の峰田は百合の間に絶対挟まらない&挟まる男絶対殺すマンなので・・・。

そもそもの話、原作を見れば見るほど完成度が高くて、下手に何か加えてもマイナスにしかならないと思ったんですよね。音楽ってやっぱこう、文字で表現するには難しいというか。力不足と言ってしまえばそれまでなんですけどね。

なのでみんなも原作を見ような! アニメだとばっちり一曲歌ってるから、なおいいぞ! ようつべにも公式でMVあるからそっちでも楽しめるからよ! 「Hero too」で検索検索ゥ!

・・・ところで透ちゃんがA組で一番美人っていうのはよく聞く話ですが、原作で遂に明らかになった彼女の素顔を見る限り、そうだとしても違和感はないかなってボク個人は思ってます。
この9話書いてる時点で34巻が発売されて、彼女の素顔が単行本組にも開示されたタイミングだったので、せっかくだしと思って素顔の話を盛り込みました。
盛り込んだ結果盛大に旗が立った気がしますが、まあこれはこれで(代替わりして天に召された先代プロット君を見送りながら
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