銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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6.A組VSB組 1

 いい夢を見た今日のヒーロー基礎学は、B組との対抗試合らしい。

 ということを聞いて、ふと思う。入学してからクラスの中で様々な形式で競ってきたものだが、今のところB組とは体育祭以外では一度も機会がなかったな、と。

 

 ……正確に言えば、合宿のときに肝試しで競えという流れではあったが、あれは中止になってしまったからなぁ。

 

 しかしB組と合同の授業となると、生徒の数は総勢で四十人となる。結構な大所帯だ。

 であれば、グループを作っての試合形式ということになるだろうか……などと考えながら、本日の会場となる運動場ガンマへとやってきた。

 

「ワクワクするねー!」

 

 そう言って、ハガクレがうきうきと楽しそうにしている。

 

「……入学当初のコスチュームだったらって考えるとゾッとするな……」

 

 ハガクレのそんな姿を眺めながら、ぽつりとつぶやいたのはジローだ。同意しかない。

 何せ、既に季節は十二月直前。本番とも言うべき大寒の頃はまだ先だが、それでも外気温は十分に低い。

 今のハガクレは“個性”の成長に伴って、一般的なコスチュームを身にまとっている。冬用に防寒機能がしっかりしたものをだ。そこにマントもあるので、ことさら寒さに怯える必要はないだろうが……当初はほぼ全裸だったからなぁ……。

 

 なお、入学当初からコスチュームが変わったものは結構多い。代表格はミドリヤだが、他のものも何かしら変えている。見た目が変わっていないものであっても、性能は変わっているというのも珍しくない。

 

 具体的には、冬仕様に変えたものとか。私やヒミコですらそうなので、そういう意味ではコスチュームを変えていないものは一人もいない、と言い切っても問題ないだろう。

 

「おいおい、まー随分と弛んだ空気じゃないか。僕らをなめているのかい」

 

 と、そこに聞き慣れない声が割り込んできた。A組のものではない。

 声がしたほうへ顔を向ければ、そこにはずらりと二十人の生徒が並んでいる。声を上げたのは、その先頭に立つ燕尾服のようなコスチュームを着こんだ男……モノマだ。

 

「お! 来たなァ! なめてねーよ、ワクワクしてんだ!」

 

 彼に応じたのは、キリシマ。こういうとき、何かしら律儀な反応を返すのはおおむねキリシマかイイダ、ヤオヨロズ辺りだな。

 

 とはいえ、そういう返しを受けてもなお不遜な言動を隠しもしないのがモノマという男である。

 

「フフ……そうかい。でも残念、波は今確実に僕らに来ているんだよ。……さァA組!! 今日こそシロクロつけようか!?」

 

 彼はそのまま、端正な顔を歪めて声を張り上げた。

 

 かと思えば、すぐさま文化祭でのA組B組の出し物のアンケート結果(自分調べ)を取り出して、B組の勝ちだとマウントを取ってきた。相変わらず、A組に対する敵意を隠さない男だな。

 

 キリシマはこれに対して、やはり律儀に悔しがっていたが……こういうものは気にする必要など一切ない。他人からの評価などいちいち気にしていたら、何もできないのだから。それに……。

 

「アンケートなど主催者側でいくらでも操作できるのだから、そういう意味でも気にするだけ無駄というものだよ」

「おやおやおやおやァ!? オールマイト超えを宣言した人間とは思えない発言じゃァないか!! 大体、仮にもヒーロー志望が人を疑うなんて、どうかと思うけどね僕ァ!!」

「その様子だと、ネットワークの深いところで交わされている匿名の、遠慮も容赦も何もないやり取りは一つも見ていないようだな。まあ、この国には知らぬが仏と言うことわざもある。君の場合はそれでいいのだろうな」

「……えっ?」

「マスターがた、静かになりました。授業を始めましょう」

「ちょっ、待っ」

「よくやった増栄」

 

 この結果にモノマは非常に不満を持ったようだったが、あのまま私が割って入らなかったら、ヒートアップした彼はイレイザーヘッドに物理的に黙らされていただろう。

 具体的には、捕縛布で首を絞められる形で。それを防いであげたのだから、むしろ感謝してほしいところである。

 

 と、そういう少々抜けた会話から始まった演習であるが、ルールは比較的単純。この運動場ガンマで、それぞれのクラスで四人一チームを作ってチームごとに戦うというものだ。

 状況設定としては、ヴィラングループを包囲し確保に動くヒーロー。制限時間二十分以内に相手チーム全員を用意された檻に入れた側、もしくは制限時間が経過した段階で残っていたメンバーが多い側が勝利となる。試合開始はこの檻の近くに設定された自陣営から行われ、定められたフィールド範囲内でのみ戦う形だ。

 

 ただ、入学当初の演習で使ったような確保テープはない。つまり捕まったとしても、檻に入れられるまでは脱落とはみなされない。その点では、より実戦に近づいたと言えるだろう。

 

 なおこの檻、恐らくネヅ校長が作ったものだと思うのだが……彼の顔と手を写し取ったかのようなキャラクターの看板が着けられていたり、そこに「いらっしゃい!」と書かれた噴き出しが付随していたり、檻自体に「CHOEKI(懲役) 99999NEN()」とか「ZANNEN(残念) MUNEN(無念)」とか書かれており、緊張感の欠片もない。

 激カワ据置プリズンなどというネーミングもどうなのだ? いやまあ、みなの反応を見るに、この星の一般的な感性においても「なし」なのだろうが。

 

「じゃ」

「クジな」

 

 ともあれその後、各クラスの教師陣に差し出された箱からくじを引く。結果、私はツユちゃん、カミナリ、キリシマらと共に第一チームに配属された。

 

 第二チームはハガクレ、ヤオヨロズ、アオヤマ、トコヤミ。

 第三チームはイイダ、オジロ、ショージ、トドロキ。

 第四チームはアシド、ジロー、セロ、バクゴー。

 そして第五チームはヒミコ、ウララカ、ミドリヤ、ミネタという顔ぶれである。

 

「……ぶぅ、また別のチームなのです」

「君は毎度ながら、力づくで同じチームになろうとするのはやめないか」

 

 言うまでもないが、くじに不正はなかった。なかったらなかった。

 

 ともあれ、体育祭だったかでウララカが言っていた通り、なんでも早速行うこの学校では早くも第一試合を始めるということで、試合会場に移動する私たちである。

 

 途中、ミッドナイトとオールマイトの二人とすれ違った。二人とも試合を見に訪れたとのことで、オールマイトが見ている中で無様は見せられないとキリシマを中心にみな士気を上げていた。

 

「それじゃ、どうしましょうか」

 

 位置についてすぐ、激カワ据置プリズンを地面から切り離して持ち運べないかを調べていた私をよそに、ツユちゃんが声を上げた。演習が開始するまでのわずかな時間は、作戦タイムである。

 

「B組の“個性”、よっくわかんねぇんだよなー」

 

 最初に応じたのは、カミナリである。キリシマも、これに大きく頷いて応じた。

 

「見る機会、今までほとんどなかったもんな。逆に俺らの“個性”は大体バレてるときた」

「そうね。でもそれはプロになれば当たり前のことだし、悲観的になるのはやめましょう」

「それはそう。……まあでも、どっちにしても増栄が一番警戒されてんのは間違いないっしょ?」

「そうだな」

 

 ここで男性陣から視線を向けられたので、私もこれには同意しておく。

 

 何せ私は合宿での襲撃時、森の各所に散っていたB組全員の位置を遠隔から把握した上で、彼らそれぞれにテレパシーで逐一連絡を入れていたのだ。“個性”の全容は把握されておらずとも、詳細な索敵が可能というだけで警戒しないものはいないだろう。特に今回のように、建物や配管が入り組んだ場所では索敵の重要度も跳ね上がることだし。

 

 そういう推察ができない相手であれば楽なのだが……B組の面々がその程度のこともできない弱者であるはずがない。

 

「増栄に囮になってもらうってのはどうよ? 増栄ならまあ、四人同時に相手にしても数分くらい余裕で持ち堪えられそうじゃん?」

「リスキーだぞ、それ。確かに増栄は強ぇけどよ、向こうだって“個性”伸ばしはしてんだからわからん殺しされる可能性だってあるだろ。……っつーか、そもそも前に出す必要はなくねぇか?」

「ケロ……理波ちゃんは索敵もできるものね」

 

 と、ここで意見を求められたので、激カワ据置プリズンから離れて思うところを述べる。

 

「私としては別にどちらでも構わないのだが……可能であれば、今回は裏方に徹したいと思っている」

「えー、なんで?」

「完成したばかりの技の具合を確かめたいんだ。まだ数回しか試せていないし、それも福岡のアレ以外では君たち以外には使ったことがない。試すにはちょうどいい機会だと思ってな」

「フォースイレイザー、だったかしら。とっても強力だけど……異形型には効き目が薄いように感じたわ」

「爆豪とか緑谷辺りにも微妙な感じだったよな。それ以外でも相手によっては効果が結構ブレてた印象あんぜ」

「あー、ねぇ。例の事件のやつなんか、完全に押し返されてたっぽかったもんなー」

 

 それぞれの言葉に、私はこくりと頷く。彼らの指摘はいずれも正しい。

 恐らくだが、これは私の“個性”の性質上仕方がない仕様だろう。イレイザーヘッドのそれはゼロの強制だが、私の場合は固定値の増幅だからだ。

 思うに、相手の“個性”が十分以上に鍛えられていたり、そもそも出力が常識外れに高い場合は、相対的に効きが薄くなるのだろう。異形型相手でも効果が薄いのは……個性因子の影響が人体に及ぶ範囲が他の“個性”より広く大きいから、かな?

 

 その辺りの推測をよりはっきりさせるためにも、なるべく多くの人間で試しておきたい。勝負の形式である以上はある程度線引きは必要だろうが、ヒーローとしての現場に出てからようやく試行錯誤し始めるわけにはいかないからな。

 

 ……なお、激カワ据置プリズンはライトセーバーを伸ばせば切り離せそうだが、それを持ち運ぶにはウララカが必要だろうという結論に達したので、あれを持って敵陣に突入はなしである。

 

「おっし、それなら増栄には今回、檻近くで待機しつつ索敵に専念してもらう方向で行くか!」

「連絡は……理波ちゃんならテレパシーが使えるから、ひとまずそれでいいかしら。一方通行にはなっちゃうけれど……」

「いや、サポートアイテムにコムリンクを登録してある。一組しかないが、それで双方向にやり取りが可能だ」

「確か、I・アイランドのときに使っていた特殊なトランシーバーね? 便利だわ」

「他にも援護も可能だ。私の“個性”は障害物にあまり関係なく、遠隔でも使えるからな」

「ああ……そういやお互いの位置関係を把握してりゃ使えんだっけ?」

 

 この辺りのことは、先日の事件の際にA組全体に説明済みだ。あのときは相応の距離があったためリアルタイムの映像で必要な情報を補ったが、この訓練のフィールド内であればフォースの探査だけで互いの位置関係は十分把握できる。

 

「ん? っつーことはあれじゃね? 今回俺ら楽勝なんじゃね!?」

「楽勝かどうかはわからないけれど……中途半端に策を練るよりは、いっそそのまま押し込んだほうがよさそうだとは思うわ」

「梅雨ちゃんに同意するぜ! 開始まであんま時間もねえしな!」

「右に同じくだが……カミナリは、もう少し気を引き締めたほうがいい。そこまで信頼してくれるのは嬉しいが、私とて完璧には程遠いただの人間なのだから」

「……うい、サーセン」

 

 私の指摘に、カミナリは後ろ頭をかきながら軽く頭を下げた。

 

 その後、もう少しだけ踏み込んだ話し合いを行い……やがてそのときは来た。

 

『じゃ第一試合……スタート!!』

 

 ブラドキングの声によって、訓練の開始が告げられた。

 




今週のジャンプ本誌でお出しされた葉隠ちゃんの扉絵えっちすぎひん??
堀越先生、ちょくちょく性癖隠さないのマジで尊敬するし好感度高い。
ということで(?)、彼女の姿をどうすればみんなも見られるようにできるかを割烹に書き殴ってみました。
ちなみに、本作における葉隠ちゃんはもう本編中に全裸になる機会はない予定です。ですが予定は未定ですし、もしかしたら番外編のほうでは全裸になるかも・・・?

それはともかく、いよいよ対抗戦スタート。理波は先鋒です。
不在元のキャラと置換する形なわけですが、トガちゃんが砂藤くんのいた第四チームではなく芦戸ちゃんをどかす形で第五チームにいるのは、作劇上の都合です。
彼女がそこに入ることでどうなるかは、お楽しみに。

最後に。
これたびたび言ってますが、心操くんと彼のファンには本当にごめんなさい。彼は出番なしです。何卒ご容赦をば。
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