銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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9.A組VSB組 4

 そして続く第四セット。こちらは、キングダイナことバクゴーが終始圧倒的な試合運びを見せた。

 

 出だしこそ一人先頭を行くキングダイナに他三人が合わせるという、独断専行型の動きだった。いかにも独裁な暴君とそれに従わされているその他、という様子に見えたことだろう。

 

 それはB組側の予想通りの動きでもあった。予想通りだったからこそ、B組側は事前に立てた作戦を変えずに戦闘を開始した。体育祭でのキングダイナを見ていれば、そう予想することはおかしくないだろう。

 作戦も、決して悪くなかった。まともに正面から戦ったら勝てない相手に対して、策を講じることは当然の話。一人が突出して行動するワンマンチームであるなら、そこを基点に隙を広げていくように執拗な立ち回りも有効だったに違いない。

 

 しかし、キングダイナはわかっていた。自身の性格も、戦闘力を警戒されていることも……周りが自らをどのように見ているかも。そんな()()に沿った行動した場合、相手側がどう動くかもわかっていたのだ。

 だから彼は、それを利用した。つまりこの試合、ほとんどすべてキングダイナの考えた通りに推移したと言ってもいい。

 

 試合が始まってすぐ。自らの身体を何十ものパーツに分割して操ることができるトカゲは、それによって無数の小さな音を立て続けることでイヤホンジャックの索敵を無効化しつつ、キングダイナを襲った。

 普通であれば、的が小さすぎる上に数が多い攻撃は防ごうと思っても防げるものではない。だが、キングダイナはフォースユーザーとして覚醒している。どこからどのように襲ってくるかがわかる以上、トカゲの攻撃はただキングダイナをその場にわずかな時間足止めにする程度の効果しかなかった。

 

 作戦が失敗したと判断したB組は、ここで一斉に一時退却を選んだが……残念ながら、キングダイナは仕切り直しを許さなかった。

 彼は戦いの中でこそ最も意識を集中させる男だ。それこそフォースには必要なものであり、ゆえに戦いが実際に始まって意識が研ぎ澄まされた彼は、直感だけで周囲に敵が潜んでいることを看破して見せたのである。

 

 これによって、カマキリとボンドの二人はキングダイナ以外の三人を相手に数の不利を強いられることになる。抜群のチームワークと、搦め手としての性能が高いセロファンとピンキーの”個性”を十分に発揮して、三人は相手を順当に下すことに成功した。

 

 一方、トカゲの撤退を支援しようとしたアワセは失敗して放置されていた。ものをくっつける“個性”の持ち主である彼は、トカゲを追いかけるキングダイナを壁や煙突などにくっつけて妨害する予定だったようだが……フォースユーザーに奇襲はまず成功しない。逆にカウンターを入れられ、手痛いダメージを受ける始末である。

 

「あとは任せた!」

 

 そんなアワセを、キングダイナはそう言い残して放置した。

 アワセも痛みなど何するものぞと言わんばかりにすぐ体勢を直していたが、任せたという発言から近くに他の敵が追いついてきていると思って足を止めてしまった。他の三人はカマキリとボンドとまだ戦っている最中だったため、実際は周りに誰もいなかったのにもかかわらずだ。

 

 これにより、アワセはキングダイナを追いかけるにしても、カマキリとボンドを助けに行くにしても中途半端な地点に一人で取り残されてしまった。

 それでもすぐに気を取り直して、カマキリたちを助けようと動き出した点は褒められるべきだろう。空中を飛行できるキングダイナには、機動力を底上げする手段を持たないアワセではまず追いつけない。だからこそ、彼の判断は正しいと言っていい。

 

 問題はアワセが到着したとき既に二人は拘束されていたことと、その少し前から彼の接近はイヤホンジャックによって完全に把握されていたことだ。結果、彼はイヤホンジャックの音撃を不意打ちで、しかも至近距離から喰らう羽目になる。

 

 その間にキングダイナはトカゲに追いつき、苛烈な攻撃で彼女を戦闘不能に追い込んだ。フォースユーザーらしい、一分の隙もない戦い方であった。

 

 逆にトカゲにとっては、差し向けられた身体の一部を的確に撃ち落としながら少しずつ距離を詰めてくるキングダイナの姿は、さぞ恐ろしかったことだろう。将来、キングダイナがヴィランっぽい見た目のヒーローランキング一位を取る未来が誰の目にも見えたと思う。

 

 なお、フォースが使えなかったとしても、この勝負は恐らくキングダイナたちの勝ちだっただろう。戻って来た彼にその点を尋ねたら、「そのときゃ救けて勝つだけだ」と返してきたからな。

 わかりづらい物言いだが、要するにチームメンバーのことを何かあったときは救ける仲間であるとはっきり認識しているということだ。そこを理解できているならば、フォース以外が同じ条件の戦いで負けることはないだろう。所要時間はもう少し長かっただろうとは思うがね。

 

 そして、最後の試合となる第五セット。トランシィことヒミコの出番である。

 これがまたなんと言うか、かなり強引な戦いであった。

 

 というのも、A組側。地面に固定されているはずの激カワ据置プリズンを、なんと敵陣に持ち込んだのである。

 

 いや、それだけならまだよかった。私も考えたし。

 だが、相手側の檻を破壊するのはダメだろう。確かに激カワ据置プリズンの移動も破壊もルールで禁止されていなかったので、反則ではない。反則ではないが……それはただ言及されていなかっただけだ。あまりにも力業がすぎる。

 

 流れとしては単純。トランシィがライトセーバーで激カワ据置プリズンを地面から切り離し、ウラビティがそれと共に全員を無重力化。最後にデクが全員を持ち上げ、グレープジュースが設置したもぎもぎを発射台にして敵陣まで一気に突入した。それだけだ。

 

 だが、強引ながらもB組側の動揺は相当なものだったろう。誰もそんなことをするとは予想していなかっただろうからな。彼らはまだ仕掛けも配置も途中の状況で、空から奇襲されたのだから余計に。

 

 おまけにそんなところへ、激カワ据置プリズンの破壊である。相当に動揺を誘ったことだろう。ライトセーバーがユニバーサルカッティングツールと呼ばれた所以が遺憾なく発揮され、目の前で激カワ据置プリズンを消滅に近いレベルで破壊されたB組側の心境たるや、察するに余りある。

 

 何せこの試合、勝利条件は「相手側を全員檻の中に入れること」だ。それが不可能になった上に、すぐ目の前に相手側の檻があるとなれば、焦らないものはなかなかいないだろう。

 おまけにその状態で、ワンフォーオールを発動させたデクが縦横無尽に暴れるのだ。もはや悪夢か何かだと思う。

 

 発案はまず間違いなくトランシィだろうな。強引かつルールの穴を突くやり方は、あまりにも暗黒面すぎる。

 ただし、檻の破壊は独断と見た。運搬はまだしも、破壊はさすがに提案したところでデクたちが了承するとは思えないのだ。そこも含めて、確信犯だろう(正用、誤用両方の意味で)。

 

 ただ、途中でデクの様子が明らかにおかしかった点は気にかかる。モノマが苦し紛れに放った挑発――という名の罵倒、もしくは誹謗中傷――を受けて、突然身体から黒いエネルギー状の鞭のようなものがあふれ出し、本当の意味で暴れまわったのである。

 昨夜、“個性”が暴発したらしいことは聞いていたから不審に思ったし、デクも内心で悲鳴を上げていたからすぐに試合を中止するよう言おうと思ったのだが……私や教師陣が止めに入るより早く、ウラビティに要請されたトランシィがどうにか鎮めていたので、危うい場面だったことに気づいた人間はオールマイトとバクゴーくらいだったのではないだろうか。

 

 あともう一つ、気にかかることがある。トランシィが私に再変身した瞬間に、私の胸が一瞬ひどく痛んだことだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったのだが……一秒にも満たない一瞬だったので、何が何やら。一応、授業が終わったら保健室に行くつもりだが。

 

 話を戻そう。トランシィの鎮め方だが、最初こそフォースイレイザーを用いたものだったのだが、やはりワンフォーオールは出力が大きすぎるのだろう。鎮めきれず、仕方なく全力の全能力増幅からの全力のマインドトリックと耐性のマイナス増幅で、これまた強引に鎮めていた。

 

 ウラビティが全身を使ってデクを押さえ込んでいなかったら、たぶん捉えきれず失敗していただろうな。

 それを目の当たりにしたグレープジュースが、試合後不動明王もかくやな怒りを顔に張り付けていたのは、いつも通りのご愛嬌と言うべきだろう。私とヒミコが絡まないところでは、性欲の権化なのだ彼は。

 

 ああ、試合はA組側の勝利である。デクの暴走によって、相手側の大半が戦闘不能に追い込まれたのだ。怪我の功名と言えばいいのか、いささか悩む状況であるが。

 

「えー……とりあえず、緑谷。何なんだお前」

 

 そして講評の時間。イレイザーヘッドが開口一番にそう言った。これは全員の代弁でもあっただろう。

 

「僕にも……まだハッキリわからないです」

 

 対するミドリヤの答えはこれだ。

 まあ、それはそうだろう。昨夜の件もまだよくわかっていないのだ。いきなりのことに困惑するばかりだったろうな。

 

「力が溢れて抑えられなかった。今まで信じてたものが突然牙を剥いたみたいで……僕自身、すごく怖かった。でも麗日さんとトガさんがとめてくれたおかげで、そうじゃないってすぐに気づくことができました」

 

 彼はそう言って、二人に交互に顔を向ける。二つの笑顔が彼を出迎えた。

 

 ……ヒミコはなぜかまだ私に変身したままだが。

 

「麗日さんが押さえ込んでくれなかったら、トガさんがフォースで意識を誘導してくれなかったら、どうなるかわからなかった。本当に訳わかんない状態だったから……二人ともありがとう!」

「気にするな……と言いたいが、君はそれでも気にするのだろうな。だから、うむ。どういたしまして、と言っておこう」

「そうだね。うん、どういたしまして!」

 

 その後は迷わず一直線にミドリヤに飛びついたウララカのことを、アシドがからかいに行くという一幕もあったが。

 

 ともかくそういうことで、ひとまずワンフォーオールの暴走については一旦終わりということになった。ミドリヤについては恐らくこの後、オールマイトを中心にして話し合いの場が持たれるのだろうな。

 もしかしたら、私たちもそこに呼ばれるかもしれない。ワンフォーオールについて大体のところを教えられているし、昨夜の件についても間近で現場を目撃しているからな。

 

 ひとまず昨夜のことについて、先に考えをまとめておくか……と考え始めたところで、授業もお開きになったのだが……ヒミコがいまだに変身したままだ。どうやらまたなりきり癖が出ているらしい。

 私はやれやれと思いながらも苦笑を浮かべ、こちらに近づいてきた彼女に声をかけることにした。

 

「「ヒミコ、いつまで私に変身しているつもりだ?」」

 

 ……そして、互いにまったく同じ言葉を口にして。それを聞いた私たちは、同時に硬直した。

 が、すぐに理由に思い当たって改めて苦笑する。やはりそれも同時だ。

 

 どうやらまた、私になりきりすぎているようだ。とはいえこれ自体は前にもあったことなので、焦ることではない。

 好きな人と同じになりたい、という彼女の深層心理については理解しているしな。もちろん、以前彼女に話した通り、あまり私としては嬉しいことではないのだが。

 

 とはいえ、ミドリヤの暴走は突然で、緊急事態だった。その対処のためにも、いつも以上に没入するのも無理からぬことか。

 仕方ないなと思いつつ、私は気を取り直して改めて声をかける。恐らくは、ヒミコにとっては殺し文句であろう言葉を。

 

「「君の想いは理解している。だが前にも言った通り、それだけは許容できないんだ。なあ、そろそろ愛しい君の姿を見せてくれ」」

 

 だがそれがヒミコの口からも出てきたことで、私たちは今度こそ本当に硬直した。

 




心操くんがいないのに、どうやってワンフォーオールの暴走をとめるのかと思った方もいらっしゃるかもですが、あいにくとフォースで似たようなことができるのですよねぇ。
もちろんデクくんのような意思の強い人には効果薄いですが、そこは増幅との合わせ技で。暴走中の動揺した精神の隙を突くのと、バフデバフを全開にすることで対処です。
逆に言えば、心操くんはワンフォーオールの覚醒初期段階におけるストッパーを担うキャラなので、二次創作する立場からすると下手に体育祭で彼を予選敗退させられないんだなって書いてて思いました。
なんなら第二次全面戦争編でも彼には役割があるので、そこまで話を続ける場合ますます彼を外せなくなるっていう。
解決手段が最初から存在するクロス先を選んだボクは、きっと運がいいのでしょうね・・・。
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