銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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7.A組VSB組 2

 開始が告げられると同時に、私は激カワ据置プリズンの上に陣取り、意識を集中させる。フォースを研ぎ澄ませながら広げ、周囲の把握に専念した。

 工場地帯を模した運動場ガンマは様々な人工物で入り組んでいるので、ある程度技術はいるが……それでもこれくらいであれば、私の索敵を妨げ切るには至らない。

 

 まあ、実のところこれほど広範かつ精緻にフォースを操ることは、前世の私には逆立ちしてもできなかったことなのだが。これに関しては“個性”に感謝すべきなのだろう。

 

 と、そうこうしているうちに相手方の位置を把握することに成功した。互いの開始地点がフィールドの端であり、同心円状に索敵しなくていいという状況も相まって、思ったより早くできた。もちろん相手方だけではなく、チームの仲間の位置も把握済みだ。

 

 どうやら相手側は別行動することなく、一塊となって動いているようだ。私のことは警戒しているようだが、そこまで重視している気配ではない。索敵に専念している私は一旦放置して、先に他の三人を数の優位で圧し潰そうという判断かな。

 

 悪くない判断である。通常なら、後方で索敵に専念していたとしても何かあれば文字通りすぐに飛んでいける私だが、このフィールドでの立体機動は少々面倒だ。フォースによって高い空間把握能力を持つ私にとっては大して難しくはないのだが、面倒は面倒だ。

 つまり、出撃した三人が危機に陥ったとしても、すぐには助けに行けない。なので私が後方にいて動かないと察したのであれば、先に私以外をなんとかしようという作戦は悪くない。

 

 問題は、私にはこの程度の距離は飛んでいかずともなんとでもできる距離である、ということだ。つまり彼らは前提を間違えているのだが……A組ですらこのことを知ったのはつい先日なので、B組にそこまで求めるのは酷と言うものだろう。

 

 ただ、気にかかることが一点。相手側の動きが、私がB組の陣地に向けて移動しておらず単独行動していることを、まるで確信したような動きであることだ。

 話し合いの段階では、私が把握した位置を知らせることで奇襲をかけ、あとは圧し潰すという結論だったので、そうなるようにみなを誘導しているのだが……向きを変えるたびにあちら側も動きを変えるのだ。しかも、明らかに迷いがない。であれば、あちらにも索敵が可能なものがいるのだろう。

 

 そしてその可能性があるのは、シシダただ一人。

 シオザキもツルによって周囲を索敵できるが、彼女のそれは自身の髪でもあるツルを利用した接触型のものであろうことを考えれば、ほぼシシダと断言してしまっていいだろう。

 

 彼の“個性”は確か、「ビースト」だったか。異形型の“個性”で、彼の外見はまさに獣のようである。であれば、嗅覚か聴覚。あるいはその両方が優れているのだろう。

 

 なおそのシシダ、恐らくだがリンを背負っている。シオザキとツブラバの距離もかなり近いな。どういう意図であるかはさすがに距離があるので明確にはわからないが、二人が組むことが無意味とは思えない。警戒しておくべきだろう。

 

 その辺りの推測を、位置と共に三人へ通達する。

 

「以上だ」

『ケロ、了解よ』

 

 五分ほど時間を使って、互いに互いの位置を完全に把握したままフィールド内をけん制し合うようにうろうろしている、という状況だと確信できた。つまり、このままでは埒が明かない。

 なのでフロッピーたちは奇襲をかけることは不可能と判断して、正面から迎え撃つことにしたようだ。

 

 なお今回持ち込んでいるコムリンクは、以前I・アイランドに持ち込んでいたそれとは違う。有効範囲は変わらないが、小型化が進んでテニスボールほどの大きさになっているのだ。重量もそれ相応に減っているので、邪魔にはならないだろう。

 

 フロッピーに渡したのは、状況把握と意思統一は彼女がこの中で一番得意だろうからだ。そのため、彼女には三人の中の小隊長も任せてある。

 コムリンクについては、彼女の身体能力があれば最悪投擲武器として使ってもそれなりの威力になるだろう、という予測もある。そうしてくれて構わないとは伝えてあるし、彼女ならその辺りの判断を誤ることはないはずだ。

 

 と同時に、私はコムリンクを持っていないほうの空いた手を目の前に差し出す。いつでも遠隔で“個性”が使えるようにするための備えだ。

 そのまま待つこと、しばし。

 

「接敵する。シシダが突撃して来るぞ」

 

 私の警告に前後して、戦いが始まった。一瞬だけ足を止めたシシダが、凄まじい勢いで突っ込んできたのだ。

 

 三人はそれを、予定通り正面から迎え撃った。私がいなければ、恐らくは完璧な奇襲になっていただろう。シシダの動きは、それくらい高速かつ迷いのない突撃だった。

 

 だがそれは、もはやもしもの話。万全の状態でシシダを迎えた三人は、すぐさま迎撃を開始した。

 レッドライオットが硬化を発動し、前へ出る。足を地面に突き刺しながらであり、シシダの攻撃を受けながらもその場に踏みとどまることが目的だ。これにより、シシダの突撃は勢いをほとんど殺されてしまったようで、動きが一気に鈍った。

 

 もちろんそれと同時に、フロッピーとチャージズマが攻撃を加えるが……これをリンが抑える。

 どうやら彼の“個性”「鱗」は、身体の防御を固めるだけでなく、弾丸のように連続で発射できるらしい。両腕をそれぞれフロッピーとチャージズマに向けて、マシンガンのような勢いで鱗を乱射している。これではレッドライオット以外は迂闊に近づけない。

 

 しかしもたついている間にシシダが再び動き始めてしまうことは明白であり、レッドライオットが組み付いて動きを止めようとしているが、パワーが足りていないらしい。

 ならばとチャージズマがポインターを使って電撃を放とうとするが……そこにシオザキのツルが一斉に伸びてきた。乱戦になっている場所全体を覆わんばかりの大規模なツルであり、全員を一網打尽にしようという意図が見える。

 だが、どうやら優先順位が明確につけられているらしい。

 

『チャージズマ、狙いは君だ! 君に向かうツルの量が他より多い!』

「こなくそォ!」

 

 私の指摘に応じるかのように、チャージズマの吼え声がここまで聞こえてきた。どうやら、放電によってツルの動きを阻害しようとしたようだ。

 

 しかし、それは逆効果。大量に周囲に張り巡らされたツルがアースのような役割を果たし、電撃は大した威力にならないまま周辺に散ってしまった。

 

「ウッソォ!?」

 

 と、そうこうしているうちにチャージズマがツルに捕らえられた。

 

 うーむ、困ったらとりあえず放電、という彼の悪い癖が出たな。最近はめっきり見なくなっていたのだが……クラスメイトにはもう牽制くらいにしかならなくなっているから、単に使っていないだけだったか?

 この点は彼の一番改善すべき点だな。今は全力で放出していないことを祈るしかないが。

 

 と、ここでフロッピーが動いた。迫り来るツルとシシダたちの攻撃をなんとか避けながらも舌を伸ばしてレッドライオットを絡め取ると、フレイルのように振り回してシシダたちをけん制しつつ、チャージズマに向けて思い切り投げたのである。

 

 正確には、チャージズマを捕えているツルに向けて、だ。極めて硬くなったレッドライオットの身体は、それそのものが凶器である。そんなものが高速で突っ込めば、いかに“個性”のツルとは言えど耐えられるものではない。

 恐らくはブチブチというような音を響かせて、ツルが盛大に引きちぎられた。シオザキの制御から離れたツルは力を失い、チャージズマがその中から解放される。

 

「サンキュー梅雨ちゃん!」

 

 出ると同時に、チャージズマがシオザキに向けてポインターを放った。それに向けてターゲットエレクトの電撃を放つつもりだ。

 

 だがこれは、シオザキのツルの中から現れたツブラバによって防がれた。彼の“個性”は「空気凝固」、空気に硬度を持たせて固めるものだ。そこに当たったポインターは弾かれ、明後日の方向へと消えていった。

 

 一方、一人でシシダとリンを相手取る形となったフロッピーは苦戦している。ただでさえリンによる鱗の銃撃がある上に、今までレッドライオットが引き付けていたシシダの意識がフロッピー一人に集中しているのだ。あまりにも分が悪く、既に何度も攻撃を喰らっているな。

 

 ただ、最低限の防御はできているようだ。二人を同時に相手しながらも、なんとか食い下がっている。

 その動きには、ソレスやアタロの要素が随所に見て取れる。肉弾戦の参考にしたいと彼女に請われ、前々からいくつかセーバーフォームの体捌きや立ち回り方を教えているのだが、どうやら熟達具合はさておき実戦でも問題なく使えているようだな。

 

 フロッピーは体育祭の前から私の動きに注目して、自分の動きに取り入れようと試行錯誤をしていたからな。肉弾戦の立ち回りにセーバーフォームの動き方を取り入れようとしている人間は、彼女の他にも何人もいるが……彼女はミドリヤと並んで、一番セーバーフォームに触れた時間が長い。成果が出た形と言っていいだろう。

 

 うーむ、あとはライトセーバーがあればなぁ。あのままでは手落ちだ。フロッピーにフォースの素養があるなら、すぐにでもスカウトしてトレーニング・ライトセーバーを用意するのだが。

 彼女なら喜んで迎え入れるし、彼女とずっと一緒に仕事ができるのなら私としても嬉しいのに。

 

 と、そうこうしているうちにレッドライオットが高速でシシダに飛びかかった。

 

 レッドライオットに限らずA組の大半には私作のワイヤーフックをあげていて、それぞれのサポートアイテムとしても登録されている。それを使ってシシダの脚部を絡め取っただけでなく、自動の巻き取り機能を利用して体当たりを仕掛けたのだ。フロッピーが彼を投げたのは、すぐに復帰できる手段があったからに他ならない。

 

 この突撃は体勢を崩したところにかなりの勢いで飛び込んだ形になったため、さすがのシシダも転倒して攻撃の手がとまる。

 

 その瞬間を、フロッピーは見逃さなかった。それまで防御に専念していたところから一転、攻勢に出た。

 周辺の障害物を巧みに利用して跳ね回り、注意を逸らしながら背後に回ってリンを強烈な飛び蹴りで吹き飛ばす。彼は肩から壁に激突し、巻き込まれた配管のいくつかが形を変えた。

 

『フロッピー、後ろだ! チャージズマ、上から来ている!』

 

 だが、蹴りを与えたあと。反動を利用して距離を取ろうとした彼女の身体を、凝固した空気の枠が空中で捕らえた。それとほぼ同時に、チャージズマも再度シオザキに捕まった。しまったな、少し遅かったか。

 

 フロッピーを捕らえた犯人は、もちろんツブラバだ。ただ空気を凝固させただけでなく、箱のように凝固させて閉じ込めているのだ。

 彼の新しい技だろう。フロッピーは完全に中に囚われてしまっているようだ。動こうにもほとんど隙間がなく、何かを発生させる“個性”を持たないフロッピーでは、自力で脱出することは難しそうである。

 

 ただ、フロッピーは焦らずコムリンクで私に連絡を入れてきた。この辺りは、さすが普段から冷静なフロッピーである。

 

『ケロ、悔しいけれどこれ以上引っ張るのは合理的じゃないわね。アヴタスちゃん、そろそろお願いしていいかしら』

「了解した。これより本格的に援護する」

 

 これを受けて、私は意識をさらに集中させ始めた。

 

 ……私がここまで、索敵以外ほとんど何もしなかったのはわざとだ。もちろん、慢心とかそういうものではない。

 事前に言われていたのだ。しばらくは三人だけで戦わせてほしいと。

 

 正直な話、私が全力で援護したら、ほとんど労なく相手側を無効化できるだろう。それだけのことが、フォースと増幅の合わせ技で可能になる。

 だがそれを、三人はよしとしなかった。

 

 もちろん実戦を想定した訓練である以上は、自分から自分に枷をかけることはあまりよろしくない。しかしこれが訓練であることも間違いない事実であり……失敗しても問題ない状況であるからこそ、あえて彼らは自分たちを縛ったのだ。

 絶対的に優位を得られる私の力を借りることなく、できるところまでやりたいと言ったのである。あわよくば勝って見せると啖呵も切って。

 

 私はその意図を汲んだ。そういうことなのである。いや、私という切り札が控えていることを悟られずに温存するため、という理由ももちろんあるが。

 

 しかしチャージズマが確保されてしまい、フロッピーも動きを封じられてしまった以上は是非もない。

 

 まずはチャージズマを拘束するシオザキにフォースイレイザーをかけ、その制御能力を封じる。

 シシダ、ツブラバ、それからふらつきながらも戻ってきたリンにも順番にかけていく。これにより、シオザキとリンはほぼ無力化されたと言っていいだろう。

 

 一方ツブラバの“個性”は、個性因子が弱っても一度展開した空気凝固に影響は及ばないらしい。持続時間などは発動した時点での能力に依存しているのだろう。つまり、フロッピーはまだ動けない。

 

 また、シシダはまだ十分に動けそうである。やはり、異形型に対してはフォースイレイザーの効きが鈍い。この点の推測はほぼ間違いないと見てよさそうだな。

 しかし効いていないわけではないので、焦らずに鍛え続けていけばいいだろう。

 

 とはいえ、ツブラバはこれ以上“個性”を発動することが困難であることには代わりない。シシダもその驚異的な身体能力がかなり落ちているので、戦えはしても硬化したレッドライオットを下すことは難しいだろう。

 

 それらが、ほぼ一瞬のうちに起こった。おかげで彼らは混乱をまったく隠せないでいる。ツブラバの場合はまだ“個性”の弱体化に気づいていないため、シオザキとシシダの急変に対して困惑している形だが。

 

 とはいえ、無理もない。この星の住人にとって、“個性”の機能不全はかなり重度の非常事態だ。いわば突然水の中に突き落とされたようなものである。いかに戦闘訓練を積んでいるとはいえ、こればかりは簡単に慣れられるものではないのだ。

 

 そしてそれを見逃すほど、私の仲間は甘くない。レッドライオットは一気呵成にシシダを追い詰め始めたし、チャージズマも隙を突いてツブラバにポインターを当て、ターゲットエレクトの電撃で無力化した。

 

 その間に私は、フロッピーを捕らえる空気の箱をマイナス増幅で劣化させつつ、テレキネシスで地上に勢いよく振り下ろした。

 その先には、シオザキがいる。これによってシオザキは地面に叩きつけられた。

 

 さらに砕けた空気の箱から飛び出たフロッピーが、リンを舌で絡め取って無力化に成功する。

 これに焦ったシシダの顎に、レッドライオットの拳が叩き込まれて勝敗は決した。

 

 最終的に気絶したのはシシダとシオザキの二人だが、ツブラバとリンももう動けない。念のためチャージズマが追加で電撃をかけたため、意識はあったとしてもしばらくは動けないだろう。

 

 その間に、三人は悠々と――とは言っても迅速にではあるが――自陣に帰還。それぞれを檻に入れたところで、ブラドキングが試合終了のアナウンスを悔しげに発したのであった。

 




本作では体育祭で上鳴VS塩崎がなかったので、彼女が天敵ということを知らないままのチャージズマでした。
あと、何かと武器にされがちな本作の切島くん。彼ならたぶんそういう個性の使い方もアリって許してくれると信じてる。

しかし書いてて毎度思うけど、フォースと接触発動型個性の組み合わせが強すぎる。おかげで戦力のバランスをいかに取るかが難しくて困る。
いやまあ、理波の個性はフォースと組み合わせたときの相性の良さも考慮して決めたところあるので、ある意味必然ではあるんですけど。

それはそれとして、原作キャラの個性がフォースで強化されたらどうなるか、を妄想するのは楽しいんですけどねー。
個人的なイメージだと、フォースによる個性の強化は個性因子の活性化=個性数値の上昇という感覚で書いてます。
なので、発動型と増強型の個性はイメージしやすい。シンプルに許容量の増加とか、発動時間の増加とか、威力の上昇とかになる感じ。
逆に異形型は想像がしづらいね。梅雨ちゃんみたいに特異な能力をほぼ持たない個性の場合は、身体能力の増加くらいだろうけど基礎値が高いから強化率エグそう。
ただし、ワンフォーオールはたぶんフォースで強化しちゃいけないやつ。身体が物理的にパーンってなる。
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