銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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8.情報と目的の共有

「私は君とは初めましてだな。ジェダイナイト・アヴタスを名乗っているものだ。もっとも、君はメディアを通じて私を知っているだろうが」

「…………」

 

 拘束されているヴィランに近づきながら、声をかける。当然だが、反応はない。

 

 ないが、しかし聞こえている以上は内心に起こる反応は絶対にある。人間は考える葦である、とはこの星の哲学者の言葉だが、逆に言えばそれは、考えずにはいられないということでもある。

 

 そしてこちらからの言葉に反応するからには、フォースはそれを拾い上げる。効きやすい相手とそうでない相手がいるので、絶対ではないが……それでも、それがたとえハット族であっても一切の影響がないわけではないのだ(無論彼らの場合限りなく微小だが)。

 

「これから何をされるかはわかっているだろうが、一応言っておこう。私はこれから、君を尋問する」

「…………」

 

 だから私は、言葉を切らさない。近づくために周辺のセンサーを切りながら、なおも話しかけ続ける。

 

「抵抗は無意味だ。君が知っていることを、すべて教えてもらうぞ」

「……?」

 

 そして私は、ヴィランのすぐ近くまで寄ると、その頭に手のひらを静かに当てた。

 

 では、マインドプローブを始めよう。

 

「最初の質問だ。君たちの名前は?」

「…………」

「……そうか。リーダーはナイン、私が戦った女がスライス、通信基地を破壊した異形型がキメラ、そして君がマミーだな。覚えたぞ」

「何ッ!?」

 

 直後のやり取りに、ヴィラン……マミーはカッと目を見開いてこちらに顔を向けた。その勢いに押されて私が当てていた手がずれ、視線がまっすぐに私に向いている。

 

 そこにある表情は複雑だ。様々な感情が混じり合っている。

 一番は困惑。だがそれに次ぐのはやはり怒りと殺意だ。特に何をされたかを理解してからは、それらが他の感情を押しのけて前に出てきている。

 

 だが、まあ、それだけだ。柳に風と受け流し、私は小さく微笑む。

 何度も言うが、私は怒り狂うシスの暗黒卿ダース・ヴェイダーに首を刎ねられた経験がある。あれに比べればこれくらい、まったく大したことはないのだ。

 

「貴様ァ……! 心を読んだな……!?」

「御名答だ。そして、もう理解したな? 先に述べた通り、抵抗は無意味だ。すべて教えてもらうぞ」

「やめろ……! やめろ小娘!!」

 

 私に触れられていることがトリガーであると察したのか、マミーは暴れようとする。首から上は拘束がないので、暴れられているのは頭だけなのだが……判断としては間違っていない。

 ただ、現状彼にはそれ以外にできることがない。そして頭だけを動かしても、結局のところただの時間稼ぎにしかならない。

 

 私は先ほどより強い力で、マミーの頭をつかむ。手が小さいので表現に見合わないかもしれないが、わしづかみだ。彼が寝かされている台に、そのまま頭を押し付けて固定する。

 私の身体能力は、度重なる永続増幅によって見た目以上に高い。握力も腕力も同様であるため、マミーの頭をこのまま離さないくらいは難しくもないのだ。

 

 何より、マインドプローブは別に頭に触れていなくとも行使可能だ。ただ、触れているほうがより正確に、精密に調べられるし、相手にも負担をかけずに済むのでそうしているに過ぎない。そういう意味でも、彼の抵抗は無意味だと言える。

 

 シスならば、相手への負担に言及して脅すだろうがな。あるいは実際に心を踏みにじり、苦痛を与えて愉悦に浸るのだろう。

 だが私はジェダイなので、そんなことはしない。そもそもの話、ここまでのやり取りで垣間見えたマミーの内心から鑑みるに、これを告げると彼は自害することを選びそうだという予想もできるしな。

 

「続けるぞ。二つ目の質問だ。君たちの目的はなんだ?」

「うおおおおおやめろォォ!!」

「『細胞活性』の”個性”を奪う……? なるほど、やはりナインとやら、オールフォーワンの関係者か?」

「うおおおおおあああああ!!」

 

 どうやら、聞くべきことは多そうだな。それなりに時間がかかりそうだ。

 

***

 

 およそ二時間後、知るべきことをすべて引き出した私はボイラー室を後にしてみんなと合流することにした。

 

 ……追い詰められた人間の執念とはすごいもので、マミーは途中からマインドプローブにある程度抵抗するようになっていた。死に物狂いとはあのことだろう。

 

 とはいえ、結果として温存したかった増幅を何度も使わされたことは事実だ。おかげで想定より私の消耗が激しい。これは素直にマミーの精神力を褒めるべきだろうか。

 

 ともあれ歩きながらコムリンクで問いかければ、まだ寝ているデクとキングダイナ以外はひとまずの作業を終えて、会議室で打ち合わせを始めたところだったようだ。

 

「すまない、待たせた」

「いや! ほとんど始まったばかりだ、気にしないでくれ!」

「むしろこのわずかな間に必要なことを引き出したのかよ?」

「フォースってホントすごいよな……」

「それで、どうでしたか?」

「ああ、説明する」

 

 全員の視線を集めながら、私も周りを見渡す。

 

 むう、思っていたよりクリエティとチャージズマの消耗が激しいな。避難民を養うために、それなりに無理をしたようだ。

 私もそうだが、これが凶と出なければいいが。

 

「……まず、襲撃してきたヴィランは総勢四人。一人はキングダイナのおかげで捕縛できたから、残りは三人だ。他にも後ろに控えがいる、ということもない」

「おお、朗報じゃん!」

「これ以上相手が増えないってわかるだけでもだいぶ安心するよね」

「問題はそのうちの一人が、緑谷と爆豪をノせちまうくらいやべーやつってことだと思うぜオイラァ……」

「そう、まさにその人物が相手の主犯のようだ。名前はナイン。……他人の”個性”を奪い、複数併せ持つことができる男だ」

『……!?』

 

 私の言葉に、全員が顔色を悪くした。中でもCan't stop twinklingは一際悪い。青いを通り越して白い。

 

 それでも顔つきだけで言うなら、精悍だ。覚悟はもう決まっているようだ。ああ、強いな、彼は。

 

「……”個性”の強奪、だと? それは真実か、増栄?」

「それって、まるでオールフォーワンみたいね」

「ああ。だが、オールフォーワンそのものではない。どうやら、ヴィラン連合の背後にいる闇の技術者により、”個性”オールフォーワンの因子を移植されたらしい」

「……マジで?」

「ちょ、それってウチらが聞いてもいい話?」

「あまり聞かないほうがいいだろうな。というわけで、この辺りに関しては割愛するが……ともかくそういうわけで、ナインは他人の”個性”を奪える。

 だが本家本元とは異なり、使える”個性”は八つまでのようだ。まったく未知の”個性”が次から次へと出てくる、ということはない」

「ウェェイ……安心材料っちゃ安心材料なんだろうけど」

「どっちにしても強敵ってことだね……楽には行きそうにないな」

 

 ここで怖気づくものがいない辺り、みんな成長したなと思う。USJ事件のときは、もっと怯えが先立っていたと記憶しているが。

 

 もちろん、それが悪いはずがない。むしろみんなと肩を並べられることが、私は嬉しい。

 

「話を進めましょう。それで理波さん、彼らの目的は一体?」

「ああ。彼らのこの島における目的は、シマノ・カツマ少年の”個性”を強奪することだ」

『……誰?』

 

 ほぼ全員が同じ反応を示し、少しの間会議室の中に沈黙が満ちた。

 それを破ったのは、挙手しながら立ち上がったウラビティである。

 

「私知ってる! 昨日、迷子になったってその子のお姉ちゃんから通報があって、デクくんや耳郎ちゃんと一緒に探したんだ」

「あー、もしかして緑谷が見つけるの遅いって怒られてたときの? お姉ちゃんのほうは随分勝気な感じだったけど、その活真くん? とやらはわりと内気な感じだったかな」

「迷子……ということは幼い少年か、麗日?」

「小学校一、二年生ってとこやないかなぁ……少なくとも高学年にはなってないと思う」

「……そんな子の”個性”を奪って、ナインってのは何がしたいわけ? そこらへんはわかった?」

 

 ピンキーの問いかけに、もちろんと返す。

 

「ナインは強力な”個性”を持つ反面、使えば使うだけ身体に負担がかかってかなり弱っていたようだ。複数の”個性”を使えるようになってからはそれが加速したらしい」

「……ねえことちゃん。まさかとは思うけど、その活真くんの”個性”って治癒系?」

「そのようだ。”個性”の負担をなくすため、さらには衰弱した身体を治すために、カツマ少年の”個性”がどうしても必要なのだそうだ」

「……絶対に渡せないな。活真くんの心情的にも、戦略的にも」

「……僕がどうかしたの?」

 

 と、ここでA組の誰でもない声が話し合いを遮った。幼い少年の声だ。

 入り口のほうへ全員が顔を向けると、そこには青いオーバーオールを着た金髪の少年がいた。すぐ後ろには、似た顔立ちの少女もいる。どうやらこの子たちが、問題の姉弟のようだ。

 

 当人の登場に、私たちは誰ともなく互いの視線を交わす。

 

 だがこの件は、本人に黙っているわけにはいかないだろう。そもそもの話、恐らく隠し切れない。

 だから、私たちは真実を話すことにした。

 

「……あなたが島乃活真ちゃんね? 実は……」

 

 説明役を買って出たのは、フロッピーだ。下の妹弟がいる彼女は、私たちの中で一番子供とのやり取りに慣れている。

 

 そんな彼女の説明を聞いて一番大きな反応を示したのは、カツマ当人ではなく姉のほう――マホロ、というらしい――だった。

 

「なんで活真がそんな目に遭わなきゃいけないわけ!? ふざけないでよ!!」

 

 涙目になってカツマを抱きしめるマホロ少女の姿は、間違いなく弟を守ろうとする姉だった。

 

 だが、彼女の言葉は私たちの総意でもある。幼い少年が理不尽に力を奪われるなんてことが、許されていいはずがない。

 

「まったくもってその通りだ!」

「だよな! ふざけんなって話だぜ!」

 

 インゲニウムダッシュとレッドライオットが、声を張り上げる。

 

「案ずるな、君たちのことは必ず俺たちが守る」

「そうだよ。大丈夫、俺たちに任せて!」

 

 次いでテンタコル、テイルマンも大きく頷いた。

 

「……で、でも。あのヴィラン……殺さない、って言ってたし……」

 

 だが、これをカツマが遮った。

 

「……ぼ、僕、別にいいよ、”個性”なくなっても。それで島のみんなが助かるなら……」

 

 それは幼いながらも、悲壮な決意だった。彼は本気で、自分の身一つでみんなが助かるならそうなっていいと思っている。

 

 ウソでしょ、と言いたげにCan't stop twinklingが私を見たので、嘘ではないと首を横に振って応じる。

 

 カツマの覚悟は、元が無個性で、それを憂いた両親によってオールフォーワンから”個性”を授かったCan't stop twinklingの目には、眩しく映ったようだ。

 けれども、今の彼が目をやられることはない。彼はもう、前へ進んでいる。だから、彼はすぐに持ち直して口を開いた。

 

「……キミ、なかなかにキラめいてる。でも、最高ではないね」

「ちょ、青山……こんなときに何を……」

「最高にキラめいてるボク()()なら、こう言うよ。『活真くんは絶対に渡さない!』ってね☆」

 

 そして彼は、「そうだろ?」と締めくくりながら私たちに向けてウィンクをした。

 これには彼を咎めようとしていたセロファンも、瞠目する。だが、彼はすぐににやりと笑って応じた。もちろん、私を含めたみんなもだ。

 

 一気に空気が弛緩した。もちろん、いい意味でだ。

 それを示すかのように、インビジブルガールがCan't stop twinklingの背中を肘で小突いた。

 

「……言うじゃん、青山くん!」

「ああ、漢らしいぜ!」

「どのみち相手はヴィランだ。”個性”を渡してすんなり帰るなんて保証はどこにもねぇ」

「最悪、奪った”個性”の実験などと称して大暴れする可能性だってありますわ。いずれにしても、活真くんを渡す選択肢は初めからありませんわね」

「そうだね、その通りだと思う」

 

 と、ここに新たな声が割り込んできた。今度は聞き慣れた声だ。現れたのは、

 

「デクくん!?」

「緑谷くん、平気なのか?」

「うん、活真くんの”個性”のおかげだよ。細胞の活性化、新陳代謝の促進、ドーピング的効果すらある……おかげでこんなに回復できた」

 

 そう言って拳を握るデクからは、確かに負傷している様子はほとんどない。

 私が増幅したこともあるのだろうが、あれの効果時間は長くない。どうやらカツマの”個性”は、相当に優秀なようだな。

 

「すごい”個性”だよ。活真くん、ありがとう!」

「……デク兄ちゃん……」

「君が怖い思いをすることなんかない。そのために僕たちがいる!」

 

 そしてデクは、そう笑いかけて言葉を締めた。

 その姿は、入学当初の彼とはまるで別人だ。これにはオールマイトも鼻が高いだろう。

 

「要するに、あのクソヴィランどもをブッ殺せばいいだけのことだろうが」

 

 と、そこにまた別の声が投げられた。こちらも聞き慣れた声。ここに足りない、ヒミコ以外のもう一人。

 

「爆豪!」

「……フン」

 

 レッドライオットの呼びかけに、軽く鼻を鳴らすキングダイナ。

 どうやら彼も、デク同様にほとんど快癒しているようだ。全快とまではいかないが、戦闘にはまったく支障はないだろう。

 

 それを証明するかのように、キングダイナは己の拳を叩いた。爆破を起こしながらだ。

 

「ヴィランどもをブッ潰す!」

「島の人たちも救ける!」

 

 デクが言葉を継ぐ。これにキングダイナがさらに言葉をかぶせた。

 

「絶対に勝つ!」

「爆豪、緑谷。その意見、乗った」

 

 二人に即答したのは、ショートだ。次いで、ウラビティが身を乗り出して同意する。

 

「私も! 島の人たちを守りたい!」

 

 元より意見はまとまっていたが、これによって私たちは決意を新たにした。

 

 絶対に全員を守る。絶対にヴィランたちに勝つ。

 その決意を込めて、全員で声を張り上げた。

 

『さらに向こうへ!! プルスウルトラ!!』

 

 もちろん、私も。

 




スライスに続く、相手が悪かったパートツー。
ただしシス流のやり方じゃない、穏当なやり方だったのでそこそこ抵抗された模様。
理波に次の戦いを危惧させる程度には消耗させたので、マミーは善戦したと言えるでしょう。
傍目には、幼女にちっちゃいおててを頭に当てられるのを死ぬ気で拒否ってる成人男性という、地獄みたいな見た目ですけどね。

いやまあ、穏当とはいえここまで直接的な尋問を普通のジェダイがするのかというと、多分しないと思いますけどね。
そこは既に理波も立派なクワイ=ガン門下であり、だいぶ質がセーバーの色に寄ってきてるということでもあるわけですが。
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