銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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8.A組VSB組 3

「反省点を述べよ」

 

 フィールドから戻ってきて、開口一番にイレイザーヘッドが淡々と言った。

 

「情報の取得と取捨選択に手間取ったことで、乱戦中のみなの動きに伝えるまでラグが発生してしまいました。乱戦状態における認識能力を、より強化すべきと考えております」

「戦う相手の優先順位づけが甘かったッス。今までは相手にケンカする気がねェと戦いづらかったから下手なこと考えずに済んでたけど、なまじ高速の移動手段が手に入ったから欲張りすぎた」

「私も似たような感じ。バタバタしちゃった。同規模の、けれど性質の異なる脅威が複数あったときの咄嗟の判断力がもっと必要だと思う。理波ちゃんの手を煩わせることなく勝ちたかったわ」

「俺はパーフェクトだったっしょ!? ……って言いたいとこだけど、困ったら電撃ブッパする癖はマジやめたほうがいいなって、改めて思ったッス」

 

 これに応じて、私たちは各々感じたことを素直に述べた。訓練だからな。問題点の洗い出しは必要だ。

 

 その内容に異論はないようで、イレイザーヘッドはどこか満足げに頷いた。わかっているようで何より、とでも言いたげである。

 

「増栄は大抵のことができる分、どんな役を担ってもいいようあらゆる要素が高い水準で求められる。地力の向上は永遠の課題と言っていい。中途半端で終わらせるなよ」

「はい、マスター」

「切島と蛙吹、ミスをしない判断力は当然必要だが、ミスを必要以上に恐れることはない。ミスをした際どうカバーするか、いかに早くカバーできるか、そこも忘れるな」

「押忍!」

「ケロ」

「上鳴は自覚通りだ。お前の“個性”はシンプルに強いが、シンプルな分対策は比較的容易だ。搦め手をもっと考えていけ」

「ウィッス!」

 

 流れで、それぞれが端的な指摘をいただいた。相変わらず必要最低限の簡潔な物言いではあるが、彼のこういう言い回しにはもうA組は慣れているので、特に思うところはない。

 最後に「必要以上の損壊を出さずに済ませたところは評価する」とのお言葉をいただき、私たちは解散となる。

 

 少し離れたところでは、対戦した四人がブラドキングから同じように講評を受けていた。ただ、どうやらブラドキングはイレイザーヘッドほど淡白ではないようで、一人一人にかける時間が長くまだ終わっていない。

 とはいえ、漏れ聞こえる範囲では内容に無駄なところはほとんどないので、イレイザーヘッドと比べてどちらが優れているかは断言しかねる。これについては、単純に受け手の好き嫌いでしか比べられないだろう。その様子を、我々A組は興味深く見聞きしていた。

 

「では第二セット、チーム2! 準備を!」

 

 やがてブラドキングの講評も終わり、続きが始まる。両クラスの第二チームが、フィールドへと向かっていった。

 

 それとは別に、出番が後に控えている残りのチームは車座になって打ち合わせをし始める。試合が始まればそちらに集中するが、位置に着くまでに多少生じる空き時間に作戦を少しでも練っておこうという魂胆だ。これはどちらのクラスも変わらないので、両クラスの間にはやや物理的に距離ができている。

 

 一方、既に試合を終えている私たちにそういう時間は必要ないので、互いの健闘を称え合いつつも他から距離を取り、第二セットに臨むチームメンバーについてあれこれと話し合うことにする。

 

 途中、ヒミコと目が合った。彼女はうっとりと笑みを浮かべつつ、「かっこよかったですよぉ」と口パクで伝えてきたので、私もぱちりと片目を閉じて応じた。ヒミコが一瞬、きゅんと蕩けた顔をする。

 

 なお、それを目撃したミネタは観音菩薩のような微笑みを浮かべて神速で合掌すると、重力に逆らう緩やかな動きで顔から地面に倒れ込んでいた。いくつかのもぎもぎが、空中に一瞬とどまってからそのあとを追う。

 

 ううむ、ウララカは触れていなかったはずなのだが。いよいよミネタの境地は人の域を超えて、悟りに至りつつあるのかもしれない。

 私とヒミコのあれそれでなぜとは思うし、仮にそうだとしてこんなことで物理法則に干渉するなとも思うが。

 

 ただ、この超人社会で何事かを極めるということは、人の限界を逸脱しても何もおかしくはないのだろう。

 それはそれとして、ぜひとも見なかったことにしたいけれども。ミドリヤが慌てて受け止めて、怪我もなかったことだし。

 

 ……話を戻そう。

 

「ちなみにB組から見て、あのチームで誰が一番厄介だと思う?」

『八百万さん(だな)(だ)(ですぞ)(です)』

 

 放たれたキリシマの問いに対するB組の答えは、満場一致らしい。

 

 逆に同じ問いを受けた私たちの答えは、バラバラである。何せB組のことをいまだによく知らないのだ。それぞれが抱いている印象で、答えは容易に変わるものだ。

 

 ちなみに、私の答えは「チームの中枢という意味でケンドー、純粋に“個性”という意味でコモリ」だ。

 

 前者は言うまでもなく、あのモノマを御せているだけでも十分警戒に値するからだ。少し離れたところでテツテツが似たようなことを言っているのが聞こえたので、これは間違いないだろう。

 

 後者は、シンプルにフォースユーザーの天敵だからである。

 

 私が主として用いるフォースによる感知、索敵は、生物と非生物の反応の違いを糸口に行うものだ。生物に対しても、種族や個体ごとに差が生じるため、それによって区別することができる。

 だがそれゆえに、生物が非常に多い場所――たとえば昼間の新宿駅など――では、感知精度が下がる。反応するものが近い上に多すぎて、一つ一つがわからなくなるのだ。

 ひどいときには、集まりすぎてまったく違うものに感じられることすらある。一つ一つはただの色の点でしかないのに、集まると一つの画像になるデジタルデータのように。

 

 そして、キノコは言うまでもなく生命だ。もしもそれを自らの意思で大量に、自在に生やし続けられるとしたら、脅威でしかない。

 コモリが今どれくらいの規模で“個性”を扱えるかはわからないので、まだ天敵とは呼べないかもしれないが……安心する材料にはならない。最悪は常に想定しておくべきだろう。ああ、もちろんフォースとの相性云々は言わなかったが。

 

 ……そして、この懸念は現実のものとなった。第二試合、フィールドはその大半をキノコに覆われることになったからである。

 それは彼女一人で成し遂げたものではなく、オノマトペの内容を現実化するフキダシの“個性”との組み合わせがそうさせたのだが。いずれにせよ、敵対するにはいささか以上に躊躇する光景であった。正直な話、彼女と当たらなくてほっとしている。

 

 なお試合の結果としては、僅差ではあったがB組の勝利だった。

 

 前半は、黒に潜むという“個性”のクロイロを無効化するためにハガクレ……インビジブルガールがフィールドを透明化するなどして度肝を抜き、相手の策を盤ごとひっくり返したことで優位に進めていたのだが……前述のフキダシによって司令塔であるクリエティが分断されてからじわじわと逆転されていった。

 

 これについてはやはり、キノコによるフィールドの支配が強かった。インビジブルガールもところ構わず新しく増え続ける大量のキノコまでは透明化できなかったし、Can't stop twinklingのレーザーは金属の配管などはともかくキノコでは反射されず、攻撃範囲が狭められた。

 それでもツクヨミが獅子奮迅の働きで二人を無力化するところまでは迫ったのだが……まさかコモリの“個性”の有効範囲が生物の体内にまで及ぶとは。

 

 もちろん体内とは言っても、切り開きでもしないと外気にさらされない臓器などには無理だろう。

 しかし人間の「体内」には、唯一外気が触れ得る場所がある。呼吸器官だ。そこをキノコで攻められてしまったら、人間にはどうすることもできない。生理的な肉体の防衛反応は、意思でどうにかできるものではないのだ。

 

 そしてこれによって身動きが取れなくなったツクヨミは、捕まえた二人を手放してしまい脱落。Can't stop twinklingも同様の道を辿った。

 実に恐ろしい。コモリとの接近戦は絶対にしたくない。

 

 一方のクリエティは、分断された先からも他のメンバーをかなりうまくサポートしていたが……そちらに回ったケンドーのほうが肉弾戦は上手だった。一矢報いはしたが、順当と言うべき形で敗北していた。

 

 残るインビジブルガールはフキダシの無力化には成功していたが、檻に向かっている最中にクリエティを下したケンドーに見つかり、逆に捕まってしまい脱落である。

 

 そういうわけで、数値で見ると結果は0-4でA組の敗けだ。ただここまで述べたように、戦闘という形で見れば拮抗した勝負だった。敗けはしたが、得るものは非常に多い試合だったと言うべきだろう。それは相手も同様だ。

 

 続く第三セット。静かな滑り出しかつ、互いに互いを出し抜き合う頭脳戦でもあった第二セットとは打って変わって、こちらは正面からの激しい真っ向勝負となった。

 

 そもそも、ショートがいる時点でA組側の攻撃は大規模になりがちである。“個性”の出力という点で見れば、彼はクラスでも一番の力の持ち主だからだ。

 

 しかし、それであっさりと勝負がつくほどB組も柔ではない。入学直後ならいざしらず、既に半年以上訓練を積んできているのだ。ゆえに、ショートの氷は対応され攻撃は有効打足り得なかった。

 

 おまけにその対処が、ホネヌキの“個性”である。彼の“個性”は「柔化」であり、触れたものを柔らかくするというもの。これにより、氷漬けにされたものも問題なく脱出できるようになってしまったのだ。

 

 彼はそのついでに周辺や地面も柔らかくしていたため、氷の対処に追われている間に分断して各個撃破を考えていたA組メンバーの当ては完全に外されてしまった。

 その流れでショートはテツテツに、テンタコルはツノトリに、テイルマンはカイバラに押さえ込まれ、全員が一対一に持ち込まれたのである。

 

 インゲニウムダッシュに至っては、“個性”をうまく使われ氷の中に閉じ込められてしまったが……レシプロバーストの時間制限を大幅に伸ばした彼は、エンジンを噴かせて強引に氷を突破した。

 ホネヌキも、目にもとまらぬ動きを続けるインゲニウムダッシュとの戦いを避けたため、フリーになった二人がそれぞれどこの戦いに援護に入るか、入ったあとどのように動くかが趨勢を左右することになる。

 

 インゲニウムダッシュは、最初にテイルマンとカイバラの戦いに介入。互角の戦いをしていたところに死角から入り、カイバラを一気に檻へと移送してしまった。ここはお見事と言うべきだろう。

 

 一方、ホネヌキは潜んでいた。テイルマンはテンタコルの加勢に向かい、一度はツノトリを確保するに至ったが……ホネヌキはその瞬間まで柔らかくした地面の中に潜んでいたのだ。

 そこからの奇襲によりテンタコルは地面に足を取られて移動をほぼ禁じられ、テイルマンはツノトリを捕縛することこそできたが彼女に“個性”を発動する機会を与えてしまった。

 

 ツノトリの“個性”は、頭部に生える角を最大で四本発射・操作するというもの。つまり、身体を尻尾で縛られていても発動が可能だ。

 かなりの操作性を誇るこの角を、ツノトリは捕縛しているテイルマンの尻尾に突き刺して自分ごと檻へと運んでしまった。テイルマンにとって、尻尾できつくツノトリを拘束していたことが仇になった形である。

 

 残るショートとテツテツの戦いは、相討ちだ。身体を鋼鉄化する“個性”のテツテツにとって、ショートの半冷半熱は立ち向かえる程度の脅威でしかなかったのである。

 正確に言えば、どちらもまったく引かずに超高温の炎の中で殴り合いをしていたところに、ホネヌキが割って入って両者の手を止めさせた形だ。

 

 そのホネヌキも、戻って来たインゲニウムダッシュによって気絶に追い込まれたわけだが……ホネヌキは最後まで諦めることなく“個性”を使い、インゲニウムダッシュをコンクリートの下敷きにして相討ちとなった。

 

 最後はホネヌキが気絶したことで“個性”が解け、解放されたテンタコルが自由になったが……ここでツノトリは仲間諸共空中高くに離脱した。

 このままでは気絶した仲間を守り切ることはできず、しかし敵を檻まで運ぶだけの余力もないと判断した彼女は、引き分けに持ち込むことにしたのである。

 

 そしてその目論見は成功した。テンタコルには遠距離攻撃手段がないため、試合は引き分けに終わることになる。

 

 もちろんこの判断に否定的な意見が出なかったわけではないが、戦いにおいては勝つことよりも負けないことのほうが重要となる場面は往々にしてある。ツノトリの判断は決して間違いではないだろう。

 

 なおこの試合、ほぼ全員が怪我人となったため大半が保健室へ移送というオチがつく。そのため彼らへの講評は後回しとなり、ほとんどシームレスに第四セットへ進むこととなった。

 




第二試合、第三試合はほぼ原作通りです。特に第三試合は理波たちの影響が薄いメンバーが集まっているので、なおさらですね。

そして前触れなくさらっと明かされる飯田くんのヒーローネーム。
本作ではインゲニウムが引退していないので、そのままは名乗れません。なのでダッシュを付け足す形に落ち着きました。
ダッシュとはそのものずばり、走ることです。エンジンを脚部に持ち、速さに存在意義を見出している彼にはお似合いでしょう。
さらには’の意味もあります。これは数学的な意味では類似のものであることを示すものであり、試験的な評価の意味では元のものより一段階下がることを示すものです。
つまりこのネーミングは、兄であるインゲニウムのようになりたい、追いつきたい、という飯田くんの在り方を如実に示すトリプルミーニングなのでした。

峰田?
あいつはもう、なんていうか、「目覚めて」しまったんだよ・・・。
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