銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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3.昇日

 その後、ビルボードチャートJPはなんとか軌道修正をして、ほとんど問題なく進められた。

 オールマイトは壇上に残り、今期のトップテン入りを果たしたヒーローたちの名前を読み上げていく。これに応じて、ヒーローたちが次々に壇上に上がる。

 

 最後に呼ばれたのは、もちろん彼だ。

 

「エンデヴァー。君がナンバーワンだ」

「……俺の力でそれを言わせてやりたかったがな」

「それは謙遜がすぎるぜ、エンデヴァー。私のあとにナンバーワン足りているのは、君をおいて他にはいないよ。それは間違いなく、君が今まで培ってきた、君の力だ」

「フン……今はそれで丸め込まれておいてやる」

 

 壇上で、オールマイトに手を差し出されたフレイムヒーロー・エンデヴァーは、渋い表情を隠すことなく……しかし穏やかに、その手を取った。

 

 以前にトドロキの家庭事情を聞いてしまった身としては、彼が語ったエンデヴァー像とかけ離れた印象を受ける姿だが……そこはエンデヴァーもいい大人だ。この半年の間に省みる機会があったのだろうし、オールマイトとも既に話し合いは済んでいるのだろう。オールマイトが最近頻繁に外出していたのは、その辺りの引き継ぎも含めてだったのだろうな。

 

 と、そうこうしているうちにヒーロー公安委員会の会長が話を締め、次いでトップテンたちによる挨拶が始まった。

 

 途中、ナンバーツーになったウィングヒーロー・ホークスが「象徴がいなくなるってのに、俺より成果の出てない人たちが何を安パイ切ってンですか」などと茶々を入れる一幕もあったが、あれは彼なりの発破だろう。

 恐らくだが、今日この場で何があるのかを聞いていたのだと思う。彼の物言いは、それくらい備えられたものに見えた。

 

 まあ、オールマイトの引退に引きずられてか無難な発言が続いていたから、という発言自体は本心だろうが。

 

「……若輩にこうも煽られた以上、多くは語らん。――俺を見ていてくれ」

 

 彼に応じるような形で、エンデヴァーは手短に。しかしはっきりと、自らの覚悟を見せた。

 その姿は、オールマイトの次に立つナンバーワンとして、なんら不足のないものであったと私は思う。

 

 なお、身内のトドロキはエンデヴァーのそんな姿に対して無表情を貫いていた。

 

「エンデヴァー、カッコいいね!」

 

 ただ、何人かがそう言ったときは、「……まあ」とぼかしたような返事を、複雑そうな顔でしていた。

 

 実際、内心はかなり複雑なのだろう。彼は彼なりに前を向いて進んではいるが、それでも幼少期から抱えてきたものは軽くないということか。

 その辺りの気配を感じ取ったのか、クラスメイトたちから茶化すような言葉は出なかった。

 

 だが、そんな余韻も消し飛ぶ出来事が翌日に起きた。

 

 翌日である。いくらなんでも展開が早すぎる。

 ただ、今回はオールマイト引退の余韻であるとか、この星の悪すぎる治安であるとかは問題ではない。

 

 なぜなら、問題とはずばり脳無だからだ。つまりヴィラン連合である。

 

 しかも、ただの脳無ではない。はっきりとした意思を持ち、人語を口にする化け物である。もちろん、超パワーや超再生は標準装備だ。

 そんな代物が、臨時でチームアップしていたエンデヴァーとホークスを襲った。時間にして、ビルボードチャートJPが終わってから二十四時間も経っていないタイミングだった。

 

 この星の報道体制には思うところがある身だが、その事件をわりと早い段階で私が知れたのは、間違いなくその報道陣のおかげだ。良くも悪くも事件に敏感な彼らは、オールマイト引退直後の新たなナンバーワンの動向を追っていたのだろう。

 

 ともかく、そういうわけで。

 

「……っ、ヒミコ!」

「はいっ!」

 

 大技を放った直後。脳無を倒し切ったと思われた直後のエンデヴァーの顔面に向けて放たれた、強烈なカウンターに対応が間に合ったのは、報道陣のおかげと言ってもいいのだろう。

 エンデヴァーの戦いの映像をリアルタイムで見ていたからこそ、フォースによって嫌な予感を覚えた私たちは、モニターに向けて手を向けることができたのだから。

 

『……ッ!? 首をあえて切り離して……!』

 

 おかげで、間に合った。フォースプルによってエンデヴァーの上半身は強制的に反らされ、顔面を狙った反撃は空振りに終わったのである。

 

 意識の外から引っ張られたエンデヴァーはいぶかしんだようだったが、さすがに優先順位を間違えたりはしない。脳無が肉体を再生しながら姿を見せたことで戦いが終わっていないこと、どうやって脳無が窮地を脱したかを悟り、即座に構え直した。

 

「い、今のは」

 

 一連の流れを見ていたキリシマが、声を上げた。彼以外も似たような顔をしている。

 ここは談話スペースだ。エンデヴァーが押されていたこともあって、居合わせたクラスメイトの多くが注目していた。みなが驚くのも無理はない。

 

「説明は後だ。14O、I-2Oに繋げろ。今福岡で行われているエンデヴァーの戦いを映した中継映像を、大小個人問わず可能な限り私の前に出せと。地図情報もだ」

了解了解(ラジャラジャ)

 

 だが私はあえて答えず、自慢のドロイドたちに指示を出しつつ、私もまた所持している端末で今現在の情報にアクセスする。伝えてはいないが、私が言うより早く察しているヒミコも同様だ。

 

「よくわからないけど、とにかく色んな中継が見れればいいんだね? 手伝うよ!」

 

 それを見たミドリヤもならい、さらに他のものも続いた。結果として、私の周りには多くの端末が集まることになる。

 

「ありがとう。……よし、やるぞ。これよりヒーロー仮免許における権限の中で、プロヒーロー・エンデヴァーを援護する」

「援護の援護をするのです!」

 

 かくして私たちは、周囲のものたちが固唾を呑んで見守る中、フォースをみなぎらせた。

 

 画面の向こうでは、エンデヴァーが押し込まれている。彼ほどの炎の熱をもってしても、しゃべる脳無をとめられていない。彼の炎は肉体をあっという間に炭化させるほどの威力があるというのに、それよりも早く相手が再生しているのだ。

 

 しゃべる脳無の力はそれだけではない。両肩についた、ジェット機構のようなもの。自由自在に変形・伸縮する腕。その腕に、何度も現れては補強する筋肉。別の脳無を放つ身体そのもの。つまり最低でも五つの“個性”がある。

 

 腕の一振りで周囲の建造物を軒並み薙ぎ払うパワーもあるが、こちらは“個性”なのか素なのかは見た目からはわからない。USJに現れた脳無も、超パワー自体は“個性”とは無関係のものだった。

 そんな力で振るわれる分裂した腕が、容赦なくエンデヴァーを、周囲を攻撃する。エンデヴァーはなんとか凌いでいるが、当然無傷ではいられない。致命傷は避けているが、それでも血はとめどなく各所から流れている。

 

 一方、エンデヴァーと行動していたホークスはエンデヴァーの近くにはいない。どうやら、しゃべる脳無から放たれた複数の白い脳無があちこちで暴れているようだ。そちらの対処に追われている……。

 

「……トドロキ、確認させてくれ。エンデヴァーの“個性”『ヘルフレイム』は、君の炎と同様使いすぎると身体に熱がこもり、身体機能が下がる。間違いないか?」

「あ、ああ。そうだ、間違いねぇ」

「わかった。ならば……まずすべきは――エンデヴァー、今からあなたを援護いたします』

 

 ゆえに私はエンデヴァーに向けてテレパシーを飛ばしつつ、増幅をかける。彼の身体の、耐熱機能と冷却機能を増幅する。

 私の“個性”本来の、プラス増幅だ。最も使い慣れた増幅を、コストパフォーマンスのいい一時増幅で。ただし、時間制限限界までの力で。

 

 その瞬間、エンデヴァーが放つ炎の火力が目に見えて上がった。動きが機敏になる。

 序盤の頃の勢いを取り戻したと言うべきかもしれないが、恐らくはそれ以上。突然の交信に一切動揺せず、それどころかあっさりと限界を超えていくところは、さすが新たなナンバーワンと言うべきか。

 

 それでもなお、エンデヴァーを片手であしらえる脳無だが……しかし、その攻撃を阻害する位置で、空気が爆発して軌道が変わった。

 

『……!? ナナナナ何がブガッ!?』

 

 脳無の声がいくつかの端末から響いてくる。だがその顔面で、さらに爆発が起こる。

 

 フォースブラスト。フォースと増幅の合わせ技。私にはできない破壊の技。

 使ったのはもちろん、ヒミコだ。私の隣で、私に変身した彼女が私と同じように、複数のモニター越しに力を使ったのだ。

 

 そうしてヒミコが作ったスキをついて、エンデヴァーの技が放たれる。「赫灼熱拳(かくしゃくねっけん)ジェットバーン!!」という声が、端末のどれかから聞こえてきた。

 

 叫びながら拳を繰り出し、前進するエンデヴァーの背中をフォースプッシュで押す。斥力によってすさまじい推進力を得たエンデヴァーの身体が、拳が、脳無の頬――と思しき場所――に突き刺さった。

 砕ける頬骨をまき散らしながら、吹き飛ぶ脳無。だが、その傷も再生が始まっている。

 

 ならばとエンデヴァーがさらに前へ進む。その前方に、空中に固定されたようなコンクリートの塊が浮いていた。ヒミコの仕事だ。

 

 エンデヴァーはそれを踏みしめ、推進力を補充する。背中から燃え盛る炎が噴射され、文字通りジェットのようだ。

 

 これと同時に、私は脳無へマイナス増幅をかける。ここ二か月弱の間、エリの“個性”訓練に付き合っていたことでようやく満足できる水準に達した技を発動する。

 人体が持つ個性因子に向けた、マイナス増幅。その機能を、ゼロに向けて減退させる一時増幅。奇跡的に得た二度目の人生で、師と呼べる人の力と名にあやかった技。

 

 名づけて――

 

「――フォースイレイザー」

 

 かくして、脳無の身体の再生が一気に鈍化する。伸びていた腕は動きが鈍くなり、その動きを補佐していた筋肉もほとんどただの肉塊と化した。

 空中を行くためのジェット機構は動いてはいても飛行する水準にはなく、脳無は大量の異変に戸惑い混乱している。今までの脳無と異なり、明確に自律思考能力を持っていることが裏目に出た形だ。

 

 そこに、エンデヴァーが追いついた。先ほど以上の火炎をたぎらせて、脳無に立ち向かう。炎が、炎の生み出す輝きが、脳無の顔を正面から襲う。

 

『ッ強く――――もっト……ツ……く――――モッ――――……モ……っと……モ――――モ』

「「何……?」」

 

 だが次の瞬間、脳無の思考が弾け飛んだ。と同時に、その身体が激しく動き始めた。

 活動を抑え込んだはずの個性因子が、強引に活性化している。窮地に陥ったことで、何より自我を吹き飛ばしたことで、身体のリミッターが外れたか? それとも、私が把握していない問題点が存在するのか……いや、単純に実戦で使うにはまだ技の精度が甘かったとも考えられるな。

 

「「……この星では窮地でのパワーアップはフィクションのお約束だが、よりにもよってヴィランがそれをするのか」」

 

 いずれにせよ、と。私と変身中のヒミコの声が重なる。

 

「ど、どーすんだよ!? アイツまだぜんっぜん元気だぞ!?」

 

 カミナリが半ば悲鳴のような声を上げる。

 

 だが、まあ。問題ないだろう。

 

「「いや……もう大丈夫だよ」」

 

 だから二人で答える。次の増幅を行使しながら、続きを言う。

 

「「彼が――彼らが来た」」

 

 直後、獣同然に吼える脳無の口の中へ、エンデヴァーの拳が叩き込まれた。口の中から、脳無の顔を焼き尽くしていく。

 それでもなお再生は間に合っており、その巨体でエンデヴァーに組み付いたが……既にエンデヴァーは勝機を見出している。彼の脚部から、激しい炎が噴射される。

 

 同時に、下のほうから大量の羽が上がって来た。塊となった羽はエンデヴァーの身体にひっかかり、炎にまかれながらも上空へと持ち上げていく。

 

「ホークス!」

「戻ってきたんだ!」

 

 そう、新たなナンバーツーが戻って来た。彼は“個性”である翼から羽を放ち、エンデヴァーの行動を援護する。

 

 私たちも、それに続く。二人分、しかも片方の大暴れする生物に対して重点的にサイコキネシスをかけるのは少々骨が折れるが、二人がかりならばなんとかなる。エンデヴァーを後押しし、脳無の動きを阻害する。

 

 やがて、上空遥か高くへと舞い上がったエンデヴァーが、最後の一撃を放つ。

 

『プロミネンスバーンッッ!!』

 

 刹那、真昼間の福岡上空で極大の花火が咲いた。テルミット反応と見まごうほどの閃光がほとばしる。

 

 一瞬、すべての声が消えた。見ていた誰もが絶句したのだ。

 

 しかし炎と共に舞い降りてきた、健在のエンデヴァーが人差し指を立てた右腕を掲げる姿を目にした瞬間――盛大な歓声が、大地を揺らした。

 あまりの大音声に、すべきことを終えて息をついた私たちの声は掻き消えてしまう。

 

 だが、それでも私は聞いていた。トドロキが、安堵の息を大きくついたことを……。

 




実にEP1以来という久々の超遠隔フォースでした。
でもって個性機能を減退させる技、フォースイレイザーの初お披露目。フォースブラスト、フォーススリープに続く、個性とフォースの悪魔合体技です。
幼女強いが加速する!

ちなみに一番近くでの目撃者となったエンデヴァーは、圧勝とまでは言えないまでも辛勝ではなかったので、原作の世間より株は上がっていることでしょう。
たぶん本人が一番納得してないと思いますけど、それはそれとしてハイエンドのことは正確にとんでもない驚異として理解しているので、協力体制の構築などにはちゃんと動いてくれるはず。

見ろやくんは・・・その、不用意にマスコミにもてはやされるよりはマシなんじゃないですかね(震え声
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