銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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7.痛み分け

「……やりましたか?」

「ああ、意識はない。……クリエティ、済まないが拘束用の道具を頼めるか?」

「もう用意してありますわ」

「さすがだ、準備がいい。ありがとう」

 

 クリエティから手錠と頑丈な縄を受け取り、私は彼女と共に女ヴィランに近づく。

 

 警戒は怠らない。もちろんライトセーバーも出したままだ。

 幸い女ヴィランが復活して反撃してくることはなかったので、二人で一緒に拘束しにかかる。

 

 並行して、女ヴィランの武器も没収ないし破壊していく。手にはめた刃物付きの手袋以外にも、暗器をそれなりの数所有していたのでそれらはすべて没収だ。

 

 問題は、女ヴィランの意識さえあれば強力な武器になる髪の毛だが……。

 

「……ヴィランとはいえ、さすがに女性の髪をすべて刈り取るのはまずいだろうか?」

「ヴィランが相手だからと言って、何をしてもいいというわけではありませんからね。しかし、有効な対抗策が思いつかないのも事実ですし……難しいですわね。こういうとき、プロの方はどう判断されるのでしょう……?」

 

 なまじ二人とも考えが回るタチであるからか、微妙にズレた話をする羽目になっていた。ジェダイとしての私はこれは仕方がないと言っているのだが、一人の女子高生としてそれはどうなんだと言っている私もいる。

 

 まあそんなことを言っている場合ではないので、すぐにベリーショート程度にまでは切ってしまおうとなったのだが……。

 

「……! モモ危ない!」

「きゃっ!?」

 

 不意に強い害意を感じて、私はクリエティに飛びかかった。そのまま彼女をかばいながら、直前までいた場所から距離を取る。

 

 すると直後、その場所を見えない波動が薙ぎ払っていった。どうやら衝撃波か何かのようだ。私とクリエティ、二人を同時に吹き飛ばすような形だった。

 しかも随分な威力で、地面がえぐれてしまっている。あれを咄嗟に防ぐことは難しいだろう。回避を選んで正解だ。

 

 だが満点とも言えない。なぜなら私たちが距離を取った隙を突いて、男が女ヴィランを救助してしまったからだ。

 

「……あれは」

「どうやら主犯格のお出ましのようだ」

 

 現れたのは、あの白い長髪の男。その顔の下半分は防毒マスクめいた金属製のマスクで覆われていて、妙な既視感がある。

 

 ただ、どうにも調子がよろしくないらしい。怪我は見当たらないが、体調不良か? それとも、Can't stop twinklingの「ネビルレーザー」のように、何かしらの反動がある口か。

 

 それでも男は、少なくとも不調を顔色に出すことはなかった。強い戦意を維持したまま、女ヴィランを案じるようにすぐ近くに片膝をつき……。

 

「彼女は返してもらうぞ」

 

 揺るぎない声と共に、攻撃を放ってきたのだ。

 片手からは、弾丸のように爪が飛んでくる。さらにもう片方の手からは、衝撃波。

 

 ……爪飛ばしに衝撃波? 明らかに関連性のない二つの能力……まさか?

 

 いや、考察は後回しだ。攻撃に対処しなければ。

 前者だけなら、どうとでもなる。だが後者はダメだ。私一人ならまだしも、クリエティにはこれをどうにかする手段がない。

 

 だから私は彼女を抱え、さらにヴィランたちから距離を取る。

 

「……一度撤退する」

「理波さん? 私には構わず……」

「嫌だ」

「えっ?」

 

 迷わず拒否したことをクリエティに驚かれた。

 そこではっとなり、私は思わず顔を歪める。説明より先に感情が前に出るなど、前世では考えられない失態だ。

 

 それでもこちらの事情に構うことなく攻撃は飛んでくるので、ライトセーバーとフォースでなんとかいなしながら物陰へと飛び込む。

 

 同時に、それ以外の思考をすべて説明に回す。私がどういう思考の結果、感情的になったかを言葉にする。

 

「あの男、身体に相当ガタが来ている。女ヴィランのほうも、かなり弱体化させた。それでも男のほうは、明らかに関連性のない二つの”個性”を使った。全力を出したとしても、二人で捕らえきれるかどうか、断言しかねる」

 

 さらに小さな竜巻が複数、うなりを上げて飛んできた。またしても関連のないであろう攻撃だ。これで三つ目。

 それらは明らかに私たちを追尾する動きであり、しかもそれぞれが私とクリエティを別々に狙っている。凄まじい、どころではない。あまりにも精密かつ大規模な”個性”の制御能力だ。

 

 弱っていてこれとは、まったく恐れ入る。これに匹敵するほどの力量の持ち主を、私はほとんど知らない。これでなりふり構わず暴れられたら、どうなることやら。

 

 さらに場所を変えたところで、クリエティも相手の能力について察したのだろう。顔を強張らせながらも、納得の表情を見せた。

 

「だが彼らはまだ目的を果たせておらず、諦める気もさらさらないらしい。捕まえる機会はまだある。だから今は我々の安全を優先したい」

「島外との連絡手段がすべて断たれていますが、それを覆す”個性”は十分あり得る。実際私や理波さんがそうですし……彼らとしては、短期決戦が望ましい。だから短いスパンでまた攻めてくる、ということですわね」

「ああ。そして戦いがどういう結果になろうと、君の”個性”でなければできないことは非常に多い。ここで二人で無理をして、窮鼠に噛まれることは避けたほうがいい。

 ……などと色々言ったが、結局のところ私は君を守りながら彼を倒す自信がどうしても持てないんだ。それで無理に彼と戦って、君に怪我をさせたくない。仮にもヒーローである君に、そんなことを考えるのは失礼なことだとはわかっているのだが……でも、私は……」

 

 距離を取ったうえで男の視界から完全に外れたことで、男のほうも攻撃をやめたようだ。制御を失ったつむじ風が、ほどけながら空に吹き上がっていった。

 

 それでも残る風が音を立てて吹き抜ける中、クリエティがふっと微笑む。

 彼女はその表情のまま、優しい手つきで私の頭を撫でた。

 

「よくわかりましたわ。そのようにいたしましょう」

「……すまない。完全に独断だったし、性急な行動だった」

「謝る必要などありませんわ。私の力不足が一番の原因ではありませんか。精進しませんとね。……それに、緑谷さんと爆豪さんのことも気にかかりますわ」

「……うん」

 

 と、そんな会話をしつつ、フォースで周辺を探る。

 どうやら男は、女ヴィランを抱えて撤退していったようだ。途中、彼の生命力が一瞬翳ることが数回あったので、やはりあの男は弱っているのだろう。

 

 何が彼にそこまでさせるかはわからないが、いずれにしてもあちらにはあちらなりの退けない理由があるのだろうな。

 

 一方、デクとキングダイナのほうはというと……こちらもだいぶ弱っているように思われる。先ほどの雷はやはり、彼らに対する攻撃か。

 

 だとするとあの男、間違いなく複数の”個性”を持っている。

 だからこそ、考えがそこに至ったとき、男の姿から覚えた既視感の正体がわかった。

 

 シルエット。それが、オールフォーワンに似ていたのだ。

 

 まさか。そんな思考が広がる。

 

「……理波さん?」

 

 そこに、クリエティが心配そうに声をかけてきた。

 

「……すまない。相手の”個性”について考えていた。だが今は、一旦戻ろう」

「ええ、そうしましょう。情報の共有が必要ですわ」

 

 ひとまずそれだけ交わした私たちは、警戒しながら物陰から出る。

 そうして、コムリンクで仲間に呼びかけながら撤退を始めたのだった。

 

***

 

 仲間と合流したことで、いい知らせと悪い知らせの両方が手に入った。

 いい知らせは、ヴィランを一人捕獲できたこと。悪い知らせは、デクとキングダイナが意識不明の重体であることだ。

 

 しかし島内を索敵すれば、残りのヴィランが撤退していないことは比較的すぐにわかる。彼らがいつどこで何をしでかすかわからないため、まだ避難を解除するわけには行かない。

 

 ただ小さいとはいえ、観光客もいる島だ。避難民の数はそれなり以上にいる。

 

 なので、活動拠点としていた旅館は一旦引き払い、島唯一とも言える規模の工場を借りて避難所兼臨時拠点とした。村長と自治会長、二人が揃ってここなら全員を収容できるだろうと太鼓判を押したからだ。

 私たちはそこに入って避難民への炊き出しを行いつつ、捕虜からの聞き取りや負傷者の手当などに追われることになる。

 

 やることは非常に多い。だが、何よりもまずやらなければいけないことがある。捕虜の拘束だ。

 

 我々はまず捕虜の男を地下のボイラー室に運び、そこで厳重に拘束することにした。どうやら布を操る”個性”らしいので、そうしたものから極力離して。

 

 またもしも男が脱走など、何らかの動きを見せたときのために、監視カメラを借りてこの場所に集めた。ついでに使えそうな機材もあったので、赤外線センサーを使った警報装置も取り付けておく。

 

 それが終わったあとは、怪我人の治療や避難民への炊き出しだ。既に日は落ちている。このまま食事なしで彼らを放っておくことはできなかった。

 

 とはいえ調理において私は戦力外なので、治療の手伝いと物資を創るクリエティの補助に回った。

 

 治療はもちろんだが、私の”個性”における一時増幅で増えたものは、消える前に消費してしまえば揺り戻しは起こらない。脂質を消費することでものを創造するクリエティとは相性がいいのだ。私が力尽きない限り、彼女は極めて低いコストで創造し続けられるからな。

 

 とはいえ、それは私の消耗と引き換えなのでほどほどのところで済ませる。純粋な戦闘力という意味で、私が弱った状態であることは避けたかった。

 

 何より、私にしかできないことが他にもある。

 

「捕虜への聞き取りは私がやろう」

「えッ、でも緑谷たちの治療……」

「もちろんそれもやるが、つきっきりは無理だ。張りついていれば彼ら以外の全員も恐らく快復させられるはずだが、聞き取りは私にしかできないからな。私なら、フォースを使って相手の記憶を直接見ることができるから」

 

 ここに来てすぐ。役割決めのときに、こんな会話があった。

 

 私の言葉になるほどと応じたのは、ショートとインビジブルガールだ。

 二人はかつてUSJ事件のとき、ヒミコがマインドプローブでヴィランから情報を抜き取るところを見ている。前例を知っているからこそ、私に賛同してくれた。

 なので治療に関しては、申し訳ないけれども、私はほどほどに関わる程度で留めたわけである。

 

 その代わりは、島在住の医療従事者にお願いした。リカバリーガールと比べてしまうとどうしても差を感じてしまうが、それでも本職だ。手際に関しては間違いなく今この島にいる誰よりも慣れているだろうからな。

 

 ……このとき、それらの決定がなされるところを眺めながら、私は一人別のことを考えていた。

 

 本当ならここにヒミコがいるはずだったのに、と。彼女がいれば、彼女がいてくれたなら、聞き取りと治療を分担することができたのに。

 そんなことを、私は考えていて――

 

「理波ちゃん」

 

 だが、そんな私をフロッピーが呼んだ。

 

「私、思ったことはなんでも言っちゃうの。……だからね。今は、ここにいない人を当てにしている場合じゃない。そうでしょう?」

 

 どうやら彼女にはお見通しらしい。いや、全員にかな。思わず苦笑しそうになる。

 

 けれどもあえて嫌われ役を買って出たフロッピーの意図は、きちんとわかっている。だから私は、少し厳しい語調で言うフロッピーに居住まいを正して、うんと頷いた。

 

「……わかっている。ありがとう、フロッピー。それと、すまない。恐らくこれからも、みんなには迷惑をかける」

「いいのよ。いくらでもかけてくれて」

 

 これ以上は言わずともわかるでしょう? とでも言わんばかりに、フロッピーはケロケロと微笑んだ。他のみんなも同様である。私も少しだけ笑った。

 

 それを見て、話が落ち着いたことを理解したのだろう。話題を本筋に戻すべく、インゲニウムダッシュが口を開いた。

 

「では増栄くん、すまないが捕虜のほうは頼む! 君を一人にするのは、正直心苦しいのだが……」

「人手が足りない状況だ、そこは割り切るべきだろう。大丈夫だ、すべての情報を筒抜けにして見せる」

 

 以上が最初の打ち合わせで行われたやり取りである。

 

 なので治療やクリエティの手伝いをほどほどに済ませた私は、いよいよ尋問を行う旨をみんなに伝えてから、一人地下に向かった。

 

 今のところ、捕虜の周りに設置した各種装置が反応した様子はない。一応は大人しくしているのだろう。実際、ボイラー室に踏み込んでみれば、ヴィランはきつく拘束された状態で寝かされていた。

 

 だが、口を開く様子はない。私が入室したことで、一瞬だけこちらにちらりと視線をよこしたが、それだけだ。フォースで読むまでもなく、何も話すつもりはないという態度だとわかる。

 

 しかし一方で、舌を噛み切るなどはしていないようだ。外部との通信手段は持っていないことは事前に調べてわかっているので、手間を避けあえて猿轡などは噛ませなかったのだが……この様子からして、仲間が助けに来ることも、目的を達成することはまったく疑っていないのだろうな。

 

 けれども、そうはさせない。今のところ、彼ら四人が何を目的としているかはわからないが……いずれにしても平和的なものではないことは間違いないはず。

 

 であれば、断固として阻止させてもらおう。

 なぜなら私はジェダイの騎士であり、私たちはヒーローなのだから。

 




実際問題、ここに本作のトガちゃんがいたら、正直ヌルゲーどころの騒ぎじゃないんですよね。
マミーだけでなくスライスまで捕虜にできるのはまず間違いないし、なんなら一回目の接触でそのままナインをボコしに行って問題ない程度にまで難易度が下がる。
そういう意味でも、今章でトガちゃんが不在なのは意義があるのです。決してTS幼女を曇らせたいわけではなく。ええ。

ちなみにこの辺で我慢ができなくなって、猛烈にイチャイチャさせたくなった結果、ポッキーの日の間話を書きました。
本当、早くトガちゃんを理波のところに帰してあげたい・・・一体誰がこんなひどいことを・・・。
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